もどる

                          かけはし2003.9.8号より

秒読みに入った東海大地震と防災訓練

なぜ未曾有の「原発震災」を食い止めようとしないのか


 関東大震災から八十年、「防災の日」とされる九月一日に、政府と関東・東海の一都九県は、埼玉南部でのマグニチュード7・1の直下型地震と東海地震を想定した大規模な防災訓練を実施した。
 ここでは、防災訓練への自衛隊の参加や国民動員体制形成などの問題には触れない。指摘したい最大の問題は、今や極めて切迫した現実的問題になっている「原発震災」が完全に素通りされていることである。
 政府や自治体はもちろん、テレビや新聞などの大手メディアから共産党の「しんぶん赤旗」に至るまで、この「防災訓練」を報じるにあたって未曾有の「原発震災」が迫っていることに警告を発しているものはなく、マグニチュード8クラスの巨大地震になると想定される東海地震震源域の真上に立地する浜岡原発の即時全面停止を訴えるものはなかった。
 六月二十七日に宮城県北部で三回連続して発生した震度6の大地震は、日本列島が大地震活動期に突入していることを改めて印象づけた。その最大の焦点は、言うまでもなく東海地震である。すでに昨年十一月二十六日の記者会見で気象庁長官が、東海地震の想定震源域で一昨年七月から続いている「ゆっくり地震」について、「東海地震がいつ起きてもおかしくない状況になりつつある」と述べている。
 この東海地震と、その震源域の真上に設置されている四基の中部電力・浜岡原発の問題について、この七月初めに札幌で開かれた「国際測地学・地球物理学連合総会」(IUGG)で、地震学者が次々にその恐るべき危険性について告発した。
 東海地震予知のための気象庁・地震防災対策強化地域判定会長を長年務めてきた茂木清夫・東大名誉教授は、次のように述べた。「浜岡原発の直下でマグニチュード8の地震が起きる。極めて危険な状況だ」「ここでマグニチュード8級の東海地震が起こることに反対する学者はまずいない。その震源域の真上に原発がある。世界でここだけだ」(『AERA』7月14日号)。
 建設省建築研究所の応用地震学室長だった石橋克彦・神戸大理学部教授は、「原発震災:日本列島で懸念される、地震と地震による核事故が複合する破局的災害」と題する報告を行って、浜岡原発だけでなく日本各地の原発立地ならどこでも想定される原発震災の危険性について厳しく警告した(本紙8月11日号)。
 また、同学会に出席したアメリカ・カリフォルニア州国立研究所の地震学者・ローレン・モレ研究員は七月十日、浜岡原発を視察した後、県庁で記者会見して次のように述べ、東海地震発生時にメルトダウンのような最悪の原発事故に至る可能性が高いことを指摘した。「マグニチュード8クラスの地震がいつ来るかわからないのに、予想震源域の中に原発があるのは異常事態だ。周辺の岩盤は柔らかく、断層のズレが原発に与える影響は予想よりも大きい。岩盤は極めて柔らかく、地震の揺れに耐え切れず、沈下する可能性がある」(朝日新聞7月11日)。
 原発震災は、かつて人類が遭遇したことのない、未曾有の大惨事にならざるを得ない。通常、どこかで大震災が起きれば、世界中から救援部隊が集まり、瓦礫の下に生き埋めになった人々や負傷者の救出に当たる。ところが原発震災では、放出される大量の放射能から、周囲一帯の何十万人、何百万人が一刻も早く脱出しなければならなくなる。しかも脱出しようにも、大地震で交通機関はズタズタに寸断されている。さらに、救急隊員自身が、吹き出す放射能から脱出しなければ、チェルノブイリの消防士たちのように直ちに死にさらされることになる。震災で発生した火災の消火活動も、救出に向かうことも、そもそも不可能なのだ。まさに阿鼻叫喚の大惨事とならざるを得ないのである。
 そして浜岡原発は、二〇〇一年十一月の浜岡1号炉緊急炉心冷却装置系配管の爆発破断事故(いまも原因不明)が示すように、老朽化し、ボロボロ化している。運転開始から十年しかたたない四号炉でも、シュラウド(炉心圧力隔壁)に水中カメラで点検できる範囲だけで六十七カ所ものヒビ割れが発見された。ヒビ割れの深さは十四ミリに達している。
 中部電力は、厚さ五十ミリの部分でも八ミリ残っていれば、すなわち厚さの七分の六にも達する深いヒビ割れが生じていても東海大地震に耐えられるという、恐るべき「強度評価」を行った。そして、現在発見されているヒビ割れは緩やかに進行するが、なぜか深さ三十六ミリで停まるので、修理せずに運転し続けても五年間は大丈夫だという。原子力安全・保安院は今年一月二十一日、これをそのまま認め、ヒビ割れを修理しないで運転を再開してもかまわないという「見解」を発表した。そして中部電力は八月四日、このヒビ割れだらけの浜岡四号炉を、修理しないまま運転再開した。
 仮に大地震が起きなくても、進行のメカニズムさえわかっていない多数のヒビ割れが、予想もしない形で急激に進行するかもしれない。八九年一月の福島第二原発3号炉の再循環ポンプ大破壊事故、九一年二月の美浜原発2号炉の蒸気発生器細管ギロチン破断事故、九五年十二月の高速増殖炉もんじゅのナトリウム火災事故、九七年三月の東海再処理工場爆発火災事故、九九年七月の敦賀2号炉の冷却水大量喪失事故、二人の被曝死者と数百人の被曝者を出した九九年九月のJCO臨界事故、そして〇一年十一月の浜岡原発2号炉の近畿郵炉心冷却装置爆発破断事故。これらの重大事故は、いずれも予想もしない形で突然発生した。
 地震学者の度重なる警告を無視し、無責任極まりない態度で住民の命をもてあそぶ電力会社と原子力安全・保安院と小泉政権を許してはならない。しかも、電力需要の上からも浜岡原発を動かす必要は全くない。全設備に占める原発の比率が一二%しかない中部電力は、すべての原発が停まっていても十分過ぎるほどの余裕があり、「原発が停まれば停電だ」というキャンペーンを行うことさえできないのだ。
 にもかかわらず中電は、ヒビ割れだらけの浜岡4号炉も再稼働を強行した。それは、「自殺行為」ということさえできない。中電と、未修理のヒビ割れ原発再稼働を容認した原子力安全・保安院、そして小泉政権は、秒読みに入った東海大地震で未曾有の「原発震災」を引き起こし、無数の人びとの命を奪おうとする「未必の故意による大量殺人」を準備しているのだ。
 東海大地震震源域に建つ危険な浜岡原発をただちに廃炉に! すべての原発をいますぐ停めよう!
  (9月2日 高島義一)

もどる

Back