| 多国籍企業のルールはごめんだ かけはし2003.9.22号より |
| 新自由主義的グローバリゼーションに対する抵抗の新たな勝利 |
九月十四日、WTO閣僚会議は二十二カ国グループの下に結束した「発展途上国」と米国・EU・日本の対立の中、閣僚宣言も採択できずに閉会した。
今回の閣僚会議は、農業、非農産品、サービス分野の市場開放などの七つの分野についての交渉(2005年1月1日までに妥結することを目指す)の本格的開始のための枠組みに合意する上での重要な節目となる会議だった。また、EUを中心に、新分野(投資、競争、貿易促進、政府調達)の交渉開始の合意が追求されていた。
各分野での交渉が軒並み遅延し、合意の見通しが立たない中で、米国とEUは最大の対立点だった農業交渉をめぐって妥協案に合意し、「発展途上国」への説得(恫喝と買収)をはかった。「閣僚会議を失敗させてはならない」ということが唯一の目標となった。
しかし、二十二カ国グループの下に結束した「発展途上国」の抵抗は、この思惑を打ち砕いた。ブラジル、インド、南アフリカなどの諸国は、買収や分断を拒否して、「発展途上国」の利益を無視するWTOに対する異議申し立てを貫徹した。
ブラジル、インド、南アフリカ等の政府はWTOの下での新自由主義的グローバリゼーションに反対しているわけではない。しかし、市場開放、グローバリゼーションの中で生活手段を奪われ、貧困化・窮乏化してきた膨大な数の民衆が、これらの政府の背後にいる。カンクンに結集した数万人の民衆、そして全世界で大規模なデモに立ち上がった民衆の圧力の下で、二十二カ国グループに率いられた「発展途上国」政府に不面目な妥協を選択する余地はなかったのである。
その意味で、今回のWTO閣僚会議の失敗は新自由主義的グローバリゼーションに対する抵抗の新たな勝利である。
今回の閣僚会議に向けては、九九年シアトルの闘いを数倍する闘いが各国で行われた。カンクン現地の闘いについては、実際に参加した多くの仲間がその息吹きを伝えてくれるだろう。八月にはフランス・ラルザックで三十万人が集会に参加した。
アジアでもWTO反対の行動はかつてない規模で展開された。タイで三千人がデモ、フィリピンでも一万人、インドのバンガロールでは三万五千人がデモに参加した。とくに広範な農民の決起が注目される。
日本でもNGO、農民団体、消費者団体などによってさまざまな取り組みが行われたが、労働組合や左翼における関心や取り組みが、一部を除いて非常に弱かったと言わざるを得ない。
今回の閣僚会議の決裂によって、ドーハ閣僚会議で設定された〇五年一月一日までの妥結という目標は完全に破綻した。それによってWTOは当面、求心力を失うことになるだろう。米国はWTOで妥協的な協定を結ぶよりも二国間あるいは多国間協定、とくにFTAA(米州自由貿易協定)を通じて米国のルールへの追随を迫ることに関心を強めるだろう。
とはいえ、WTOが求心力を失うということは、企業主導のグローバリゼーションの流れが変わるということでは全くない。企業が世界の食糧、世界の水、世界の公共サービスを支配しようとする動きは一層活発に、そして一層暴力的になっている。しかし、それと真っ向から対決し、部分的な勝利を積み重ねていくことは可能である。シアトルに続くカンクンの勝利は、そのことを証明している。(9月15日 小林秀史)
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