訓練中の装甲車を民間人が「占拠」したのは異例のことだ。しかも実弾まで装填されている状況だった。まかり間違って事故でも起きたなら、その結果は想像だに大変なことだ。8月7日午後、京畿・抱川郡永中面の駐韓米軍ロドリゲス射撃場で繰り広げられた韓総連の大学生らの奇襲デモを眺めつつ胸をなで下ろしたのは、このためだ。
幸いにも不祥事は起きず、デモを展開していた学生12人は10余分後に米兵らによって訓練場から排除された後、警察に連行された。軍施設に民間人が無断で侵入すれば軍事施設保護法違反で処罰される。これに従いデモ参加学生の全員に拘束令状が申請された。学生らの進入を阻めなかった射撃場の指揮官や、集会申告を受けながらも突発状況に対処できなかった管轄警察の関係者に対する問責が行われるものと予想された。事件はそのように締めくくられるものと思われた。
マスコミとハンナラ党の猛攻
しかし、そうではなかった。学生10余人が展開したデモは間違いなく政治攻勢を呼び起こし、突然「外交問題」にまで飛び火するに至った。駐韓米軍は8月8日「法が許容する限り強力な措置で処罰されるものと期待する」との内容の声明を出した。またリアン・ラフォツ駐韓米軍司令官はキム・ヒサン青瓦台(大統領府)国防補佐官との電話を通じて「米国内で反韓運動が起きはしないかと心配だ。このような状態では何のために韓国に駐屯しなければならないのか、と米国の記者たちが何度も質問してくる」と語ったことが伝えられた。
波紋が広がるとコ・ゴン国務総理は事件発生2日後の8月9日「(今回のデモは)国益や国民の情緒に反する重大な利敵行為であり軍事施設に対する不法侵入の犯罪」であり「法によって厳重処罰し、背後勢力も探し出して厳重処断する」と語った。これにより警察は、つかまった学生らの護送車両を妨害した学生らに対しても拘束令状を申請するなど、強硬策に乗り出した。
1部マスコミは社説で韓総連や政府を圧迫しはじめた。「朝鮮日報」は8月11日付の社説で「この数カ月間、われわれが目撃した韓総連のデモは純粋な学生運動レベルのものと言うよりは大韓民国を根底から揺るがそうとする都市ゲリラ型の攻撃に近いものだった。……事情がこうであるにもかかわらず政府は、またもや『韓総連の合法化』云々をかざして、無法な振る舞いと韓総連の本質問題は分離して処理する、とたわごとのような言い分を繰り返すのか」と政府を叱責した。
これに先立ち「中央日報」も8月9日付の社説で「韓国大学生総学生連合所属の学生らの米軍射撃場内デモは大法院(最高裁)の判断通り、韓総連は依然として利敵団体であることを象徴する事件だ。われわれのために駐屯している米軍の訓練を妨害する行為は赤化の意志を捨てていない北韓を手助けするための行動にほかならない。また今春、発足した韓総連指導部の変身宣言は偽装戦術にすぎないということをハッキリと見せつけるものだ。……安保を脅やかす行動なのだから、いかなる理由であっても受け入れてはならない」として強硬対応を求めた。
ハンナラ党も連日、猛攻を浴びせ政治攻勢を続けている。ホン・サドク総務は8月11日、常任運営委で「事実上、警察の手助けの下、米軍部隊や野党事務所への奇襲事件が相次いで起こった。行政自治委や法司委などの関連常任委を開いて関係長官の問責を検討することとし、行自部長官に対する解任建議案は不可避だ」と語った。チェ・ビョンニョル代表もまた「韓総連の事態のような不法暴力デモは自由民主主義的基本秩序を根底から揺るがすもの」であり「大韓民国は全体的にネジのはずれきった社会になっており究極的な責任は大統領自身にある」と語った。
状況がここまでになると韓総連も積極的に反発して乗り出した。ややもすれば政府の「韓総連合法化」の動きにまでブレーキがかかりかねない、という切迫感のゆえだ。チョン・ジェウク韓総連議長は記者会見を開き「北核問題など微妙な時期に韓米両国がストライカー部隊などが参加する戦争対備訓練をしてはダメであり、米国の戦争の脅しに反対することを示すためにデモを行った。火炎ビンを投げるなどの過激デモを行ったわけでもないのに一部のマスコミが今回のデモを韓総連の合法化と連結させるのは正しくない」と主張した。
これに対して問題の青瓦台民政首席は8月11日、記者たちと会い「この間、政府が手配解除など誠意を尽くして変化を誘導してきたが、韓総連は肯定的に変化するようには見えず残念だ。国民の支持を得られる自己革新が必要だ」と語った。事実、韓総連の内部改革はすでに後戻りできない流れだ。韓総連指導部もこれをよく承知している。
自主改革に拍車をかける韓総連
韓総連は9月に予定されている定期代議員大会に向けて「新しい組織構成のための特別委員会」をも準備するなど自主改革の作業に拍車をかけている。新たに構成される組織は非運動圏や、いわゆる「PD系列」と呼ばれる左派学生会まで包括する新しい形態となる見通しだ。韓総連の内部事情に明るい1人は「韓総連は、いわゆる『NL系列』だけの結集体ではなく、本当の全国の大学生らの自治組織となるために綱領や規約はもちろん、組織の構成自体を変える計画だ。これまで非公開組織のように運営されていたやり方も変え、幹部らも実名化するなど完全公開組織へと生まれ変わる予定だ」と語った。彼はまた「すでにこのために各大学の非運動圏および左派学生会と接触しており、相当数が参加の意思を明らかにした」と主張した。
それにもかかわらず、以前の運動方式にこだわり続ける勢力がいないわけではない。特に首都圏の1部地域を中心に、変化に対する反発が高まったものと伝えられている。今回の事件も韓総連指導部では全く予想できないまま地域レベルで突発的に展開されたというのが韓総連関係者らの一致した説明だ。
韓総連幹部を経験した30代の1人は「拘束された12人の学生らが展開したデモの方法については論難があり得るだろう。デモを行った学生らの考えに同意しなくともよい。韓総連内部でも今回のデモについて賛成・反対の意見が行き交っている。不法な方法であっても自分たちの考えを知らせなければならないと判断した学生らは法に従って処罰すれば、それだけのことだ。これをめぐって国益を押し立てて『利敵行為』だと責め立てるのはこりごりだ」と語った。(「ハンギョレ21」第472号、03年8月21日付、チョン・インファン記者)
「ハンギョレ21」8月28日付によれば、8月12日、民主言論運動市民連合(民言連)は声明を発表し「韓総連のデモは迅速機動旅団(ストライカー部隊)の韓国訓練が韓(朝鮮)半島の平和を脅かす軍事訓練だという点を知らせるためのものだった。実際に韓半島の戦争の脅威が高まっている中、米国ストライカー部隊が創設以後、初めて海外遠征訓練を韓国で実施するという点において学生らの主張に耳を傾ける部分がある」と主張した。
市民社会青年活動家の会の380人も14日に緊急声明を出し、今回の事態の最も根本的な問題は韓半島の地で初めて訓練することになったストライカー部隊の戦争訓練にある」と語った。韓総連に対する保守マスコミの魔女狩り式の報道態度に立ち向かうために市民社会諸団体は「ストライカー部隊=北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)への先制攻撃の可能性」との反論を展開している。
また7月31日付の北韓「労働新聞」は「米国が新たな作戦の概念に従って世界の任意の地域に迅速に展開し作戦を遂行することを使命とする先端戦闘部隊を陸軍に組織したこと自体が第2の朝鮮戦争挑発のためのものだ」とし、「今回、南朝鮮(韓国)に送り込んでいる先端戦闘武力は第2朝鮮戦争挑発の先遣隊、斥侯隊だと言える」と主張した、と「ハンギョレ21」(同)は伝えている。
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