もどる

イラク占領米軍支援法の成立を糾弾する         かけはし2003.8.4号より

ドロ沼化する無法な侵略戦争に自衛隊員を送らせない闘いを!


 
 七月二十六日未明、参院本会議でイラク占領米軍支援法案が可決・成立した。六月十八日会期末の第156国会を一カ月以上延長し、米英軍によるイラクのサダム・フセイン独裁政権の軍事的打倒と有事3法成立の勢いで、一気呵成に「イラク復興支援特措法」を成立に持ち込んだ小泉政権を、われわれは怒りをもって糾弾する。
 小泉首相の答弁は、最後まで言い逃れ、ごまかしと詭弁によって、国際法や国連憲章を踏みにじって強行されたブッシュのイラク侵略戦争と軍事占領を正当化し、自衛隊を違法な軍事占領支配に加担させようとするものだった。七月二十三日の党首討論で、小泉は「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別を問われて「そんなことを今、私に問われてもわかるわけがない」と居直った。
 国連安保理での「査察継続」の声にも、「これ以上の査察は意味がない」とブッシュ政権を後押しし、「大量破壊兵器の差し迫った脅威」を口実にしたアメリカの先制攻撃を支持した根拠を問われた小泉首相は、「今後の米国との同盟関係をどう考えるのか」と、なにがあってもブッシュに追随する立場に固執した。
 イラク占領米軍支援法は、成立した有事法案の性格を浮き彫りにしている。それはアメリカ帝国主義のグローバル戦争に無条件に自衛隊を参加させるためのものだ。PKO派兵法が前提としていた国連の枠組みはすべて取り外され、国際法や国連安保理などまでも「冷戦時代の遺物」として片付ける徹底して帝国主義的な「力の論理」を、小泉政権は採用するにいたったのである。
 現米国務副長官のアーミテージは、ブッシュが大統領に選ばれる直前の二〇〇〇年十月の国家戦略研究所報告「米国と日本:成熟したパートナーシップに向けて」で一九九九年に成立した周辺事態法の限界を指摘し、日米同盟を米英同盟的なものにすることが必要であり、そのためには「集団的自衛権」の発動を違憲とする制約を撤廃しなければならないと訴えた。まさに事態はその方向に進んでいる。今国会でも「敵基地への先制攻撃」や「専守防衛の見直し」といった主張が、石破防衛庁長官などから公然と語られた。
 福田官房長官は、自衛隊の海外派兵のための恒久法制定について七月二十八日の記者会見で、そのための準備室を設置する意向をも明らかにした。まさに地球上のあらゆる地域に米軍とならんで自衛隊が参戦する事態が作りだされようとしている。
 イラクでは、米軍に対する連日の攻撃によって兵士の死者が続出し、米軍の士気は低下している。「こんなはずではなかった」という不満が兵士の間で渦巻き、ラムズフェルド国防長官など最高指導部の責任を追及する声が公然と語られている。「イラクを解放した」という米軍の奢りは、占領行政に対するイラク民衆の怒りにさらされ、「全土でゲリラ戦争が闘われている」事実を米中央軍司令官も認めざるをえなかった。こうした状況の中で、七月二十七日にはバグダッドの高級住宅地で米軍が市民に発砲して五人が死亡し、それを取材していた日本人記者が暴行され、後ろ手に縛られて軍用車両に連行されるという事件も発生した。
 自衛隊が派遣されるイラクは、まさにこうした「戦闘地域」なのであり、米軍を支援する自衛隊員はイラク民衆の憎悪にさらされることになるのだ。このため小泉首相は「派遣地域」の選定や派兵時期もふくめて「慎重に決定する」と語らざるをえなくなっている。石破防衛庁長官も「自衛隊派遣にはイラク国民の支持が絶対に必要で、当初は人道支援に比重がかかる」と述べた(7月27日)。
 しかしアメリカの要求は、あくまで米軍の「治安維持活動」=民衆弾圧活動への支援なのであって、政府内にも「対米支援をやらなければなんのために法律を作ったのか分からない」という声も強い、と報じられている(7月28日、朝日新聞)。
 今秋にも予定されている自衛隊のイラク派兵に対して、自衛隊員に「殺すな、殺されるな。派遣命令を拒否しよう」の呼びかけを強めよう。すでに名古屋、横須賀などでも「自衛官ホットライン」の活動が始まろうとしている。ワールドピースナウ実行委員会は、九月二十七日に、イギリスのストップ戦争連合などの国際行動の呼びかけに応え「イラク占領反対、イラクからの即時撤退、自衛隊のイラク派兵反対」を訴えるピースパレードを準備している。同時に九月末に招集される臨時国会での「テロ対策特措法」延長の目論見にも反対する運動を作りだそう。
 イラク反戦運動の成果を引き継ぎ、占領の中止・自衛隊派兵反対の行動を大胆に繰り広げよう。(7月29日 純)                            


イラク派兵法反対!
市民緊急行動や宗教者などが国会前で連日の反対行動


 七月二十三日から二十五日まで、イラク占領米軍支援法案に反対する国会前昼休み行動が正午から午後一時まで三日間連続で行われた。
 平和を実現する宗教者ネット、平和をつくり出すキリスト者ネット、戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動の仲間や平和フォーラムの労働組合員たちが、参議院前の歩道を埋め、イラク派兵に反対し続ける意思を表明し、共産党や社民党の国会議員からの連帯のあいさつを受けた。
 その間、七月二十三日、二十四日には警視庁の公安担当や公安調査庁の職員が反対側の路上から、行動に参加した人びとを露骨に撮影しつづけていたことを追及する闘いも繰り広げられた。その結果、警察・公安は七月二十五日には公然たる威嚇的な写真・ビデオ撮影を手控えざるをえなかった。
 七月二十五日、参院外交防衛委員会で午後七時三十四分にイラク占領米軍支援法案が強行採決され、二十六日未明の参院本会議で同法案は可決・成立した。七月二十八日の延長国会会期末を控えたギリギリの時点での成立であった。
 イラク派兵法案の成立によって、自衛隊は米英軍占領支配下のイラクに派兵されることが可能となった。しかしそれは、イラク民衆の占領者に対する闘いの矢面に自衛隊が立たされることを意味する。今秋からのイラクへの自衛隊派兵に反対し、新たな恒常的派兵法案や「国民保護法制」という名の「有事戦争動員法案」に反対する運動をさらにねばり強く発展させよう。 (K)

もどる

Back