もどる

                          かけはし2003.5.26号より

戦争国家体制を作らせるな

有事3法案修正案の実質審議ぬき衆院通過を糾弾

大阪で7千人が集会とデモ

 【大阪】五月二十日、「有事関連法案を廃案に!5・20大阪集会」が開催された。
 集会は、陸海空十四労組呼びかけの実行委員会(参加団体は14労組以外に65労働組合、19民主・市民団体)の主催で開かれ、扇町公園に七千人の労働者市民が参加した。連合系は、私鉄総連などの一部だった。ちなみに、五月十七日に開かれた有事法制反対集会(前号既報)では、全労連系は参加せず、連合系が参加した。昨年の五月二十日にも同じ構造で集会が開かれた。
 実行委員会を代表して、佐野さん(全港湾大阪地本委員長)があいさつした。「戦争に反対し国民を戦争に巻き込まないための一点で集まった。国会議員は良心がないのかと思う。政府答弁に、『緊迫関係にある国からミサイルが飛んでくる、これが有事だ』とある。厳しい状況だが、この集会の勢いを国会にへ知らせよう」と訴えた。
 各界からの訴えとして、最初に報道関係を代表して内田さん(新聞労連近畿地連委員長)が発言。「政府与党は民主党と談合し、ろくに審議もせずに衆議院で強行採決した。憲法は、国際協調などで有事にならないように求めている。有事は戦時だ。もし審議するなら憲法問題としてすべきだ。第二次大戦の反省から、戦争のためにはペンを使わない・カメラをとらない・輪転機を回さないと誓ったはずなのに、イラク空爆が開始された翌日のある大新聞の社説に『正しかった米の歴史的選択』という記事が載った。恥ずかしいことだ。廃案まで力を合わせてガンバロウ」と訴えた。
 武村さん(大阪弁護士会有事法制対策本部事務局長)は、法案が修正されたが問題は何ら解決していないと訴えた。
 宗教界を代表して、小谷静良さん(浄土真宗大谷派僧侶・大阪宗教家平和協議会副理事長)は、「有事法制反対の署名を三千二十五人集めた。戦争で亡くなった人の思いやこれからの若者のために反対した人もいる。国会でどうなろうとも、反対していこう」と訴えた。
 各界の訴えの最後に高さん(在日韓青同《大阪》委員長)が、在日の立場からともに闘っていくと発言。「日本のマスコミは、北朝鮮が国家予算の三割を国防費に使っており、いかに脅威であるかを宣伝しているが、北朝鮮の国家予算は百億ドル。米国の国防費は三千四百億ドル、日本の防衛費は四百億ドル。これでも北朝鮮が日本を攻撃すると言えるのか。小泉首相は、備えあれば憂いなしというが、備えさえいらない。一九九四年の北朝鮮の核疑惑で緊張が高まったとき、米国は戦争をしかけようとしたが、しなかった。それは、日本に米国の戦争に協力する態勢がなかったからだ。それ以来、日本は米国に追随しながら、戦争ができる国づくりを本格化することになった。今回の有事法は、米国に先制攻撃の道筋をあけることになる。そうなれば、北朝鮮の人々が命を失う。同胞が命を奪われることに反対しともに闘いたい」と訴えた。
 この後、「女たちのピースアクション」の女性たちが、『ゆうじ君』の歌を披露。集会決議を採択し、私鉄総連の中川さんの音頭で団結ガンバロウを三唱した。集会後、米国総領事館前でシュプレッヒコールをしながら、大阪市役所までデモ行進した。 (T・T)



もう戦争はいらない!
有事法制にNO!連続国会行動に向け3千人が集会とデモ

 五月二十三日、東京・日比谷野音で「もう戦争はいらない!有事法制にNO〜」5・23集会が実行委(フォーラム平和・人権・環境/戦争反対、有事法案を廃案に!市民緊急行動/日本消費者連盟/原子力資料情報室/ATTAC Japan/DPI(障害者インターナショナル日本支部)/I女性会議)の主催で開かれ、三千人が集まった。
 浅見清秀さん(平和フォーラム副代表)の主催者のあいさつの後、福島瑞穂さん(社民党幹事長)は「国会で有事法案を批判する質問をすると、『それでも日本人か!』というヤジが飛ぶように、実質審議のないまま法案を通そうとしている。この基本法が通れば、今後五十以上の法律が出てくるだろう」と国会の審議の様子を報告し反対を訴えた。宜野座晃さん(沖縄平和運動センター)、西原さん(日教組)の訴えに続き、大野則行さん(航空安全会議)は「明治公園で、航空運輸関係20労組が集会を開いている。有事法制は日本国内を想定したものというより、アメリカ軍と自衛隊が一体となって武力行使をできるようにし、日本を補給基地とすることに目的がある。戦争では何も解決しない。私たちは加害者にも被害者にもなりたくない、ともに闘ってゆきたい」と決意を述べた。
 田巻一彦さん(脱軍備ネットワーク・キャッチピース)は「@予防のための戦争や体制打倒のための戦争は国連憲章に違反している点Aアメリカや日本はジュネーブ協定の国際人道法を批准していないことB非核三原則を堅持すべきだ――この三点をきちんと日米にせまるべきだ」と訴えた。
 最後に主催者より、連続した国会前抗議行動とともに、6月12日(木)午後6時30分より、日比谷野音に集まり最後まで有事法制反対を闘う行動提起の後、銀座をデモ行進した。 (M)



戦争国家体制下の言論弾圧法-個人情報保護法成立を糾弾する

 本紙でも繰り返し廃案を訴えてきた「個人情報保護法(関連五法)」が、五月二十三日の参院本会議において、与党三党の賛成多数で可決、成立した。「メディア規制法・言論封殺法」と呼ばれた世紀の悪法の成立強行を、怒りを込めて糾弾する。
 国会審議のなかで野党側は、義務を課せられる「事業者」の規定があいまいで、「報道の定義」を監督大臣が決めるなど、「官に甘く民に厳しい」ことを批判して修正案を提出。「主務大臣制」に代わる第三者機関の設置を要求したが、与党が拒否した。結局「第三者機関制」は「国会審議を踏まえ施行後三年をメドに検討必要な措置を講じる」などという、何ら法的保証のない「付帯決議採択」にとどまった。
 本案の基本的性格は、一度は廃案になった原案とまったく変わっていない。膨大な個人データを保有する政府・官庁・大民間、すなわちデータを利用する側に対する規制は「ザル法」。かたや、すべての国民を「事業者」として監視の網をかぶせ、「報道とは何か」を政府が胸先三寸で判断して反政府的言動を取り締まる、言論弾圧法そのものだということである。事実、自民党内に沸き上がる「メディア敵視=スキャンダル封殺」の要求を、首相小泉は「虚偽報道がいかに多いか。率直に言って頭にくることもある」(5月21日・参院特別委員会での発言。朝日新聞5月24日)などと吐露した。
 本法には矛盾がいくつもある。法規制の対象となるのは五千件以上の「個人情報」を保有する「事業者」。「データの内容や事業者が悪質かどうかは判断の基準にならない」(内閣官房・同前)という。これで被害が防げるのか。また「データベース」ではなく、「分類された冊子」などの販売は「古本屋」扱いとなり規制されない。同様に「五千件以上」のデータを分割・隔離して保有している場合はどうなるのか。個人情報を「悪用」しようと思えば、いくらでも抜け道がある。医療分野では本人によるカルテなどの開示請求が可能だが、保有データが「五千件以下」の病院は対象にならない。いいかげんな内容である。
 法案成立を見越し、公的機関が民間企業に対して「個人情報が守られている」との「お墨付き」を与える動きもある。経済産業省の外郭団体は、企業向けに「プライバシーマーク」制度を導入。一定基準を満たした企業を認定・交付し、消費者や取引先へのイメージアップを助ける。「個人名簿」から「法人名簿」に衣替えする名簿会社もある。今後の整備される個別法の内容にもよるが、データ業界はさほど混乱せず、むしろ国民のプライバシーに対する意識の向上が、新たな需要を掘り起こし、貪欲なビジネスを生み出している。
 審議中の有事法案が戦争への「ハード法」であるなら、「国を愛する心を育む」教育基本法改悪策動は「ソフト法」であり、市民の活動とジャーナリズムを国家が監視する本法は、その中間に位置する言論弾圧法である。この三つの法案は、文字通り三位一体の戦争法であり、現代版国家総動員法と言える。
 政府・行政そして警察が保有する膨大な「個人データ」こそ、国民監視のもとに管理され、統制されるべきである。「入隊適齢者リスト」が行政から自衛隊に提供されていた事件などは、国家による個人データ盗用の最たる例である。徹底的に弾劾する。
 今年八月二十五日に本格稼働する「住基ネット」が、本法の成立でさらに推進される危険性がある。ジャーナリズムに死をもたらし、国民の知る権利と言論・表現の自由を奪う悪法―個人情報保護法案の成立を糾弾する。       (S)


国連「越境組織犯罪防止条約」の批准と国内関連法「共謀罪の新設」に反対する市民団体共同声明

 四月二十三日、衆院外務委員会で国連「越境組織犯罪防止条約」の批准を求める決議が、共産党も含む賛成多数で採決された。今後、その国内関連法「実行行為なき共謀罪の新設」が法務委員会で審議されることになる。それは「テロ撲滅」を口実にしたグローバル戦争と一体の人権弾圧条約であり、憲法で保障された基本的人権を破壊する人権弾圧法である。共同声明の賛同団体、賛同人になろう。


 越境組織犯罪条約は、越境的な組織犯罪を防止するために国際的な法的枠組みを創設することを目的として二〇〇〇年十一月国連総会で採択され、日本も署名したものです。しかし、この条約は民主的な討論を欠いた拙速な審議でつくられ、日本の戦後の刑法、刑事訴訟法などの司法の根本原則をくつがえして、憲法が保障する基本的人権を抑圧する重大な問題をはらんでいます。
 政府・法務省は、今通常国会での越境組織犯罪条約の批准を目指して、国内関連法の整備にとりかかっていますが、その中でも最大の問題は、犯罪の実行行為がなくとも相談や合意をしただけで処罰できる「共謀罪」の新設です。
 現行刑法は、犯罪が実行されたことを前提に、共謀共同正犯で実行行為に加わらなった者も処罰をしていますが、政府・法務省が考えている共謀罪は殺人や傷害などの実行行為がない場合でも、現在刑の上限を四年以上としている犯罪について相談したり議論したりするだけで、二〜五年以下の刑に処すというものです。四年以上の刑を科している犯罪には、一般的なほとんどの犯罪が含まれます。それらについて冗談や相談しただけでも罪が成立するというのが、新設されようとしている共謀罪です。
 日本ではすでに、政治活動、市民運動などの正当な抗議行動の権利を「犯罪」行為とみて摘発しています。新設しようとしている「共謀罪」では、さらに、「越境的な性質」をもたず「組織犯罪集団」でもない国内の市民団体、労働組合、政党その他の団体一般にたいしてこれを適用し、弾圧しようとしています。
 この共謀罪が新たに設けられたならば、反原発や自然保護、平和や食の安全を求める運動体、組合や政党などが、たとえば米軍基地や食品会社の前でやむにやまれぬ思いで「座りこみをしよう」と議論や合意しただけで、実行されなくとも会議などの参加者全員が共謀罪で処罰されます。この共謀罪の新設は新たな団体規制法の性格を強くもつものです。
 共謀罪の新設は個人の犯罪行為を処罰する現行刑事法体系を否定するものであり、憲法の保障する言論・思想・結社の自由など基本的人権を侵害するものにほかなりません。政府・法務省は条約を盾に国内法を変えようとしていますが、越境組織犯罪防止条約が対象としている犯罪は、組織犯罪集団が関与する越境的な性質をもつ犯罪であり、条約からの著しい逸脱が国内法化のもとで進められ、権力の増大が図られていると言えましょう。
 「共謀」の事実を立証するために、室内盗聴の導入や盗聴法の改悪がはかられることは疑いありません。
 私たちは、同条約の批准と共謀罪の新設に断固として反対します。国会におかれても憲法に照らして慎重に審議されるよう強く求めます。
2003年3月15日
共謀罪に反対する共同声明賛同(5月5日現在)
■呼びかけ団体/盗聴法に反対する市民連絡会、ネットワーク反監視プロジェクト日本キリスト教団神奈川教区国家秘密法反対特別委員会、日本消費者連盟
■賛同団体・賛同人(略)
<問い合わせ先>電話 076-422-7275(ネットワーク反監視プロジェクト・小倉)


もどる

Back