自衛隊員にイラク人民を殺させるな!
イラク占領米軍支援法案を阻止しよう |
小泉政権は六月十三日、アメリカ帝国主義ブッシュ政権の「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上軍を派兵せよ!)」という要求に応え、米英軍の不法な植民地的占領支配が続くイラクへ自衛隊を派兵するための「イラク復興支援特別措置法案」と、十一月一日に期限が切れる「テロ対策特措法」(アフガニスタン侵略戦争支援法)の二年延長法案を閣議決定し、国会に提出した。六月十八日の今国会会期期限切れを前に、小泉政権はこの法案を強行するために、七月一杯の会期延長をめざしている。
米英占領軍は、イラク人民の意志を踏みにじって不法な占領支配を続け、連日のように各地で民衆を殺害し、反撃の抵抗闘争によって多数の戦死者を出し続けている。「イラク占領米英軍支援法案」は、このような戦争状態にあるイラクに自衛隊が出動し、占領軍の一部になろうとするものである。
PKO法やテロ対策特措法を通じて事実上、なし崩し的に行われてきた「憲法違反の海外での武力行使」が、さらに一歩エスカレートし、第二次大戦後初めて日本の兵士が海外の人民に銃砲火を浴びせて殺害する可能性が現実のものになろうとしている。そして同時に、日本の兵士が初めて海外での戦争で「戦死」する可能性が、現実のものになろうとしているのだ。
言うまでもなくそれは、自民党を中心とする歴代政権が積み重ねてきた既成事実による憲法の空洞化を一挙的に押し進め、憲法改悪を決定的に促進しようとするものでもある。イラク占領米英軍支援法案(イラク特措法案)と、アフガニスタン侵略戦争支援法(テロ対策特措法)の二年延長を阻止する緊急行動を闘おう。
これほど支離滅裂でデタラメな法案も珍しい。まずその「目的」(第一条)は、イラク侵略戦争を「国連安保理決議678、687、1441並びに関連する決議に基づき国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使」として正当化しようとしている。
しかし、米英帝国主義によるイラク侵略戦争は、安保理決議678にも687にも1441にも全くもとづいてはいない。安保理決議678は九一年の湾岸戦争当時、クウェートを占領していたイラク軍を撤退させるための武力行使を認めたものである。もちろん今回、イラクはクウェートを占領してはいなかった。したがって決議678は、今回の米英による武力行使をなんら正当化しない。
決議687はイラクに大量破壊兵器の廃棄を求めたものだが、その履行を確保するための措置は、安保理で決定するとしている。安保理で「イラクの大量破壊兵器廃棄のための武力行使決議」は提案されてさえいない。したがってこれも米英の武力行使を正当化するものでは全くない。
昨年十一月の決議1441では、大量破壊兵器廃棄の問題について、イラクによる「査察妨害」などがあった場合の措置は安保理で改めて協議することになっていた。イラクは査察に全面的に協力しており、そして国連査察委とブリクス委員長は査察の継続を求めていた。武力行使についての安保理での合意もない。したがって決議1441もまた、米英によるイラクへの先制的武力行使を正当化するものでは全くなかった。
ブッシュとブレアは全力をあげ、なりふりかまわず安保理理事国政府に猛烈な圧力をかけ、新たな「武力行使容認決議」を採択させて侵略戦争を正当化しようとした。しかしすべて仮定の上に立った「脅威」なるものを「根拠」にしたイラクに対する先制的武力行使が、国連憲章と国連で合意された国際条約などに体現されてきた「国際法」にあらゆる意味で違反することは、誤解の余地がなかった。そのため各国政府は、戦争に反対する世論の反発への恐れもあり、ブッシュとブレアのごり押しへの屈服をためらったのである。
安保理での多数獲得が不可能になったブッシュとブレアは、否決されて安保理内での孤立が国際世論に確認されることを恐れ、「早期採決」を声高に叫んでいた「武力行使容認決議」を取り下げてしまった。そして苦し紛れに、今回の武力行使とは全く何の関係もない安保理決議678、687、1441を持ち出したのである。
国連は、米英日など帝国主義諸国や軍事独裁政権や専制的王朝支配体制などの諸国家を含む国家間機関にすぎない。地雷廃止国際条約の成立や国際刑事裁判所(ICC)の設立など、社会運動の圧力がこれまでより反映されやすくなってきているが、世界の労働者人民の意志が直接反映されているわけではない。
安保理常任理事国として、特権的「拒否権」行使によって国連を支配しているのは、核武装した米・英・仏・露・中の五大国であり、しかも圧倒的支配力を持っているのは最大の核軍事力を誇るアメリカである。ブッシュとブレアは、この国連安保理の支持さえ取りつけることができず、恥知らずなウソで世論操作しようとしたのだ。
国連アナン事務総長は、今回の米英による武力行使が「国連の枠外」のものであるとして強い遺憾の意を表明した。小泉の「イラク特措法案」は、ブッシュとブレアのこのような屁理屈にもならないウソとデタラメをそのまま書き写し、侵略戦争を正当化し、自衛隊を派兵して流血の不法な軍事占領支配に参画しようとしているのである。
「国連の権威」を利用することに完全に失敗した米英帝国主義とそれに追随する小泉政権は、「イラクが保有する大量破壊兵器の脅威」なる幻を誇張して振りまくことで、無法な侵略戦争をなんとかして「正当化」しようとした。
ブッシュの大統領補佐官ライスは、国連査察委委員長ブリクスに査察を打ち切るよう圧力をかけ、「(核攻撃を受けて)キノコ雲を実際に見るまで待てというのか」と叫び立てた。ブレアは国会で「イラクは四十五分で大量破壊兵器を配備し使用できる」と繰り返した。小泉は自らのメールマガジンで「問題は、大量破壊兵器を保有するイラクの脅威に私たちがどう対峙するかです」などと述べ、「イラクの大量破壊兵器保有」を侵略戦争支持の「理由」とした。
われわれは、「イラクが大量破壊兵器を保有している」という彼らの主張とその「証拠」が大ウソであることを批判してきた(「パウエル米国務長官の国連証言−『石油のための戦争』の正当化ねらうデタラメと屁理屈」本紙2月17日号)。そして米英軍によるイラク全土占領から二カ月もたったにもかかわらず、「四十五分で配備し使用できる」はずの「大量破壊兵器」はどこからも出てこない。何度も報じられた「マスタードガス入りの缶発見」「神経ガス兵器らしい」などの情報は、すべて誤りだったことが確認された。
これらの「大量破壊兵器開発・保有疑惑」なるものが、証拠の偽造と情報操作によるものであったことが発覚し、ブッシュ・ブレア両政権を揺るがす大疑惑に発展している。
「イラクに化学兵器が存在する信頼できる証拠はない」という、米国防情報部(DIA)が昨年九月に作成した報告書が握りつぶされていた。イラクがニジェールからウランを入手しようとしたという「証拠」とされた文書は完全な偽物だった。「発見された」という「移動式生物兵器開発施設」なるものは、単なる酸素製造施設であった。「核兵器生産のためのアルミ管」なるものについても、国務省情報調査局(INR)が国連査察団と同様の「核開発とは関係ない」という結論を出していたにもかかわらず、ブッシュ政権は「核開発の証拠だ」と叫んでいた。その他、その他……。
ワシントン・ポスト紙やニューヨーク・タイムズ紙などのマスコミは、連日のようにこの問題を取りあげ、チェイニー副大統領やウォルフォウィッツ国防副長官ら政権指導部が中央情報部(CIA)などに日参して圧力をかけ、情報操作を強要し、戦争の口実を作っていた疑惑を報じ、ブッシュ政権が国民を欺いて戦争に駆り立てた責任を追及している。米誌『タイム』(6月9日号)は、「大量消滅兵器」いう皮肉な題をつけた特集記事を掲載し、ブッシュ政権の信頼が大きく揺らいでいると報じている。
英BBCは五月末の放送で、ブレア政権が英情報部MI6に「文書をセクシーにするためにぜひ必要」と主張して圧力をかけ、MI6が集めた情報を歪曲してイラクによる大量破壊兵器開発の「証拠文書」を作成したと報じた。そしてブレアの戦略広報担当キャンベル局長が、MI6の長官にこの問題で謝罪する手紙を送っていたことも発覚した。
米上院情報特別委と上院軍事委でこの問題についての非公開の公聴会が開かれる。英下院ではこの問題を調査する情報安全保障委員会が設置され、下院外務特別委員会は閣僚も含めて公開で証人喚問するなどの調査開始を決定した。
イラク侵略戦争を正当化しようとする試みは、すべて破産した。この無法な侵略戦争と米英軍の無法な占領支配に自衛隊を派兵して参加しようというのが、「イラク特措法案」なのだ。軍事占領支援法案の審議よりも、国会にこれらの疑惑を調査する特別委員会を作り、米英に調査団を派遣する方が先決であろう。
現行憲法は、「国際紛争解決の手段としての戦争の放棄」を宣言し、「陸海空軍などの戦力の不保持」と「交戦権の否認」を明記している。したがって自民党を中心とする歴代政府は、憲法違反の自衛隊の強化やPKO法などを通じた海外派兵を押し進めるにあたって、「海外での武力行使はできない」と繰り返し確認せざるを得なかった。
そのためPKO法では、紛争当事者の停戦合意とすべての紛争当事者間での中立の厳守などの条件が満たされなければ直ちに撤収することが確認されていた。アメリカのアフガン侵略戦争支援のために成立を強行した「テロ対策特措法」でも、「米軍の武力行使と一体化する懸念があり、憲法と抵触する恐れが強い」という批判が高まったため、海上自衛隊の活動を直接の戦場から離れた海域での米軍への燃料補給にとどめざるを得なかった。「戦場での米軍への武器・弾薬の補給」が「海外での武力行使」にあたり、憲法違反であるというのは、当たり前の原則だった。
ところが今回の「イラク特措法案」について、小泉政権は「いちいち荷物を開けて調べるわけには行かない」として、自衛隊がイラク国内で米軍などの武器・弾薬の陸上輸送を行う姿勢を平然と示している。わずか一年数カ月前には「憲法に抵触するからできない」とされていた「海外での武力行使」に踏み込もうとしているのである。
一九八〇年の政府答弁書は、「相手国の領土の占領、そこにおける占領政策などは自衛のための必要最小限度を超える」と述べ、憲法九条が否定する「交戦権」には「占領行政」が含まれると認定していた。米英軍の占領軍政に自衛隊を派兵して直接参画することが公然たる憲法違反であることは論を待たない。
法案は、派兵される陸上自衛隊の活動は「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域」で実施されるとしている。「非戦闘地域で米軍を支援するのだから、米軍の武力行使と一体化はしない」、したがって憲法違反ではないと言いたいのであろう。
言うまでもなく、イラクには「戦闘行為が行われておらず今後も行われることがない地域」など存在しない。米軍のイラクでの地上作戦を指揮するマッキャナン司令官は六月十二日の記者会見で、「軍事的にはイラク全土が戦闘地域で、しばらくその状態は続く」とと語っている。同日、米中央軍はイラク西部で攻撃ヘリAH64アパッチ一機が撃墜されたと発表した。翌十三日には、バグダッド北方のバラドなどで大規模な戦闘が起き、米軍はイラク人約百二十人を殺害したと発表した。
連日のようにイラク各地で米占領軍も攻撃を受けて多数の死傷者を出し、四月九日のフセイン政権崩壊以来、すでに四十人以上の米兵が死亡している。米軍撤退とイラク人の主権回復を求めるデモや集会も、連日のように展開されている。
六月三日にバグダッドで行われたイスラム教シーア派とスンニ派の合同反米デモでは、数千人のデモ隊が米軍戦車の前に押しかけた。演壇に立った聖職者が、「イスラム女性に米兵が身体検査をやっている。今度やったら、手を切り落としてやる。ブッシュはサダムと同じだ。米軍は出ていけ」と叫んだ(朝日新聞6月8日)。
米軍による小学校占領に抗議した市民に無差別に銃を乱射して十六人を殺害、百人以上を負傷させた四月二十八日のファルージャ事件をはじめ、各地で占領軍が引き起こされる暴虐の数々に、大衆的怒りは日に日に高まっている。その怒りを背景に、米軍への攻撃はさらに激化するだろう。
小泉政権は、イラク各地で頻発する自爆攻撃や、ロケット弾や手投げ弾などでの攻撃について、「組織的でなければ、戦闘行為と見なさない」とする方針を固めたという(朝日新聞6月12日)。単独の自爆攻撃でも通常、組織的決定にもとづいて行われるのである。「組織的攻撃」と「非組織的攻撃」を区別する基準などあるわけもない。
すでにイタリア軍などの支援部隊にも死傷者が出始めている。占領軍への攻撃が行われているが「戦闘地域ではない」場所に送られ、「組織的でない」攻撃で命を落とす自衛隊員はたまったものではない。そして攻撃を受ける自衛隊員の側も、占領軍の撤退を要求するイラク人民の抵抗闘争に銃を向けて殺害することを余儀なくされることになる。
小泉政権は、「イラク復興支援」に名を借りた占領軍政支援法案によって、これまで歴代政府が「憲法違反の海外での武力行使だ」としてきた行為に、一応の理屈らしい理屈を立てようという姿勢すら示すことなく平然と踏み込もうとしているのである。まさに「憲法破壊の暴挙」というしかない。それは、国務大臣や国会議員をはじめとする公務員の「憲法遵守義務」を定めた憲法九十九条を踏みにじる暴挙である。この一点だけでも、小泉は首相を罷免され、議員資格を剥奪されて当然なのだ。
有事関連三法の成立に続く「イラク特措法案」による憲法破壊と、自衛隊が占領地の人民に銃を向ける戦争への現実的踏み込みは、「戦争をして外国の人民を殺す国家」の法的完成としての憲法改悪に直結している。
米英の暫定占領当局(CPA)の代表プレマーは六月一日、イラク人自身の統治の第一歩になるという触れ込みだった「国民議会」の設置を取りやめ、占領軍政の単なる諮問機関にすぎない「政治評議会」を置くという新方針を突如、発表した。評議会のメンバーは事実上、米軍政当局が選ぶことになる。
「異教徒の侵略者」である米軍に、民族的にも宗教的にも利害関係や周辺諸国との結びつきが絡んで極めて複雑な構造を持つイラクという国家をまとめることは不可能である。そして米軍政当局と交渉してきた主要七組織は、イラク人の多数を必ずしも代表するものではない。われわれが予測した通り、占領支配は長期化せざるを得ない。
しかも侵略戦争で破壊された電気や水道や、衛生設備や生活必需品の供給も復旧しておらず、略奪や銃撃が連日続くなど治安の悪化も極めて深刻な状況が続いている。占領支配に反対するデモへの米軍の発砲も連日のように続き、多数の市民が殺害され、負傷している。
その一方で、イラクの石油資源に対するアメリカ資本の支配は着々と進んでいる。北部の大油田キルクークには、チェイニー副大統領が経営者だった米エネルギー大手ハリバートンの子会社が四月末から入り、調査を進めている。五月に入って米軍政当局はイラク石油省に顧問委員会の設置を決定し、トップに石油メジャーのロイヤル・ダッチ・シェル米法人元社長をすえた。五月二十二日に国連安保理でイラク制裁の解除決議を採択させたことによって、イラク石油の輸出収益はこれまでの国連に代わって、米英占領軍が監督する「イラク開発基金」が直接管理することになった。
事実上、アメリカのかいらいであると見られていたチャラビのイラク国民会議(INC)でさえ、「アメリカ抜きで国民議会を作ろう」と他の諸組織に打診し始めている(朝日新聞6月10日)。占領軍支配に対する怒りはますます高まり、しかも占領軍支配は長期化する。
「イラク特措法案」が成立すれば、自衛隊が占領軍支配の一部になることによって、自衛隊はイラク人民を殺し、イラク人民に殺される位置に、いやおうなしに就くことになるのだ。自衛隊兵士に、イラク人民を殺すな!と呼びかけなければならない。
イラク占領軍支援法案を廃案に! イラクの大量破壊兵器保有の証拠偽造問題に関する調査委員会を国会に設置せよ! 有事法制を発動させるな! 憲法改悪を阻止しよう! 「戦争をして外国の人民を殺す国家」を作らせるな! イラク人民の石油資源を帝国主義に強奪させるな! 米英占領軍は即時イラクから撤退せよ!(6月17日
高島義一) |