もどる

韓国は、いま                    かけはし2003.6.16号より

戦争を阻む平和事業の推進を

「もう経済協力は断ち切れない」


 韓米首脳会談後の論難の焦点は「追加的措置の検討」に対北先制攻撃が入っているのかどうかだった。人々の関心がすべて「追加的措置」に向けられている渦中で、韓米共同声明の中の「ノ大統領は今後、南北交流や協力を北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)の核問題の展開状況を見きわめつつ推進していくだろうとの立場を明らかにした」というくだりは、さしたる注意を引かなかった。
 けれども、このくだりは5月22日にチュ・ミエ民主党議員が主張しているように「南北交流や協力を北核と連結したのは事実上、対北政策の政経分離の原則放棄を示唆しているもの」だ。これが現実化すれば、キム・デジュン政府の太陽政策の核心的要素だった政経分離が消えさりかねない。最悪の場合、ノ・ムヒョン政府は南北関係の枠組みを組み立て直さなければならない。
 キム・デジュン政府は2度の西海(黄海)交戦があり、スパイ工作船もやってきたけれども、金剛山観光事業を継続するなどの南北交流や経済協力を中断しなかった。反面、キム・ヨンサム政府を含む歴代政権は南北関係において政治と経済とを連係させた。政治的軍事的状況が悪くなれば経済協力の進展も足首をつかまれた。
 ブッシュ政権の対北強硬路線にもかかわらず、南北関係が維持されることができたのには、キム・デジュン政府の政経分離路線が大きな役割を果たした。「南北交流の問題は米国の同意を求める性質のものではないし、韓米共同声明文に含めさせる事案ではさらにない」というチュ・ミエ議員の反論も、このような脈絡から出てきた。
 5月19〜23日にわたって開かれた第5次経済協力推進委(経推委)の会議が7項の合意文を発表した。南北はb京義線と東海線の鉄道b道路の連結工事・開城工業団地b金剛山観光事業のような3大経済協力事業などの日程を再調整した。
 ここで北韓は韓米首脳会談の結果を批判しつつも、南北経済協力は続けていこうとの意志を強く明らかにした。パク・チャンリョン北側団長は「われわれ双方は、どちらかが何と言おうと、また周辺の環境がどう変わろうと、わが民族同士で共助し、和解と協力の事業を積極的に推進していかなければならないだろう」と強調した。このような北韓の反応は核問題が起きて以降、外部の支援が減るとともに経済事情が悪化しており、南側との経済交流を断つことのできない現実的計算が横たわっているものと思われる。
 政府関係者は「北韓は経推委の際に出てきた『反北対決時に災難を被ることになるだろう』との問題発言を正式に釈明した。これは南北会談の前例を考慮するとき一歩進んだ成果だ。和解協力の進展によって南北間の相互依存性が増え、われわれの対北のテコが強化されたおかげ」だと語った。
 89年に始まった南北交易は毎年ずっと増加してきており、昨年の南北交易の規模は6億4173万ドルで史上最大を記録した。この金額は南側から見れば総貿易額の0・2%にすぎないけれども、01年度の総貿易額が22億7千万ドルの北韓にとっては無視できない比重だ。大韓貿易投資振興公社は、南北交易は内国間の取り引きとして北韓の対外貿易の実績には含まれていないが、昨年、南韓は中国に続き北韓の第2位の交易対象国であるものと推定している。
 以前から統一部(省)の関係者たちは「南北関係のモーメンタム(推進力)維持」という言葉をよく使ってきた。簡単に言えば、状況が悪くなったとしても会談や交流協力は続けられるべきだ、というものだ。01年11月、ソ・ドンマン尚志大教授(現・国情院基調室長)は、ある討論会で南北関係のモーメンタムを以下のように説明した。
 「南北関係は、対話が進められたとしても和解の基調が軌道に乗り制度化されるまでは固定化した敵対関係や軍事的対峙状況が併存する二重的関係にならざるをえない。南北関係が後戻りできない地点に到達するまでは引き続き成果を出しつつ、たゆみなく進められなければならない。そうしなければ関係が悪化する危険を常に内包している。こういった点から対話のモーメンタムを維持することが何よりも重要だ。今後も南北関係は両者の内部からのモーメンタムが重要性を持つことになるだろう」。
 統一前の東西ドイツの状況もこれと同じだった。80年代、東西ドイツ間の交流や協力に速度が加わると東独経済の西独依存度は40%にまで達した。東独政府は西独から経済的利益を得ながらも、政権に脅威となる波及的効果を阻もうとしたけれども、西独に対する経済的依存を構造的に抜け出せなくなった。
 もちろん経推委の結果について「核問題をさしおいて、鉄道を連結するのが、この時点で何の役にたつのか疑問だ」(5月24日付「東亜日報」社説)のような、せこい評価もある。青瓦台(大統領府)の高位関係者も5月22日、南北経協推進委が空回りしたとき、「北韓の態度に変化がなければ、このまま引き揚げることもありうる。われわれが急がなければならないものはない」と語った。同関係者は「北韓も、肥料も食糧も当面せっぱつまってはいないようだ。今回、1度このまま引き揚げるのも方法の1つ」だと語った。
 けれども南北の経済協力は、状況の良い側が立ち遅れている側を助けようというものではない。南北とも利益を得ようという取り引きだ。さらに加えて経済協力は韓半島において戦争を阻んでいる平和事業だとの性格も帯びている。
 ある北韓専門家は「ノ・ムヒョン大統領が『これからは北韓がやろうという通りにつき従ってはダメだ』と語れるのは、逆説的に太陽政策の成果のせいだ。キム・デジュン政府が5年間『ポジュギ(ひたすら、すくってやること)』との非難を受けながらも、対北交流・協力を持続させたことによって南北は相互依存性を持つに至った。米国が牛耳っている韓半島の情勢において、政経分離を通した南北対話のモーメンタム確保は韓国が持つことのできる唯一の武器だった。ノ大統領は前任者が苦労しながら手にしたこのカードを台無しにしてはならない」と語った。(「ハンギョレ21」第461号、03年6月5日付、クォン・ヒョンチョル)


開城工業団地6月下旬着工で南北が合意
米日との関係改善が不可欠だ


 ピョンヤンで開かれた南北経済協力推進委員会で南北は開城工団(工業団地)の着工式を事業者間の合意にそって6月下旬に行い、工団を国際的競争力を持つ方向に開発するよう積極的に協力することにした。
 開城工団は野心に満ちた経済協力プロジェクトだ。開城工団が活性化すれば委託加工や単純交易中心になされていた南北経協が合営、単独投資など本格的な投資段階に進入することとなる。北韓は昨年11月、開城工業地区法を採択し、主要協力対象が南韓であることを明らかにした。したがって北韓で非公式的に進められてきた南北経協が制度化される契機となる。
 対北経協の種類は大きく分けて3つだ。単純交易、委託加工事業、それに投資(合作、合営、単独)事業だ。これまで大規模投資事業は4件にすぎない。このうち大宇の南浦縫製工場とテチャンの金剛山泉水事業など2件はすでに中断されており、現代峨山の金剛山観光事業と平和自動車の南浦自動車工場事業は黒字を出せずにいる。現代を除けば北韓に本格的に投資した大企業はない。北韓の投資環境は不確実なうえ、ハッキリした収益モデルがないからだ。
 現代峨山は開城工団が順調に開発されれば、開城工団の年間売り上げ額は200億ドルを超えるものと予想している。01年北韓の国民総生産は157億ドルだった。韓国の技術者たちは朝、京義線に乗って開城に出勤し、夕方にはソウルに退勤すれば、ごく自然に南北が1日の生活圏となる。
 けれども北韓が米国や日本との関係を解決できなければ、このようなバラ色の夢も破れる。開城工団がうまくいこうとするなら南韓の市場ばかりではなく、輸出の版図を確保しなければならない。開城工団に入る企業が作る製品は現在、国際的に通用している原産地の判定基準からするとき、北韓産と判定される可能性が高い。
 現在、北韓は世界最大の市場である米国で他の国の製品と価格競争をすること自体が不可能だ。米国は対北経済制裁措置の1つとして北韓に差別税であるコラム2関税率を適用している。この関税率が適用されればコラム1関税率が適用される国よりも少なくとも2倍、最大では35倍も高い関税を払わなければならない。開城工団でどんなに良い製品を作ったとしても米国市場に輸出するのは不可能となる。
 北韓と日本は関税協定がない。北韓は日本と取り引きしているアジアの国家の中で唯一、特恵関税を適用されず、固定税率や基本税率を適用されている。品目によっては他の国の製品の2倍近い関税を払わなければならない。
 核問題、日本人拉致問題によって縛られた北・米、北・日関係が改善されなければ開城工団の未来も形無しだ。(「ハンギョレ21」第461号、03年6月5日付)

もどる

Back