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ルラ政権--変革への大衆的熱望と右からの重圧(3) |
「真の社会革命」と右派路線
パロッチがカルドゾの政策に言及して使っている表現を取り上げれば、「お飾り」ではない社会政策の相貌とはどのようなものだろうか。大枠の考え方は、交渉によって達成される拙速ではない変革、国民的動員と社会協約(基本的に労働者と「生産的資本」との同盟を通じた)といったもののようである。ルラはこの点を選挙キャンペーン全体を通じて強調してきたし、また大統領就任演説の中でもそれを次のように描き出している。
「そう。われわれは変革するだろう。勇気と慎重さ、謙虚さと大胆さを伴った変革である。それは漸次的かつ継続的なプロセスであり、たんなる意思の力や主意主義的な有頂天さによるものではないことを意識している。変化は性急さや拙速さを排した対話と交渉を通じて起き、したがってその結果は一貫性を持ち、持続的なものとなる。……」
「ブラジルを雇用を創出するための成長の道に乗せるためには、われわれには多くのものが欠けている。変革と、国家の基本的富を生成する労働と生産的資本を強固に統一させる同盟のための、確実性のある社会協約をわれわれは必要としている。それはブラジルを現在の停滞状況から抜け出させるためであり、わが国が経済的・社会的発展の大海を新たに航行するためである。こうした社会協約は、ブラジル社会が求め、私自身がその遂行に責任をもっている改革を実行性あるものとするためにも決定的である。その改革とは、社会保障の改革、税制改革、政治改革、労働法の改革、そして農業改革である。こうしたすべての改革は、国民的発展の新サイクルを促進するだろう」(注9)
ジョゼ・ディルケウは大統領府官房への就任演説において、同様の考え方を異なったアクセントで取り上げた。
「われわれすべてが、戦争の脅威、わが国の状況を悪化させる経済・財政情勢を伴った、国際的にきわめて困難な時期にブラジル政府を引き継ごうとしていることを知っている。しかし、われわれの責任は巨大である。より正確に言えば、われわれは真の民衆参加と国民動員なしで、こうした試練に打ち勝つことはできない」。
ルラ大統領は、彼の宣言の中で以下の関与をきわめて明確に表明した。
「今世紀の始まりとともに、ブラジルはその諸問題に社会協約、国民的動員、民衆参加を通じてのみ勝利的に直面することができる……。来るべき数年のうちにわれわれの政府が直面する最大の挑戦は、おそらくブラジルが世界の中に占める位置に関するものである。それは大きな社会的変革、そしてわれわれはその言葉を恐れないが、真の社会革命という代価を払ってのみ可能となる。われわれはわが民衆にその義務を負っている。わがブラジルは……偉大な試練に直面してきたし、またそれらすべてに打ち勝ってきた。しかし公正と社会的平等の挑戦にどう立ち向かうのかを知らなかった」。
「われわれが社会主義左翼の党――それを思い起こすのは良いことだ――として、ブラジルの企業家に手を差し伸べ、彼らに協定を申し入れるのはそのためである。われわれはそれが二つの方向で機能すると言うべきである。国益、生産、国の発展を防衛することが必要である。しかし他方では、富を再分配し、社会的公正を打ち立て、貧困や悲惨を除去することが必要である。それはただ一つの道を通ってのみ行うことができる。最近わが国は財政的・経済的諸問題を解決し、成長を経験したが、この成長が国家的富のより大きな配分を労働者にまわすという方向に転換しなかったことは受け入れがたい。逆である。この二十年間で労働者への配分は半分にまで縮小した。富の再分配や教育の革命や貧困に対する闘いがなければ、持続性のある実質的な経済成長はありえない。われわれすべては、今日の富の集中と社会的不平等がわが国を社会的・文化的・制度的な行き詰まりに導くことを知っている」(注10)。
ディルケウは、PTの指導者たちがブラジル人民にその責任を負っている「真の社会革命」の必要性について語り、社会主義左翼の党としてのPTについて言及した。政府の中枢内部での二つの路線の対立の存在について、多くのコメントがなされた。一つはパロッチが支持する右派路線であり、もう一つはディルケウに体現された左派路線である。
しかしデイルケウの演説には、ラディカルさの度合いの少ない部分も多くふくまれている。「企業家に手を差し伸ばす」とか企業家たちとの協定の必要性についての言及だけではなく、彼は政府の経済政策を防衛してパロッチと協力する意向をはっきりと宣言した。
「私は、いまここにはいない同志であり友人であるアントニオ・パロッチへの特別のメッセージを送りたい。私は、わが国、とりわけ彼に対して、経済相としての彼の困難な課題に関して、彼がこれまであてにすることができた私の支持を、今後もあてにできることができるだろうと述べたい。パロッチ、君は大統領府にいるジョゼ・デイルケウとともに、ルラ大統領が決定する経済政策を防衛する砦となるだろうことが保証されている」(注11)。
もちろんこの言及はたんなる外交儀礼のようなものであり、深刻な不一致の存在を排除するものではない。にもかかわらず、ルラ政権がいかなる社会変革を遂行するのかを知ることは困難である。彼の任期の初期において最も強調されているプロジェクト――飢餓に対するプログラム――は、いまだ良く定式化されたフォーマットを持ってはいない。
農業改革の展望をめぐって
他方、農業改革の前進は重要な社会的変革を代表するものであり、そのための条件は相対的により有利である。それは第一にMST(土地なき農業労働者の運動)が存在しているおかげである。MSTは、最も活発な社会運動の一つであり、最大の動員能力を持つ運動である。第二は、農業開発相にPT左派潮流――社会主義的民主主義潮流(DS、第四インター派)に属するミゲル・ロセットが任命されたからである。彼の任命は、MSTや、農業改革の影響を大いに受ける他のセクター(CONTAG――CUT〔統一労働者センター、主要な労組連合組織〕の農村部門)からはっきりと支持された。諮問を受けた経営者の代表は彼の任命を批判した。
ロセットは就任して以来、農業改革の前進の可能性を社会的動員と結びつける言説を採用した。同時に彼は、社会運動の自律性と、政府がその動員を尊重することを支持した。
「われわれは、社会的動員への広範な訴えを基礎に、この課題を最後まで追求するだろう。われわれは州知事、市長たちと対話するだろう。われわれはあらゆる社会運動と対話するだろう。われわれはブラジル、とりわけわが国の農村地帯において、この偉大な文明化プロセスを理解し、協力しようと願っているブラジル社会のあらゆる勢力と対話しようとしている……」。
「われわれは社会運動、選挙された機関、国家組織全体の政治的力学をそれぞれ分離・区別する諸関係と、それぞれの自治と独立の概念を作り上げた。選挙された諸機関が、社会運動の監督下に置かれるべきではないというのは事実である。もしそれが事実であるなら、社会運動の動員能力を抑制することは民主主義国家における政府の課題ではないということも事実である。われわれが望む民主主義、われわれが勝ち取った共和国は、民衆的参画を好み、市民の活動によって生き、強く成長するのである。わが国の再建は、この巨大な動員能力、この側面からブラジルを見、民衆と市民の参加のスペースをより広く、より良く創造し、名前、顔、楽しみ、悲しみ、苦しみがあることを不断に認識する巨大な能力をその基礎にしている。尊重されることを望み、われわれすべてから尊重されるであろう人びとがいるのだ」(注12)。
MSTの主要リーダーであるジョアオ・ペドロ・ステディルは、報道機関に対してミゲル・ロセットの任命と農業改革の展望についてコメントし、変革を実行可能にする社会的動員の重要性を強調した。
「ロセットが閣僚であることは積極的なシグナルだ。彼は、ブラジル左翼の関与の歴史的伝統を持っている人物だ。しかしわれわれは個々人や宣言について判断を下したくはない。前進を可能にするのは、社会内部の力の相互関係なのだ。あらゆる変革のプロセスが必要とするレベルの圧力を作りだすために、民衆を組織するのはわれわれなのである」(注13)。
ロセットは閣僚に就任後、連邦代表議会(下院)を訪れ、農業改革をめざす闘争に最も関わっている議員から構成されるPT農業委員会と会議を行った。ロセットは彼らと連携して活動する意向を表明した。
閣僚としてのロセットの目標にとって有利な諸条件にもかかわらず、われわれは重大な困難が存在することをも銘記すべきである。第一は、MSTの動員を困難にする、カルドゾ時代に公布された法令の存在である(主要には臨時措置2027。それは占拠された土地は二年間は引き渡されず、占拠者は土地分配計画から排除されると規定している)。当然のことながらMSTは、この措置の廃止を期待している。
二つ目の大きな困難はすべての社会部門に共通している。農業改革には公共ファンドが必要であり(土地の引き渡しと土地を供与された農民への支援のために)、赤字を緩和する緊縮財政を続ける必要性を考慮すれば、このことは困難である。
年金と労働法令をめぐる対立
ルラは就任演説の中で、特定の諸改革の重要性を強調した。それは年金、税制、政治改革、労働法例、そして農業改革であった。どれ一つをとっても簡単なものはないことは政権の初日から明白である。とりわけ年金改革は対立ぶくみの課題である。政府の観点から見て三つの困難な目標が存在する。それは、より公正な年金制度の創出(民間部門の労働者への年金はほんの僅かなものである。公共部門の労働者の主要部分は妥当な年金を得ている。公共部門の一部は巨大な特権を持っている)、予算コストの削減、「既得権」の保証を基礎に憲法が変革に課している制限の尊重、の三つである。
「市場」は、年金の予算コストを削減し、赤字の削減を可能にする改革を激しくキャンペーンしている。市場の機構と報道機関におけるその代表たちは、民間部門の労働者へのしかるべき年金を支持することなく、また予算赤字の削減という提案の本質が公的債務の法外な利子の支払いを可能にすることにあるという事実を隠して、現在、公務員の賃金に組み込まれている「不公正」な年金について語っている。
公共部門の労働者は、自分たちが改革の犠牲者になるだろうことを正しくも恐れている。そして特権の所有者は、自らの特権を守るために動員している。政府(とりわけ年金相のリカルド・ベルゾーニ。彼はPT党員で元労組活動家)は、この十字砲火にとらわれて、自らの目的について一貫性のない演説を行っている。
労働法令の改革は、まさに論争の対象である。一例を挙げれば、ジャック・ワグナー(PTの元労組活動家)が、労働相に任命された後の最初の宣言の一つで行ったことは、理由なき解雇に対して経営者が払わなければならない罰金の四〇%を帳消しにするという、経営者側の主要な要求の一つを支持するものだった。労働組合連合組織の活発な、即時の抗議に直面し、彼はそれを引っ込めた。
この分野で最も重要なテーマは、当面のところ、多くの関心を引いていない。それは、ブラジルの労働者の約半数が不正規の雇用であり、したがって法的保護がないという事実である。要するに、交渉とその結果として生じるこうした改革への支持は、確実に大きな対立をもたらすだろう。
(つづく)
(注9)ルラの演説03年1月1日
(注10)演説03年1月2日
(注11)演説03年1月2日
(注12)ミゲル・ロセットの就任演説03年1月2日
(注13)「ジョルナル・ド・ブラジル」03年3日号
(「インターナショナルビューポイント」03年3月号)
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