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                          かけはし2003.5.12号より

有事三法案の廃案めざして5・3憲法集会に二千五百人

憲法改悪をはばむために

 五月三日、東京・日比谷公会堂で「生かそう憲法、高く掲げよう第九条」、「米国の無法な戦争に加担する有事三法案を廃案に」というスローガンのもと、「2003年5・3憲法集会」が開かれた。
 この集会は、憲法改悪阻止各界連絡会議、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会の八団体で作る実行委員会の主催で開かれた。会場には二千五百人が集まり、集会後、新橋から銀座を通るデモで「有事三法案を阻止しよう」と訴えた。
 主催者を代表して日本YMCAの俣野尚子さんがあいさつ、続いて法政大名誉教授の永井憲一さんが、教育基本法改悪をめぐる状況について特別報告を行った。
 永井さんは、イラクへの侵略戦争が始まった三月二十日に発表された中教審の「教育基本法のあり方についての答申」について、「教育現場の悩みが全く議論されておらず、議論している人の中に現場の人がだれもいない。いかにそのねらいが政治的なものか、そこからも良くわかる」と批判した。
 さらに「公共心や愛国心を入れるというが、なぜそれを入れるのか、どんな公共心、どんな愛国心が必要なのかという議論も全くない」と述べ、「憲法の平和主義をになう人材の育成こそ現在の教育基本法の根本だ。憲法『改正』をねらう勢力にとってここがじゃまだ。だから教育基本法『改正』は常に憲法『改正』とリンクされてきた」として、「教育基本法と憲法を生かすことが必要だ」と訴えた。
 翌五月四日に「5・4全国高校生平和大集会」を開く高校生二人が登壇し、イラク侵略戦争に反対する思いを語った。続いて西之原恵美子さんなど女性たちのアピール、「私のピースアクション」。平和を作り出す宗教者ネットからは、真宗大谷派僧侶の石川勇吉さんが戦争に反対し憲法九条を守ろうと訴えた。
 エッセイストの朴慶南さんは、十年にわたって続けられてきた宋神道さんの「在日の慰安婦裁判」が最高裁で棄却となり、この前日に締めくくりの集会が開かれたことを報告、「宋神道さんが言う通り、日本は情けない国だ。戦争犯罪も認めない。平和憲法がありながら、また戦争ができる国になろうとしている」と語りかけた。
 日弁連有事法制問題対策本部の内田雅敏さんは、「憲法の破壊、立憲主義の破壊が進行している」と訴え、全員加盟組織としての日弁連が人権の観点から有事法制に反対して全国各地で集会やデモなどの行動に取り組んでいることを紹介した。
 ピースボートの若い仲間たちによる力強いダンス・パフォーマンスの後、四人からのスピーチ。最初は、『世界がもし百人の村だったら』の訳者である翻訳家の池田香代子さん。池田さんは、英文の正文もある日本国憲法をやさしい現代的な言葉で日本語に訳したものを読み上げ、憲法への思いを語った。
 沖縄県読谷村村長を二十四年間にわたって務めた山内徳信さんは、村の面積の七三%を占めていた米軍基地の返還運動を、憲法を背景にして村民が一体となった実力行動で強力に押し進めてきた闘いを報告、「全国それぞれの地域で、憲法改悪を許さない闘いを創意工夫をこらして押し進めよう」と訴えた。
 社民党党首の土井たか子さんは、小泉政権が無法な侵略戦争を支持したこともイラク軍事占領行政に要員を派遣しようとしていることも憲法を踏みにじるものだと厳しく批判し、有事三法案を廃案に追い込むために全力をあげようと訴えた。
 共産党委員長の志位和夫さんは、有事三法案が海外での武力行使に道を開き、その戦争に全国民を強制的に動員しようとするものであると述べ、廃案に追い込むために立場の違いを超えた共同の輪を広げよう、と訴えた。
 市民憲法調査会の杉山章子さんが集会アピールを提案し、全体の拍手で確認。全労連の田中千恵子さんの閉会あいさつと全労協の村上彰一さんの行動提起でデモに出発、「憲法改悪を阻止しよう!」「有事三法案を廃案に!」と呼びかけながら行進した。(I)


イラク侵攻・北朝鮮問題と有事法制めぐり緊急討論

グローバル戦争体制と対決して


 四月二十六日午後一時から、東京・御茶の水の明治大学リバティータワーで、「4・26緊急討論集会 イラク侵攻・北朝鮮問題と有事法制――情勢と運動の課題」が行われ、百二十人が参加した。呼びかけ人は、弁護士、労組、市民、宗教者などそれぞれの分野で反戦・護憲の運動で活躍している七人。
 呼びかけ人を代表して三輪隆さん(ストップ!有事法制出前講師団代表・埼玉大学教員)のあいさつの後、自由法曹団の田中弁護士と和光大学教員の清水雅彦さんの司会で進められた討論集会は、まず二人の報告者からの提起を受けた。
 松尾高志さん(軍事問題、ジャーナリスト)は「アメリカの先制攻撃戦略とイラク軍事侵攻」というテーマで報告。松尾さんは「これまで有事法制をガイドライン安保路線の延長上に捉えてきたが、今や舞台は一回りした。有事法制はガイドラインの文脈だけではなく、冷戦期の軍事戦略と決別したブッシュドクトリン(国家安全保障戦略)との関連で分析しなければならない」と切り出した。
 松尾さんは、ブッシュドクトリンの出発点を画した一九九九年九月のシタデルでの大統領候補としての国防演説を紹介し、そこでうたわれた「国防政策の見直し」と「軍改革」の実施をめぐる軍内部の「守旧派」と「改革派」の対立が、二〇〇一年の「9・11」を契機に、「改革派」の勝利として進んでいる状況について分析した。
 渡辺治さん(政治学・一橋大学教員)は「小泉政権と有事法制問題の現在」について報告。渡辺さんは、ブッシュ政権内部とラムズフェルド国防長官とパウエル国務長官との違いと言われるものについて「力による抑止」という軍事戦略には違いがない、同盟国を動員するか、それとも米単独で行動するのかの違いだけだ、と分析。
 「大統領選挙中、ブッシュはクリントン政権について、日本やNATOといった昔からの友人をないがしろにして中国とのパートナーシップを追求してきた、と批判していたが、9・11以後は、時々の課題に合わせてつき従う国だけを集めて突破するという方向に転換した」と述べた。
 さらに渡辺さんは、小泉政権の有事三法案成立に向けた攻撃について「今回阻止すれば有事法案はもう出せないだろう。日中韓の連携した運動によって、ブッシュによる北朝鮮への『先制攻撃』を阻止する可能性が切り開かれる。ブッシュの戦争をアジアで起こさせるな」と訴えた。
 また司会の清水雅彦さんからは、政府が出した「国民保護法制」の「骨子」についての説明があった。それは「日本有事」から「グローバル有事」に対応しようとするところに力点が移っており、「国民保護法制」ではなく「国民統制法制」「国民動員法制」であると、清水さんは強調した。
 小泉親司参院議員(共産党)、清水澄子前参院議員(社民党)の連帯あいさつの後、戦争反対・有事法案を廃案へ!市民緊急行動の高田健さん、全日本海員組合の藤丸徹さん、航空労組連絡会議の村中哲也さんからこの間の運動の報告を受けた。さらにキリスト者平和ネットの小河義伸さん、民主法律家協会事務局長の沢藤統一郎さんなども発言し、フロアからの質問・意見をふくめて、午後六時まで討論が活発に繰り広げられた。(K) 

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