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                           かけはし2003.4.7号より

イラク戦争--石油を武器にしたアメリカの世界支配戦略


 ジョージ・ブッシュ米国大統領がイラクと戦争をしようとする本当の理由は何なのか。米国の公式説明はイラクの大量殺傷武器(大量破壊兵器)の脅威をなくし、中東を民主化させる、というものだ。ブッシュ大統領は9・11以後、テロと大量殺傷武器除去の必要性を事あるごとに強調してきた。最近ポール・ウルフォウィッツ国防部副長官は「イラクをアラブで最初の民主国家に仕立てる」とし、イラクの人々を解放するとの使命感を表した。
 だが、米国の人々を除いては、だれもこのような「見え見えのウソ」を信じてはいない。国際関係において示した名分と追求している実利とが異なるということは久しい以前からの常識に属する。

報告書『イラク戦争―分析と展望』

 ネルソン・マンデラ前南ア共和国大統領は昨年10月、米国の時事週刊誌「ニューズウィーク」との会見で「米国のイラク攻撃はブッシュ大統領が米国の軍需産業や石油資本を喜ばせようとする動機から下した決定」だと非難した。英国の経済専門誌「エコノミスト」も昨年10月、イラク攻撃の隠された動機は「黒い黄金」だと指摘した。
 マンデラや「エコノミスト」がともに「石油が要因」であることがイラク攻撃を理解する重要な核心であることを指摘した。
 「米国は石油のためにイラクを攻撃する」という主張の根拠は、イラクがサウジアラビアに次いで、確認された石油埋蔵量だけで1125億バーレルで世界第2位ということから推し量れる。またイラクの石油は品質が優れており採掘費用も少なくてすみ収益性が高い。
 だが米国のイラク攻撃は「石油への欲望」を超え、米国の世界戦略の次元で国際秩序を主導する基盤を一層強化しようとするものだという分析も出てきている。昨年末、韓国国防研究院が発行した『米国の対イラク作戦:カスピ海とエネルギー安保』『イラク戦争―分析と展望』はイラク戦争に対する米国の戦略的利害を上のような観点から説明している。
 これらの報告書は米国のイラク軍事作戦の目標がbフセイン政権の交替を通じた親米政権の樹立bカスピ海での統制力強化を通じた米国中心のエネルギー・メカニズムの構築bヨーロッパと中央アジア、中東、そしてカフカス(グルジア、アルメニア、アゼルバイジャン)3国に対する軍事基地ベルトの建設だと主張する。これを通して世界秩序の安定者の役割に必要な軍事・外交・経済的インフラを構築していくというのが米国の本当の意図だ。そのためにイラク戦争は複合的目的が踏まえられた長期計画の実現の一環だというのだ。
 まず米国はユーラシアとアフリカを二分している米軍駐屯軍事基地の戦略的ベルトを、対テロ戦争や北大西洋条約機構(NATO)拡大という2つの契機を通じて作っている。
 仮にイラク戦争で米国が勝利するとして、米国が自国の軍事基地を配置したり、今後配置できる戦略的ベルトを探ってみよう。ヨーロッパ地図を見るとドイツからチェコ共和国、スロバキア、ハンガリーを経て、間もなくNATOに加入するルーマニア、ブルガニア、トルコへと続いている。このベルトはイラクを過ぎるとサウジアラビアとクウェートへと続いてアラビア海、インド洋へと連結される。
 ベルトは再び右側にイラン、左側にはシリアなどを分離しつつ、ユーラシアとアフリカを貫通する巨大な米国の軍事影響圏のベルトを完成するという意味がある。9・11以後、アフガニスタンやウズベキスタンに新たに作った米国の軍事基地を含めれば米国の軍事戦略的ベルトはロシアや中国がユーラシアやバルカンに進出する道の要所を遮断する重要な戦略的拠点となる。

アメリカが構想する緻密な世界戦略

 さらに報告書は米国のイラク戦争はテロ根絶や石油の確保のような次元を超えて、米国が構想している長期的な世界戦略の場を編みあげる、ち密な戦略だと主張する。
 イラクに対する米国の軍事行動の実質的利益としては国際的エネルギー需給体制の主導権確保を挙げることができる。イラクの油田だけではなく世界のエネルギー資源の宝庫として浮かび上がったカスピ海沿岸の資源開発や送油管事業が含まれた包括的利害がかかっているというのだ。米国の利害は「気がついてみるとカスピ海ほど重要になった事案はなかった」というディック・チェイニー米副大統領の最近の発言からも確認できる。
 カスピ海はロシア、カザフスタン、トゥルクメニスタン、イラン、アゼルバイジャンなどに取り囲まれた面積37万平方qの塩分湖だ。現在900億〜2000億バーレルの石油と600兆立法mの天然ガスが埋蔵されていると推定される。
 1945年以後に発見された最大の資源埋蔵地の開発と、これを国際市場に運送する送油管の経路をどうするのかを巡って米国、ロシア、トルコ、イラン、中国、パキスタン、インドが「ビッグゲーム」を繰り広げている。そもそもビッグゲームとは19世紀に中央アジアを巡って英国とロシアが展開した植民地争奪戦を意味した。この地域の石油と天然ガスの埋蔵量がクウェート、メキシコ湾、北海地域の埋蔵量を合わせたものよりも多いという事実が知られるようになると、各国の経済的争いが激しくなり、再びビッグゲームという用語が登場した。
 9・11テロ以後、アフガニスタン戦争を通じてこの地域に軍事的に介入した後、米国はイラク攻撃が成功した場合、カスピ海と中央アジアの資源開発を巡る競争の構図において戦略的優位に立つことになるだろう。米国はアフガニスタン戦争が終わっても中央アジアに米軍を長期駐屯させる基盤を作っている。中央アジアの米軍はカスピ海の原油やガスの供給を保障するのに核心的役割を果たすだろう。
 現在この地域で生産された原油やガスを運搬する送油管の建設問題が争点となっている。米国は既存のロシアを通過する送油管に対する依存度を低め、安定的な供給を保障するために、すでに99年にカスピ海、アゼルバイジャン、グルジア、トルコ、地中海を通過する送油管の建設に合意した。さらに米国はカスピ海、トゥルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、インド洋を連絡する新たな送油管の建設を念頭においている。
 これらの送油管が成功的に作動する場合、米国はペルシャ湾沿岸の石油輸出国機構(OPEC)の諸国に対する依存を低められる。特に米国は9・11以後、極端な中東のイスラム勢力が石油価格を上昇方向へと政策を駆り立てれば未来のエネルギー需給が不透明になるとの問題意識を持っている。昨年の米国エネルギー省のある報告書によれば米国の中東産石油依存度は特段の措置がなければ2000年の24%から20年には50%まで上昇するものと見通される。原油供給ラインの多変化が急がれる米国はカスピ海を通じて国家のエネルギー安保の基礎をうち固めようとする。

エネルギー戦略と新たな韓米関係

 米国の世界戦略は具体的に韓(朝鮮)半島の安保にはいかなる影響を及ぼすのだろうか。
 わが国の石油消費量は世界第6位、石油の輸入は世界第4位、エネルギー消費量は世界第10位で、安定的エネルギー資源の供給が必須の状況だ。
 米国は最近、韓国の国益優先主義的政策路線、南北和解の雰囲気、反米感情の高まりなどを勘案すると、従来の韓米安保同盟関係ではこの地域に対する一定の統制力を維持するのに限界を感じている。米国がこのような限界を克服しようとするなら、大部分を海外エネルギーの輸入に依存している韓国経済を、米国が統制するエネルギー需給体制に縛っておかなければならない。長期的に米国はエネルギー構造が脆弱な韓国を自国のエネルギー優位体制に編入させ、理念の同盟という限界から来る空白を埋めようとする可能性が高い。
 韓国は米国のイラク戦の意図を綿密に分析し、エネルギー安保と軍事安保を同時に考慮する複合安保のメカニズムについての政策的考慮をしなければならない状況を目前にしている。(「ハンギョレ21」第451号、03年3月27日付、クォン・ヒョンチョル記者)



読書案内
小野寺忠昭著――インパクト出版会 2000円
『地域ユニオン・コラボレーション論』
――オルグから見た地域共闘とは


 「オルグから見た地域共闘とは」との副題がある本書の著者は三十七年間、東京地評オルグの職にあり本年一月をもって退職された。「そうしょう(総評)オルグを三十七年間とは驚くべきこと」と江戸なまりの「下町っ子オルグ」(一九四三年、葛飾・金町生まれ)である。
 同僚で前の年に退職された平賀健一郎氏とともに「全都反合共闘」や「東京総行動」の中心であり、争議団にとって知らぬ人はいない人物である。六六年に地評の青年婦人担当オルグに就任、六七年には東京反戦青年委員会の組織化に参加し、七一年からは東京東部地区の担当オルグとなった。
 地区労などによる良心的な地域共闘=隣組制度や反公害闘争や住民運動などへの参加などを促したことなどを総評の積極面とする著者は、「総評運動のプラス面に対するマイナス面」として以下の二点をあげる。 
 「第一は、地域運動が労働運動の底辺の構造を支えているにもかかわらず、あくまでも単産・産別・中央組織中心の機関を補完する役割しかあたえられなかった点である。地区労財政の指導権もこれらの機関に握られていた。第二は、組合の構成員が事業所内の正規従業員であったこと。事務所の事務職員(後に組合員化)や非正規従業員(パートや社外工・下請け季節労働者)、また外国人労働者は埒外にあったことである。第三は、民同の派閥支配により、新たな時代にそぐわない政治主義・指導であったこと。第四は、第一、第二と関連して、組合内においても開発型産業優先主義が色濃くあった点である」(第二章・総評の総括)。
 また、筆者は東部地域でパラマウント製靴やペトリカメラの自主生産争議に深くかかわってきたが、その経験にふまえて次のように言う。
 「とくに日本の組合に強い影響力を持った政治闘争主義は、自主生産・自主管理はやむを得ない緊急避難にすぎないという自主生産論を、自ら超えることができなかった。後々まで、日本の伝統的左派は、『戦術論としての自主管理』の位置付けをでることはなかった」。
 「筆者は経済・市場論に疎い方だが、市場には『自由市場』、『パブリック=公共市場』、無償の『家族・仲間内市場』などが上げられるが、その中にパブリックな萌芽を含んだ『連帯市場』を加えてもいいのではないかと考える。そしてこの『連帯市場』は、今後の運動の重要なコンセプトであると考えられる」(第三章・生産する労働組合の課題)。こうした問題提起は今後の反失業闘争にとって重要であろう。
 第五章・結びでは次のように書いている。「シアトルにおけるWTO会議反対行動や、ブラジル・ポルトアレグレに、直接民主主義を標榜して、『もう一つの世界を!』をスローガンに世界中から血気盛んな十万人の集合がなされたのもその現れであったろう。旧世界の上層における停滞と腐敗に対するこのような世界的な底辺の流れをどう大きく強くしていくかが、筆者がこの本を書くにあたって労働運動上の問題意識として貫いてきた立場でもあった」。
 「労働組合は、戦争を含めた競争社会に対して、底辺社会において、競争では生きることが下手な人々の、対抗的な機能を代行しているものであるからである。労働組合は本来的に競争社会では生きられない人々のものなのだ。競争(市場)社会をチェックし、あるいは対抗する友愛主義と協同主義が、労働組合の自立思想なのである」。
 著者の長い実践と経験からの問題意識と提言は、「社会的労働運動」の概念を社会的に有用な労働組合機能の復権を労働者企業のあり様まで含めて視野に広げた示唆に富んだものである。小野寺オルグのますますの活躍を期待し労働組合活動家だけではなく多くの人々に読まれることを期待したい。(岸本豊)
 

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