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人権、命、暮らし、そして農業             かけはし2003.4.7号より

三里塚 暫定滑走路使用中止を!

イラク戦争の中で「三里塚のこれから」を考える

 三月二十七日、東京・文京区民センターで「使うな!拡張するな!成田暫定滑走路 三里塚のこれからを考える集会」(主催・実行委)が行われ、百二十人が参加した。この集会は、成田暫定滑走路声明事務局や各市民運動の呼びかけ、社民党の北川れん子さん(衆議院議員)、保坂展人さん(衆議院議員)などの賛同で準備されてきた。
 昨年四月十七日に暫定滑走路が開港されてから一年がたとうとしているが、この間だけでも飛行機の轟音と風圧によって島村昭治さん宅の屋根瓦の破壊、誘導路での飛行機接触事故(昨年十二月一日)、飛行機のオーバーラン事故(今年一月二十七日)が立て続けに発生している。だが、政府・空港公団は、安全対策を示すことなく暫定滑走路を使い続け、さらに東峰住民に対する追い出し攻撃として暫定滑走路の北側延長、東峰森を破壊と貨物基地構想のキャンペーンを展開している。
このような追い出し攻撃に対して危険が一杯、欠陥だらけの暫定滑走路の姿を暴きだし、暫定滑走路使用中止を求める運動の新たなステップとして集会が行われた。

「いまこの大地に生きている」

 集会は、司会の梶川凉子さん(市民の意見30の会・東京)からの開催あいさつから始まった。そして、本日初公開の「緊急ビデオルポ 成田暫定滑走路のいま、現地の声を聞く この大地に生きている」が上映された。
 前作の「着陸不可」は、暫定滑走路供用直後における飛行機の騒音のひどさと生活破壊の状況をルポしていたが、今回の作品では東峰の人々の生活者としての姿と思いを中心に描き出している。ビデオの最終シーンにおいて、声明事務局が三月十日に国土交通省に対して、この間の暫定滑走路上の事故に対する抗議、安全対策と暫定滑走路使用中止を求めた申し入れの場面が出てくる。
 さらに画面は国交省官僚たちが、事故が繰り返されているにもかかわらず、「安全を満たしている」と開き直り、安全対策について回答ができないという不真面目な態度を写し出す。ビデオは、政府・公団のむき出しの姿をも提示することによって東峰の人々の怒りを共有しようと訴えている。
 なおこの日は、ビデオと同時発売で「国がいう『公共性』をひっくりかえそう!」(「成田空港の暫定滑走路の供用中止を訴えます」編集委員会 編 七つ森書館)が販売された。この本は、昨年七月「成田空港・暫定滑走路停止を求めるシンポジウム」の報告、「『公共性』の今日的検討のために」(宮崎省吾)、東峰の島村昭治さんと島村不二子さんへのインタビューが掲載されている。
 ビデオ上映後、監督の楠山忠之さん、撮影の長倉徳生さんが、半年間の撮影状況や東峰の人々とともに過した日々について発言した。
 続いて、鎌田慧さん(ルポライター)の講演が行われた。鎌田さんは、一九七〇年代、全国の反原発・反公害・反公共事業などの住民運動の集約点として三里塚闘争が成立していた時代状況や、七六年、市民や学者などで作った「廃港要求宣言の会」事務局長になったことを語り、「(会は)まだ解散していない。今でも空港と折り合いが悪く、批判する人がいる。三里塚の地で反対する人が一人でもいれば、支持し続ける。譲れないものは譲れない」と力強く宣言した。また、現在、全国各地で展開されている反公共事業の闘いと三里塚闘争を結合・連帯し、「農業と土を守る」という生活者の論理を広げながら進んでいこうと提起した。
 次にトークコーナーに入った。司会は藤川泰志さん(八百屋「みさと屋)。冒頭、藤川さんの呼びかけで、イラク戦争で亡くなった民衆に対する黙祷が行われた。

東峰の飛行機、イラクへの爆弾

 石井紀子さん(東峰農民)は、「今、イラク戦争を写しだすテレビを観ているのが辛くなる。東峰の上を飛ぶ飛行機を見ると、それだけでも怖いのに、イラクの人々には爆弾が落ちてくる。戦争反対のことや日々の暮らしなど色々と考えてしまう。命を守るということは、自分だけの畑を守ればいいということだけじゃない。農業を通して多くの人々とともにつながっていきたい」とイラク民衆への連帯の思いを訴えた。
 柳川秀夫さん(三里塚反対同盟)は、イラク侵略戦争を厳しく糾弾し、「アメリカは、グローバリゼーションを押しつけ、自分のために世の中の仕組みを変えようとしている。何もない者にとって時間が唯一の武器だ。アメリカは、イラク戦争で時間がたててばたつほど厳しくなっていくだろう。なにもない者は、体を張って闘っていくしかない。イラクの人々とともに闘っていきたい。三里塚は現在の社会の縮図だ。巨大開発ではない新しい価値観、物差しを自分たちで作っていこう」と強調した。
 さらに、地球的課題の実験村の大野和興さん、東峰らっきょう工場の平野靖識さんが各現場での取り組みの紹介と闘う決意を表明した。労活評団結小屋の山崎宏さんが、五月十一日(日)、三里塚・暫定滑走路に反対する連絡会による東峰現地行動(午後一時、東峰共同出荷場)への参加を呼びかけた。      (Y)


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