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有事3法案政府修正案                かけはし2003.4.28号より

ブッシュ・ドクトリンに連動し戦時体制の発動へ


 三月二十日、国際法や国連憲章を踏みにじったブッシュ政権のイラク侵略戦争の開始にあたって小泉首相は、ただちに「支持」を表明した。さらに小泉政権はアメリカのイラク軍事占領のための「軍政機関」である米国防総省の「復興人道支援室」(ORHA)に政府人員を派遣し、アメリカの占領行政に参加することを決定した。小泉政権は「日米同盟の重要性」「北朝鮮の脅威」を口実に、イラク民衆を無差別に虐殺したアメリカの戦争犯罪に加担しているのである。
 小泉政権はそれと同時に、昨年「継続審議」となった有事法制3法案(武力攻撃事態法案、自衛隊法改悪案、安全保障会議設置法改悪案)の有事法制特別委員会での審議を四月九日から再開した。四月十八日の有事法制特別委員会で福田官房長官は、政府が今国会で提示することになっている「国民保護法制」の概要について説明した。
 今回、小泉政権が成立を強行しようとしている有事3法案は、昨年秋の155臨時国会で与党3党が提出し、実質審議にかけないまま廃案となった「修正案」をそのまま再度提出したものである。「武力攻撃事態法案」修正案は154国会での政府原案と比較して三つの点で変わっている(政府原案についての解説・批判は本紙02年5月13日号〜5月27日号参照)。
 第一は、「武力攻撃事態」の定義として「武力攻撃(武力攻撃のおそれのある場合を含む)が発生した事態又は事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態」(政府原案第二条二項)とあるのを「武力攻撃が発生した事態」と「おそれ」のある事態を一括して「武力攻撃事態」とし、「予測される場合」についてはそれから切り離して「武力攻撃予測事態」としたことである。そして「おそれ」事態については「武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められる事態」に変更し、「武力攻撃予測事態」については「武力攻撃には至っていない」という注釈が加えられている。
 この「修正」は、「おそれ」と「予測」の違いが分かりにくいという批判に対して、政府答弁を文章化する形にしただけである。いずれにせよ政府原案で「おそれ」事態と定義され、与党「修正案」では「明白な危険が切迫していると認められる事態」とされた段階から、首相が自衛隊に対して「防衛出動命令」が出されることに変わりはないし、「予測」の段階でも自治体や民間企業に対して「対処措置」という戦争動員体制が発動されるのである。
 第二は、「政府原案」第三章の「事態対処法制」の一つである、いわゆる「国民保護法制」についてである。政府原案では「二年以内を目標に整備」となっていたのが「修正案」では「整備を迅速かつ集中的に推進するため、内閣に国民保護法制整備本部を置く」とされている。四月十八日に官房長官が説明した「国民保護法制」の概要では、「正当な理由なく土地、家屋の使用を拒否した場合、同意を得ずに使用できる」規定や「命令に従わない場合の罰則」規定が導入されることになっている。
 また四月十八日の福田官房長官の説明と与党議員の質問の中で、自民党の吉野正芳衆院議員は自治体首長の権限で行う「住民の避難・救助・消火活動」ついて、住民が協力しない場合を想定し、強制力を持つ「民間防衛組織」作りが必要と主張した。吉野議員はまた新たな「隣組制度」を導入することも主張した。これに対して官房長官の答弁は「民間防衛組織」や「隣組制度」について否定的だったとされる(日本経済新聞4月19日)。しかし法案としての具体化の段階で、吉野らの求める強制的住民動員措置が導入される可能性は大いにあると考えなければならない。
 第三は、「不審船・テロ」対策の明記である。政府原案の第二十四条は「我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ、我が国の平和と安全並びに国民の安全の確保を図るため、武力攻撃事態以外の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態への対処を迅速かつ的確に実施するために必要な措置を講じる」とされていた。
 与党修正案ではその条文が「武装した不審船の出現、大規模なテロリズムの発生などの我が国を取り巻く諸情勢の変化を踏まえ……必要な施策を講じる」に変えられた。すなわち「武装不審船、大規模テロ」を「武力攻撃事態」に明文的に組み込み、戦時動員体制を取ることが想定されているのである。これは、「テロリスト・テロ支援国家」に対する戦争を呼号するブッシュ・ドクトリンの線に沿って、戦争体制を発動する道に明確に踏み込むことを意図したものである。
 もともと小泉首相や「読売」などの右派マスコミは、有事法案について「ありそうもない外国からの大規模軍事侵攻を想定したものではなく、テロ・ゲリラ、不審船などの新しい脅威に対処するものでなければならない」としていた。今回の修正案では、北朝鮮を射程に入れた戦争体制の構築が、より明確になっているのである。
 与党3党修正案に対して、野党第一党の民主党は「対案」を連休前後をメドに取りまとめるとしている。与党側は、民主党内部の意見対立を見越して「有事に対する備えのない無責任さ」を印象づけようとしている。他方、民主党執行部や同党の若手右派議員は、「責任政党」としての姿を押し出すためには「有事法制に前向き」の態度を明らかにしなければならない、と考えている。民主党「次の内閣」安全保障担当相の前原誠司衆院議員が中心になって進めている「対案」は、テロだけではなく「大規模災害」もふくめた「非常事態」対処を盛り込んだものになることが予想されている。
 もともと小泉首相は、民主党をも巻き込んだ「有事法制」の整備に積極的な姿勢を示しており、民主党の「対案」次第では、与党案に民主党の主張を盛り込んだ修正案がまとめられる可能性もありうる。しかし条文の上で「国民の生命・財産・権利を守る」「緊急事態でも民主的統制を確保する」などの文言が付け加えられることで、有事3法案の戦時法案としての性格が変わるわけではない。われわれは「対案」という形での民主党の有事法制容認論を許してはならないのである。
 小泉政権は、五月連休明けに衆議院で有事法制3法案を可決し、五月末にも成立させるスケジュールを組んでいる。ブッシュのイラク侵略戦争を受けて、政府や右派マスコミは「北朝鮮核開発危機」「ミサイル危機」を煽り立て、ブッシュ政権に北朝鮮への軍事的圧力を強化するよう要請し、それを利用して一挙に懸案の有事法案を成立させようとしている。右派勢力は、現実のものとなったブッシュの「ならず者国家・無法者国家」への先制攻撃戦略を追い風に、有事=戦争法案を成立させ、教育基本法改悪、憲法改悪を通じた「戦争ができる国家体制」作りの完成に突き進もうとしている。
 北朝鮮・金正日独裁体制の拉致犯罪や核をもてあそぶ「瀬戸際外交」を最大限に利用して、北朝鮮への排外主義的危機意識を動員し、有事法制の確立をめざしているのだ。そこには支配階級の側の焦りもある。かりに中国を仲立ちにした米朝間の対話や南北間の交流が進展し、「北朝鮮の脅威」キャンペーンが現実性を持ちえなくなった場合、有事体制を形成するための「絶好」の機会が失われることになるからである。
 われわれは米英によるイラク軍事占領反対、日本のイラク占領支配への加担反対の闘いと結びつけ、また「北朝鮮の脅威」のデマゴギッシュな宣伝に反対する闘いと結びつけて、有事3法案の成立阻止・廃案に向けて全力を上げなければならない。イラク反戦運動の広がりを有事法制反対の闘いに向けて発展させていくことが求められているのだ。
 陸海空港湾労組二十団体、キリスト者平和ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、「戦争反対、有事法案を廃案へ! 市民緊急行動」は四月八日の院内集会、四月十五日から十八日、そして四月二十四日の国会前の連日の集会を積み重ね、五月二十三日にはSTOP!有事法制を掲げた大集会を(午後6時、東京・明治公園)を呼びかけている。この五月、昨年を上回る闘いで有事法制廃案をなんとしても実現しよう! 
(4月22日 平井純一)

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