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韓国地下鉄火災                    かけはし2003.3.3号より

利益最優先のリストラが大惨事を引き起こした!

労働者に責任を押しつけるな
 二月十八日に韓国・大邱の地下鉄で発生した火災は、推定死者数二百人に達する大惨事となった。韓国警察当局は、放火による火災から多数の死者が出たこの大惨事が、車両運転士や運転総合指令室と機械整備室の職員、および車両火災が起きた中央路駅の駅務員のミスによる人災であるとして、運転士ら七人を業務上過失致死傷の容疑で二月二十三日、緊急逮捕した。
 これほどの大惨事になった原因は、確かに「人災」である。しかしそれは、運転士らの責任ではない。その根本原因は、地下鉄公社が押し進めてきたリストラであり、公共交通にそのようなリストラを強制してきた韓国政府の新自由主義政策である。
 韓国警察当局は、1079号で火災が起きている中央路駅に後から入ってきた1080号の運転士が、火災現場の駅に電車を停車させたうえ、抜くとドアが自動的に閉まってしまうキーを抜いて脱出するなど、乗客を安全に避難させなかったとしている。
 また、設備室職員らは火災発生を知らせる警報音が鳴ったにもかかわらず、機会の誤作動だと思って無視し、運転士令室に火災発生の事実を知らせなかった疑いがあるという。総合指令室職員らは、火災発生当時、ホームに設置された監視カメラを見逃し、対向車両である1080号への適切な指示を怠ったとされている。
 たしかにこれらはそれ自身、事実かもしれない。しかし、原因はそれだけではない。火災を起こした地下鉄は、車掌のいない運転士だけのワンマン体制で運行されていた。「もうムチャクチャです」。公開された指令室と運転士の通信記録は、煙に包まれた駅で指令を受ける運転士がほとんどパニック状態に陥っていたことを示している。そのような状況の中で、停電が直れば出発の指令を受けるかもしれない運転士に、乗客の避難誘導を行う余裕はない。
 運転士が脱出する時にキーを抜いたことが被害を拡大したとされている。それはその通りであろう。しかし運転士は、車両から降りる時はキーを抜くという日常のマニュアル通りに行動したのである。その時すでにホームはほとんど何も見えないほどの煙に包まれており、脱出した乗客は手をつないで手探りで階段を上って逃げたと証言している。自分の命を守るために一刻も早く脱出しなければならない緊急事態の中に置かれ、とっさにマニュアル通りに行動してしまったとしても、それを責めることはできないだろう。
 逮捕された運転士は、「乗客はもう避難していると思った」と証言している。運転士が脱出する時は、すでに列車内やホームに乗客がいるかどうか判断することが不可能なほど煙がたちこめていたのである。
 しかし、この列車に車掌が乗務していれば、隣の列車の火災の状況と自分の車両の中の乗客の状況とホームの状況を判断して、より適切な避難誘導をすることができただろう。また中央路駅ホームには一人の駅務員も配置されていなかった。ホームに駅務員が配置されていれば、いち早く火災を発見して指令室に通報するとともに、適切な避難誘導を行うことができただろう。ところが車掌もホームの駅務員も、リストラのために削減されて存在しなかったのだ。
 警報機が火災発生を知らせたのに、機械整備室がこれを見逃したとされている。逮捕された機械整備室の二人の職員は警察に、「警報機はいつも誤作動ばかりで、この日も無視した」と証言している。朝鮮日報紙は、「大邱の地下鉄では昨年十二月だけで九十回もの火災警報機の誤作動があり、職員らの緊張感が欠如していた可能性を指摘している」(朝日新聞2月24日)。
 警報機の感度を高くし過ぎるとわずかな煙で作動してしまうために感度を落としたり、作動しても無視し続けていたりしていたために重大事故が発生するというのは、日本でも何度も繰り返されている。それは、人件費を削減するためにリストラを押し進め監視業務のすべてを機械に代替してしまうことがいかに危険かを指し示している。
 すなわち、放火による火災を二百人もの乗客の命を奪う大惨事にしてしまったのは、公共サービスに利益最優先を導入した新自由主義政策と、そのもとで労働者の抵抗を押しつぶしつつ強行されてきたリストラそのものなのだ。
 したがってそれは、今日の日本の問題でもある。すでに地下鉄でもJRなどの鉄道でも、ホームの駅務員はほとんどいない状態になっている。そのために、ホームからの転落死亡事故などの事故が相次いでいる。
 韓国民主労総と韓国労総は、今回の大惨事の最大の原因が地下鉄のワンマン乗務制にあるとする声明を発している(別掲)。鉄道事故を防ぐ最大の力は、公共サービスの民営化と闘いリストラ合理化と闘う労働運動であることを、今回の韓国地下鉄大惨事は逆説的に示している。(2月24日 松本龍雄)
【追記】その後の報道では、運転士がマスターキーを抜いたのは指令室からの指示にもとづくものであり、しかも公社の幹部がこの指示の記録を削除するよう命じていたことが発覚した。



民主労総の声明

大邱惨事を呼んだ一つの原因「ワンマン乗務制」を改善せよ

一、民主労総は、もう一度大邱地下鉄惨事犠牲者の冥福を祈りつつ、再発防止対策次元に立ってこのたびの事件の見逃すことができない原因として現れた「機関士ワンマン乗務制」を直ちに改善することを要求します。
二、現在までに明らかになった惨事の原因は大変複合的であり、したがって対策もまた総合的でなければなりません。責任を負わなければならない人はしかるべき責任を負わなければなりません。しかし、責任を負ったとしても再発を防ぐことはできません。燃えない材料で電車を作ること、通信体系を正しく改めること、退避路を正確に通すことなど現在検討されている対策に加えて、かならず改善しなければならないことが「機関士ワンマン乗務制」です。
三、大邱地下鉄は車掌をなくし機関士一人が電車を運行してきました。一瞬に予想もできない事故が起こった状況で一人が数百名の安全を担うことは不可能です。もちろんその一人も最善を尽くさなかった責任があれば、その責任から自由になることはできません。しかしワンマン常務制によって事故を予防し事故にもっとも賢く対処することは不可能です。
 機関士一人が列車の運行、指令との通信、安全措置、ドアの開閉をせねばならず、非常事態が生じればすべての事を一人で完璧にしなければなりません。労働者たちは、これに対して「非常事態時に一人の体で安全措置をすれば通信はできず、通信をすれば安全措置をすることができない決定的弱点がある。仮に二人の人がいたなら乗客保護とドアの取り扱いを機関士でない別の人がすればよく、措置が楽になり非常時対応も易しくなる」といっています。
 大邱地下鉄だけでなく首都圏地下鉄も半分がワンマン運転であり、最近では長距離鉄道さえもワンマン運転を推進しています。
四、地下鉄公社と鉄道庁は九八年から構造調整という名前で費用を減らすため、また機械化・自動化が進んだという理由を挙げて二人だった乗務員を一人に減らしました。近くの日本をみれば、ワンマン乗務は旅客が多くない区間に限って限定的に行われており、その場合でも出退勤時間には車掌も乗務しています。費用も重要ですが乗客の安全はより重要だからです。
五、すべてのことは安く、早くせよという経済論理は総体的に安全感覚を麻痺させ、けっきょく取り返しのつかない大惨事を引き起こしてしまいました。数日前に湖南線の保守工事中に七人の労働者が列車に轢かれて死亡したことも、経済論理で鉄道労働者を大幅に減らし保守業務をすべて外注にまわしたことを見逃しては説明することが難しいことです。
 いわば構造調整のために乗客の安全と労働者の命を粗末にしてきた間違った政策を全面的に再検討しないかぎり安全不感症から本当に抜け出すことは難しいのが現実です。鉄道労組が二十一日から四日間を「安全運行実践週間」として実践する理由はすわなちこの理由です。
 大邱惨事を契機としてワンマン乗務制をはじめとする乗客と労働者を害する間違った現実を改善できる実質措置がなされることを切に期待します。


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