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                          かけはし2003.3.31号より

イラク侵略-帝国主義の論理と戦争のゆくえ(上)

米英軍は殺りくをやめ、即時無条件に撤退せよ!

 殺りくと破壊

 三月二十日、アメリカ帝国主義ブッシュ政権はイギリス帝国主義ブレア政権と連携し、イラクに対する全面的侵略戦争を開始した。直接フセインの殺害をねらったという「首狩り作戦」と名づけられた空爆に続き、「衝撃と恐怖作戦」と名づけられた全面的かつ大規模な空爆が昼夜を分かたず続けられている。
 すでに、無数の爆弾を散乱させて多数を殺傷するクラスター爆弾などの大量破壊兵器が使われていると報じられている。イギリスの空軍基地から、「トマホーク巡航ミサイルと大型爆弾を搭載した」というB52爆撃機がイラク空爆に飛び立っている状況が連日、放映されている。開戦前、米軍は劣化ウラン弾を使用すると公言していた。
 全世界でテレビにくぎづけになっている何億人もの人々が、吹き上がる巨大なキノコ雲の下で手足や首やちぎれた胴体が散乱するむごたらしい状況、傷つき泣き叫ぶ子どもたちの姿を想像し、深い怒りと悲しみに身を震わせている。湾岸戦争で多用されたピンポイント爆撃の映像によるイメージ操作はもはや通用しない。この一方的な殺りくと破壊を絶対に許すことはできない。米英は直ちに軍事行動を中止し、即時無条件にイラクから撤退せよ!

無法な先制的侵略戦争を許すな

 「イラクはテロ組織とのつながりがあるかもしれない。そのイラクは大量破壊兵器を隠しているかもしれない。その隠されているかもしれない大量破壊兵器がテロ組織に渡るかもしれない。そうなったらその大量破壊兵器がアメリカに対して使われるかもしれないので、そうなる前にフセイン政権を武力によって打倒し、親米政権を作る必要がある」。ブッシュ政権はこのような、なにひとつ立証されていない四重、五重の仮定の上に、一方的侵略戦争を開始した。
 国連と国連安保理は、「9・11テロ」とタリバン政権との関係が全く立証されていないにもかかわらず、ブッシュ政権による対アフガン「報復戦争」を黙認し、タリバン政権の転覆を追認した。国連は、先制攻撃や政府転覆のための戦争を禁じた国連憲章を踏みにじる侵略戦争を容認したのである。
 国連は、米英日など帝国主義諸国や軍事独裁政権や専制的王朝支配体制などの諸国家を含む国家間機関に過ぎない。地雷廃止条約の成立や国際刑事裁判所(ICC)の設立など、社会運動の圧力がこれまでより反映され易くなってはいるが、世界の労働者人民の意志が直接反映されているわけではない。
 安保理常任理事国として、特権的「拒否権」の行使によって国連を支配しているのは、核武装した米・英・仏・ロ・中の五大国であり、しかも圧倒的支配力を持っているのは最大の核軍事力を持つアメリカである。このような国連及び安保理の決議がもしあったとしても、われわれは帝国主義による戦争を絶対に認めることはできない。
 しかしブッシュはイラク侵略戦争に当たって、この国連の支持を取りつけることさえできない状況に陥った。ヨーロッパのマスコミから「ブッシュ政権の腰巾着」とやゆされた国連査察委ブリクス委員長の「査察継続」の態度を崩すこともできなかった。いずれも経済的に困窮している国連安保理内の「中間派六カ国」とされるチリ、カメルーン、アンゴラ、ギニア、メキシコ、パキスタンを、小泉政権をも動員しつつ経済援助の増減などの圧力で屈服させようとする策動も破綻し、一国の支持も取りつけることができなかった。
 すべて仮定の上に立った幻の「脅威」なるものを根拠にしたイラクに対する先制的武力行使が、国連憲章と国連で合意された国際条約などに体現されてきた「国際法」に違反することは、あまりにもはっきりしていた。これら諸国政府は、戦争に反対する世論の反発への不安から、ブッシュのゴリ押しへの屈服をためらったのである。
 ブッシュとブレアは安保理内での孤立が国際的に確認されることを恐れ、「早期採決」を声高に叫んでいた「武力行使容認決議」を取り下げてしまった。そしてその上で、昨年十一月の安保理決議一四四一や、九一年湾岸戦争当時の決議六七八と決議六八七があるので新たな決議は必要ないと主張している。
 しかし決議一四四一は、イラクに「査察妨害」などがあった場合の措置は安保理で改めて協議することになっている。そしてブリクスと国連査察委は査察の継続を求めている。決議六七八は当時、クウェートを占領していたイラクを撤退させるための武力行使を認めたものである。言うまでもなく現在、イラクはクウェートを占領してはいない。決議六八七はイラクに大量破壊兵器の廃棄を求めているが、その履行を確保するための措置は安保理で決定するとしている。
 いずれも、米英軍による今回の武力行使とは何の関係もない。だからこそブッシュとブレアは全力をあげ、なりふりかまわず各国に猛烈な圧力をかけて新たな「武力行使容認決議」を採択させようとしたのである。
 また仮に、「平和を乱す行為」に対する国連の強制措置としての武力行使が決議されたとしても、国連憲章は政権転覆のための武力行使をはっきりと禁止しているのである。そしてブッシュとブレアはフセイン政権打倒が目的であると繰り返し公言し、フセイン殺害まで試みた。国連アナン事務総長は、今回の米英による武力行使が「国連の枠外」のものであるとして、強い遺憾の意を表明した。あらゆる意味で国際法を踏みにじる無法な侵略戦争を、絶対に許してはならない。

米英の孤立とフランス非難

 二月十八日と十九日の二日間、六十二カ国・機構代表が発言した安保理公開討論会では、約五十カ国が武力行使反対あるいは平和的解決を求めたのに対して、米英支持は武力行使容認決議を求めた日本とオーストラリアや、アルバニア、ウズベキスタン、マケドニア、ラトビアなど約十カ国にとどまった。
 侵略戦争に国連のベールをかぶせることに失敗し、圧倒的に孤立したまま「国連の枠外」の侵略戦争に打って出ざるを得ない状況に陥ったブッシュとブレアは、「フランスが拒否権を行使すると言って国連安保理を分裂させた」として、八つ当たり的にフランス非難を強めている。
 しかし国連が結成されてから五十余年、アメリカはパレスチナ問題でのイスラエル非難決議をはじめ自国の気に入らない決議案に、七十六回も拒否権を行使して葬り去った。そしてイスラエルは、占領地からの撤退を求める国連安保理決議二四二をはじめ三十一もの国連決議を平然と踏みにじり、ヨルダン川西岸をはじめとするパレスチナの地を武力で占領し、いまもパレスチナ人の住宅を破壊し、土地を奪って入植地を建設し続けている。
 アメリカ・ブッシュ政権は、国連決議を踏みにじるこのイスラエルの侵略行為に圧力をかけるどころか、年間三十億ドルもの軍事・経済援助を行い、最新鋭の戦闘爆撃機や攻撃ヘリコプターを供与し、イスラエルによるパレスチナ人虐殺を支えて来た。シャロンが武装部隊とともに「神殿の丘」に登場するという挑発を行い、それに対する抗議行動が始まって以来、すでに二千百人ものパレスチナ人がイスラエル軍によって虐殺されている。
 無数の子爆弾をまき散らすクラスター爆弾は、最初の爆発時のすさまじい対人殺傷能力に加え、多数の不発弾が地雷と化すことによってさらに多くの民衆を殺傷し続ける。国連では、このクラスター爆弾が大量破壊兵器であるとして使用禁止を求める動きが強まっている。これに強力に反対して来たのがアメリカである。
 湾岸戦争とコソボ・ユーゴ空爆で米軍が使用した大量の劣化ウラン弾によって、イラクやユーゴの子どもたちのみならず、多数の米軍兵士やNATO軍兵士とその子どもたちに白血病や各種のがん、先天性障害をはじめとする放射線被害が引き起こされている。この劣化ウラン弾についても、国連で使用禁止決議を出そうという動きが強まっているが、これに最も強く反対しているのがアメリカである。
 そのほか、地球温暖化防止「京都議定書」からの離脱、人道に対する犯罪を裁く国際刑事裁判所(ICC)への参画拒否など、国連を中心にした国際的取り組みに対するアメリカの敵対と非協力は枚挙にいとまがない。このアメリカ・ブッシュ政権が、国連を分裂させたとしてフランスを非難しているのである。アメリカ帝国主義の許し難い鉄面皮を徹底的に暴き、糾弾しなければならない。

ブッシュ政権の戦争の論理

 「米国の国家安全保障戦略は、われわれの価値と国益を調和させた明白なアメリカ国際主義にもとづく」。昨年九月に発表されたブッシュ政権の「国家安全保障戦略」は、このようにうたいあげた。
 「自由と民主主義」「自由貿易と自由市場」という「アメリカ的価値」こそ絶対的「正義」であって、それに逆らうものは「悪」にほかならず、その「悪」を先制的武力行使をも辞さずに撃ち滅ぼし、その「価値」を全世界化することこそ、「アメリカ国際主義」なのである。それはまさにアメリカを全世界化すること、すなわちアメリカ帝国主義による世界支配の宣言にほかならない。
 この「アメリカ国際主義」を主導するのが、今日では広く知られるようになったネオコン(ネオ・コンサバティブ=新保守主義)派の右翼理論政策シンクタンク「新しいアメリカの世紀プロジェクト」(PNAC)である。
 このPNACには、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官、ウォルフォビッツ国防副長官、ボルトン国務次官、アーミテージ国務副長官、エイブラムス国家安全保障局(NSC)中東政策責任者など、ブッシュ政権の中枢を担う人物が顔をそろえている。
 このネオコン集団PNACのクリストル議長が昨年一月、上院外交委員会で次のように証言した。「イラクでの親米政権樹立がもたらす政治的、戦略的報酬は巨大である。親米的で自由な産油国イラクが誕生すれば、イランを孤立させ、シリアを脅えさせ、パレスチナ人はイスラエルとの交渉により誠実となり、サウジアラビアは中東と欧州の政治家に対する影響力を弱めることになるだろう。サダム・フセインを政権から追放することは、中東の政治的景観を根本的に変える真の機会を提供することになる。このことをブッシュ大統領は知っている」(白石忠夫「イラク侵略計画とブッシュ政権の新世界戦略」。『技術と人間』02年10月号)。
 そしてブッシュは昨年十一月、「ワシントン・ポスト」紙とのインタビューで「われわれはイラクを体制変革し、次はサウジアラビア、続いてエジプト、シリア、その次にイラン、その次にパレスチナを民主化する」と平然と述べている。
 この「アメリカ国際主義」を中東全体に押し広げようとする戦略は、言うまでもなくアメリカエネルギー産業、石油産業の欲望と一体である。ブッシュ本人やチェイニーはじめ、ブッシュ政権の中枢には、石油・エネルギー産業の経営者や重役が並んでいる。国家安全保障担当大統領補佐官ライスは、石油メジャー・シェブロンの重役を十年にわたって務めた。シェブロン社にはライスの名を冠した巨大タンカーがあるほどなのだ。
 アフガン戦争によるカスピ海周辺の石油資源の開発と支配権の確保に加え、世界第二の埋蔵量を持つイラクの石油利権が手に入れば、世界の石油供給に対するアメリカの支配力は文字通り決定的になるだろう。
 ブッシュ政権は現在、アフリカ産油国への働きかけを強め、ナイジェリアをOPEC(石油輸出国機構)から脱退させる工作を進めている(「ニューズウィーク」03年1月1・8日号)。またアメリカが、フセイン政権打倒後に石油増産に走るだろうと予測されている。いずれも、サウジアラビアを軸にしたOPECの石油供給に対する統制力の解体をねらったものである。
 「9・11テロ」の三年も前の九八年、クリントン政権は共和党と民主党のネオコングループの後押しを受けて、大統領にフセイン政権打倒の権限を与える「イラク解放法」を成立させている。「テロの脅威」や「大量破壊兵器問題」は口実に過ぎない。石油という、今日なお決定的に重要な位置を持つ戦略物資に対する排他的支配力を獲得すること、「アメリカ国際主義」の最も直接的な物質的基盤はここにある。(つづく)
(高島義一)


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