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寄稿                         かけはし2003.3.10号より

海外侵攻拠点としての強化を糾弾し海上抗議行動

湯 浅 一 郎(ピースリンク広島・呉・岩国)


海上自衛隊呉基地
おおすみ型3番艦くにさきを追加配備
戦車揚陸艦3隻体制へ


 朝起きると雨である。本降りだ。これは参ったな。十時三十分、呉YWCAへ。雨の中でも、とにかく海上にでるしかない。Fさんが「今日やるの」と電話してきた。「やります」。昨日は、移動性高気圧のもと、快晴になり、人文字が大成功だったのに、今日はなんという天気なのか? 「誰か雨男がいるのでは」と冗談を言っていると、昨日の広島の人文字行動に参加した、関西共同行動の和田さんが来られた。
 揚陸艦「おおすみ」の三番艦である「くにさき」が呉に配備されることに抗議するため、残ってくれたのだ。本当にうれしく、またありがたいことである。
 N・Hさんとボートの積み込み。雨のため、正味の時間を短くしようと言うことになり、十一時四十分、YWを出る。潜水艦基地前で、十一時五十分から十二時四十分まで準備。何とか十一人が集まった。なぜか、公安が多い。基地前だけで二十人以上。この頃になり、あめは小ぶりに。やっと、六隻のボートができ、十一時五十分、全員が海上に。時間がないと言うことで、とにかくFバースに向かった。左前方の沖合いに「おおすみ」型の艦船が見える。もしかして、あれか。Oさんが艦番号をよみあげた。
 「4003」だよ。それだ。きょう配備される「くにさき」である。しかし、Fバースの周りには、艦船が多く、停泊できる空間はない。「もしかして、昭和埠頭か?」。気づいた時は遅かった。デモ届出は、昭和埠頭まで行くコースを取っていないのだ。はかられた。こんなのは初めての経験である。派兵、配備は、すべてFバースで行われてきたのに。たしかに、揚陸艦の桟橋は、昭和埠頭にされていることは、わかっているが、儀式を行う場所はFバースだったのだ。
 仕方なく、Eバースの前で、何回も旋回し、「くにさき」に向けて、「くにさきの配備反対」「呉を揚陸艦の巣にするな」と抗議を繰りかえした。一時四十五分頃、練習艦の乗員と見られる将校たちが、自分の船に戻ってきた。歓迎の儀式は終わったらしい。ここで、自衛官に向け、「くにさき」配備の意味と、海外派兵が日常化している事態を変えるために、自衛官からの反戦の声が必要であることなどを訴えた。
 「くにさき」配備により、呉には三隻の戦車揚陸艦と六隻のLCACが配備されることになる。空母のような外観をした艦船が呉港に三隻も居並ぶ姿を想起するとき、呉基地の機能強化を象徴するものとして、断じて容認できない。「おおすみ」の配備以来、私たちは、一貫して「おおすみ」型の艦船を保有することの、憲法や自衛隊法に照らしての違法性を訴えてきた。防衛庁は、「輸送艦」と称しているが、軍事的実体はLST(Landing Ship Tank)、つまり戦車揚陸艦である。LCAC(Landing Craft Air Cushion)という高速で走る現代版強襲上陸用舟艇を使用して大型戦車を海外の地に強襲上陸させる能力を持つ、戦車を上陸させるための、きわめて攻撃的な艦船である。
 そもそも専守防衛を旨とする自衛隊が、海外侵攻ができる能力を備えた軍艦を持つこと自体が既に本来の枠を踏み外している。「くにさき」配備で三隻体制になれば、LCACの隻数で言えば、海兵隊の強襲上陸を敢行するために佐世保に配備されている米海軍のドック型揚陸部隊と同じ隻数になる。
 現在、二番艦である「しもきた」は、対テロ特措法に基づき、米軍の物資輸送を名目としてカタールへ派兵されている。アメリカが、イラク周辺に二十万人もの軍隊を集結させ、イラクが白旗を揚げない限り、武力攻撃に入るという姿勢を崩していないという緊迫した情勢の中で、日本政府は、米軍の物資を輸送する目的で、「テロ対策」を口実としたアフガン戦争の後方支援部隊として、タイ国の重機などの輸送のため戦車揚陸艦「しもきた」を派兵したのである。揚陸艦の派兵は、先のイージス艦と同様、日本の戦後史を画する重大事態である。海外侵攻ができる能力を持った艦船を、戦時下において海外に派兵することは、「物資の輸送」と言えども絶対に許されることではない。戦車揚陸艦の出動は、先のイージス艦の派兵に加えて中国、韓国を初めとしたアジアの国々に強い警戒心を呼び起こしている。そうした中で、三番艦の「くにさき」が呉に追加配備されたのである。
 十四時前、海上デモを終えて、上陸。広島の足もとの呉基地には、いよいよ空母の形をした三隻の艦船がそろうこととなった。すでに「対テロ特措法」によって、インド洋、アラビア海に派兵されているが、いざ、ことが起きれば、揚陸艦は交代で「戦争協力」に従事することになる。真に「戦争反対」なのであれば、広島県の戦争協力を問うべきである。しかしマスコミは、ほとんど関心がない風である。事態の真相を告発する作業は、いまだ究めて不十分である。
 昨日の人文字行動をどう評価するかは、じっくり考察する必要がある。個の主体的な意志が、「人文字」の一部を自ら担うという共通の思いを作り出し、世界に向けて、被爆地広島から「反戦とDU禁止」を訴えた意義は計り知れない。そして、広島に置ける平和運動のあり方にも大きな影響を与えることは想像に難くない。新しい時代の始まりを予感させるものでもある。しかし、その考察において、広島の現実にどう向き合うのかと言う問題領域も絶対に忘れるわけにはいかない。「くにさき」配備は、あまりにも予期せぬ形で迎えたとはいえ、この問題の重要性を自覚している主体が極めて限られている現実を忘れるわけにはいかない。


リストラも労基法改悪もはね返せ
おおさかユニオンネットが第一波春闘総行動
各争議職場と大阪労働局に申し入れ


 【大阪】大阪ユニオンネットワークの春闘総行動の第一波が、二月二十六日に行われた。NTT大阪本社前での出発集会で、代表の馬場徳夫さんは、日本ではパート労働者が増え韓国を追い抜こうとしていること、NTTでは五十歳で職員を解雇し、子会社に再雇用するとき賃金を三割カットする、従わなければ配転というとんでもないやり方がまかり通っていること、また米英によるイラク爆撃で情勢が緊迫していることなどにふれ、今日一日がんばろうとあいさつ。
 また、大阪全労協議長の前田裕晤さんは、企業の社会的責任が失われている、企業が生きのびれば人間どうなってもいいという風潮になっている、労働者が主人公になる社会をめざしがんばろうとあいさつした。この後、朝九時から夕方六時半まで、みんな一体となってまとまって行動した。
 まず、大阪府労働局へ。一月二十八日にも要望書を出したが、三月国会に上程される労働法制改悪案反対で要請行動を行った。労基法改悪のひとつだった、雇用主が不当解雇の裁判で負けても金を払えば解雇できるという解雇自由化は、審議会もさすがにこれについては押し通せず、二〜三年かけて検討し直すことになったことが伝えられ、法案が出た段階で再度交渉することになった。
 労働局前で待機をしているときの各団体からのアピールの中で、全港湾からは、中央委員会でイラク空爆の時には三十分のストを決行することが決まったことが報告された。また管理職ユニオン関西からは、労働相談に来る人の多くが労働組合や労働法を知らない人がほとんどであること、鬱状態になったり、言葉が出なくなって奥さんに連れてこられる人もいることなどを象徴的に報告した。
 次は大塚製薬。会社は研究部門を他企業に営業譲渡。それに反対した社員は退職者扱いされた。それで組合結成したが、会社は団交に応じない。何とか突破口を作るべく、団交申入書を手わたした。徳島からも組合員が参加していた。
 続いて、昭和シェルへ。三十年間もの労使紛争で、会社は組合脱退工作、賃金・昇格差別などありとあらゆる不法行為を重ねてきた。昭和シェル労組は一九七二年の組合分裂以来、第一組合の旗を守ってきた。そして〇〇年、「賃金・昇格差別は不当労働行為である」とする大阪地労委の命令を勝ち取る。会社は中労委に再審査申し立て。現在命令待ち。
 午前中の最後に、米国領事館へ。先に来ていた大阪労連の人たちに要求書を託し、シュプレヒコールをしてから昼食休憩にはいった。
 午後は、大阪成蹊女子短大へ。大阪成蹊は京都成安造形短大の営業権を取得し、教職員全員を一旦退職させ新たに雇用したとき、教育合同の組合員(外国人講師)のみを採用しなかった。事務局長の出席を約束していたにもかかわらず、当日は姿を見せなかったため、事務局責任者に要請書を読み上げてわたし、不誠実な態度をとるなら、何回でも来ると通告し、次の目的地に移動。
 そしNTT大阪支社のあるNTTテレパークへ。五十歳で退職しなかったために、徳島から神戸に広域配転になった電通合同の労働者もいる。いま、電通合同や共産党系の通信労組の組合員は賃金査定でD評価となって、一時金の二五%をカットされている。組合員二十八人の「配転」辞令の撤回を求め支店長に面会を求めて押しかけ、すったもんだの後、渉外担当に要請書を手渡した。
 総行動の最後に、近畿郵政局責任者に面会し要請書を渡した。三年ほど前は、たくさんの職員が出て警戒していたが、毎年の取り組みで、観念したのか対応が違ってきた。国鉄の民営化・電電公社の民営化に次いで、4月から郵政省は郵政公社に変わる。いまNTTで起きていることが郵政の将来を暗示している。公共性は失われ金もうけ主義に変わっていく。
 三木郵政近畿労組委員長の報告では、名は公社、経営は民間並で、当局はトヨタ方式を浸透させることに躍起になっている。最初の一年間で一兆円の利益目標がかかげられているとか。職員には査定賃金制度が導入される。さまざまな犠牲が労働者に押しつけられるであろうが、全国に十万人いると言われる郵政の有期雇用労働者と連帯して闘っていくとの決意が述べられた。広島から参加していた郵政労働者が最後に報告して、全日程を終えた。
        (T・T)

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