かけはし重要記事

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学習案内 『季刊ピープルズ・プラン』第17号ピーブルズ・プラン研究所発行1200円                       かけはし2002.3.25号より

特集「終わりなき戦争の時代?」


グローバル戦争と
対決するために

 ピープルズ・プラン研究所(PP研)は、一九九八年六月に「『持続不可能』な状況へのオルタナティブを探究」(HPから)するグループとして設立され、「世界各地ですでに始まっているオルタナティブな社会システムをつくりだす闘いと相互に作用し合い」ながら新しい理論と思想創造にむけて研究・普及・ネットワーク活動を行ってきた。そのような活動の結晶として本誌が発行され続けてきた。
 今号では、この間のアフガン侵略戦争反対運動の取り組みとリンクさせながら、「終わりなき戦争の時代? \ブッシュの暴走を許すな」という特集が組まれている。昨年、米での九・一一テロ事件以降、ブッシュ政権は、ただちにアフガニスタン侵略戦争を開始し、タリバン政権崩壊後も「反テロ」と称してイラク、ソマリア、フィリピンなどに対する戦争準備を行っている。ブッシュによるグローバル戦争の拡大に遅れまいと小泉政府は、報復戦争参戦法を強行成立させ、自衛艦を派兵し、有事$時立法を制定しようとしている。こういう急速な軍事社会化の流れに抗していく作業の一環として、本書の提起を土台にしながらグローバル戦争の分析、評価、対抗のための行動指針を練り上げていこう。そのために本書の注目すべきシンポジウムと座談会を簡単に紹介する。

マリア・ミースを
中心にしたシンポ

 昨年十二月八日、PP研は、「テロ・報復戦争のもとグローバル資本主義を超える\暴力・文化・ジェンダー・階級」というテーマでマリア・ミースをゲストにシンポジウムを行った。ミースは、ドイツのエコロジー・フェミニスト、ATTACドイツの先頭で反戦運動を取り組んでいる。彼女は、インド滞在時における都市と農村女性の調査活動を基に世界システムとしての資本主義的家父長制について分析、理論化の作業を取り組み、各種問題提起を行ってきた。
 ミースは、冒頭、「グローバリゼーションと自由貿易体制」の関係を取り上げ、それが「植民地的な収奪、強奪、戦争」を引き起こしていった過程を分析している。そして、「グローバル化というのは実際、『再植民地化』のこと」だと明確に規定するアプローチから、世銀・IMFによる構造調整プログラムの融資批判や、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ諸国の事例を浮き彫りにさせながら結果として貧困と虐殺を生み出していったこと批判する。
 さらに、ソマリア、モザンビークの内戦、コソボ戦争、アフガニスタン戦争を捉え返しながら諸大国が「人道的な目的」と称して軍事介入し、エネルギー資源の争奪など自己の権益拡大を推進しているこの間の戦争パターンを明らかにしている。そのうえでこのような事態が「戦争の無国家化、無国境化がグローバル化した経済の中で起こって」おり、資源獲得のための戦争と再植民地化が暴力的に拡大していることをしっかりと見据えて対抗戦略・戦術を打ち立てていかなければならないと結論づけている。最後に「戦争の停止だけに目を向けるのでは不十分」だと警鐘乱打している。
 シンポでのパネルディスカッションで斎藤日出治(大阪産業大)は、ミースによるグローバリゼーション分析が「資本蓄積過程の深層に、階級支配や権力秩序や暴力的な収奪が潜んでいることをえぐり出すのが本源的蓄積の視点にほかなりません。ミースはこの本源的蓄積の過程が、今日でもなお地球的な規模で継続している」と解き明かし、「労働者階級の主婦化」、「女性の性差別と労働者の過剰搾取と暴力の進行過程」についての分析視点の重要性について発言している。
 川本隆史(東北大学教員)は、社会倫理学の観点からミース提起を分析し、@「消費に対する自律」「生産に対する自律」「人間の尊厳を目指す諸闘争」についてA第三世界と先進国の女たちの分断を克服する段階\サブシステンス(生存と暮らし)のために働く\について提起している。
 古田睦美(長野大教員)は、グローバリゼーションとは資本主義的蓄積過程と継続的本源的蓄積過程の関係が一続きの連続的過程であり、「資本主義的家父長制」の拡大であると鋭く提起。そして、「シアトルに労組、エコロジスト、農業者、フェミニスト、南の国に連帯する多くのNGOが集まったのは、グローバリズムの進展によってそうした関連性が多くの人に見えるようになってきたからだ」と対抗主体を押し出している。
 これらの発言からもわかるように、例えば、この一月末ブラジルのポルトアレグレで「第二回世界社会フォーラム」が行われ、全世界百五十カ国から八万人が結集し、膨大な数のワークショップが行われ、闘争主体形成に向けたあらゆる論議が行われたが、まさにこの流れを意識しながら対抗戦略と運動主体を構築していくことの重要性を確認することができる。

小泉政権の参
戦と構造改革

 本書の第二の注目すべきテーマは、「座談会 小泉政権の参戦と『構造改革』」。渡辺治(一橋大教員)、武藤一羊(PP研共同代表)、川田悦子(衆議院議員)、天野恵一(反天連)、白川真澄(PP研)の五人が、この間のアフガニスタン侵略戦争反対運動、日本の派兵国家化を拒否する取り組みの経験のうえで@日本の参戦は事実上のクーデターA保守の新しい政治B小泉人気C構造改革Dグローバリゼーションに対抗する運動と課題について積極的発言を行っている。とりわけ渡辺は「今の反動期は次の運動に向けての非常に重要な準備期になる」という観点から広範な共同行動を大胆に提起するなど刺激的なアプローチを行っている。
 なお、具体的な方針について導き出していくために欠かしてはならないテーマとして、例えば、資本の攻勢と労働運動の後退局面のなかで、反転のためのヒントに引き付けたテーマ設定があれば、本誌がチャレンジするイデオロギー的トータル性にさらに接近できたのではないかと思う。(Y)


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