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ベネズエラ                     かけはし2003.2.17号より

改良主義者チャベスは労働者階級の敗北を招き寄せている

持続する親ブルジョア派のゼネスト

 貧困に苦しむ民衆に押し上げられたチャベス政権に対する、ブルジョアジーに支援された石油労組の右からのゼネストは、すでに二カ月にわたって続いている。チリのアジェンデ政権が、米帝国主義の全面的支援を受けたピノチェットの軍事クーデーターで打倒された時と同じ構造が作られている。


 ベネズエラは、この二十五年間で石油収入によって三千億ドルを稼いだ。この額は、第二次世界大戦後に米国が資本主義ヨーロッパ再建を助けるためのマーシャルプランに使用した額の二十五倍に等しいものである。
 しかしここは失業率が二五%以上であり、住民の半数以上が貧困の下に暮らし、子供たちは物乞い、泥棒、街頭でのもの売りで生き延びているような社会である。一九九八年十二月、ウーゴ・チャベスは古い政党に対する民衆の反対の中で、得票率五七%で大統領に選出された。続いて彼は、以前のものよりも民主主義的な新憲法に八八%の支持を勝ち取った。
 その時、フランスの左派系日刊紙「リベラシオン」からの引用によれば、ベネズエラの社会主義運動(MS)のメンバーは「すべての左翼は彼に投票した。彼は、社会的公正と腐敗に対する闘いという主張によって、変革への希望を代表した。しかしそれは言葉以上にはならず、それ以降、チャベスは国を完全に分裂させた」と述べた。
 改良主義的なチャベス政権が、ベネズエラ社会の最も貧しい層である彼の支持者をひどく失望させたことは否定できない。しかし、チャベス政権を支持して街頭に登場するようになっているのは、こうした貧しい人びとなのである。彼らの敵は、貧困の中で暮らすベネズエラ人を非難している人びとや組織である。
 昨年四月、チャベスに対する軍事クーデターが失敗した時、その陰謀を企てた者たちはBBCのインタビューを受け、機会が来ればもう一度クーデターをやって見せることを誰も阻止できないし、大いにその意思があると、なんの後悔もなく宣言することができた。
 トロツキーはかつて、社会主義者はしばしば敵に対する慈悲の代償を自らの血でつぐなってきたと述べたことがある。ポピュリストであるチャベスは、トロツキーのこの主張の正しさを立証しようと夢中になっているように見える。軍士官の少数の層を除いて、旧支配階級のすべてはチャベスに反対して隊伍を整えている。チャベス政権の副大統領さえも、カラカス(ベネズエラの首都)の警察部隊は「反対勢力に奉仕している」と語った。
 ストライキ中の労働者に対して、雇用者側は政府に対するストライキ期間中の給料を支払うと述べた。主要な労組連合CTVは、官僚的で親資本家的指導部を持っており、彼らはチャベス政権への攻撃を支持している。
 チャベスは、こうした指導者たちを試し、追放しようと全員投票を行ったが、この官僚的マヌーバーがほとんど支持を得られず、今や労組指導部がチャベスを「反労組」として描きだすようにさせてしまっているのは、なんら驚くべきことではない。誰をも納得させる彼の選挙での勝利が組織された労働者階級の発展と密接に結びついていないという、彼の社会的基盤の相対的な狭さについても語られている。彼の支持者を結集することができたにしても、それは労働組合内の重要な勢力を代表するものではない。
 労組指導部と経営者連合「フェデカマラス」との連合に加えて、民営のラジオ・テレビ局は反対派の集会を放送し、政府を非難して、反対派のための活発な宣伝活動を行っている。チャベスの支持者たちは放送局を閉鎖するのではなく、門前での抗議に自らの活動を限定している。彼らはこの数カ月のうちに、自分たちの寛大さを悔やむことになるかもしれない。
 ブルジョアジーが、穏健な改良主義者であるチャベスを片づけてしまおうと決意していることは明らかだ。もっと改良主義的だったサルバドール・アジェンデがチリで打倒された時と同様の方法によってである。彼らは同一の戦略を使っている。昨年四月、クーデターは米国からの公然たる支持を受けていた。
 チリの場合との類似性は明白である。
b資本家によるゼネストの呼びかけは、労働者階級の中枢部門に依拠したものである。チリの場合はトラック労働者、ベネズエラでは石油労働者である。
b社会と経済をマヒさせようとする企て。石油生産は、通例は日産二百七十万バレルだが、現在はその一〇%にまで落ちている。
b革命的解放区とは対照的なものではあるが、「解放区」を創設しようとする企て。それはカラカス市の裕福な地域の中にある。
b緊張の気運を作りだすためのメディアの利用。
b反対勢力のデモに手先の挑発者を利用して攻撃をかけ、それに対する彼らの暴力に防衛的・仕返し的性格を付与しようとする。また彼らは軍隊に対して、介入と旧秩序復活の口実を与えている。すでに、反対派と結びついたポルトガル国籍の者が、反対派のデモに対する発砲で逮捕された。
 アメリカは今回もまた反対勢力の側に立って介入した。アメリカは反対派による早期選挙の呼びかけを支持した。アメリカは、はるかに不備であることが明らかなブッシュの選挙にも恥ずかしがっていないようだ。他方チャベスは、ブラジル、キューバ、OPEC、ならびにさまざまなラテンアメリカの労働組合の支持を受けた。MASなどベネズエラ左翼の多くは、反対派の側についてきた。
 それが深刻な間違いであることは明らかだ。ブルジョアジーは、武装力をもって特権を防衛する準備に入っており、チャベス政権の敗北は、ラテンアメリカとベネズエラの労働者階級と貧しい人びとの敗北になるだろう。懸念されるのは、彼を潰そうとしている旧体制を懐柔しようとするチャベスの願望である。
 彼の政権は、敵対的な放送局の閉鎖ないし接収、警察の武装解除と解散、彼の支持者の武装と組織化、一般の石油労働者や銀行労働者を労組指導部から分裂させようとする試みなど、明白な防衛的措置をとることに失敗した。
 彼は、旧来の腐敗したベネズエラの諸勢力が全力を上げているまさにその時に、彼のキャンペーンを自衛に限定している。その結果は明白であり、深刻な敗北をもたらしそうである。(リアム・マック・ウキド)(英「ソーシャリスト・レジスタンス」(03年2月号)


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