かけはし重要記事

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国会証人喚問                   かけはし2002.3.18号より

「鈴木宗男疑惑」が明らかにした小泉政治の現実

有事法制阻止・憲法改悪反対の広範な共同行動を

 長年にわたって「陰の外相」として外務省を支配してきた鈴木宗男・前衆院議院運営委員長(元官房副長官、北海道沖縄開発庁長官)への「疑惑追及」は、「異常な関係」とまで指摘された外務省調査報告書の発表(三月四日)、鈴木本人への衆院予算委員会での証人喚問(三月十一日)を経て、ついに鈴木宗男の自民党からの離党、議員辞職が不可避となる状況にまで発展した。
 一月のアフガニスタン復興支援会議に、鈴木宗男の強い意向を受けた外務省当局によって一部のNGOが出席を拒否された問題は、鈴木に支配された外務省官僚機構と小泉内閣の看板だった田中真紀子外相との昨年五月以来の深刻な対立をあらためて明るみに出し、ついに小泉首相は田中真紀子を外相の地位から解任することになった。小泉内閣はNGO出席拒否問題に関して「特定の個人の関与はなかった」との調査結果を発表し、鈴木と外務省官僚機構を防衛して田中真紀子を切ったのである。
 それは、「聖域なき構造改革」という小泉のスローガンが「政官財の構造的癒着」という旧来の支配体制に手をつけるものではないことを多くの人びとに実感させる契機となった。「小泉さん自身が抵抗勢力」という二月二十日の国会参考人招致での田中真紀子の発言は、それを端的に示すものだった。`切られたa田中真紀子への支持は世論調査で八割近くに達し、`切ったa小泉への支持率は約八割という高レベルから一挙に三〇%も下落し、一部の調査では五割を切るにいたった。
 実際、鈴木宗男の政治手法は自ら「古いタイプの政治家」と認める通り、「公共事業」予算を通した選挙区への利益誘導をどう喝と圧力によって実現し、利権を獲得するという自民党の政治支配構造の伝統的あり方の典型である。ロシアとの太い人脈を通じて「北方諸島」を自らの排他的利権の場として獲得しようとする彼の手法に、それがみごとに示されている。
 「そもそも北方領土問題は国の面子(メンツ)から領土返還を主張しているに過ぎず、実際には島が返還されても国として何の利益にもならない。そうであれば、戦後五十年もたって返還されない事実を踏まえ、わが国は領土返還要求を打ち切って、四島との経済交流を進めていくべきと考える」(95年6月13日付の外務省内部文書)。
 鈴木は「ロシアによる北方領土の不法占拠」にこだわる外務省官僚を批判してこのように語っている。「旧島民の悲願」を盾に取った「北方領土」返還要求という排外主義的「国益」運動の実態と本音をこれほど露骨に表現したものはない。かつてアメリカ帝国主義は、「反ソ同盟」としての安保に日本政府を縛りつけ、沖縄の米軍事支配に対する批判をかわして日本の「国民的世論」を動員するために、自らもかつては同意した北方諸島のソ連への帰属を否定し、「日本固有の領土」としての「四島」返還要求を強制した。しかし、ソ連の崩壊にともなって「北方諸島返還」の戦略的重要性が失われるとともに、鈴木ら「北方四島」から新たな利権を漁ろうとする政治家や資本にとっては、「領土返還」の建前は完全に重荷と化していたのである。
 共産党をふくむ与野党の政治家やマスコミは、鈴木宗男のこうした言動を「日本の国益を歪める」ものとして一斉に激しく批判している。しかし、われわれは「宗男疑惑」への批判を、こうした排外主義的「国益」に方向づけようとする目論見に対してはきっぱりと反対しなければならない。
 鈴木宗男の政府開発援助(ODA)にまつわる「疑惑」はきわめて重大である。そしてこの点にこそ政府・外務省、自民党の支配体制全体が隠蔽しなければならない核心の一つが存在する。
 鈴木宗男はアフリカ諸国にパイプを持ち、日本政府からの多額のODA供与にまつわる利権を掌握しようとしてきた。日本は世界でトップのODA供与国であり、ODAにまつわる利権は莫大なものである。自民党対外経済協力特別委員長としてODA予算配分の采配を揮うようになった彼は、外務省への支配力をテコにアフリカ諸国を自らの利益獲得・勢力拡張の場として利用しようとした。
 外務省調査報告書では、問題となっている政府開発援助(ODA)によるケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所建設計画の実施について、「特定の国会議員の関与、影響力の行使」はなかった、としている。しかし、それが信用できないものであることははっきりしている。
 今回の「北方支援事業」への入札関与に関しても鈴木事務所に地元業者の紹介を依頼したとして登場している日本工営は、戦前から戦争中にかけて日本軍の後押しのもとで朝鮮、満州、海南島、インドネシアなどに数多くの大規模ダムを建設した久保田豊が一九四七年に創設した日本最初のコンサルタント会社である。久保田の日本工営は、賠償資金によるビルマのバルーチャン・ダム建設を皮切りにアジア各地に大規模なダム建設を進め、今日のODAのパターンを作り上げていった。
 「バルーチャン・ダムは、久保田氏の推薦により、鹿島建設によって建設された。こうして、このダム建設を嚆矢として、コンサルタント会社が援助プロジェクトを発掘し、これを日本の建設会社が受注し、施行していくという基本的パターンが出来上がった」(鷲見一夫『ODA援助の現実』、岩波新書)。そしてこのバルーチャン・ダムは「少数民族の居住地域に政府軍の護衛のもとに強引に建設されたものであり、現地住民には何らの恩恵ももたらさなかった。電力は、送電線で遠くマンダレーと首都ラングーンにまで運ばれ、ビルマ族の支配地域を潤すだけであった。カレン族は、その居住地域を水没させられ、また立ち退かされるという不利益を蒙っただけであった」(同書)のであり、その点でも日本のODAが果たす住民に対する敵対的役割の「先駆」であった。
 日本工営はアフリカでもダム建設による開発事業に最初に乗り出した。鷲見は書いている。
 「日本工営が手がけたガーナにおける大規模農業開発プロジェクトは、日本のコンサルタント企業がアフリカに進出した最初のケースであったが、これ以降の日本のアフリカへの農業開発援助の基本的パターンを形作る先例となった。つまり、ダム建設によって大規模灌漑農業を普及し、換金作物の生産を奨励するということが、農業開発援助の名のもとでアフリカ各地において展開されていくのである。そこには、土着農業を破壊こそすれ、育成するという姿勢はほとんど見られない」(同書)。
 今回のケニアのソンドゥ・ミリウ水力発電所問題に関しても、まったく同様の問題が指摘されている。もちろん事柄は鈴木宗男個人にとどまるものではない。ODAを通じた政官財の利権に基づく癒着の構造、それが現地の独裁的支配体制を支え、住民の生活・農業・環境を破壊していくあり方を批判していくためにも、鈴木ODA疑惑の解明が徹底的に進められなければならない。
 小泉内閣の「構造改革」の化けの皮ははがれつつある。田中真紀子外相の解任、鈴木宗男疑惑の暴露、そして加藤紘一元自民党幹事長の事務所代表・佐藤三郎の脱税による逮捕は、アメリカなど他の帝国主義諸国から「破局」というほどの危機感を持たれている、日本資本主義経済のデフレ危機の進行とあいまって、小泉政権の求心力を急速に失わせている。
 そうであればこそ小泉政権は、労働者市民に対して失業、雇用破壊、公的福祉解体の攻撃をエスカレートさせつつ、有事法制の制定、憲法改悪をはじめとしてブッシュのグローバル戦争に参戦する国家体制づくりを急ごうとしているのだ。警視庁が今になって一九八三年に行方不明となった有本恵子さんが「北朝鮮に拉致された」ものと断定し、特捜本部を設置して「本格的捜査」に乗り出した、というのも、「世論」を「危機対処」に向けて誘導する操作的キャンペーンに他ならない(「有本さん拉致事件」については、一九九八年に新潮社から刊行された高沢皓司『宿命――「よど」号亡命者たちの秘密工作』に約六十ページにわたって詳細に描かれている。公安警察はとっくの昔に、その顛末の全体像をつかんでいたはずである)。
 今こそ、鈴木宗男疑惑問題にからむ小泉政権の責任追及と合わせて、有事=戦争法制阻止、憲法改悪反対の広範な共同行動を作りだしていこう。(3月12日)(平井純一)

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