| IAEAの対イラン非難決議 かけはし2003.12.8号 |
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核武装した軍事大国がイランの核開発研究を非難できるか |
十一月二十六日、イランの核開発問題を協議していたIAEA(国際原子力機関)理事会(三十五カ国)は、イランが過去に未申告でウラン濃縮やプルトニウム抽出を実施したことなど、十八年にわたって核開発計画を隠蔽してきたとして、「最大級の深刻な懸念」を表明する非難決議を全会一致で採択した。
英仏独に日本が共同提案国に加わり、決議案を提出した。決議は、「イランが核兵器開発を行ってきた証拠はない」としながらも、過去の「保障措置協定の違反行為」に「強い遺憾の意」を表明し、新たな「違反行為」が判明した場合、「あらゆる選択肢を検討する」という表現で国連安保理に付託することを示唆している。
いうまでもなく安保理に付託するということは、軍事的・経済的制裁を科す可能性があるということである。エルバラダイ事務局長は同日夜、声明を発表し「イランがさらに重大な違反行為を犯せば極めて深刻な反応を招くことになる」と述べた。
アメリカは今回の理事会で当初、直ちにイラク核開発問題を安保理に付託するよう主張していた。これは、イランを追いつめ過ぎれば北朝鮮に続いてNPT(核拡散防止条約)からの離脱を招きかねないという英独仏の反対で受け入れられなかったとはいえ、エルバラダイの声明にもあるように事実上、「最後通告」に近い強い表現であることは間違いない。
イランは近くIAEAの抜き打ち査察を可能とする「追加議定書」に署名する見通しで、発効すればIAEAはイラン国内の施設の抜き打ち的査察が可能になる。
われわれは、核兵器のみならず原子力発電を含む核開発全体に反対する。核開発は、ウラン採掘から濃縮などの核燃料製造、原子力施設の稼働、修理、核廃棄物の再処理、耐用年数の過ぎた核施設の廃棄などの過程すべてで、処分不能の核廃棄物を大量に生み出し、多数の労働者を被曝させて健康と命を奪い、何万年、何百万年、あるいは何億年も続く深刻な環境汚染を広げるからであり、ひとたび重大な核事故が発生すれば取り返しのつかない大惨事をもたらすからである。
したがってわれわれは、たとえハタミ大統領が繰り返し言明するようにそれが「平和目的」だったとしてもイランの核開発に反対する。しかし、今回の決議を提案した英仏独日にも、より強硬な措置を求めながらしぶしぶ決議に賛成したアメリカにも、イランを非難する資格は全くない。あまりにも極端なダブル・スタンダード(二重基準)だからである。
IAEAエルバラダイ事務局長が十一月十日に理事国に配布した報告書によれば、イランは八八年から九二年にかけて、テヘラン核研究センターで二酸化ウランに放射線を照射してプルトニウムを生成させ、それを少量抽出したとされている。ガス遠心分離やレーザーによるウラン濃縮実験も行っていたという。プルトニウム抽出実験に使った施設は九二年に解体、ウラン濃縮実験に使った施設は今年五月に解体されている。
そして報告書は、過去に行われてきた核開発で、イランがウランの採鉱、精練、濃縮、燃料製造、軽水炉、重水炉、重水製造施設など、核燃料サイクル関連のあらゆる施設の建設をめざし、実験・実用施設建設を行ってきたと指摘した。また、施設を解体したとはいえプルトニウムを抽出したことは、イランが技術的に核燃料サイクルの基礎技術を取得したことを意味するとしている。
いかにも大それたことが行われているようである。ところが、このエルバラダイ報告を「イラン、プルトニウムも抽出」という五段抜きの大見出しで報じた朝日新聞(03年11月12日)をよく読んでみると「IAEA筋によると抽出された量は少量で(最大数グラム)で、核兵器生産には十分でないと見られている」と書いてある。「最小」なら〇・何グラムなのだろうか。
イランの抽出したプルトニウムは、なんとたったの「最大数グラム」! これに対してイラン非難決議を提案したイギリスとフランスは、いうまでもなく大量の核爆弾や核ミサイルで武装した核大国であり、決議に賛成したアメリカは最大の核超大国である。
この九月初めに文部科学省などが原子力委員会に提出した報告によれば、国内外の原子力施設に保管されている日本のプルトニウムは、〇二年末時点で三十八トンに上る。長崎に投下された原爆に使用されたプルトニウムは五キログラムであった。すなわち、日本が保有するプルトニウムは長崎原爆七千六百発分という膨大な量に達しているのである。
しかも日本は、自前の大規模なウラン濃縮工場やプルトニウムを抽出する再処理工場を持ち、さらに巨大な再処理工場を六ケ所村に二兆円もかけて建設中である。現在は民主党の小沢一郎はかつて、「その気になれば日本はすぐに数千発の核兵器を持つことができる」と豪語したことがある。イランに対する「重大な懸念」どころの話ではない。すでに日本は「潜在的核大国」なのである。
だからこそ、アジアの反原発運動が結集して開催されてきたノー・ニュークス・アジア・フォーラムでは、韓国や台湾など、多くの国の団体から「日本がアジアの核軍拡の震源地になっている」という厳しい批判が、繰り返し発せられたのである。
ブッシュ大統領は十一月二十四日、小型核兵器研究開発を十年ぶりに解禁することを盛り込んだ総額四千十三億ドル(約四十四兆円)の二〇〇四年会計年度国防歳出権限法(軍事予算案)に署名した。これによって「使いやすい核兵器」として五キロトン(広島原爆は十五キロトン)以下の核兵器の研究開発を禁じてきた「スプラット・ファース条項」が撤廃された。ブッシュ政権は実際に使える核兵器、とりわけ地下施設を破壊する五キロトン以下の地中貫通型核兵器の研究開発を押し進めつつあり、五キロトン以下の禁止撤廃を要求してきた。ブッシュはその要求を実現したのである。
フランス・ラファラン政権も深刻な財政危機のなかで軍事費を聖域として二年連続の大軍拡予算を組み、アメリカと同様の「使える」小型核兵器の研究開発を開始した。ラファランは、国際テロなどの脅威に対して「核戦力を適応させる」と述べている。
そしてこれら諸国は、北朝鮮とイランの核開発には政治的軍事的圧力をかけ、あるいはかけようとしているが、インドとパキスタンの核実験と核武装を既成事実として受け入れている。また、すでに八十発から百発の核兵器を持ち潜水艦からの発射能力を持つに至ったという中東の核大国イスラエルの核武装を容認している。
このような度し難いダブル・スタンダードが許されるわけがない。しかしこれがIAEAであり、NPT(核拡散防止条約)体制の現実なのである。「イランが最大で数グラムのプルトニウムを抽出した。制裁だ」などと騒ぎ立てる前に、核武装した五大国、米英仏中ロが自らの核武装強化計画を即時無条件に破棄し、「期限を定めた核廃絶のプログラムを定めて実行せよ」という国際社会の強い要求を直ちに受け入れることが、まず何よりも必要なのである。そして日本には、高速増殖炉の破綻でもはや核兵器にしか使い道のないプルトニウムを抽出する六ケ所村再処理工場の建設を直ちに中止する責任がある。
(12月1日 高島義一)
「躍進する中国経済」
新自由主義のトップランナーに
「中国躍進のエネルギー」と題する短評(H署名)が、朝日新聞(03年9月22日)夕刊の経済欄に掲載された。「先日、久しぶりに中国を訪れた」というHは、中国経済を絶賛して言う。「いまでは、工場などの労働者なら数カ月単位、ホワイトカラーや研究者などの職種でも、長くて二年から三年といった有期の雇用契約が主流だ。期待される成果があげられなければ、容赦なく契約を打ち切られるのが一般的な雇用スタイルになっている。また『大鍋飯』(ダアクォファン)と称され、働いても働かなくても同じという悪平等が蔓延していた賃金システムにも、成果によって何倍もの格差がつく仕組みの導入が進んでいる」。
労働者の側からすれば徹底して新自由主義的な、資本家にとって使い捨て自由な制度のもとで人々が競争に駆り立てられている中国のこのような状態を、Hは文字通り手放しで賛美する。そしてそれが「中国の急成長を支えている」と述べ、これに比べると日本は「いまだに旧来の雇用システムから抜け出せず、構造改革もなかなか思いどおりには進んでいない」と嘆くのである。
そのうえでHは、「ここは素直に、隣国に学ぶ姿勢も必要なのではないだろうか」と語っている。中国に学んで新自由主義的雇用政策をさらに押し進め、徹底して労働者を搾りぬけば、日本経済も立ち直るだろう、日本の労働者はまだまだ甘やかされている、というわけだ。
〇一年十一月から〇二年三月にかけて、中国人民大学などと日本の文部科学省・統計数理研究所が中国の二大都市・北京と上海で行った「日中共同意識調査」では、「失業の不安を感じる人」の割合は上海で八六%、北京で七八%に達し、日本全体の七六%をいずれも上回っていた。自分の社会階層を「中の下」「下」など下層に位置づける人の比率も、日本よりいずれも六〜一四%上回っていた(朝日新聞03年7月9日)。
小泉構造改革の信奉者で竹中平蔵ばりの新自由主義・市場原理主義者であるらしいHなる人物が絶賛するほど、中国社会は労働者にとって過酷な、新自由主義的で明日の保証がない社会に変化しているのである。
世界社会フォーラムや脱WTOの闘いなど、世界の反グローバリゼーション運動の大きな課題の一つは、人々の生活基盤を支える公共財の民営化と商品化に反対する闘いである。そして現在、多国籍資本による「水の民営化」「水の商品化」との闘いが、反グローバリゼーション運動の焦点に浮上している。
アジアにおけるFTAを主導し、新自由主義グローバリゼーションの主体的推進者となった中国は、水利省を先頭に「水の商品化」をめざしており、この点でも新自由主義のトップランナーに飛び出そうとしている。今年、京都で開かれた「世界水フォーラム」に出席した中国政府代表は、「水市場の確立をめざす」と述べて「水の商品化」を打ち出した。
「千の湖沼と長江の水に恵まれた湖北省。華中師範大の劉盛佳教授は昨年の省政治協商会議に『湖北省の淡水資源は全国の二七%を占め、水質も良い。中東が石油で裕福になったように、淡水を商品化して豊かになろう』と提案、注目を集めた」「水利省長江水利委員会の姜兆雄・総工程師は『これまでただ同然だった水が二十一世紀には商品に変わることは間違いない』と語る」(朝日新聞03年6月5日)。
中国の不動産投資が過熱している。土地はいまなお形式的には国有だが、「土地は女王陛下のもの」されてきた香港と同様、長期使用権の売買で巨大な不動産市場が形成されており、すでに九〇年代初めから何度か不動産バブルが繰り返されてきた。
都市における持ち家政策への転換から、九九年以降、商業的な不動産投資は毎年二〇%以上のペースで急増し、いまや不動産デベロッパーは中国の新興産業の一つに数えられるまでになっている。〇三年度上半期の不動産投資は前年同期比三四%も増加して、銀行新規貸付の約四割を占めるに至っている。そして国務院(内閣)は、国民経済の基盤産業として不動産開発を引き続き拡大せよとの通達を出した(新大陸社会工学研究所・銭小英所長『エコノミスト』03年10月14日号)。
〇八年のオリンピック開催を控えた北京では、赤れんがの平家が密集する中心部の住宅地が、都市再開発という名の不動産開発のために次々に壊され、住民はわずかな補償金で追い立てられている。この九月には、強制立ち退きに抗議する住民の焼身抗議事件まで起きている。都市貧民が追い立てられた跡地に続々と建設される高級マンションには、私企業経営者や外資系高級職員、政府高級官僚や人気芸能人やプロスポーツ選手などの「ニューリッチ」層が入居している。
そしてこのような強引な不動産開発、都市再開発には、腐敗した政府や共産党官僚の利権がからんでおり、住民の怒りをかき立てている。中国誌「新聞週刊」は今年一月から八月までの間に、国家信訪(投書・陳情)局に立ち退きに関する一万千六百四十一件の投書が寄せられているという(朝日新聞03年9月26日)。
これが「社会主義市場経済」という看板を掲げた資本主義中国で横行する、むき出しの新自由主義の現実である。(11月1日 高島義一)
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