| 「ヘルパー派遣時間への上限設定を阻止するぞ」 かけはし2003.1.27号より |
【福島】四月より障がい者福祉制度が大きく変わろうとしている。いわゆる支援費制度がそれだ。これまでの措置制度から、利用者が自由にサービス提供者を選べることになり、「競争でサービスの質が向上する」と国はPRしてきた。
三年前には、六十五歳以上の高齢者を対象とした介護保険がスタートしているが、支援費制度も同じ枠組みにあるといっていいだろう。違いは、介護保険が社会保険であるのに対し、支援費は全額税金によってまかなわれるということだ。
介護保険は、五年ごとに見直しがなされるが、いずれ六十四歳以下の障がい者も、介護保険に組む込まれていくのではないか、といわれている。
厚労省一部幹部
が秘密裏に計画
しかし、四月の支援費制度のスタートを間近かにした一月十日、毎日新聞が「厚労省が、障がい者へのヘルパー派遣時間に上限を設けることを検討中」とスッパ抜き、その後全国の障がい者から大きな怒りの声が沸き起こっている。
厚労省はこれまで障がい者運動団体の強い働きかけで、「障がい者へのヘルパー派遣には、それぞれのニーズを踏まえた派遣時間を決定すべきで、時間数の上限設定はすべきでない」との通達を、都道府県に対し、毎年のように出してきた経緯がある。食事や排泄などで、常時介助を受けなければ生きていけない重度の障害者にとって、それは当然の要求であった。
これまでの国の方針を百八十度転換する重大問題を、審議会も経ることなく、厚労省の一握りの幹部が極秘裡に進めてきたのである。坂口厚労省大臣は新聞記者の質問に「自分も知らされていなかった」と述べ、一部幹部の独走に不快感を露にしたという。
厚労省ロビーを埋
めつくし抗議行動
一月十四日、第一波の緊急抗議行動が、DPI(障がい者インターナショナル)日本委員会やJIL(全国自立生活センター協議会)など四団体の呼びかけで行われた。
集合時間の正午には、厚労省一階ロビーは、全国から結集した障がい者・支援五百人によって完全に「占拠」された。入り口ではビラまきと宣伝カーの情宣が同時並行で行われた。省内が騒然とした雰囲気の中、二時からは四団体と厚労省障害福祉課・企画課・支援費準備室との団体交渉が開始された。厚労省の説明は、以下の点に尽きる。
「国から市町村へ、障がい者福祉予算を配分する際の目安として、重度の方は月百二十時間とかを設定したいということであって、支援費の支給時間を国が決めるということではない。市町村が独自に上乗せして百二十時間を超える支給をすることは十分ありえるでしょう」。
実にふざけている。国が、がっちり税収を押さえている現状にあって、国からの配分が月百二十時間で、どうして市町村が十二時間とか二十四時間の支給をできるのか。結集した障がい者は、日頃の市町村とのやりとりでこのことをいやというほど知らされている。だからこのような口先だけのペテン的説明に納得する者はいない。当然、轟々たる非難・ヤジ・怒号が厚労省官僚に浴びせ掛けられた。
五時までの交渉でも、厚労省側はこの説明を繰り返すのみで、埒があかない。怒った障がい者は、席をけり厚労省大臣に面会を求めて十一階の大臣室に向かった。ピケを張る職員・守衛・警官と対峙して約八十人が廊下に座り込んだ。あまりの人数の多さと怒りのすさまじさに、警察もなすすべもない。厚労省の業務は完全にストップした。
四団体と厚労省の折衝で、翌日に社会援護局の局長との交渉がセットされることになったが、結集した障がい者の怒りは収まらない。ロビーでの報告会では、突如としてこのような方針を出し多くの障がい者に不安を与えたことと、団交中に「二十四時間のヘルパー派遣は多すぎる」と発言した障害福祉課郡司課長に対し、謝罪を求める発言が相次いだ。
数百人の障がい者・支援の前で、郡司課長はハンドマイクで「みなさんに不安と不快感を与えたとしたら、謝罪します」と不承不承、謝罪を口にしたが、依然として「方針は撤回しない」ともつけ加えた。
このような態度に、厚労省のなみなみならない「覚悟」と、おそらくは財務省から「絶対譲るな」との指示が出されているのだなと感じさせられた。
上限設定阻止へ厚
労省を包囲しよう
翌十五日の局長交渉でも何ら事態は進展せず、私の直感を裏づける結果となった。十六日には十四日の四団体に加え、日本身体障害者団体連合会・日本障害者協議会・手をつなぐ育成会も参加した大規模な抗議行動が約一千人の障がい者・支援によって取り組まれた。十時から三時まで続いたロングラン交渉でも、厚労省は従来の方針を譲らず、交渉は決裂した。
厚労省は、一月二十八日に都道府県の障害福祉課長を集めた、全国課長会議を開催する予定であり、この会議で上限設定の方針を正式に発表し、決着をつけたい腹のようだ。
しかし、ここにきて都道府県からは、突然の上限設定に反対する動きが顕在化してきている。東京都は一月十五日付けで、都障害福祉部部長名の申し入れを、厚労省障害福祉課長あてに送付している。
その中では「上限の設定は、支援費制度のもと、ホームヘルプサービスの充実に係わる負担を地方にしわ寄せするものであり、実質的には障害者に対する利用時間の制限と同様の意味を持つものとなります」と述べ、「一律的な上限を設定しないこと」を厳重に申し入れている。
同様の動きは他の道府県にも広がりを見せており、厚労省への包囲網は日々強まっている。1・14を闘った団体は支援費制度全国緊急行動委員会を作り、上限設定の動きを阻止するまで連続した闘いを展開しようとしている。 (赤井岳夫)
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