| フランス年金改悪・公共サービス民営化・教育リストラ かけはし2003.12.1号 |
今年五月から六月、ラファラン右翼政権による年金改悪や民営化などの新自由主義的攻撃に反対する連続した全国的ストライキと、数十万人を動員する大規模な街頭デモが繰り返された。CGTやCFDTなど大労組指導部がほとんど屈服するなかで展開されたこの闘いは、フランス社会運動の新段階を示すものである。
最も戦闘的な部分の決意が、この運動にめざましい力を与えた。運動の力は、政府とCFDTの合意からもたらされた組合の分裂を克服した。CFDT機構は闘争の発展を押しとどめることはできなかった。全体会議で統一を実現した教員に率いられて、組合と共同行動組織や一般に他の部門の人々が統一して動員を組織した。自己組織化のこの過程は全体集会や労働組合支部を闘いに巻き込んで展開され、下部レベルにおける職業を超えた協調はこの運動の基本的獲得物の一つとなり、将来への足がかりを築いた。
この運動は労働組合の再構成をもたらすだろう。運動の内容と力学を通じて、運動は再編成の主軸を描き出した。年金、公共サービス、社会的保護などの重要な問題に関する社会のオルタナティブの選択に関して、運動は明らかにそのベクトルとなっている。運動はCGTとCFDTの指導部がこの数年提唱してきたCGT・CFDT枢軸問題を内包したものにするだろう。運動はFSU、US・G10連帯およびCGTとCFDTの重要な部分の収束点を示している。
政治的レベルでは、バランスシートからは旧「複数左翼」政党(旧政権与党)と運動の要求が同調していないことが確認される。また、これらの要求と波長が一致する急進的左翼の存在が確認される。急進的左翼の活動家は全面的に運動に参加し、その政治的反応によって社会的ニーズにもとづいた社会のプロジェクトの骨子を提起し、それを構築する力の必要性を提起した。確かに二つの左翼が存在する。一方は新自由主義の色に染まり、もう一方は明確に反資本主義的である。
運動のさなかに開催された社会党(PS)のディジョン大会において、代議員はフィヨン・プランの撤回を要求する動議に賛成投票をした。しかし、この宣言は内部の異議と、とりわけ六月の論争中にPS国会議員が提出した修正の論理によって破棄された。バルセロナ・サミットにおけるジョスパンの約束が、PS指導部の払い込み期間の延長受け入れに反映した。
しかし、運動は社会党が次の選挙で政権の候補者として立候補するのを許さないだろう。緑の党はこの運動の中では完全に沈黙し、PSのやり方を支持していた。フランス共産党(PCF)は、運動に参加したが、動員やゼネストの必要性に関して立場を明確にするのを避けた。基本的には、緑の党とPCFはいまなおPSとの選挙協定の義務に悩まされており、社会的急進化の論理の外にいる。
LCR(革命的共産主義者同盟・第四インターナショナルフランス支部)は、運動の要求と闘争形態に基づいて社会的政治的左翼全体の行動の統一のためにアピールをまとめ、グローバルな政治的方向に関する議論を進めた。
「労働者の闘争」(LO)派も、ストライキを開始し、進め、拡大するために介入したが、この組織には二つの問題があった。第一に、ゼネラル・ストライキの目標を設定することを拒否したことである。言葉の問題以上に、そこには疑いもなく運動の力学に関する理解の相違がある。LOは、CGTの立場に逆らった教員のストライキがゼネラル・ストライキの原動力になり得ることを、現実的と考えなかった。
第二の問題は、大衆運動の中の民主主義に関連している。LOにとって中心問題は、六月のLO祭りにおけるLCRとの論争の中で彼らが述べたように、「闘争の効率」なのである。「民主主義は闘争の形態にのみ関連する」のである。したがって、調整は急進的活動家の結集としてしか考えられない。それもLOの周囲の活動家の結集である。自己を組織化した、統一した民主的大衆運動の表現として考えられていない。
この違いは、運動の中で、国立教育機関の職員の調整の中で、確かなものになった。LCRとLOは「肩をならべて」介入したが、「いっしょに」は行動できなかった。それにもかかわらず、広範な民衆にとっては、極左派の活動家が同じ方向に進み、運動の中で政治的責任を担った唯一の戦闘的政治的組織であった。
LCRは二月一日以来、社会的運動に対して政府の攻勢に挑戦し、政府を押し戻すためにゼネラル・ストライキを準備するように提案した組織であるとして自己を認識している。LCRのすべての活動家は活発に運動に参加した。このことはオリビエ・ブザンスノーが取った立場に現れており、また、デモ、街頭、メディアにおいてLCRが取ったイニシアチブに現れており、運動のただなかにある政党としての政策に現れている。
フランスの社会的政治的状況は依然として異例である。フランスは一年に三度の数十万から数百万の動員の波を経験した。反ルペン、反戦、反新自由主義的改革の動員である。この闘いの本質的に積極的な点は、闘いの中に、労働組合員の中に、調整を組織した若い教員の中に新しい世代が登場したことである。
六月の終わりから夏の間に、エンターテインメント産業の中でアーティストやテクニシャンの継続可能ゼネラル・ストライキとして、運動は再び目覚しく表面化した。これは失業基金を脅かす協約に反対する闘いで、この協約に署名したのはまたしてもCFDT指導部であった(3)。この運動はめざましい形態を取り、何十ものフェスティバルをキャンセルに追い込んだ。やはりここでも、調整と対立の民主的管理を行なる高いレベルの自己組織化が存在した。
職業を越えた結びつきという獲得物、新自由主義的資本主義に対するオルタナティブの道をたどる要求は、来るべき闘いの武器として役立てるために保持する必要がある。夏の間に多くの機構が出会い、イニシアチブを取り、秋には政府の改革に反対する動員を再開することを約束した。
最後に、驚くべきことは、すべての民衆セクターの中に組織され根づいた急進的政治的勢力が存在しないことである。この運動は、極左派の選挙結果の別の側面からの確認であった。社会自由主義左派の吸引力に対するオルタナティブの極の必要性を確認するものであった。
LCRはこの引きつける極を構築する上で大きな責任を持っており、LCRの夏期大学と秋の集会で、政治的活動家、労働組合活動家、連帯運動活動家とともにこの目標を追及するために最善を尽くしたイニシアティブを取ることを決定する予定である。
訳注
(1)フランス労働組合運動は非常に「複数」的であり、他の国に比べて非常に細分化されている。労働総同盟(CGT)はいまなお最大の労働組合勢力である。第二次世界戦争以降フランス共産党(PCF)に指導されていたが、指導部は数年にわたる自立化の過程を開始した。これはPCFの衰退に関連している。PCFは選挙基盤の本質的部分を失った(二〇〇二年の大統領選挙ではPCFの候補者ロベール・ユは三・三七%しか獲得できず、百万票に満たなかった。これは極左派の二人の候補者より少ない)。
また、欧州労働組合連合(ETUC)内部の統合にも関連している。フランス民主主義労働同盟(CFDT)は、第二の全国連合であり、一九五〇年代および一九六〇年代のキリスト教労働組合主義の急進化から生まれた。一九六八年五月の運動に押し上げられ、一時は自己管理社会主義プロジェクトとCGTとの統一行動を唱えた。
一九七〇年代の終わりから指導部は「ノーマライゼーション」路線を取り、次第に公然と集団的闘争に反対するようになった(集団的闘争は、郵便および電話におけるSUDや保健におけるCRC―SUDのような組合の出現をもたらした。これらの組合は活動家集団によって組織され、一九八七年に除名された)。
第三の全国連合はFO(労働者の力)派である。一九四八年のCGTからの社会民主主義派の分裂によって生まれた。ストライキより交渉を重視する傾向が強かったが、一九九〇年代の新自由主義的改革に反対する時期に、より戦闘的な言葉を採用するようになった。CFDTと同様、FO派もETUCに参加している。
統一労働組合連合(FSU)は解散した全国教育連合(FEN、一九四八年のCGTとCGT―FOの分裂を拒否した)の活動家の多数派から生まれた。
フランス・キリスト教労働者同盟(CFTC)は、一九六二年に多数派が脱退してCFDTを結成して以降は小さな組織に留まっている。
自治労働組合全国連合(UNSA)は主として公務員の複数の自立組織を結集したもので、教職員組合を含む。幹部一般連合(CGC)は別の公務員組合である。
最後に、新しいグループとして、労働組合グループ10連帯がある。これはSUDのイニシアチブにより作られた。
これらの組織の外側に、労働者全国連合(CNT)がある。精神的にはアナーキストで、一般に労働組合選挙への参加に反対しているが、デモストレーションやいくつかの職場では一定の存在である。
(2) 二〇〇二年四月二十一日に行われた大統領選挙の第一回投票は、政治的分化の進行を明らかにした。極右派国民戦線の候補ジャンマリー・ルペンの得票が大幅に増加し、極左派のLO派(アルレット・ラギュイエ)とLCR(オリビエ・ブザンスノー)が躍進した(極左三候補を合わせると三百万票近く、一〇・四四%を獲得した)。
社会民主主義派の候補者、元首相リオネル・ジョスパンの得票は激減し、「共和派右派」の候補者前大統領ジャック・シラクも大きく後退した。特に非民主的な選挙制度のおかげで、右翼のジャック・シラクと極右のジャンマリー・ルペンの間で第二回投票が行われた(シラクが八二%を獲得して当選した)。
(3) CFDTは、エンターテインメント業界のアーチストとテクニシャンのストライキの中には事実上存在していない。フェデラシオンCGTデュ・スペクタクルが組合員の八〇%以上を代表している。(「IV」03年9月)
第2回ヨーロッパ社会フォーラム
新自由主義的ヨーロッパに反対しグローバルな正義求めて
レオンス・アギール
フィレンツェでの第一回会合から一年後、第二回ヨーロッパ社会フォーラムは十一月十三日から十五日までパリ、ならびにかつて「赤いベルト」(訳注:パリに近接した労働者居住区で共産党の拠点)だった三つの都市、サンドニ、ボビニ、イブリで開催される。
このイベントは、社会的諸権利のヨーロッパのためのキャンペーンと動員を通じて、新自由主義的ヨーロッパに反対し、社会運動とグローバルな正義を求める運動に新たな前進を可能にするものである。それはもう一つのヨーロッパの展望、すなわち労働者と民衆の社会的・民主的ヨーロッパに信頼性を与えるものになるだろう。
フィレンツェは何
を切り開いたのか
あれからまだ一年もたたないが、フィレンツェで開催された第一回ヨーロッパ社会フォーラムを想起しよう。
二日半にわたる熱烈な討論には数万人の活動家が参加した。そのほとんどはきわめて若い、さまざまな政治的色合いを持った「グローバルな正義」運動の活動家、労働組合員、フェミニスト、エコロジストだったが、そのすべてが、資本主義的グローバリゼーションが人間にとって破滅的であり、もう一つの世界は可能であるということを深く確信していた。そして土曜日の午後には、アメリカがイラクに対して開始しようとしていた帝国の戦争に反対する百万人のデモがフィレンツェの街頭を埋めつくした。
社会運動の会議から戦争に反対するアピールが発せられ、それは二月十五日の全ヨーロッパにわたるデモをもたらした。それはポルトアレグレにリレーされ、世界社会フォーラムの枠組みを通じて、このアピールはかつて地球規模で組織されたもののうちで最大の反戦デモを導いた。
「グローバルな正義の運動はイタリア・ルネッサンスの発祥地の一つを略奪しようとしている」、と数週間にわたって予告してきたベルルスコーニと彼の政府は、はねつけられてしまった。このデモは、一年前のジェノバのG8反対デモを特徴づけた激しい暴力と混乱がデモ隊によるものではなく、「秩序の勢力」の責任によるものだということをはっきりと示した。
それ以外の重大な敗者は社会自由主義潮流だった。欧州労組連合(ETUC)と社会民主主義諸党の指導者たちは、彼らの方針の大部分が討論の中で拒絶されたのを見ることになった。ラディカル潮流を周辺化し、社会運動、ラディカル左翼政治組織に反対しようとした彼らの目論見は、嘆かわしい失敗に終わった。このヨーロッパ社会フォーラムで現れたものは、二つの左翼、一つの社会自由主義、そして市場経済と利潤極大化の追求という至上命令を拒否するその他の人びとであった。政治組織と社会運動の双方にわたって、この亀裂が走った。
その後、積み重ね
られた運動の前進
パリのヨーロッパ社会フォーラムは、この力学を増幅させるという大きな希望を持っている。そしてそれは可能である。フィレンツェ以来、イラクでの戦争に反対する巨大なデモ、緊縮政策、社会的諸権利とりわけ年金、社会福祉、公共サービスへの攻撃に反対するいくつかの国での動員、時にはゼネストにもなったストライキが行われてきた。フランスでは数週間にわたるストライキによって全国の教育がマヒ状態におちいった。
グローバルな正義を求める運動について言えば、アンネマスとジュネーブでの反G8デモや、世界貿易機関(WTO)に反対するラルザックでの二十万人以上を結集した巨大な集会によって、その活力が示された。
それに加えて、九月のカンクンでのWTO会議が合意に達しなかったことが挙げられる。これらすべての諸要素が、第二回ヨーロッパ社会フォーラムを大きな反響を呼び起こすイベントに仕立てあげているのだ。フィレンツェと同様に今回のヨーロッパ社会フォーラムは、資本主義の正当性への批判、そして欧州連合とさまざまな欧州諸国を支配する人びとへの反対を後押しするものになるだろう。
5日間のフォー
ラムの5つの軸
ヨーロッパ社会フォーラムでの六十の講演と二百五十のセミナーは、新自由主義政治のすべての側面をカバーするものである。そこには大きく言って五つの軸が存在する。
a 戦争に反対。平和、公正、連帯、そして世界に開かれたヨーロッパを。
b 新自由主義反対、家父長制反対。社会的・民主主義的諸権利のヨーロッパを。
c 利潤の論理に反対。社会的に公正でエコロジー的に持続可能な社会を。食糧主権を。
d 商品化に反対。情報、文化、教育の面で民主主義的なヨーロッパを。
e レイシズム、外国人排斥と社会的排除に反対。諸権利の平等と諸文化の対話を。移民、難民、亡命を求める人びとを歓迎するヨーロッパを。
この五つの全般的な軸は、次に上げるような戦略的問題によって補足される。それはフェミニズムの社会運動への貢献、極右に対する闘い、次の社会フォーラムに向けた広がりと力学、資本主義的グローバリゼーションへの反撃の欧州中心主義的ビジョンを避けるために、世界に向けて開かれたものにすること、政党と社会運動との対立、さらに障害者の権利、子どもの権利、都市問題、民族問題、イスラムなど、一般的に過小評価されてきた一連の諸問題である。
この万華鏡は、資本主義的グローバリゼーションの諸結果に反対するさまざまな抵抗と動員に一貫性を与えることを可能にし、こうしたさまざまな複数主義的抵抗は、資本主義に対する一貫性を持ったオルタナティブな構想の下に統一する可能性を持つ場合にのみ勝利できることを示しうる。
十一月十二日の水曜日には、女性の権利のためのヨーロッパ集会が開催される。それはヨーロッパ社会フォーラムの公式行事ではないが、その目的に完全に適合したものである。このイニシアティブの目標は、女性の抑圧に関連した諸問題を強調し、この抑圧を強化する新自由主義政策を批判し、女性とフェミニスト組織の闘争を発展させ、こうした諸課題をヨーロッパ社会フォーラムが全体として取り上げるよう保証することにある。
大規模なものになることが約束されている土曜日(十一月十五日)の街頭デモは、以下の諸要求を基礎にしたものである。すなわち公共サービス・社会福祉・年金の防衛、あらゆる差別の拒否、レイオフ禁止、戦争反対、人間の活動の商品化反対、地球の破壊反対である。
最後に社会運動の全体会議が、この五日間にわたる動員をしめくくる。新欧州憲法を立ち上げ、欧州連合を拡大し、社会的諸権利と公共サービスへの攻撃を深化させる二〇〇四年は重要な年になるだろう。この会合が、全欧州規模での動員の支点を構成する社会的諸権利防衛の呼びかけを発することができれば、それはきわめて重要で有益なものとなるだろう。
戦争に反対する動員の継続に関して言えば、この集会が議題に乗せるべき二つの重要なイベントが提起されている。第一はクリスマスと新年の間に、「戦争とすべての占領に反対し、パレスチナ人民の権利を防衛する」組織が、パレスチナ、イラク、クルディスタンを横断するキャラバンを行うことである。さらにアメリカの二百組織によって、イラクへの侵略の開始を心に刻み込み、占領をやめるよう求めるために、二〇〇四年三月二十日にデモを行うアピールがなされている。
「もう一つの世
界」への希望を
ヨーロッパにおける資本主義的グローバリゼーションに対するオルタナティブな反撃を討論すること、あらゆる分野で全ヨーロッパのネットワークを確立・強化すること、この半世紀に勝ち取られたすべての社会的諸権利を一掃する目的を持った新自由主義的攻撃に反対する大陸規模の動員を支えること――これがわれわれの目標である。
国際主義は数十年間にわたって嘲笑され、存在してこなかった。世界社会フォーラムと各大陸の社会フォーラムは、この状況を克服する他に代えがたい枠組みを提供している。それは、労働運動が社会運動とともに、もう一つの世界というこの大きな希望に真の信頼性を与えるために、必要な結集を作りだすことを可能にしている。われわれはあらゆる形態の抑圧が追放される搾取なき世界、富が自由な時間によって測定される世界、エコロジー的均衡が尊重される世界を望んでいる。
第二回ヨーロッパ社会フォーラムはこうした方向へのステップとなりうる。それは失敗してはならないイベントなのだ!
(レオンス・アギールは革命的共産主義者同盟〔LCR、第四インターナショナル・フランス支部〕政治局員)
(「インターナショナルビューポイント」03年11月号)
台湾
次期総統選挙で、労働者階級はどう行動すべきか
階級的労働者政党建設めざして
工人民主協会
来年三月、台湾の次期総統選挙が行われる。以下は『連結』誌を基盤に、革命的労働者政党の建設をめざして結成された工人民主協会が、国民党と民進党という二大ブルジョア政党間で争われる総統選に向けて発表したもの。
国民党の一党独裁から民進党への政権交替が実現したが、ますます多くの人が、そもそも両党がこれほど近く、そもそもどちらが政権についても、たがいにブルジョアジーに奉仕することを競い合い(たとえばブルジョアジーのための減税、民営化、労働法制の改悪、リストラと賃下げ、高学費政策など)、ブルジョアジーの従順な下僕たらんとし、どちらが勝利しようと、台湾における大企業の支配であることには変わらず、労働者民衆は永遠に主人公になれないということをはっきりと認識し始めている。
いま、われわれははっきりと次のことを指摘しなければならない。国民党―親民党(注1)と民進党の二大陣営が真に代表しているのは労働者階級の利益ではなく、ブルジョアジーの利益であり、それはブルジョア政党であると。両陣営の同質化に直面し、労働者階級は今回の総統選挙でなにをなすべきなのだろうか。
この問題に答えるには、まずこれまでの労働組合あるいは労働運動団体のそれぞれの考えを検討しなければならない。
いくつかの労働組合の指導者は積極的にどちらかの陣営を支持している。このような態度は、よくても「労働者に関心を寄せている」という化粧を二大陣営に施すに過ぎない。もしかしたらごく一部の政策は労働者にとって有利かもしれないが、労働者階級全体の状況が根本的に変化することはない。
もっとも可能性があり、また最悪と考えられる結果として、二大陣営に対する労働者階級の幻想を促進し、敵の台頭を支持し、労働者をして「売り飛ばされたにもかかわらず、お札の枚数を数えさせる」ということである。またごく少数の労組指導者は、ある期間は脚光を浴びる政治的人物になるかも知れないが、労働組合は労働者階級の自主性、進歩性を喪失し、広範な労働者大衆の利益は掘り崩される。
また別なスタンスとして、労働者のための選挙政策を提起し、圧力団体として二大陣営に対して投票前に同意を取り付け、選挙後にその公約を実現させる方法をとるものもある。票のためには各政党は当然にも空手形の発行を惜しむことはない。しかし彼らはそもそもそれらの公約を実現するつもりはなく、またこれまでも公約(40労働時間、民営化の速度を緩和するなど)を裏切り続けてきた。このようなスタンスは、たんにブルジョア政党に利用されるだけで、労働者自身の政治的力を結集させることはできない。まさかまたもや四年に一度のペテンのゲームに興じなければならないということもあるまい。
台湾の運動圏は、かつて労働者政党を組織した経験があり、それは結局失敗した。その原因は、労働者階級の政党を組織するという目標が間違っていたのではなく、組織的基礎がそもそも不安定で、方向性がはっきりせず、確固とした理想を持つ労働運動活動家や労組指導者と、労働者の票を利用してのし上がったり、いわゆる「労使協調」を追求する政治屋との共闘であったことから、当然にも長続きしなかった。このような党は堕落か分裂の道をたどるしかなかった。
われわれは、労働者階級がこれ以上時間と力を浪費することはできない、腐ったリンゴを選ぶというゲームに興じる必要はない、コネクションを通じて実現されることのない公約を票と引き換えにする必要はないと考える。
労働運動圏は闘う方向を明確に設定しなければならない。すなわち今後は各種抑圧と搾取に対する労働者民衆の長期にわたる断固とした抵抗が必要となるだけでなく、同時に政治的闘争を推し進め労働者階級の政党を建設し、労働者民衆の民主政府を樹立し、それを通じて民衆に有利なさまざまな改革を推し進め、大企業と富裕者による社会経済の動脈に対する操作を打破する努力を地道に続けなければならない。今回の選挙がそのスタートとなるのである。
立法委員選挙を目標に、今回の総統選挙を左翼政治勢力結成のスタートラインにしよう
可能であるなら、労働運動と他の進歩的社会運動が今回の総統選挙で労働者民衆を代表する候補者を出して、理念を宣伝し、組織を拡大することが理想的な選択であった。
もちろん歴史的な分岐や時間的緊急性、限られた資金などすべて困難を伴っている。もしさまざまな限界から、今回の総統選挙に我々が候補者を出せないのであれば、すくなくとも共同のプロジェクトで、来年末の立法委員(国会議員)選挙を目標に、社会運動を代表し、労働者民衆を代表する候補者を共同で立候補させなければならない。
もし労働者階級政党の建設を中期的目標とするのであれば、立法委員選挙に労働者階級の候補者を立候補させる共同戦線は短期的目標となるだろう。われわれは今回の総統選挙において、計画と主張を伴った組織的な白票運動を推進することに賛成する(注2)。
この白票運動が有権者から、希望のない、前途のない消極的行動であると誤解されないように、展望を持ち、力強い大衆運動として左翼政治勢力の登場となるスタートの銃声であることを知らしめなければならない。
いかにして白票運動を労働者階級政党建設のための運動にするのか。われわれはブルジョア政党に対する民衆の失望を凝縮させ、突出させるだけでなく、両陣営の政策の無内容さと保守性と相互雷同の実態を暴露し、労働者階級が新たな価値観、新たな理念、新たな主張を持たなければならないことを、この運動を通じて明らかにしなければならない。
白票運動が単に「はした金のバクチ」とならないために、「二大陣営に対する有権者の消極的行動を積極的な政治的参与に、消極的なものから積極的なものに、受動的なものから主体的なものに転換する」ために、「声をかき消された周縁的有権者から政治局面の発展を主導する第三の政治勢力へと転換する」ために、われわれは現在労働者民衆が最も改革が必要と感じている諸問題(中台関係、金権政治、税制政策、失業、エコロジー、民営化、教育、医療保険、性など)について進歩的な共同綱領を提起し、労働組合や職場、地域、学園などで宣伝と組織活動を展開し、民衆の支持を勝ち取り、この運動を本当の「階級政党の発展に向けた第一歩」としなければならない。
ここでいくつかの基本的な綱領を提起し、討論の参考としたい。
中台関係と反戦
b武力と恫喝による統一反対。両岸政府は対等に交渉して徐々に両岸の問題を解決し、交渉の内容は随時民衆に公開せよ。
bアメリカやイギリスなど強権国家による反テロ戦争の発動を拒否する。
大企業支配と金権政治
b大企業の政治献金を禁止する法律の制定。
b労働者、消費者による監督のための大企業及び大株主の銀行口座の公開。
b政府部門、公営事業、教育、医療機構の私有化(会社化、民営化など)と業務委託の停止。
b大ブルジョアジーに対する政府の優遇措置(補填、税の減免を含む)の停止、累進課税の推進、税収を公共サービス、政府債務の償還にあてる。
労働者の権利
b国籍、民族、性別、エスニックグループ、性的傾向および心身障がいにもとづく差別と偏見を禁止し、同一労働同一報酬同一権利を保障する。中国から来た配偶者、移民に対する各種の偏見をなくし、居住権、市民権の取得必要年限の延長に反対する。
b公務員教員の団結権を保障し、労働三権を制限する改正法案を撤回する。
b集団的解雇の禁止
b賃下げなき労働時間の40時間への短縮とすべての労働者と失業者に対するワークシェアリング。政府の公共事業(環境保護、医療、教育、社会福祉など)による長期的で安定した就業機会の保障。
社会福祉と教育
b国防予算を削減し、その経費を教育、医療、社会福祉などの支出にあてる。
b政府は無償で医療サービスを提供し、公共医療制度を確立し、民間医療機関を徐々に国有化すること。
b政府は無償で広範囲で便利な全日制の託児センターおよび安価で良質で広範囲の社会サービス(飲食、清掃、クリーニング等)を計画的に発展させること。
b政府は無条件に教育関連支出を全面的に増額し、その費用は累進課税を調整し、企業と富裕層から調達すること。
b公立学校を広範囲に設立し、企業による学校設立を禁止し、校務は全教職員と学生の共同で決定する。
b学費の引き上げをすぐに停止し、学費は誰もが負担できる金額に引き下げていき、奨学金の全面的支給、貧困青年の問題を解決すること。
エコロジー
b鉄道など低汚染の大量輸送システムを発展させ、民間運輸システムの発展を中止すること。
b政府は原発の建設を中止し、労働者の労働権を保障するという前提の上で、現在稼動している原発を廃止し、計画的に再生エネルギーを発展させること。
bごみ焼却場の建設をやめ、公営の地域資源回収システムをつくり、廃棄物の削減と回収を促進させること。
政治の総スローガンを形成し、票に民衆の意志を反映させよう。
【「以上皆非」】は既存の政党への拒絶を表明するものであるが、われわれが追い求める理想を表現することはできない。白票運動は広範な討論を通して、運動のコンセンサスを結集させ、全般的な政治的スローガン(「大企業政党を拒否し、労働者党を建設しよう」、「労働者政党を建設し、平等社会を実現しよう」、「大企業の支配を拒否し、平等社会を追求しよう」など)を提起し、広範囲に宣伝する以外に、有権者が票にスローガンを記入するかシールを貼るなどの方法を提案し、このような小さな行動を通じて民衆の意志を結集させ、運動理念を鮮明化し、われわれのスローガンを民衆の動きの中に吹き込ませなければならない。
注1 台湾の総統選挙は、総統と副総統の候補者をセットで選ぶ。前回二〇〇〇年の総統選挙では、国民党から追い出され親民党を結党した宋楚瑜が立候補したことから旧来の国民党票が分裂したことも影響し、民進党の陳水扁が総統に当選した。二〇〇三年三月に予定されている総統選挙では、国民党の連戦主席と親民党の宋楚瑜が統一立候補する。
注2 社会運動は政治と一線を画すべきだ、という主張をもつ労働運動団体が、民進党も国民党―親民党も支持できない、白票を投票しよう、という呼びかけを運動権に提起した。各種運動団体や労組指導者は、それまでの政党との関係や中国との関係から、白票運動には消極的である。また白票投票は、結果的に国民党―親民党陣営を利することになる、という主張もある。その中で、工人民主協会は、短期的な利害や感情的反発からではなく、台湾労働者階級の闘争方針の明確化と政治化こそが急務であるという立場から、白票投票を支持するが、単に政党拒否の白票投票ではなく、労働者階級の政治的結集のスタートとするべきである、という積極的な主張をしている。
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