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                           かけはし2003.12.9号

イラク派兵を阻止しよう

戦場に自衛隊を送るな!

「基本計画」閣議決定強行を糾弾し首相官邸前で抗議行動

 十二月九日、小泉内閣はついに自衛隊派兵の「基本計画」を閣議決定しした。
 十一月二十九日の日本人外交官二人の射殺事件は、「テロに屈してはならない」という小泉の強硬姿勢の一方で、あらためて派兵反対の言論を活発化させることになった。自民党など与党内からも「慎重論」が続出した。
 しかし小泉首相は、十二月六日に行われた二人の外交官の合同葬で二人を「日本国、国民の誇り」であり「意思を受け継ぎ、国際社会と協力して、イラク復興に努め」るという「哀悼の意」を述べた。それは八割にものぼる派兵反対世論を押し切り、二人を「英霊」化することによって、ブッシュのグローバル戦争に追随した「恒常的派兵国家」への道を切り開こうとする小泉政権の後戻りできない選択を確認するものであった。そのため、小泉政権は、自衛隊専門調査団の報告に基づいて自衛隊が派遣されるイラク南東部のサマワ周辺を「おおむね安全な区域」と強弁したのである。
 「基本計画」によれば、自衛隊の派遣規模は主力の陸自が約六百人で車両が約二百両。武装勢力からの攻撃と戦闘を想定して対戦車砲、無反動砲、最新鋭の装輪装甲車や軽装甲機動車などを伴った重武装部隊となる。海自は輸送艦二隻、護衛艦二隻など、また空自はC│130輸送機など「八機以内」とされる。派遣地はサマワなどムサンナ県を中心としたイラク南東部、任務は「医療、施設、利水条件の改善」などの「復興支援業務」の他に、米軍物資の「輸送」も含まれる。派遣規模からすれば、米英軍を除けばイタリア、ポーランド、ウクライナ、スペイン、オランダに次ぐもので、ヨーロッパ以外では最大となる。
 高村正彦外相は「イラク戦争の大義についていろいろ意見があるが、復興への協力に『大義がない』とは誰も言えない」(毎日新聞、12月9日)と述べている。しかし自衛隊が担う「復興」とは、米英軍の大義なき戦争と占領を前提にしたものであって、両者を切り離すことなどできないのだ。まさに米英軍の不法きまわる侵略と占領支配を支える中心的部隊の一つとして自衛隊がイラクの民衆に銃口を向けることになるのである。
 こうしたイラク派兵基本計画の閣議決定に抗議して、十二月九日の午前九時半から戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動、キリスト者平和ネット、宗教者平和ネットの三団体が呼びかけて、衆議員面会所で集会が行われ、百人以上が集まった。集会には社民党の山本喜代宏衆院議員も参加してあくまでイラク派兵に反対する決意を述べた。
 議面集会の後、主相官邸前で抗議行動。「自衛隊をイラクに送るな!」のシュプレヒコールが大きく響きわたった。続いて仲間たちは、信濃町の公明党本部に赴いて、十人の代表が公明党本部の担当者に対して口々に、自衛隊イラク派兵容認方針の撤回を求めて熱っぽく訴えた。   (K)


「もう犠牲者はいらない!」
イラク派兵中止を求めて市民緊急アクション

 十二月七日、東京銀座、水谷橋公園で「もう犠牲者はいらない、わたしたちはイラク派兵の中止をもとめます!12・7市民緊急アクション」が開催された。主催は、「戦争反対、有事をつくるな!市民緊急行動」、「平和フォーラム」など二十数団体で構成された集会実行委員会。開会前には百五十人ぐらいだった市民が、デモ出発時には七百人となり、小さな公園が人であふれかえった。
 集会オープニングとしてアジアン・スパークの仲間が、大きなボールをボーリング・ボールに見立て、小泉のお面をかぶった人々をピンとし、参加者がボールを転がして小泉ピンを倒そうというパフォーマンスを行った。続いて司会の「許すな!憲法改悪・市民連絡会」高田さんは、「日本人外交官二人とイラク人運転手が亡くなったことに対し、小泉は『意志を受け継ぐ』などと宣ったが、この死に対する直接的最高の責任者が小泉首相にある。今日、用意したプラカードにある福田官房長官、川口外相、石破防衛庁長官ら五人組にも責任がある。私たちは、自衛隊にイラクに行ってもらいたくないし、イラク民衆に銃口を向けて欲しくない。そのために、九日午前九時半に首相官邸前で抗議の声をあげ、同日公明党本部にも派兵反対要請行動を行いたい」と訴えた。
 「平和をつくり出す宗教者ネット」からは、「宗教の違いを超えて平和のために行動するネットワークを作ってきた。自衛隊のイラク派兵は、国際法にも憲法にも違反し、人道支援などではない」とのアピール。
 イラク戦争人間の盾に参加した仲間からは、「『人間の盾』としてイラクにいた時、亡くなった井上さんで食事をともにし、よく話し合った。告別式の時写真を見て、死の実感が湧いたが、日本政府としての償いをすべきだ」と語った。
 最後に、「納税者ネットワーク」から、「週明けにも足利銀行への公的資金投入と自衛隊派兵が閣議決定されようとしている。国会論議も全くないままの派兵に抗議するため、いま外務省前で毎日終電近くまで座り込みを続けている。今日もデモ帰りに外務省前に寄ってください」と座り込みの訴えがあった。
 また集会では、バグダットの高校教師から日本NGO宛のメールが紹介され読み上げられた。「……私はサダム・フセインを支援したことはありません。しかし、米国は武装強盗です。彼らは、毎日イラク人を殺しています。そして、普通の市民はだれも彼らを支持していません。今、ますます多くの人が抵抗運動に参加しています。彼らは旧体制の残党でも、テロリストでもなく、普通の人たちです。……米国を支援することに、日本人の生命を含め、あらゆる損失を被るだけの価値はまったくありません。侵略者が去った後なら、私たちは日本を歓迎します。しかし断じて『今』ではないのです。日本の人々に私たちの本当の気持ちを伝えてください。日本の軍隊はわが国を侵略してはなりません!私は日本を愛しています。ですから、私たちの敵にならないでください。私たちは、日本が独立した国として、正しい決定をすることを願っています」。
 デモでは、銀座界わいの人々が注目する中、イアラ派兵を止めさせたいとの願いが、衣装や呼びかけ、プラカード、横断幕にそれぞれの工夫となって表現されていた。この一週間の日本政府、小泉政権の動向に、来る十年の未来がかけられている状況の下、私たち一人一人が創意工夫を込めて、自衛隊イラク派兵反対の運動をつくっていきたいと思う。     (北野)



地域からイラク派兵反対の闘いを作り出すために
労働運動を軸に東京東部集会


 【東京東部】十二月三日、墨田区曳舟文化センターで「自衛隊のイラク派兵反対!いま地域からなにができるのか――12・3東京東部集会」が開かれた。主催は沖縄の闘いと連帯する東京東部集会実行委員会。会場には、地域の労働組合を中心に百八十人が参加した。
 集会を準備した実行委は九五年、沖縄で米兵による少女強かん事件をきっかけに大きく盛り上がった米軍基地撤去闘争と連帯するために作られ、アフガニスタン侵略戦争やイラク侵略戦争に反対して、東京東部地区で反戦運動を行ってきた。
 司会を東水労の山口さんが行い、地公労副議長の山浦さんが経過報告を行った。
 山浦さんは、「二人の外務省職員の死亡に対して、『犠牲にむくいるためにも、自衛隊を派遣しなければならない』と外務省や政府は言っている。これは完全に逆転した発想だ。いまこそ、自衛隊派兵を阻止しなければならない」と訴えた。
 清水俊弘さん(日本国際ボランティアセンター事務局長)は「イラクの現状報告/JVCの活動から」、大畑豊さん(非暴力平和行動隊日本代表)は「傍観はダメ、非暴力介入で暴力の連鎖を断つ」と題して講演をそれぞれ行った。
 清水さんは米軍による占領がイラク人の生活をより困難にしている実態や、九月から米軍などへの「テロ」が変化し、イラク民衆にも犠牲が及ぶようになり、これは国際テロ組織が入ってきているのではないかと、イラクの現状をスライドを使いながら詳しく報告した(別掲)。大畑さんはスリランカの経験から、非暴力で紛争地域の当事者に介入して、紛争を止めていく大切さを訴えた。
 講演の後、東部地区で活動する諸団体から報告が行われた。
 沖縄一坪反戦地主関東ブロックの女性は、年明けから、米軍普天間代替基地建設のボーリング調査が半年に渡って行われようとしていることを指摘し批判した。東京教組墨田支部の佐藤さんは、都立高で「日の丸・君が代」強制が強まっていることを報告し、来年2・14曳舟文化センターで教育基本法改悪阻止集会への参加を訴えた。続けて、韓青同東京本部のパクさんは石原都知事排外主義発言を批判した。足立の三反の会は勢力的に団地ビラ入れや駅頭情宣活動を行っていることを報告した。
 集会は決議を採択し、十二月九日、錦糸町駅、上野駅で一斉情宣活動を行うことを確認した。   (M)

清水俊弘さん(JVC事務局長)の報告から
米軍は再建ではなくイラク民衆を殺している


 現在、イラクに派兵している国は三十八カ国とこれから参加する二カ国がある。アメリカ、イギリス、ポーランドがエリアを分けている。JVCの活動をしていて、アメリカ軍から発砲されたことはあるが、イラク側からやられたことはない。米軍占領後、道路が片側車線しか通れない、水道は直っていない。水タンクの巡回が行き届かない所もある。旧フセイン軍人だった人が仕事がなく失業している。
 パレスチナ人は戦争前は優遇されていたが、いまは家主から追い出され、難民化している。劣化ウラン弾によって小児がんにかかっている子どもをバスラの病院で見た。クラスター爆弾は四割が不発で残っており、それによる被害が起きている。「テロ」をせん滅する米軍の作戦によって、多くの一般市民が傷つき死んでいるが、何の補償もなされていない。イラク民衆のストレスは増大している。こうした中で、日本人外交官二人の死は起こるべくして起こった。
 JVCは小規模な病院を立ち上げ、四カ所の病院に医薬品を送っている。しかし、長期的なプログラムをたてられない。
 七月〜八月にかけてイラクでの抵抗運動の組織化がされた。国連、赤十字、NGOなど外国人はみな同じ攻撃目標にされた。九月以後、国際的テロ組織も入ってきている。その後、イラク市民を巻き込むテロが起きている。イラクの警察官がねらいうちされている。
 今後のイラクは統治評議会の過半数を占めているシーア派が反米と親米に分裂していて、先行き不安定だ。
 マドリードで開催されたイラク支援国会議で三百三十億ドルの支援を決めたが、日本だけが十五億ドルの支出を決定した。ちなみにEUは二億ドルだ。自衛隊派兵をやめ、非軍事的な文民ベースの支援をすべきだ。これからもイラク市民がどうなっているのか伝えたい。(文責編集部)


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