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「女性のアイデンティティの再構築をめざして」つげ書房新社刊1800円                                かけはし2003.12.9号

「女性のアイデンティティの再構築をめざして」を読んで

「左翼運動内の官僚主義と女性差別を告発


われわれの在り方との対比

 本書の紹介は、すでに本紙(12月1日号)で行われた。私は読めば読むほど、著者とディグナスたちによる数々のメッセージと教訓の重さを感じると同時に、われわれの主体との関係でさまざまな観点からフィードバックしながら考察せざるをえなかった。JRCLとJCYにおける組織内女性差別問題の総括の深化と新たな組織論の構築を進める学習テキストであると確認すべきだという強い思いから、ここに再度取り上げた。また、本書は、諸運動団体・グループ内で、戦時や平時状況を問わず常に発生してきた組織内民主主義の後退、官僚主義、男性権威主義的対応、女性差別的な在り方に対する警告の書でもある。
 本書は、エルサルバドルのフェミニズムグループである「尊厳と生命を求める女性たち」=ラス・ディグナスが一九九三年の五月から八月にかけて取り組んだ「女性のアイデンティティの再構築をめざして」というプロジェクトの報告である。ディグナスは、ラテンアメリカに深く根づいているマチスモ(男性優位主義)社会を批判し、性暴力や労働・教育における女性差別に反対し、権利・健康向上運動や児童虐待問題などに取り組んできた。このような取り組みの一環としてこのプロジェクトが行われた。

エルサルバドル内戦と女性

 エルサルバドルでは一九七九年十月、米カーター政権に支援された軍部のクーデターが起き、八〇年にこれに対決する左翼勢力が統一軍事組織FMLN(ファラブンドマルチ民族解放戦線)を結成した。以降、十二年間という長期にわたる内戦が続いた。この過程でFMLNに多くの女性たちが参加した。
 国連エルサルバドル監視団は、一万五千九人のFMLN構成員のうち女性が四千四百九十二人、その中の二千四百八十五人が女性ゲリラ戦闘員だったと九〇年前半に報告している。FMLNに参加した女性たちは、民衆革命の勝利に向けて政府軍の日常的な暴力という極限状況に耐え、傷つきながら、感情さえも自己抑圧し闘い抜いた。彼女たちは、指導部、戦闘員、衛生兵、調理係、無線係、兵站、民衆オルグなどの任務に就いていた。そして、何人かは母親でもあった。
 その中の六十四人の女性たちがこのプロジェクトに参加し、自助グループワークで内戦時の「死と行方不明」「母性」「性暴力」「抑圧された性」「若い女性ゲリラ兵士たちの諸問題」「男らしさのモデルと女性兵士」について語り合った。
 この体験の語り合いは、FMLN構成員としての個々のポジションとケースから具体的にアプローチする。とりわけ内戦によって引き裂かれてしまったアイデンティティや女性というジェンダーを対象化し、内省しながら少しずつ掘り下げ、自己回復していくためのメンタルヘルス・プロセスを援助する役割を持っている。つまり、「強い弾圧下での体験に耐え、非合法活動の下で長い間生活してきた人たちが持つ特有な抵抗感や、不信感、不安を克服」していくための第一ハードルだった。

差別による打撃と自己回復

 だが、このハードル越えが、もっとも困難なものだった。なぜならば女性たちは、仲間や家族が死んでも戦闘中であるがゆえに泣くことさえもできず、そのような悲惨な場面の繰り返しの日々の過去を語ることさえ辛かった。それだけではない。政府軍の極限的暴力の連続と、FMLN内の女性差別構造による打撃がその苦しみを倍加した。
 だから、語ることはすなわち告発することであり、そのプロセスはプレッシャーに満ちたものだった。「苦しみに耐えてきた顔や涙の跡、そして、これまでの体験からくる極端なまでに研ぎ澄まされた感覚が、これから先も決していいことはないんだという胃の中の痛みを感じ」続けていたのだった。
 FMLNに参加した女性たちは、軍事政権の打倒と同時にマチスモ社会の変革をも希望していた。だが組織内の実態は、マチスモの影響による男性権威主義をともなった官僚主義的な男支配が貫徹していた。和平後の平時になってもその現実は変わらず、新たなマチスモ社会が再生産され、さまざまな重圧が女性たちに加えられ続けていった。
 だが彼女たちは、自助グループとの出会いによって少しずつ沈黙を解きはじめた。そして、これまで社会的に強制された自己の在り方を見つめ、その殻を脱いでいくことによって、これまでよりも「自分たちの気持ちをさらけだす最初の機会を作りだし、その時、新しい信頼関係が培われた」というところに到達した。さらにその成果をバネに、男性権力の重圧と差別抑圧を払いのける回路を獲得し、新たな自己回復プロセスに踏み出していった。
 本書は、このようなねばり強い取り組みも含めて、エルサルバドルで新たなフェミニズム運動が着実に発展しつつあり、「暴力に反対し、家庭における新しい役割分担を提案し、性の問題についての沈黙を打ち破るという新しい要求を持った女性組織が登場」していることを報告している。

自己変革の棚上げへの批判

 著者は、ディグナスをはじめとする女性たちの闘いの前進から、これまでの女性差別を内抱した左翼運動に対していつくかの教訓を提起している。「左翼は個人の変革を社会構造の変革の達成の後へ先き延ばしにしてきた。個人の変革を客観的には物質的条件の単なる反映と考えることで、主体の要素については考えてこなかった」。
 結果として、「自立的な運動を作り上げるために、多くの女性たちは左翼政党と組織的にも、政策的にも、イデオロギー的にも最終的に関係を絶」っていった。そして、「左翼から継承した枠組みを再編成し、人間の生活のあらゆる側面と、その複雑さが包含する問題を分析する新しい活動の形態を模索して」いった。
 この提起は、われわれの組織内女性差別問題の総括論議とその経過との関係で受け止めることができる。つまり、女性差別が現実に発生、進行し、女性たちが告発しているにもかかわらず、男性たちは、「その問題は社会主義革命に向かう苦闘、矛盾の表現であり、耐えろ」という自己保身的対応によって逃避しようとする傾向に対する批判だ。
 また、女性差別は、差別する男自身の問題であるにもかかわらず、その立場に立ちきれず、自己変革へのプロセスを棚上げし続けようとする在り方を厳しく批判している。エルサルバドル左翼運動に対して、女性差別温存構造の観点からの分析が求められているのだろうが、おそらくこのプロセスは、われわれがたどった経過と共通したところが多々あるのではないだろうか。

左翼運動内性暴力との闘い

 さらに著者は、左翼運動内における「性暴力」について問題提起している。「女性に対する性暴力は、敵によって行われただけではありません。ゲリラの部隊の中でも、かなり頻繁に女性は性暴力と性的虐待を受けたのです」。女性たちは、同志、信頼を寄せていた人物、指導部の男たちによる性暴力と性的虐待によってFMLNの革命構想の貧困な実態を押しつけられ、その現実に失望し、精神的肉体的な打撃とトラウマを引きずってきた。
 また、加害者男性が指導部でその事実を告発した場合、男性から報復され、組織内での評価を失ってしまうという恐れから沈黙せざるをえず、逆にそのような対応によって内的怒りが増幅され、重大なトラウマとして影響し続けていたことも報告している。著者は、このような構造を「それはゲリラの戦列における女性の大部分の層が置かれた従属的な状況を示しています。階級化され、軍隊化されることによって一層悪化した従属的な状況は、そのことを告発しないというある種の共犯関係を生じさせ」たと分析している。そして、被害者である女性は、「犠牲になるのが宿命であったかのような」錯覚状態のままだった。
 だが、自助グループのワークは、「女性の状況を変革するためには、彼女たちの組織の内部でなすべきことがたくさんあったことを明らかにし」、彼女の「罪の意識を軽減させる」ことに比重をおきながら支援し続け、少しずつ自己回復の道を歩み始めていった。多くの女性たちは、FMLNを離党し、新たな女性運動をおこなっていくのであった。このようなプロセスもわれわれの組織内女性差別問題の取り組み経過と結果に共通するところがあるなと受け止めた。
 私は、本書を読みながら抱いた直感、新たな発見が、われわれの組織内女性差別問題の論議との関係で具体的にどうなのかを比較検討するために、あらためて「検証 新左翼と女性差別」(青年戦線NO153遠山論文)、「JRCL組織内女性差別問題についての同盟の経過と問題点」と「JRCL規約 女性差別との闘いの義務」(「かけはし」HPに掲載)、「FI女性差別克服のための積極的行動」(FI理論機関誌55号)を再読せざるをえなかった。この中身については、今後の論議で豊富化していきたい。(遠山裕樹)
   


03年〜04年 越年越冬闘争を支援しよう
「情報収集衛星」=スパイ衛星打ち上げに抗議する緊急アピール


 あらゆる地域、あらゆる職場でリストラの嵐が吹き荒れている。職を奪われ、野宿を余儀なくされる労働者は増え続けている。今年も厳しい冬が到来し、越年越冬闘争の季節が始まった。以下に、新宿と山谷の越年越冬闘争からの支援の呼びかけを転載する。このほかにも、各地で生きるための闘いが行われる。支援を!

今年も越年越冬の取り組みが始まります
                               新宿連絡会


 ……この国ほど「ホームレス問題」の研究、調査が盛んな国はなく、他方で、この国ほど「ホームレス」に対する具体的な施策が遅れている国もありません。実態を把握しているにも拘わらず、何故踏み込めないのか? 
 「ホームレス自立支援法」がその切り口となる筈が、「基本方針」は施策の小出しでしかなく、私たちが求め続けて来た安定した住居と就労につながる施策は、中途半端な規模と内容に押しとどめられています。また、私たちが指摘し続けて来た野宿への予防策は、寄せ場日雇労働者対策にわい小化され、福祉行政と労働行政の連携も「縦割り行政」の弊害の中、これっぽちの連携でさえ上手く取れない状態が続いています。
 そして、「ホームレス問題」は決してテント層の人々だけの問題でないとの指摘も、いつしか忘れられテント問題がこの問題の本音かのような議論が続いています。 2004年初頭にようやく都内で5つの自立支援センターが開設されます。都区検討会発足から十年で、五年も前の「都内三千名の野宿者」を前提とした計画案がようやく完成すると云う実施計画の呑気ぶりに私たちは「本気さ」を見いだせません。
 今年の冬もかくして始まります。そこにあるのは、一切のぬくもりから排された人々と悲痛な叫び。縫弥策と云われようが、今ある行政施策と私たちが民間団体の多少の越年の取り組みを活用しながら、どうにか生き永らえようとする必死の形相。
 「できる事は何か?」
 何もなくても、声をかけ、肩を叩く事は出来る。私たちは、この冬も仲間と共に新宿路上で過ごします。
 b十二月二十八日(日)〜一月五日(月)新宿越年集中闘争 新宿中央公園ポケットパーク
 b@物品送付先(通常・日曜指定で)一一一―〇〇二一 東京都台東区日本堤一―二五―一一山谷労働者福祉会館気付 新宿連絡会 A十二月二七日〜一月四日闘争期間中  一六〇―〇〇二三 東京都新宿西新宿二―一一中央公園ポケットパーク新宿連絡会越年本部
 b現金カンパ振込先 郵便振替口座〇〇一七〇―一―七二三六八二「新宿連絡会」 
 (支援呼びかけビラから)

03〜04山谷越年・越冬闘争への支援・注目を
                       日雇全協・山谷争議団/反失実

 ……城北労働・福祉センター、福祉局・山谷対策課は「山谷地域」で暮らしているか否か、「山谷」からの就労経験の有無で仲間を分断し、輪番登録そのものを制限しているのです。「山谷の人間とそうでない人間とをそこまで区別するのなら、関係各所と話し合い、ホームレス対策としても窓口を設けて公共事業を紹介しろ」。 仲間からこんな声が上がるのは当然です。年末の「なぎさ寮」の受付が「山谷労働者」かどうかにより締めつけられるのは必至かも…。
 この「壁」の背後に見え隠れしているのが「ホームレス特別措置法」。「まず施設に入れ、仕事は自分で探せ」とする現行の「自立支援事業」を事実上後押ししているのがこの法です。本来ならそこに公共事業が、公的就労事業が柱として据えられていなくてはならないのですが。
 去る十月五〜七日、山梨県都留市朝日川で、「朝日建設」(旧「麻企画」)で働いていた仲間三名の遺体が発見されました。朝日建設は全都・全国で仲間を手配していた名うてのケタオチ・飼い殺し業者。すでに社長以下三名が逮捕され、朝日建設は倒産しています。元請業者(ゼネコン)の監督責任が、都留労働基準監督署をはじめとする労働行政の指導責任が追及されて然るべきです。私たちは労働争議を通し、労働行政の目を「ホームレス問題」へと向けさせていきます。これは公的就労事業の底上げを目指す取り組みと無関係ではないはずです。
 これまでの労働相談活動を点検し、そこで仲間自身が積極性を発揮できるシフトをこそ。「持たざる者」は闘います。二〇〇三〜二〇〇四山谷越年・越冬闘争への支援・注目を訴えます。
 b山谷越年闘争 十二月二十八日(日)午後一時城北労働・福祉センター前(常磐線・日比谷線南千住駅下車)〜一月五日(月)早朝まで  
 b物資(日曜日着)カンパ送り先一一一―〇〇二一 東京都台東区日本堤一―二五―一一山谷労働者福祉会館
 b現金カンパ振込先 山谷労働者福祉会館運営委員会 郵便振替口座〇〇一九〇―三―五五〇一三二  
 (支援呼びかけビラから)


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