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春一番 吹き飛ばせ小泉改革             かけはし2002.3.11号より

闘う労働運動の力で2002春の全国キャラバンを成功させよう

労働規制改革とどのように闘うか

 三月二日、「春一番 吹き飛ばせ小泉改革」と題して、小泉政権によるリストラ促進のための労働規制改革との闘いをテーマに、シンポジウムが開かれた。主催は有期雇用労働者権利ネットワーク、郵政全労協郵政労働者ユニオン、中小労組政策ネットワーク、全国一般全国協、国労闘争団、東京清掃労組などの多くの労組や団体の呼びかけで作られた「小泉改革NO!戦争NO!二〇〇二年春へ共同行動」。会場のシニアワーク東京地下講堂には百三十人が集まり、小泉改革とどのように闘うか報告を受けて討論し、四月の全国キャラバンと四月十七日の中央行動の取り組みについて確認した。
 最初に、弁護士の黒岩容子さんが「小泉労働規制改革とはなにか」と題して、昨年十二月十一日に出された総合規制改革会議の答申を中心に報告した。
 答申では、労働規制改革について@円滑な労働移動を可能とする規制改革A就労形態の多様化を可能とする規制改革B新しい労働者像に応じた制度改革――の三点をあげている。@では、民間職業紹介事業者が求職者から徴収できる手数料の範囲の拡大と企業から徴収する手数料の上限の撤廃。トライアル雇用(試用期間雇用)という名目の有期雇用方法の明確化。Aでは派遣期間一年制限の撤廃。一時的臨時的派遣期間を業種限定なしに三年に延長。製造業務など派遣禁止業務の解禁。派遣労働者の事前面接禁止などの見直し。原則一年とされている有期労働契約の例外の範囲拡大と上限三年の五年への延長。労働時間という概念をなくしてしまう裁量労働制の対象業務拡大。対象業務は法規制でなく労使決定へ。Bでは解雇ルールの明確化でより解雇しやすい法的条件を整備する\\。
 黒岩さんは、小泉の労働規制改革によって、派遣・有期労働者が拡大し低賃金で使い捨ての労働者が増え、裁量労働制がホワイトカラー全体に広げられ残業代なしの長時間労働がますます横行し、解雇ルールの明確化で首切り自由社会が作られようとしていることを指摘した。
 有期雇用労働者権利ネットワーク・全国一般の高須裕彦さんは、小泉構造改革との闘いの方向性について提起した。小泉のめざすものは、市場原理にもとづく弱肉強食の競争社会であり、国家主義的な戦争政策である。とりわけ労働規制改革では、派遣・有期労働などの非正規労働者を徹底的に拡大し、使いたいときには時間の制限もなく残業代も支払わずにいくらでも使え、必要なくなったらポイと使い捨てることができる労働のジャストインタイム制だ。
 高須さんは「あらゆる労働者に開かれた社会的広がりをもった影響力のある労働運動を再構築しよう」と訴えた。「自分たちの職場の未組織・非正規労働者の組織化を」「非正規労働者の差別禁止や均等待遇、雇用保障を要求する闘いを現場で作り出そう。たとえば国や特殊法人や自治体などによる民間委託に労働条項を盛り込ませるなどの取り組みを」。
 「リストラ・解雇撤回・倒産争議を、経営責任を追及し企業を超えた支援・連帯を広げて徹底的に闘いぬこう。国鉄闘争、いすず川崎工場閉鎖反対闘争、NTT十一万人合理化反対闘争、郵政民営化反対闘争はじめ各争議を闘いぬこう」。
 「フィリピントヨタをはじめ多国籍企業と闘う争議支援を軸に国際連帯を強めよう。外国人労働者、外国人研修生・実習生の組織化と権利確立を求める闘いを強化しよう。反グローバリゼーションの国際連帯を強めて、日韓投資協定反対闘争やATTAC運動への取り組みを強化しよう。戦争強力と有事法制に反対する闘いを」。
 最後に政策要求として@非正規労働者の差別と間接差別を禁止し均等待遇の法制化をA解雇法理・雇い止め法理にもとづく雇用保障と解雇制限の法制化をB有期労働契約の対象拡大反対、有期労働者への育児介護休業法の適用をC派遣労働者の権利確立D裁量労働の拡大反対、労働時間規制強化をEILO111号条約(雇用職業の差別待遇)、158号条約(使用者の発意による雇用の終了)、175号条約(パートタイム)の批准と国内法整備を――の六点が提起された。
 二つの報告を受けて、国際労働研究センター共同代表の戸塚秀夫さんが、九〇年代半ばのAFL―CIOの左転換と新たな前進について報告し、「リストラの先進国での闘いに学ぶべきだ」と訴えた。
 「八〇年代に猖獗を極めたリストラに、アメリカ労働運動はなすすべなく後退した。その思想は、大きな社会問題などは考えずに、組合員の権利を守ることを第一にしたビジネスユニオニズムだった。六〇年代の公民権運動やベトナム反戦運動や女性解放運動などの社会運動には労働運動は敵対しさえした。それで社会から見離されていったのではないか。社会運動に学ぶべきなのではないかという反省が、組織的後退のなかから生まれていった。一〇%を切るような組織率では団体交渉とストライキという戦術だけでは闘えない。市民的不服従運動に学び、占拠闘争や道路封鎖などの直接行動などへ、法的にはかなり危ないところまで広げていった。マスメディアも注目し、地域社会の共感も広がった。組織化も成功した。ビジネスユニオニズムから社会運動ユニオニズムへの転換が行なわれた」。
 戸塚さんは以下のように強調した。「アメリカの労働組合自身がそれまでの男性白人労働者中心の在り方から運営方法や文化まで変わっていくことが求められた。自治体の事業に入札する業者に対して最低賃金を要求するのではなく、貧困線を超える生活を保障する賃金を家族に与えよという『生活賃金』を要求し、地域の経済社会を活性化させるための議論を行っている。どこをつけば組織化が可能になるか調査研究し、それぞれの地域で五〜六年かけて何を実現するのか積極的に目標を定めていくことが必要だ」。
 会場からは最初に、派遣労働ネットワークからこの二月九〜十日に行なわれた派遣トラブルホットラインの報告。派遣期間の短縮化と値崩れが進行していること、人材派遣協会や厚生労働省と交渉し派遣先に雇用責任を求める闘いを強化する必要があることが訴えられた。四月四日〜五日には東京で世界人材派遣協会の大会があり、これに対する行動も取り組まれる。
 全造船関東地協いすず自動車分会からは、二月十一日に三百二十人が結集し、社前集会や工場包囲デモなど大きな広がりで闘われたいすず川崎工場閉鎖反対行動の意気上がる報告。全労働省労組からは、「紹介予定雇用という名の試し雇用が増えている」という報告。「一年間派遣してみてよかったら採用するということで、労基法では十四日間とされている試用期間が一年にされている。労働者は採用してもらおうと思って必死で働き、組合にも入らない。採用されても賃金はさらに低下するという状態になっている。フランスでは解雇規制が強められ、解雇手当ては倍額となり、五十歳以上の解雇には課徴金を支払わねばならない。最低賃金の一・四倍に満たない労働者には補助金が出る。外国ではこうなっているということを知ることは必要だ。労働法制の改悪を許さず、守らせていく闘いが重要だ」。
 均等待遇アクション二〇〇三からは、昨年十一月に行ったワークシェアリング「オランダモデル」の調査報告。「オランダで行われているのはフルタイムとパートタイムの昇進、諸手当、年金、時間当たり賃金の差別を法的に禁止し、フルタイムとパートタイムの相互転換を認めたうえで、男性労働者と女性労働者がペイドワーク(有償労働)とアンペイドワーク(無償労働)をもシェア(分かち合う)しようとする長期政策である。日本で行なわれようとしている一企業のなかでの正社員の時間短縮によるワークシェアリングは、レイオフにすぎない」。
 均等待遇アクション二〇〇三は、均等待遇実現のための法案骨子として、パートタイム労働法改正、同一価値労働同一賃金のための労基法第四条改正、間接差別禁止のための均等法改正、有期雇用の均等待遇のための労基法等改正、労働者派遣法改正、公務職場の臨職・非常勤の均等待遇のための国家公務員法、地方公務員法および関連法改正、厚生年金法・国民年金法・所得税法改正などを提起している。
 女性ユニオンからは、「AFL―CIOの転換には、NOWを中心とするフェミニズム運動の流入があった。子どもを養育しながら変形労働時間で長時間働いているような女性がどうやって組合活動に参加できるのか。家庭内でまず団体交渉が必要な状態だ。今の女性労働者の半数が非正規だが、そういう人たちが運動の中心にどうやったら出てこられるのか細かい議論をしなければ運動は変わらない」という問題提起。
 郵政ユニオンからは、この四月からは普通郵便までパート労働者が配達するようになるという職場の非正規化の進行と非正規労働者の組織化の闘い、民営化に反対して公共性の回復を求める闘いなどについて報告が行われた。
 提起者から、「労働運動が変わることが求められている」という一言づつの発言を受け、中小労組政策ネットワークの平賀健一郎さんがまとめの発言。四月上旬から行なわれる「吹き飛ばせ小泉改革 戦争NO!二〇〇二春の全国キャラバン」と四月十七日の中央行動について確認し、最後に集会アピールを全体で確認した。       (I)

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