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韓国                         かけはし2003.11.24号

ノ・ムヒョン新自由主義派兵政権との闘いと流動化する政治情勢

労働者が主導する政治情勢を切り拓こう


 「労働者の力」は今年8月の総会で「2003年下半期、資本と政権の新自由主義グローバル化攻勢は、より強化され、労働者民衆のさまざまな抵抗や闘争は拡大する傾向を示すだろう」と判断した経過がある。さらに「これはキム・デジュン政権当時の新自由主義の構造調整反対や生存権死守を主たる内容としていた闘争が、生存権とともに労働権・生活権などの政治的内容へと拡張されることを意味する」と明らかにした。
 資本と政権の新自由主義グローバル化攻勢と労働者民衆の生存権、労働権、生活権争取をめぐる対立の深化は、米帝国主義の東北アジアの秩序再編への介入と超国籍資本の攻勢とともに、新自由主義政権がこれを貫徹、推進、執行する役割を強化していることに起因する。したがってわれわれは下半期に反帝、反米、反戦活動を通じた韓(朝鮮)半島の戦争の脅威粉砕闘争や、非正規職撤廃闘争など労働柔軟化粉砕のための活動に集中することを内外に提起した。
 最近の一連の政治的事件、すなわち「北核―派兵決定―再信任国民投票―労働者の自決と焼身―不正資金」問題とこれをめぐる階級間、政治勢力間の利害の対立は極めてダイナミックな情勢を規定している。韓半島の危機は第2次6者会談の実現が予告される中で一時的な小康状態にさしかかり、青瓦台は派兵規模と時期の問題を測っており、「開かれたウリ(われわれの意)党」(新千年民主党から分かれた新党、ノ・ムヒョン支持の少数与党)が「非戦闘兵中心の派兵」という党論を採択することによって派兵問題が再び情勢の争点として深く刻み込まれている。ラムズフェルドの訪韓と11月17―18日に開かれる予定の韓米年例安保協議会で韓国軍のイラク派兵問題に片をつける計画で、この時期、派兵をめぐる緊張は一層、高まるだろう。
 再信任国民投票は支配分派間の妥協を通じて一時的に縫合された反面、労働者の相次いだ死に伴う損賠仮差し押さえの撤回、非正規職撤廃を中心に民主労総がゼネストを決定するなど、労働者民衆の闘争が情勢の最大の争点をなしている。一方、大統領選挙をめぐる不正資金問題や政治改革をめぐる支配階級内部の対立の様相もまた深化するすう勢におかれている。
 労働者の相次いだ死によって組織されている民主労総のゼネスト闘争は、主体的条件の困難さにもかかわらず、新自由主義グローバル化反対の戦線構築の展望を明るくしている。したがって烈士精神継承のゼネスト闘争は新自由主義グローバル化攻勢、ノ・ムヒョン政権退陣を内容として業種や工場を越え、地域と全国の大衆闘争へと続く出発点としなければならない。ここから派兵の強行や新自由主義の政治改革など新自由主義の支配分派らが推進している一連の支配秩序再編の構図を粉砕する闘争へと発展させなければならない。
 生存権、労働権・生活権をめぐる対立の深化の度合いはブルジョア諸機関が発表している労働者民衆の生活と関連した各種の指標からも確認できる。家計の負債比率、出産率、信用不良者、失業、最低生活費、非正規職の比率、派遣労働、移住労働者の実態などが、そうだ。最近、相次いだ労働者の自決や焼身は、この対立の深化の度合いが極限に向かっていることを雄弁に物語っている。
 これに対して労働者個人の責任だとか社会的責任を挙論するのは、事態の本質を隠ぺいし分散させようとするイデオロギー攻勢にすぎない。新自由主義グローバル化攻勢の核心的本質だと言える労働フレキシブル化と、これを貫徹、推進執行しているノ・ムヒョン政権が、労働者を死へと追い立てている主犯だという事実を明確にしなければならない。
 ノ・ムヒョン政権の新自由主義グローバル化攻勢は、ただ労働者を死に追い立てることにとどまらず、いわゆる民衆の生計型悲観自殺の行進を招いている。ノ・ムヒョン政権はいまも、社会全体の労働者民衆の死の行列を傍助する重犯罪を侵しているのだ。
 労働者民衆の生存権、労働権、生活権をめぐる資本や政権との対立の深化は、イラク追加派兵の問題まで重なって、派兵をめぐる帝国主義と新自由主義政権の攻勢と労働者民衆の抵抗という政治的緊張へと拡大している。
 米帝国主義のイラク侵略戦争は軍事的勝利によって帰結するかのようだった。だが世界の労働者民衆は、反帝、反戦、反グローバル化運動を展開し、イラク民衆は持続的で頑強な抵抗によってブレアやブッシュ政権を苦境に陥れた。ともにこの戦争を支持している同盟国としてのノ・ムヒョン政権もまた、政治的危機に直面している。
 SK(旧・鮮京)グループによる大統領選挙をめぐる不正資金の暴露によって波長が増幅している政治資金問題は、不正と腐敗によって歪曲・屈折された新自由主義支配秩序の断面をさらけ出している。新自由主義支配分派間の共滅の危機とまで挙論されている不正資金問題は、いかなる新自由主義的処方によっても解決できないという事実を克明に示している。
 ノ・ムヒョン政権は政治資金の全貌を暴いていくとして政治改革に対する強い意志を表明しているが、企業の一般政治資金や保険性の政治資金については赦免しようとの立場を明らかにしている。政治と資本がゆ着した政治資金問題の根本的な改革は実現しがたいという点を見せつけているところだ。
 権力型腐敗を清算しなければならないという政治改革それ自体は、いかなる方式によってであれ推進されなければならない。だがノ・ムヒョン政権が語っている政治改革とは、「起業するのに良い条件」を考慮した資本の要求に従った新自由主義政治改革の属性を持っているという点から、労働者民衆の根本的な改革とは肌合いを異にしている。
 投機の場へと転落した不動産市場は、居住空間である住宅が財産増殖の手段に変質するとともにカネを投じてカネを食う典型となって、すでに久しい。ノ・ムヒョン政権は今年10余回の対策を打ち出したが、不動産問題を解決するだけの対案を提示できないことによって労働者民衆の反発はより高まっている。
 土地の公概念の導入は私有財産侵害の論難によって、これ以上の進捗はできずにおり、投資先を求められない400兆ウォン規模の市中資金に対して金利引き上げを提起しているものの、これまた労働者民衆の立場からは相対的貧困ばかり深化させるという点で解決策とはなり得ない。投機の温床である不動産問題は絶対多数の労働者民衆をして、はく奪感、絶望感や喪失感をあおらせる深刻な問題として刻み込まれている。
 われわれは、ノ・ムヒョン政権の発足とともに新自由主義政治連合の分裂と対立による政治危機が時間を経れば経るほど加重されるだろうと考えた。「東北アジア経済の中心たることの推進―経済自由区域の施行―社会統合的労使関係の構築―所得2万ドル時代―9・4労使ロード・マップ」へと続いている各種の国政の指標や諸政策は、労使柔軟化の強化を根幹として超国籍資本の運動を保障する方向へと推進されてきた。これは労働者民衆の暮らしを直接的に攻撃する反動的で露骨な新自由主義攻勢と同伴してなされてきた。
 予想通り国政の懸案全般にわたって支配分派内部の対立と葛藤を増幅させ、新自由主義グローバル化攻勢に反対している労働者民衆の抵抗が持続されることによって、ノ・ムヒョン政権の危機管理能力は限界点に達した。ノ・ムヒョン政権は、この局面から脱け出すために再信任国民投票というカードを切った。少数派としての限界を政治的に突破することによって、来年の総選挙を前後する政治圏の再編ばかりでなく新自由主義の支配秩序を主導的に再編するという構想だった。
 ところで、再信任国民投票の波長力は初期に比べて大きく下がった。ノ・ムヒョン大統領は各政党代表との会同を通じて再信任投票問題についての政治的妥協を図った。支配階級全体が直面した政治的危機を一時的にであれ縫合しなければならないという、支配諸分派間の共通の階級的利害が作動した結果だ。
 政権の危機は特定支配分派の危機であると同時に、支配階級全体の危機の性格を内包する。このような点で、支配階級全体が共通の利害を持っている。局面転換に一定の自信感を得たノ・ムヒョン政権は、大統領選挙の不正資金問題を爆発させる中で株主資本主義の流れに便乗した資本の支持を土台として、支配分派内部での主導権争奪のために必死になっている。
 また支配階級は、体制の維持と支配階級の利益を最優先として迅速、果敢な措置を取っている。この点は派兵決定の過程でも確認できる。派兵推進に際してノ・ムヒョン政権は用意周到な工作を繰り広げた。ノ・ムヒョン政権は国連安全保障理事会(以下、安保理)の決定と同時に政府の派兵方針の立場を宣言した。この決定が虚構的なものであるにもかかわらず、「国益」イデオロギーを補強する威力ある起爆剤として国連安保理の決定を活用し、少なくとも世論のレベルではその効果が充分発揮されたわけだ。あわせて民衆運動の反発に対する対処として、市民・社会団体に対する上層レベルの攻略と公権力の行使などを併行して機動的な対応を繰り広げてきた。
 それにもかかわらず労働者の死、派兵強行などノ・ムヒョン政権に対する労働者民衆の抵抗が拡張されることによって、政権の政治的危機は一寸先を見通しがたい状況に立ち至った。労働者民衆の反発や闘争が拡大の流れを示すと、ノ・ムヒョン政権は10月中旬ごろ労働部(省)、検察、警察など15の政府機関と実務者23人が「公安関連実務者対策」を論議し、不法行為に対しては厳しく対処する方針を決めた。
 最近、大学生の派兵反対の籠城の場を侵奪、サムスン解職者復職闘争の籠城の場を侵奪、公務員集会に公権力を投入して侵奪、派兵反対国民行動状況室長の拘束、各種集会での暴力鎮圧が相次いでいる。これは「労働フレキシブル化攻勢と派兵強行―労働者民衆の闘争―公安局面」の事前の政治作業であり、隠ぺいされてきた新自由主義ノ・ムヒョン政権の暴力性を満天下に知らしめたことを意味する。
 ノ・ムヒョン政権が派兵の方針を撤回できない理由、ノ・ムヒョン政権が労働フレキシブル化攻勢を強化することによって労働者民衆を死にまで追いやっている理由、その1次的な原因は新自由主義政権という彼らの階級的属性に起因する。ノ・ムヒョン政権は米国との政治的軍事的同盟関係の次元からであれ、超国籍資本と韓国独占資本の要求の次元であれ、これに逆らうのではなく、むしろ新自由主義政策の強行を通じた政治的再生産を画策している。このために、今日のような悲劇が絶えることなく続いているのだ。
 繰り返される労働者の死にもかかわらず、資本と支配諸分派、そして彼らの利害を代弁しているブルジョア・マスコミなどは一切、口をつぐむか責任を回避している。あまつさえ悪意に満ちた歪曲をまき散らすことによって事実を歪めたり否定している。反面で経済危機と労働者の責任論を扇動する一方、新自由主義支配秩序の再編には死力を尽くしている。この理由だけでもノ・ムヒョン政権に対するいかなる期待もありえないという事実と、ノ・ムヒョン政権がこれ以上、労働者民衆と共存できない政権だという事実が明らかになった。
 損賠仮差し押さえの撤回、非正規職の撤廃などを掲げて展開される今日の労働者ゼネスト闘争の意味は極めて格別なものがある。烈士精神継承のゼネスト闘争は資本と政権の新自由主義グローバル化攻勢と労働フレキシブル化に反対する闘争であり、同時に労働組合運動の革新と連帯を導き出す闘争だ。労働弾圧粉砕と派兵阻止闘争を通じて労働組合運動と政治運動がともに自信感を回復することによって、資本と政権の攻勢を実質的に無力化する大衆的政治的根拠を拡大しなければならない。
 現在のゼネスト闘争の目標は下からの実質的な大衆闘争の展開によって農民、貧民などとともに反帝・反グローバル化運動の力を結集させていくものとして、新自由主義のグローバル化反対闘争の戦線を力強く構築することにある。これを通じて新自由主義の支配秩序再編を粉砕し、労働者階級が主導する新たな政治地形を創出していかなければならない。(「労働者の力」第42号、03年11月5日付、ユ・ヨンジュ、政策宣伝室長)

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