| イスラエルによる「壁」建設と侵略 かけはし2003.11.10号 |
「壁」が和平を破壊している
「国際世論に訴えよう」と呼びかけ
十月二十五日、東京・中央大学駿台記念館で、フリージャナリスト・広河隆一さんの「和平を隔てる『壁』」の緊急報告会が 1コマ・サポーター事務局主催、パレスチナ子どものキャンペーン協賛で行われ、二百人が参加した。
広河さんは、すべて今年撮影された未発表の映像によって、イスラエルが作っている「壁」がどのようなもので、それがパレスチナ民衆にいかに困難を強制しているのか報告した(別掲)。続いて、帰国中の安藤直美さん(UNRWA〈国連パレスチナ難民救済事業機関〉職員)がガザの報告(別掲)を行った。安藤さんは一年半、ガザに在住している。
広河さんは、報告の後の質疑応答の中で今後のロードマップの行方について次のように答えた。
「以前は楽天的だった。いまは違う。和平の考えがイスラエルとパレスチナと違う。イスラエルは安全を守ることだと主張する。パレスチナは国の独立を主張する。和平が進めば進むほど、パレスチナ側の取り分が少なくなってゆく。イスラエルは土地をどんどん併合していっている。パレスチナ側のエルサレムは機能できなくなって、ラマラの方に移っていった。パレスチナ独立国家はないのではないかと思う。パレスチナ側が疲れ切ってしまっている。最後まで闘うという人に会わなくなった」
「イスラエル内でパレスチナ人とイスラエル人がいっしょに活動している平和グループはあるが極少数である。先日、空軍の予備役兵たちの拒否運動があったがイスラエルでは相当ショックだったようだ。しかし、自爆『テロ』への恐怖は全体に行き渡っている。占領が問題だという人が少なくなっている。『壁』は国際法違反なので、世界銀行やEUは反対の立場をとっている。日本政府を動かしたり、国際世論に訴えることが重要だ」。
二人の報告から、パレスチナの置かれている状況がますます厳しくなっていることが分かった。国際的な支援が緊急に重要になっている。 (M)
10・25集会 広河隆一さんの報告から
パレスチナ人の生活を奪い破壊し支配する壁
壁と言っても、ほとんどの場所は鉄条網によるフェンスである。そこに電流が流れている。住宅地に近い場所ほど「重厚なコンクリの壁」が建設されていた。
ステージA(パレスチナ・ヨルダン河西岸地区の北西上部から西側をカルキリヤまで降りてくる)の百五十五キロメートルの建設はほぼ終わっている。総工費は三十億ドルだ。また二十五日の日本でのニュースによると、イスラエルのシャロン首相はヨルダン渓谷に沿って壁を建設することを決定し、今年中に完成させるとあった。
壁建設の責任者イツハク・メシーヤハへのインタビューを行った。
イツハクがフェンスを指先でちょっと触ったとたん、すぐに近くの軍用基地から、イスラエル兵の乗ったジープがきた。また、フェンスのすぐ横は砂地になっていて、だれかが歩くと足跡が残るようになっていた。
カルキリヤの町の壁の両側の土地が、壁に沿って広範囲で没収されている。カルキリヤの人々は、「私たちは動物園に住んでいるようなものだ」と話していた。イスラエル側の許可を得て建てられた家も、壁に近いという理由で破壊の告知を受けた。
カルキリヤ市長は「二〇〇二年に工事が始まると、壁のこちら側と向こう側を合わせて百メートルずつ、壁に沿って土地が没収されていった。当初は移動もできますと言われたが、出入り口も何もない。壁に沿って、溝が掘られている。私たちの土地が、水が、この壁の向こう側にある。壁の近くにある小学校も取り壊しを宣告された」と説明してくれた。
現在カルキリヤの町は失業率が七〇%、四カ所の検問所を持つ壁にぐるりと囲まれている。壁の外側(ウエストバンク内)には、イスラエルで初めての有料道路が建設され、イスラエル人たちがすでに使用している。六番道路の「壁」の建設は、失業したパレスチナ人たちを使って働かせている。
ベツレヘムのエリアAを見ると、イスラエルはかなり広大な土地をエルサレム側に取り込んでいることが分かる。ベツレヘムの町の中に、入り組んで壁が作られ取り囲まれてしまいゲットーのようになっている場所がある。その中に取り込まれてしまった人たちは、エルサレムにもベツレヘムにも行くことができないでいる。
壁建設によって現在約二百ドナム(一ドナム千平方メートル)の土地、三十二の井戸が奪われ、千八百の企業のうち六百の企業が倒産した。
壁の建設は続いているが、万里の長城ですらモンゴル人の侵入を防げなかったのだ。
(発言要旨、文責編集部)
10・25集会 安藤直美さんの報告から
ガザではイスラエル軍の攻撃で連日殺されている
ガザは全長が四十二キロメートルで、面積は種子島と同じくらいだ。人口の八五%を占める難民が九十万人いる。難民キャンプが八つあり、一・四平方キロメートルの中に十万人が住んでいる。五十年以上、難民生活をしている人もいる。コンクリート二部屋に十人が住んでいる。
外国人でもガザに入るのは困難だ。外がフェンスで囲まれている。「自爆テロ」の容疑者の家族などがガザに移送されてくる。大きな刑務所のようだ。ガザの内部にも入植地があり五分割されており、しばしば道路閉鎖される。日本政府の援助で作られた道路も戦車で壊された。入植者の専用道路と普通道路が交差する所に検問所がある。車の中には三人以上乗車していないと通行できない。一人だと自爆の可能性があるという理由だ。
経済構造はイスラエルに完全に依存している。パレスチナ人はイスラエル国内で働いている。パレスチナ内では大きな産業が育たない。農業・漁業は零細なものしかできない。ガザは閉鎖状態になると失業となる。ガザは五〇%の失業率だ。しかし、ガザの人々は大家族制で助け合っているし、宗教団体からの援助があるのでなんとか生活している。女性が収入を得る仕事がない。インティファーダが始まって、貧困率が三倍に増えた。去年より今年の方が悪くなっている。
何よりもしんどいのは安全の問題だ。毎日、毎日、イスラエルからの攻撃におびえている。十月十日にはラファが攻撃され、戦車が入ってきた。アパッチヘリを使い、ミサイル攻撃してくる。車を運転していても、自分の車が狙われていると思うので、車を止めて逃げるしかない。しばしば外出ができなくなる。子どもたちは「夜空の星が戦闘機に見えてしまう」と言う。悲しいことだ。
最近も攻撃があり、ガザ市民九人が殺された。医者が殺されたので、治療もできない。あたりは血の海だった。子どもたちが登下校や授業中に銃撃を受けた。頭を撃たれた女の子は失明した。UNRWAが百軒、二百軒と家を建てても、破壊にはとてもおいつかない。自分の無力さも感じる。希望を持ち続けることは難しい。しかし、世界に支える人がいることを伝えることが重要だと思って活動している。
(発言要旨、文責編集部)
トルエンで学校が使えない
「シックスクール症候群」で全校避難
ストップ! シックスクール
シンポジウムで浮き彫りになった行政の無責任さ
【東京東部】全国各地で、化学物質によるシックスクールが問題となっている。東京・江東区でも、耐震補強工事を原因とする大規模なシックスクール問題が発生し、学校が丸ごと、廃校となった校舎へ避難する事態が起きている。児童の健康を心配する保護者と、対応がズサンな江東区との対立が続いている。江東区は、元の校舎に戻すことにのみこだわり、安全対策などを示さず、保護者は不信感をつのらせている。
江東区立元加賀小が廃校に全校移転
区立元加賀(もとかが)小学校は今年三月に耐震工事が終わり、その際に検査機関で働く保護者が校長の許可を得て、室内の空気を検査した。基準値を上回る結果が出た。施行業者も検査をするが基準を下回ったため、江東区は校舎の引渡しを受け、対策をとることなく、四月からの新学期を迎えた。
ところが、不調を訴える児童が発生し、三人が転校をした。保護者の強い要望で四月二十日に、再検査。トルエン濃度が基準値を上回り、四月二十八日に、高学年が廃校となった旧白河小校舎に引越した。さらに、ゴールデンウイーク中に、低学年も引越し、学校の全機能が移転する異例の事態となった。健康診断の結果、生徒三百四十四人中八十五人がシックハウス症候群だったという結果が示された。
ズサンな工事と行政の無責任さ
区はトルエンの発生源の特定と改善方法を決めるため、教育委員会のほかに専門家、区職員、保護者代表で構成する「対策連絡協議会」を設置した。これまで六回の会合が開かれた。調査の結果、壁や建具の塗料、窓枠にトルエンが大量に含まれていることが判明、建具の取替えや、ふき取りが行われたが、数値が下がらず、第三の発生源があるとされた。その後、天井の防水工事が原因で建物の亀裂を伝って教室内に化学物質が流れていることがわかった。また、二次放散が起きていることも判明している。
区は、検査数値はすでに文部科学省の基準値を下回っており、次回の調査で良好な結果が出れば、冬休みに元の校舎に戻すことを提案している。
窓には換気扇が、扉にがらりが設けられ、常時換気が行われている。冬には吹きさらしで授業が行えるのか、保護者は心配している。原因の徹底した究明と安全対策をもとめ、少なくとも春休みまでの避難を保護者は求めている。やむえず、元の校舎に戻るにあたっては、@避難することができるクリーンルームの校内への設置A医療費保障の担保――などを条件として要求しているが、区は応えていない。
区が、元の校舎に児童を早期に戻すことにこだわるのは、来年度には別の小学校で耐震補強工事が始まり、そこの生徒が現在利用している旧校舎に一時移転する予定があるからだとされている。元加賀小での原因特定や対策さえ決まらぬうちに、次の工事を急ごうとしており、真剣にこの問題を考えていないことがわかる。
昨年二月、文科省は「学校環境衛生の基準」改正し、大規模な改修工事の後には、ホルムアルデヒドやトルエンなど四化学物質の室内濃度を測定することを義務付けた。区はこの基準さえクリアすればよいと考えている。しかし、この基準は成人を対象としており、児童や一度症状が出たハイリスクグループでは、安全とはいえない。
ストップ! シックスクールシンポ
子どもたちの健康と安全を取り戻し、二度と起こさないために、スットプ!シッスクール シンポジウム第一回が十月十七日江東区内で開かれた。主催したのは、区内の市民団体や女性区議でつくる同実行委員会。会場には定員の五十人を超える参加があり、立ち見が出るほど。
はじめに、元加賀小PTA・シックスクール対策プロジェクトチームの有志の二人の女性から、問題の経過と課題について報告があった。(元加賀小PTAは、この問題でHPを立ち上げており、詳細な報告がある。http://homepage3.nifty.com/motokaga/index.htm
子どもの健康と安全を守るために
つづいて、アトピーの電話相談や情報誌の発行をしている、アトピッコ地球の子ネットワーク事務局長の赤城智美さんと、健康住宅を提唱している一級建築士の相根昭典さんが講演。
赤城さんは、耐震補強工事の行われた元加賀小の教室を見て、「付け焼刃の工事を目の当たりにした。換気がしにくい窓、厚い壁、空気の抜けようのないみっちりとした部屋ができている。その部屋の数値は発表されていない。問題はまだ隠されている」「一カ月間大量の化学物質の暴露にあった子どもや教員は、元の校舎に戻ったとき発症するリスクが高い」また「一度発症したこどもは、基準値以下でも再発する可能性が高い」と、基準さえクリアすればよいとする区の姿勢が危険であることを指摘した。さらに、「元加賀小に限らず、耐震工事は国の方針として行われており、明日どこかで同じことが起きるかもしれない」と発症したこどもだけの問題でないと訴えた。
相根(さがね)さんは、「建設省がガイドラインを策定したここ三年ぐらい、『健康住宅』と呼ばれる住宅で健康を害する相談が増えている」「ガイドラインの基準は、甘い」「見せ掛けのニセ安全建材がでまわるようになった」「ホルムアルデヒドなどは、五〜十年たっても濃度はさがらない」と研究結果を示し説明した。行政は工事に使われた資材の「製品安全データシート(MSDS)」で有害物質の有無を調べているが、「これは別の名前で載せられているなど、このシートがあるものは『危険物』だ」と、基準の甘さを指摘した。数値よりも、「敏感な人に体感してもらったほうが、よくわかる」ともさらに濃度を下げる方法などを紹介した。
最後に、中村まさ子区議から「子どもたちの安全と健康をまもるため運動を続ける」との提起があった。第二回のシンポは来年二月十四日に宮田幹夫さん(北里大学医学部教授)を招く予定。 (長沢克巳)
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