韓国軍は米軍のようにイラクの抵抗勢力から集中攻撃はされないものの、安全でもない。自爆テロを阻むために駐屯地や警戒地域周辺をタンクや装甲車、バリケードによって幾重にも遮断し、心配していた大規模な死傷者は発生したなかったものの、しばしば犠牲者は生じた。
イラクの人々は「アラビアン・ナイト」に出てくる「アリババと40人の盗賊」の話を引いて、治安不在の状態に沸き立っている強盗を「アリババ」と呼ぶ。04年6月、バグダッド市内で高圧電線の銅のケーブルを切って逃げ出すアリババを追跡していた1人の韓国兵士が武装強盗の銃撃を受けるなど、時間の経過とともに亡くなったり負傷する兵士たちが増えている。
先日は韓国将校2人が、米軍らがよく立ち寄っているバクダッドの食堂で夕食をとっていて、抵抗勢力の手榴弾攻撃を受け大けがをしたりした。除隊を4カ月後に控えたチョ兵長はベトナムに派兵されたアボジ(父)がそうだったように、「生きて故郷に帰ること」が最大の目標だ。
終わりなき戦争
の「ドロ沼」へ
以上は最近、米国の要請によって韓国軍戦闘部隊がイラクに派兵されたときの状況を仮想してみたものだ。
米国が韓国に戦闘兵の派兵を要請したという事実は、9・11以後2年間、テロとの戦争において威勢を轟かせていた米国の単独行動主義がイラクにおいてふらついていることを示している。米国の「自分の力を信じ、自分の思い通りに」式の単独行動主義は、国連安保理の決議案が意のままにならないとなると、3月に英国など思いを同じくする同盟国を引き入れてイラク侵攻を敢行した。
当初から戦闘において米国の勝利を疑う人はいなかった。けれども米国のイラク戦の開戦目標は戦闘での勝利ではなかった。米国は反テロと独裁打倒、民主主義政権の樹立、民衆の自由確立という口実をあげてイラクの主権に介入した。米国の戦争目的は単純な戦闘の勝利ではなく、親米政権の樹立を通じた安定的中東地域の覇権管理だった。
米国は、これをイラクの「再建」と呼んでいる。この目標が達成されるまで米国は戦闘において勝利しただけで、戦争は終わらないのだ。米軍がバグダッドに入ってから5カ月が過ぎたけれども、イラクの人々は治安の不安、数十倍にも上がった物価、50%に達する殺人的失業率など3重苦に苦しめられている。
ブッシュ米大統領が5月1日にイラク戦の終戦を宣言した後から9月14日現在まで死んだ米軍138人を合わせれば米軍の死亡者は213人だ。91年の湾岸戦争の際は147人の米兵が死亡した。ブッシュ大統領の終戦宣言も色あせる状況だ。
最近、CNN―USAトゥディーギャラップの世論調査で、米国人の60%が米行政府がイラクの状況を処理するハッキリした計画を持ってはいない、と回答した。9月14日付「ニューヨーク・タイムス」は「持続できないイラク政策」という社説で、米国はヨーロッパ内の友邦の支援が必要な状況だが、彼らは米国が単独行動主義の路線を放棄しない限り支援はしないだろう、と警告した。
これに加えイラク再建の費用を除いた米軍駐屯の費用だけでも当初予想の2倍を超えるなど、米国の経済負担も大きくなった。ブッシュ大統領は9月7日、国民に向けた演説でイラク再建の費用として870億ドルの予算を申請する計画だと語った。この予算案が議会の同意を受ければ、米国がイラク戦争後に支出した費用は全部で1500億ドルに達する。このような予算は当初、議会が予想していた金額のほぼ2倍にもなる。当初、ブッシュ行政府がイラク再建費用や戦後処理についてのち密な戦略を持っていなかったことを自認したわけだ。
もちろん米国保守派の反論もある。代表的保守派として挙げられる「ニューヨーク・タイムス」のコラムニスト、ウィリアム・セファイアは9月12日、「PBS」放送に出演し「870億ドルは大変な金額ではあるが、米国の国民総生産の1%にも及ばない。中東で独裁や貧困をなくすのに、これ以上によい機会はない」と強調した。彼は「いまイラクから撤収するのは、敗北を認めることだ。米国に対する国際的信頼度が地に落ちるだろうし、イラクで戦闘を行う代わりに国内で戦闘(戦争)を行うことになるだろう」と語った。
けれども最近、米議会や各研究機関が出した報告書は「イラク再建をより広範囲な国際問題へと転換し、米国の負担を減らすべきだ」と助言した。
韓国への派兵圧
力が集中するか
8月に出された米議会予算処報告書は、イラクとその周辺に配置された米軍18万人を大幅縮小するという対案を盛り込んでいる。米議会の基本対策は、イラクに現在の水準の米軍を04年3月までは維持できるだろうが、04年9月から05年3月までは3万8千人から6万4千人のラインに大幅削減すべきだというものだ。
米国国際戦略問題研究所(CSIS)はイラクを訪問調査しbイラク再建に、より広範囲な国際的連合勢力の構築b治安確保の優先bイラク再建の過程でイラク人の参加拡大などを米国政府に建議した。
チョン・ウクシク平和ネットワーク代表は米国の戦闘部隊追加派兵要請の背景を「米軍などの死亡者続出、戦後費用の暴騰は、来年11月の米国大統領選挙で再選をねらうブッシュ大統領にとって大変な負担だ。ブッシュ行政府は国連決議案を通過させ、国連の笠をかぶってイラク占領を締めくくるが、米国が支払っている人的物的負担を減らすという腹案を推進している。このために米国はいかなる形態であれ国連を通じて多国籍軍を構想し、韓国などの同盟や友邦諸国の軍隊をここに含ませようとする」と分析した。けれどもチョン代表は「国連が米国を『補完』するのではなく『代替』することを前提としない国連決議案や多国籍軍の構成は、米国の侵略戦争および強圧的な占領に国際的な正統性を付与するばかりか、イラクの事態を終結させられないことを意味する」と説明した。
米国が推進中の国連決議案は、米軍統制下の多国籍平和維持軍の承認およびイラク暫定統治委員会(Iraqi Governig Council)をして政府樹立計画および時刻表を提出せしめるのが骨子だ。だが国連が政治的統制力や発言権のない状況で多国籍軍の投入を要請するのは国連の歴史上、類例がなく実現するかどうかは不透明だ。
ラムズフェルド国防長官さえ9月10日、「国連決議案にしたがって多国籍軍が編成されたとしても大規模兵力を期待するのは難しいだろう」と見通した。米国はインド、パキスタン、トルコなど10余カ国に派兵を要請したことが伝えられている。米国の派兵要請に対してインド国防部の関係者は9月12日、カシミール地域で頻発しているイスラム武装勢力の攻撃に対処するのに忙しく、イラクに派兵する余力はない、と語った。トルコは明確な立場を明らかにしていない。
米国の派兵要請に応じて戦闘兵力を送る国家が多くはないものと予想されることにより、時間の経過とともに米国の派兵の圧力も尻切れとなるか、反対に韓米同盟の枠に縛られた韓国に派兵の圧力が集中する可能性がある。
ともあれ、この春に続き再びイラク派兵の論難が起きている。
派兵の最大の受益
者は駐イラク米軍
米国のイラク侵攻は初めから間違った戦争だった。フセインの強圧統治という「悪」が米国の植民統治という「さらに大きな悪」によって取って替わられただけ、というシビアな評価を受けている。米国は事後的にであれ、何としてでも戦争の名分を整えるために、イラクの大量殺傷武器開発の痕跡を探し出そうとした。けれども結局、米国が発見したのは侵攻を正当化させようとした新保守主義者(ネオコン)たちの情報操作だった。米国の言論人ピーター・アネットはベトナム戦とイラク戦の共通点としてb名分を見いだせない戦争にムリやり名分を付与した点b真実を隠し国民をだました点などを挙げた。
政府(韓国)や保守勢力らでも、積極的に戦闘兵を派兵すべきだと主張している人は、まれだ。「国益のためには現実的にどうしようもない」という派兵不可避論は、イラクに戦闘兵を送る場合、北核問題の平和的解決のための韓米共助や駐韓米軍再配置など安保の懸案解決に有利に作用するものと見ている。仮にも追加派兵を拒否すれば北核問題の悪化や駐韓米軍撤収または削減の加速化によって国家の信認度が揺らぎ、最悪の場合、外国人の投資が一挙にしぼみ国際通貨基金(IMF)の事態のような経済危機が再び起きかねないというのだ。このような論理は、この春のイラク派兵決定の際も登場した。
だが今回は派兵の問題点を指摘する反対の主張が、より力を得るようだ。今年4月のイラク派兵は工兵部隊と医療部隊の派遣という点において相対的に危険が少なく、名分も主張できたけれども、交戦が予想される戦闘兵の派兵は危険が高く名分もない。
原則的に韓国も国力にふさわしい国際寄与をするのは正しい。そうでなければ国際社会において「恥知らずの国家」という批判されるのも当然だ。99年10月、常緑樹部隊がベトナム戦以後、戦闘部隊としては2番目となる東チモールに派兵された。国連平和維持軍として東チモールに常緑樹部隊を派兵したのは東チモールの独立を支援するという名分がある。
だが戦闘兵のイラク派兵がイラクの人々の暮らしや人権の向上に力となるかはハッキリしてはいない。イラク派兵の最大の受恵者はイラク駐屯米軍と思われる。
イラク住民らに助けとならない派兵は結果的に米軍のちょうちん持ちにとどまり、韓国が国際的に尊敬されない国となりかねない。イラク戦争が長期化すれば戦闘兵が参戦した韓国軍の死傷者が発生する可能性も高まっていく。その場合、米国がはまった「イラクの泥沼」に韓国もともに巻き込まれていくことは、たやすい。
米国の圧力をかわ
し克服する知恵を
したがって現時点では戦闘兵派兵の要請を拒否する場合に予想される問題点を最小化したまま、しんぼうして拒否するやり方を企るのが必要だと専門家らは指摘している。パク・スンソン教授(東国大、参与連帯平和軍縮センター所長)は「ノ・ムヒョン政府が過去の政府とは違って韓米同盟の無条件的継承ではなく改善・発展を掲げているというのは、対外関係においても自律性を増やしていくという意味」であり「政府はこのような基本方向で必要な諸戦略を用意していかなければならないだろう」と語った。
パク教授はまた「派兵を拒否するとき、米国の予想される外交・経済的圧迫に伴う国民らの衝撃や混乱も少なからぬものがあるだろう」「困難ではあるが、これを克服しつつ国内外を説得していく知恵を準備しなければならない」と強調した。
これに関連してノ・ムヒョン大統領は「光海君の知恵」を学ぶべきだとの指摘も出てくる。朝鮮朝15代の王である光海君は後金(後の清)と戦争中の伝統的友邦・明国の要請にしたがってカン・ホンリプ将軍と1万人の軍師を派兵した。けれども明国の敗色が色濃くなると光海君はカン・ホンリプ将軍に投降させ絶妙な外交戦術を駆使した。光海君は実利と名分を同時に手にしたことを指しているのだ。(「ハンギョレ21」第476号、03年9月25日付、クォン・ヒョクチョル記者)
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