| 地球温暖化問題(上) 共産党系原子力学者・中島篤之助の腐敗 かけはし2003.10.9号より |
今年の夏にヨーロッパやインド、中国などを襲ったすさまじい熱波は、地球温暖化がもはや取り返しがつかない段階に突入しつつあり、一刻も早く世界的に対策を立てなければ、事態は加速度的に悪化していくだろうということを、切迫感をもって印象づけた。
今日の地球温暖化の最大の原因が、現代社会の経済活動による二酸化炭素などの温室効果ガスの大量放出にあることは、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の共通認識として、各国政府も認めざるを得ない状況になっている。
IPCCは九五年の報告書で、地球温暖化を食い止めるためには二酸化炭素などの排出量を直ちに五〇〜七〇%削減し、さらに削減し続ける必要があるとしていた。ところが九七年に開かれた地球温暖化防止京都会議(COP3)で締結された京都議定書では、先進工業国」全体で二〇〇八年〜一二年までに温室効果ガスの排出を九〇年比でわずか五・二%削減するという、「直ちに七〇%削減」どころかその十分の一にも足りない極度に不十分な目標が決定されるにとどまった。
しかも取られるべき削減措置は、排出権取り引きや森林吸収などで徹底的に骨抜きにされたうえ、最大の二酸化炭素排出国であるアメリカは京都議定書から離脱してしまった。それは、大量生産・大量浪費でエネルギー浪費を構造化した現代資本主義が人類の未来を閉ざしつつあることの、端的な表現である。
日本共産党系の雑誌『経済』(03年9月号)は、「エネルギーと環境問題」と題する一見タイムリーな特集を組んでいる。しかしそこには、とんでもない論文が幾つかある。共産党系の原子力問題に関わる最も高名な学者の一人である中島篤之助(元中大教員)の「今日のエネルギーと地球環境問題」もその一つである。そこで展開されているのは、なんと地球温暖化との闘いに敵対する反動的主張なのである。
中島はここで、エネルギー産業の意を受けたブッシュ政権と同様、「二酸化炭素など温室効果ガスによる地球温暖化」という国際的常識は信用するに足りないと主張し、破局的事態に至る前に温暖化の進行をなんとか食い止めようとする世界的努力に冷水を浴びせかける、奇妙で反動的な論理を展開している。そしてこの主張について中島は、「ブッシュさんと同じと言われる」とも自ら語って開き直っている。
中島のこの奇怪な主張が、今日の日本共産党の政策そのものだというわけではもちろんない。理論誌『前衛』や「しんぶん赤旗」では、中島のような主張が展開されているわけではない。むしろ共産党はこの間、地球規模の環境破壊の問題について、以前より大きく取り上げるようになってきている。
しかしそれでも中島のこの主張が、やはり日本共産党の伝統的核・エネルギー政策の帰結であり、不破・志位指導部の「資本主義の枠内での改革」路線の一つの帰結であることを指摘しなければならない。このような主張が『経済』誌上で堂々と展開される根拠を問うべきなのである。
中島はこの論文で、人類が放出する二酸化炭素のうち海に吸収されたのか植物に吸収されたのかわからず行方不明の部分が三十億トンあるという、多数の書籍だけでなく週刊誌の解説記事にさえ出てくる周知の説を持ち出し、「温暖化というのは果たして本当なのだろうか?」と自問する。そして現在の気象観測網はグローバルな整備が不十分で、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が採用しているコンピュータによる気候変動の予測モデルは不完全で信頼性がないとして、次のように主張する。
「要するに、コンピュータ・シミュレーションによる温暖化予測は、科学的に立証されたわけではない。したがって、二酸化炭素だけを地球環境悪化の原因と考えるのは正しい立場ではない」。
「地球環境悪化の原因が二酸化炭素だけだ」などというとんでもない主張をしている者が、一体どこにいるのだろうか。国際的に問題となり、論議され、解決を求める努力が続けられている地球環境問題には、乱伐による熱帯林の破壊、生物多様性の危機、進行する水不足、大気汚染、乱獲による漁業資源の枯渇、環境ホルモンも含む多様な化学物質による汚染、ウラン鉱滓や核廃棄物をはじめとする核・原子力開発による汚染、IMFが重債務国に押しつける資源収奪型経済、貧困問題など、重層的に関連した極めて多岐にわたる問題がある。
これらの原因が「二酸化炭素だけ」であるはずがないし、そんなことを主張するものはだれ一人いない。しかし、これらの「地球環境悪化」全体を覆う問題が、地球温暖化問題であり、その最大の原因の一つが人間の活動による二酸化炭素を中心とする温室効果ガスの大量放出にあるとされていることは事実である。中島は、「二酸化炭素だけが地球環境悪化の原因」という、だれも主張していない奇妙な説をデッチ上げ、「それは正しくない」と批判することで、「京都議定書」などの形で確立している地球温暖化についての認識を傷つけ、労働者人民の切迫した危機感を混乱させようとしているのである。
「行方不明の炭酸ガス問題」に続いて、中島が持ち出しているのが、過去に少なくとも四回、周期的に繰り返されてきた氷河期と間氷期のメカニズムについての、奈須紀幸(前東大海洋研究所所長)らの研究である。
それによれば、氷河期が最盛期を迎え、氷床が地球規模で極大化するにしたがって、海水面が低下し、現在のレベルより百二十メートル程度下がると、物理的条件によって広範囲の大陸斜面下のメタン・ハイドレード(水分子のなかにメタンなどのガス成分が閉じ込められて固形化したもの)を含む堆積層が崩壊し、二酸化炭素をはるかに上回る温室効果を持つメタンが大量に気化して急速な温暖化を招き、間氷期に向かう。そして温暖化によって海面からの水蒸気の放出量がしだいに増加して雲量が増し、太陽光線の入射をさえぎるようになり、寒冷化が始まって次の氷河期に移行していったのではないかという。
これ自身は論理的な仮説ではあるが、それは数万年周期で繰り返されてきた氷期と間氷期のメカニズムを説明したものにすぎない。間氷期の現在、しかも数千年単位の長期的流れでは次の氷河期に向かう寒冷化が徐々に進行しているとされている現在、なぜここ二〜三十年に急激な温暖化が進行してきたのかということとは全く何の関係もないし、産業革命以来の人間が放出した二酸化炭素濃度の急増が地球温暖化の主要因であるという世界のほとんどの気象学者が支持する説を否定するものでも全くない。
まさか中島も、実は二〜三十年前には地球は氷河期の最盛期にあって海水面が百メートル以上も低下し、その結果メタン・ハイドレードを含む堆積層が崩壊したなどという「トンデモ話」をしているわけではないだろう。中島はここでも、関係ない問題で論議を混乱させようとしているのである。 (つづく)(高島義一) |