地域間自由貿易交渉に対決する国際連帯の内実が問われている
清 水 政 夫(ATTACジャパン首都圏)
カンクンでのWTO閣僚会議反対行動に参加した日本からの派遣団は、大きなデモンストレーションの合間、民衆フォーラムなどの諸会議やワークショップに専念し、自らの闘いの国際性に気づかされたと言っても過言ではない。
アジア農民のワークショップで
九月九日は、農民フォーラムでのアジア・ワークショップに全員で参加した。アジアからフォーラムに参加した仲間で、ワークショップを開催するが、途中からメキシコの農民たちが多数参加してきて、文字通り国際的農民交流会となった。
この中で、フィリピンやインドネシアの参加者からはWTO農業協定の結果、農産物輸出国から輸入国となり、農民の生活が困窮していることなどの報告があった。日本の農民からは「自分たちはできるだけ自国の食糧を自給できるようにしたいが、消費者は輸入品でも安い食品を選好する、また途上国は農作物を輸出して外貨を稼ぎたい理由もある。これが政府による自由貿易協定への導因となり、日本とメキシコ二国間FTAを政府レベルでは進めているが、メキシコの農民はどう思っているのか」との質問も出た。
時間の関係でこの質問に対するメキシコサイドからの応答は直接聞けなかったが、ヴィア・カンペシーナのプレス発表(別掲)で理解できるだろう。WTOは、先進国の都合で農業補助金問題だけを焦点化させているが、その政策が補助金ではダメで直接払いならグリーン政策でOKとか、ある政策は黄色だ、青だといった基準も勝手に定め、押しつける交渉となっている。問題は先進国の農作物のダンピングが、世界の農業を破壊していることにある。
グローバル化に反撃する闘い
十一日は、韓国民主労総、ブラジルCUT(労働者統一センター)、COSATU(南アフリカ労働組合会議)共同開催による「グローバリゼーションと労働組合の権利に関する南側のイニシアチブ」フォーラムに参加した。
前回も記したが、この日初めて前日の大行進後、バリケード前の攻防で韓国の農民、李京海(イ・キョンヘ)さんが抗議の自殺に及んでいたことを民主労総の代表から知らされた。参加者全員で闘争連帯の意志を誓ったが、主催者側の混乱が目立ち、フォーラムとしては討論まで至らなかった。聞くところによると、前夜は韓国派遣団は病院への付き添い、現場での祭壇・テント設営、遺族への連絡などで一睡もできなかったという。(この日から毎晩、現場で追悼会、キャンドルデモが続いた)
フォーラムでは、南アフリカCOSATUが、新自由主義政策を突き進むANC政権に対抗して、国内レベルと国際レベルの闘争の必要性の一例として国内では、政府の輸出政策を民衆にふさわしいものに変更させるキャンペーンの話を訴えた。また国際レベルでは、アメリカとのFTA(自由貿易協定)交渉に対し、相手国の労働組合などとの連携が必要と具体例を指摘した。
続いて、フォーカス・オンザ・グローバル・サウス主催の「WTOとミリタリズム」会議に参加したが、ウォールデン・ベローの報告は、アタック編集「サンドインザホィール」に載っていた論文とほぼ同じ内容。フィリピンのバヤンからの報告では、内ゲバテロ殺人を行っているフィリピン共産党のシソンを賛美する発言で閉口した。
十二日、民衆フォーラム「公共サービスの民営化」会議に参加すべく出発。公共バスはセントロ入口よりだいぶ前で、警察による交通遮断のためUターン。WTO閣僚会議場の前を二度通過して、はるか迂回しながらセントロへ。その上、会場を示す地図が間違っていて、またまた炎天下を一キロ以上歩いてようやく到着。もう十一時を回っていた。ようやく水の民営化問題を聞いたかと思ったら十五分ほどで終了。
画期的勝利から次の局面へ
午後からカナダ協議会主催「サービスと投資」と`世界は売り物ではないa主催「二国間とFTA問題」の各ワークショップに参加。FTA問題では、チリの仲間から、中南米では、チリが最先頭で自由貿易交渉を進めネックとなっていること、また二国間FTA反対闘争では民族的反感やナショナリズムに気をつけるべきことなどアピールされた。この日。夕方から、韓国農民、李さんが自殺した地点での追悼会に参加。韓国派遣団やメキシコの青年・先住民が泊まり込んでいるテント群を訪問する。
最終日十三日は大行進の日。感動的なバリケード撤去行動の後(そしてコンベンション・センターへの突入後)は、公共バスへの検問も厳しさを増し、バスから降ろされた韓国人、日本人が多数に上ったが、あまりの弾圧のひどさに、バスの乗客・運転手と一丸となって反撃したケースもあった。
かくして、カンクンWTO閣僚会議は決裂したが、ヴィア・カンペシーナの声明にあるように、G22(南側諸国連合)の提案自身が、民衆の農業を作るものではないことも確かである。したがって、WTOという多国間協議の場から、一挙に二国間、地域間の自由貿易協定交渉への道が拡大したのと同時に、南側と北側での小農民農業の連帯のあり方を早急に打ち立てなければならない。
私たちはカンクンで勝利した! WTOは失敗した!
ヴィア・カンペシーナ(農民への道)/国際農民運動
WTO第五回閣僚会議は、九月十四日、完全な失敗で終結した。WTOは、次の閣僚会議の場所すら確定することに成功しなかった。同意されたいかなる主題を表明する宣言もなく、新しい議題への合意を進展させる時間もなかった。これが、南側諸国の予想された撤退とともに、閣僚会議での混乱と混沌を生み出した。
軍隊・警察の威圧的動員にもかかわらず、九月十三日には、地方組織体、青年、女性、その他の部門の人々は、メキシコ政府とWTOによって強制されたバリケード(私たちの存在や提案を圧殺する目的であった)をズタズタに引き倒すことに成功した。
九月八日〜十四日、私たちは輝かしい闘争の日々において、最初、国際農民・先住民フォーラムの枠組みで、ついで交渉団が集中するコンベンション・センターの内側・外側両方で、多様な街頭デモンストレーションに専念した。九月十日の農民・先住民の行進が、引き続く日の抵抗と闘争に向かうトーンを作り出した。
九月十三日、世界中から来た百人の女性たちが、強い勇気と忍耐を持って、コンベンション・センターへの入口を遮断しているバリケードを細かく分解した。韓国農民と、この行動に参加した多数の民衆と一緒に、私たちは太いロープを使って障壁を引き倒した。
そこには数千の軍隊・警察が抵抗者を鎮圧する準備をし立ちふさがっていたが、だれひとり彼らの支配下に入ろうとはしなかった。私たちの非暴力的手段による非暴力対決は、WTOに対してであり、警察や軍隊とではない。
デモ隊は、WTOの二つの人形を焼き払い、座り込んだ。そして、民衆の闘い、WTOに反対する闘い、より公正で人間性のある世界のための闘いに命を捧げたわが友、李(イ・キョンヘ)さんに敬意を表して白い花が置かれた。そして九月十四日、WTOは破局を迎えた。
カンクンにおいて、私たちはさまざまな社会部門の人々と、中でも違う世界からの青年たちと出会った。闘争スタイルを考慮した時、これら若者は急進主義の異なるレベルに特徴づけられた。例えば、その最も急進的な中に「ブラック・ブロック」がいる。ヴィア・カンペシーナは、彼らの要求と調整しながら、青年との対話と行動集中のための場所を開いてきた。
これが、究極の肯定的結果を生み、非暴力的手段による私たちの目的の達成にとって、彼らの貢献はキーとなった。青年たちは、上記に述べた条件の下、将来の行動においてヴィア・カンペシーナとの活動継続の希望を表明してきた。
そこには、世界中での動員への活動に専心してきた社会活動家とカンクンでの闘争等々を勇気づけ、強め、急進化させることに捧げられたわが友、李さんの犠牲があったことは間違いない。彼の勇気と理想は、私たちとともに生き、私たちはそれを決して忘れない。李さんは、WTOの失敗と私たちの勝利に巨大な貢献をなした。
アメリカ合衆国とヨーロッパ連合は、民衆の正当な利害に配慮し理解することにはまったく能力がないことを証明してしまった。彼らの横柄で頑固な方法と恐喝的行動は、第三世界諸国をして、アメリカ・EUに反対し、ブラジル、インド、中国が率いる対抗ブロック(G22)形成に駆り立てた。ACP(アフリカ、カリブ海、太平洋)諸国の政府グループも反対を示した。彼らのイニシアチブは、閣僚会議中止の一因となった。
ヴィア・カンペシーナは、この反対を歓迎するが、農業に関するG22諸国の提案には同意しない!!! それは、世界の巨万の民衆への社会的排除と貧困の問題を解決せずに、自由化と市場アクセスを増大する。それどころか、それは状況を悪化させる。
EU代表は農業に関する対話にヴィア・カンペシーナを招待していた。私たちはこの招待について検討中であるが、EUからその「共通農業政策」と現行国際貿易規則を変更する真実本当の意志を表すメッセージを受け取る必要がある。
カンクンで、EUは輸出補助金をすでに削減したと主張した。しかし事実は、EUは農産物価格を引き下げ、グリーンボックスとして認められている直接支払いを輸出補助金に置き換えてきたに過ぎない。EUによるこれら直接支払いやアメリカによる収入支援計画の使用は、低い農場価格を通して農業産業体を援助し、国際市場へのダンピングを促進させることを覆い隠す手段である。
その幾つかの応答は、〈皆一緒に農業での補助金を廃止すること〉である。しかし、これは小農民に基づく生産のためには、もう一つの打撃となるだろう。最も必要な人々に向けられ、小農民に基礎づけられた農業への公的援助は、北側と南側での主要な要求である。しかしながら、営業計画支援による輸出国での過剰生産の中止が危機となり、多くの国は低価格輸入品から自分たちを守らなければならない。
WTOの破局は、新自由主義モデル内部での危機の結果である。私たちが運動とオルタナティブな提案を強化し続けることが緊要である。私たちの間での公開で透明性のある建設的な対話は、私たちの闘争戦略における発展のために、それだけに一層必要である。
WTOは農民を殺す!
農業、食糧、漁業からWTOは出て行け! 民衆の食糧主権に向かおう! 希望をグローバル化し、闘いをグローバル化しよう! ヴィア・カンペシーナ国際調整委員会 テグシガルパ (ホンジュラス)、二〇〇三年九月二十三日
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