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                         かけはし2003.10.13号より

第四インター第15回世界大会の成果と日本における挑戦課題(3)



旧・現官僚支配体制めぐる論議

 世界情勢をめぐる討論の中で、ポスト・スターリニスト体制の「資本主義復活」をめぐる論争も、十三回大会(一九九一年)、十四回大会(一九九五年)から継続した重要なテーマであった。「堕落した労働者国家」におけるスターリニスト官僚体制打倒の綱領は、第四インターナショナルの歴史的アイデンティティーの重要な基軸をなすものであったことからしても、それは当然である。ただこの問題については、いまだ十分な論議が煮詰められていないことは確かである。
 「資本主義復活」をめぐる論議の一つの極を形成したのは、中国をめぐる香港の先駆社の同志の主張である。先駆社の「世界情勢」議案への修正案は「中国の国家機能はもはや国有財産や計画経済を擁護・促進するものではなく、資本主義復活を促進するものとなっている。中国は今や労働者国家ではなくブルジョア国家であり、中国共産党の体制は労働者官僚制ではなくブルジョア官僚制である」と述べている。
 同修正案は、一九八〇年代の「改革・開放」政策と一九九〇年代のその飛躍的拡大・深化を通じて中国の経済発展が外資と私的資本によるものであることを統計的資料を使って明らかにし、「一九八八年の憲法改正以後、国家機構の階級的性格は変化し、ブルジョア国家がすでに復活した」と断言している。さらに国際関係においても「中国は反帝勢力でも反資本主義勢力でもなく、従属的第三世界諸国の中での後発の、しかし強力な競争者である」と指摘した。
 先駆社のR同志は「中国における資本主義の復活に対する労働者の闘いを弾圧しているのは中国共産党であり、共産党の強力な機構こそが資本主義復活にとっての最大の保証となっている。中国を今なお労働者国家と規定することは資本主義に対する労働者の闘いを弱めることになる」と訴えた。
 この主張に対して、リビオ・マイタンは「官僚が資本主義復活の力学を引き起こせるという分析は誤りであり、中国においてすでに資本主義が復活したということはできない」と批判した。またアメリカのソーシャリスト・アクションの同志は「政府と国家を区別すべきである。政府が資本主義的政策をとっているとしても国家の性格がブルジョア国家になったというべきではない」と述べた。
 一方、旧ソ連・東欧の「資本主義復活」をめぐる論議においては、かつての多数派・少数派の相違が現実に進行した諸事実の結果として基本的に解消されたことも明らかになった。たとえば十四回世界大会で「旧ソ連・東欧における資本主義復活のプロセスは未だ中途の段階であり、このプロセスと対決し、労働者の既得権を防衛することが重要」と主張していたかつての少数派のM同志(フランス)が、今回の大会では中国問題に関して先駆社の意見を支持したことに、それが示されている。
 結論的に言って、今回の世界大会では中国の国家的規定については結論を出さず、旧・現官僚支配体制における資本主義復活に対する労働者の抵抗闘争を支援する決議(本紙9月29日号)という形で討論を集約することになった。なお、この旧官僚支配体制下における労働者の抵抗闘争については、ポーランドの若い同志が最近起こった長期にわたる工場占拠ストライキ闘争の経験について印象的なレポートを行った。
 スターリニスト支配体制の現状をどう規定するかという論議は、われわれの世界認識にかかわる総括の問題であると同時に、スターリニズムに対して先駆的かつ意識的な分析と闘いを蓄積してきた第四インターナショナルが、むきだしの搾取にさらされ、階級的政治意識を剥奪された旧・現スターリニスト体制の労働者の間に、社会主義的民主主義へと向かう闘争の足場をどう築いていくかという具体的問題でもある。

そのほかの議案と直面する課題

 「エコロジーと社会主義」についての決議、レズビアン・ゲイ解放闘争についての決議は、第四インターナショナルとしての長年にわたる論議の中で、初めて定式化されたものであった。これらの内容に関してはそれぞれ本紙6月23日号、6月30日号に掲載した討論の概要に関する報告を参照していただきたい。それらはいずれも、今日の資本の新自由主義的攻勢に対抗する社会運動の新しい質を発展させていく上で重要な内容をふくんでいるにもかかわらず、いまだ端著的な段階にとどまっており、各支部での討論内容も不均等で全体化されてはいない。
 とりわけ日本のわれわれに即して言えば、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の運動の現実的存在にもかかわらず、具体的接点をもった関わりについて言えば、ほとんど蓄積はないのである。それは、日本の左翼運動全体の内容の貧困さにも規定されているが、われわれにとっては女性差別問題の組織的克服を継続的にどう進めていくかという課題をあらためて突きつけるものである。
 世界情勢討論の中でも、性の商品化、女性と子どもの人身売買、グローバリゼーションと家父長制・男主義、「セックスワーカー」の権利等々をめぐって多くの修正、補足が女性同志や女性委員会から提起された。フェミニズム運動の再編と新自由主義のジェンダー的側面についての発言も活発に展開された。
 日本における社会運動の再生、新しい集団的抵抗意識の発展を目指す中で、女性や性的マイノリティーへの抑圧との闘いを自覚していくことが重要なのだ。
(つづく)(平井純一)

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