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イラク占領に自衛隊を送るな!米軍支援にカネを出すな! かけはし2003.10.13号

ブッシュ来日に抗議する連続行動を

米英占領軍の即時撤退求める国際共同行動へ

 米英両軍のイラク占領支配は、ますます破綻を深めている。十三万人の米兵をイラク全土に配備する中でも、連日のように米軍兵士が殺害され、爆弾テロが続発して治安が極度に悪化している。朝日新聞(10月5日)が報道した国連現地本部報告書のデータ分析によれば、イラク占領米英軍への攻撃事件は九月に入って一日平均二十三件と前月の約三倍に跳ね上がった。「解放軍」として歓迎されるという幻想が破れた米軍は、恐怖に襲われてイラクの一般市民を無差別に逮捕したり、殺害しており、そのことがイラク民衆の反米意識をいっそうかりたてている。十月四日には未払い給与の支払いを求めて米軍施設に集まった五千人の元イラク軍兵士に対して米兵が発砲し、十人が死亡するという事件も起こった。
 米英の研究者グループである「イラク・ボディーカウント(IBC)」の調査によれば、米英軍の爆撃や銃撃によるイラクの民間人の死者数は九月二十六日までにすでに一万人に迫ろうとしている。
 占領から半年近くを経過した今日でも、首都バグダッドの水、電気といった基本的インフラは機能しておらず、失業率は七〇%を超えている。イラクという一つの社会の有機的機能が米英軍の侵略戦争と軍事占領によって崩壊してしまったのだ。市民の大規模な反失業デモも始まった。
 ブッシュやブレアが国連や国際憲章をも無視して単独先制攻撃に踏み切った「大義」である「イラクの大量破壊兵器(WMD)」は必死の「捜索」にもかかわらず見つかっていない。十月二日米CIAは、米WMD調査団のデビッド・ケイ団長が議会で報告した暫定報告の内容を公表したが、それによれば「生物化学兵器が大量に存在していたことを示す証拠が発見できていない」ことを認めざるをえなかった。国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)のブリクス前委員長は、「イラクは湾岸戦争後の九一年に兵器のほとんどを廃棄した」とする「確信」を示し、「犬がいなくとも玄関に『猛犬注意』の張り紙を貼ることはできる」とまで語った。
 むしろ明らかになっているのは、WMDにまつわる米英両政権のデマと情報操作である。ブッシュやブレアは「大量破壊兵器の脅威」が虚構であることを知りつつ侵略戦争を強行したのであり、「これ以上の査察継続は無益だ」として査察を打ち切ったのは、ウソがばれることを恐れたからにほかならない。
 国際的にも国内的にも追い詰められているブッシュ政権は、新しい国連安保理決議を、米英軍の占領支配を正当化し、単独行動主義的先制攻撃に反対した欧州諸国をふくめた軍事的・経済的協力を確保するための土台にしようとしている。しかし、アメリカの軍事的主導権を確保した上で国連を補助的手段として扱おうとするブッシュ政権の姿勢は、ロシア、フランスなど安保理常任理事国の同意を取り付ける上での障害になっている。
 そこでブッシュ政権は、「イラク復興のためにカネもヒトも出せ」という要求の主要な対象を日本、韓国などの同盟諸国に設定して圧力を強めているのだ。
 このブッシュ政権にまたも唯々諾々と追随しているのが小泉政権である。小泉首相はテロ特措法の改悪を審議する国会答弁の中でも、はぐらかしとすりかえでブッシュの戦争をあくまで防衛した。国連総会でのアナン事務総長による「アメリカ批判」演説への態度を問われても、小泉は「アメリカのイラク攻撃は国連憲章にのっとったもの」「アナン演説の真意はアナンさん本人に聞いてみないとわからない」ともはやブッシュでさえも口をはばかるような答弁に終始した。
 八月十九日バグダッドの国連現地本部事務所が爆弾攻撃を受けた後、小泉政権は一時年内の自衛隊派遣に消極的な姿勢を取った。しかしアーミテージ国務副長官から「逃げるな」と脅された後、ただちに方針を再転換し、年内イラク派兵に向けた最終の詰めに入った。十月三日の読売新聞によれば十二月には百五十人の自衛隊員を先遣隊として送る方針を固めたとされる。
 さらに史上空前の財政危機に陥ったブッシュ政権は、「復興支援」という名目での占領経費を同盟各国に負担させるために躍起になっている。アメリカは「イラク復興費」が五百〜六百億ドルに達すると試算しており、そのうち三百〜四百億ドルを欧州諸国や日本に分担させる予定とされる。四百億ドルとすれば五兆円近い額となり、日本はそのうち約二割、つまり一兆円を負担する計算になるとも言われている。
 十月十七日のブッシュ大統領訪日は、小泉政権に対してイラクへの自衛隊派兵の時期を早め、さらに占領費用の負担を強制することが最大の主眼であることが目的だ。十月二十二日にはラムズフェルド国防長官も来日を予定しており、朝鮮半島危機とアジア太平洋レベルの「対テロ戦争」を見据えた米日韓の軍事協力体制をいっそうの強化が合意されようとしている。衆院解散の前に、わずか五日間の実質審議で小泉政権が駆け込み的に成立させようとしている「テロ特措法」改悪案(「アフガニスタンでの米軍の対テロ戦争支援」を口実にした自衛隊のインド洋派遣の二年延長)は、苦境に瀕するブッシュをバックアップし、イラクへの自衛隊派兵を早めるための踏み台である。
 ブッシュの戦争に反対する民衆運動は、日本、韓国、フィリピンなどで共同の平和のための行動を準備している。韓国では燃え盛る反米意識の中で、米国による韓国軍戦闘部隊派遣の要求への闘いが大きく発展している。
 米軍基地を抱える日本・沖縄・韓国、そして米軍がミンダナオでの「対テロ戦争」に介入しているフィリピンをつなぐ共同した「グローバル戦争反対」のネットワークの形成が決定的に重要だ。
 首都圏では十月十七日(金)にはブッシュ来日に抗議する平和フォーラム、市民緊急行動などの実行委員会の集会・デモ(午後6時半/社会文化会館)、十月二十三日(木)には反安保実などの呼びかけによるラムズフェルド抗議デモ(午後6時半、三河台公園予定)、そして十月二十五日(土)にはアメリカのANSWERが呼びかけている国際共同行動の一環として実行委員会による「ワールド・ピースパレード」(午後1時半、大久保公園)が行われる。解散・総選挙のさなか一連の行動に結集し、自衛隊イラク派兵阻止の態勢を築き上げよう。
  (10月7日、平井純一)                    


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