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「帰国者のことも忘れないで」            かけはし2003.1.13号より

北朝鮮に帰国し行方不明となった人々の家族が証言集会


 十二月二十二日、東京・星陵会館で「行方不明帰国者家族証言集会」(主催北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会)があったので参加した。
 最初に、拉致被害者横田めぐみさんの両親が発言した。
 母親の早紀江さんは、めぐみさんを探し続けた苦労を語ったうえで、「日本人であろうが、朝鮮人であろうが在日であろうが、大切な命に変わりはない。民族を超えて暖かい心の通じたものがあるはずだ。強制収容所で苦しんでいる人々のことを見なければならない。なんとか北朝鮮がよい方向に変わるようになってほしい」と日本人拉致被害者だけでなく、北朝鮮で苦しむ民衆、在日の人々とも力を合わせていくことを語った。
 続いて、北朝鮮へ帰国した家族が収容所に送られたりして行方不明になっている家族、守る会が詳細を報告した。
 最初に、兄夫婦が北朝鮮に帰国して処刑された 幸さんが報告した。
  さんは「私の父親は一九四一年に、新潟でアメリカのスパイということで投獄された。残された家族には(母親は日本人であった)配給はやらないひどい朝鮮人差別を受けた。兄は東北大学にまで進んだが、国籍が違えば就職もできないという挫折の中で、帰国を決意した」と述べ、帰国の原因が当時の朝鮮人差別にあったことを明らかにした。
  さんの兄浩平、小池秀子夫妻は一九六二年北朝鮮に帰国。六七年以後、浩平さんは行方不明。北朝鮮は、浩平さんはスパイ罪で逮捕され二十年の判決を受け、七四年に脱獄して妻子と逃走を図ったため一家全員銃殺と発表した。 さんは「人質をとって延命するのが、北朝鮮政府のやりかただ。兄の家族は生きている。帰国者のことも忘れないでほしい。小泉首相の父親は帰国事業に大きく関わった。朝鮮総連とともに日本政府も責任がある」と非人道的に扱われている帰国者についての支援を訴えた。
 続いて、芝田弘之さんが報告した。芝田さんの弟孝三さん(日本人夫)は一九六〇年、北朝鮮に妻申性淑さんとともに渡った。孝三さんは日本人妻の里帰りの嘆願を取りまとめたため、六四年スパイ罪で逮捕された。その後音信不通になってしまった。アムネスティインターナショナルの努力によって、ようやく九三年から九五年にかけて、北朝鮮は九〇年に釈放後、列車事故で一家死亡と発表した。しかし、確たる物証が提示されない中で、芝田さんは「弟家族の真実を知りたい」と訴えた。
 金民性さんは一九七二年、スパイ罪で強制収容所に送られた弟泰元さんなど親戚のことを報告し救出を訴えた。小川晴久さんは、六〇年代中ごろ収容所送りになったテノール歌手金永吉さんと北川民子さんのことを報告した。
 そして、一九六三年に京都朝鮮総連の幹部であった祖父母といっしょに家族全員で帰国し、その後、祖父の民族反逆者という「ぬれぎぬ」によって、強制収容所に九年間送られ脱北した在日三世の姜哲煥さんが特別報告を行った(別掲)。最後に要請文を採択して北朝鮮帰国者・行方不明者の救援運動を強めていくことを確認した。      (M)




姜哲煥さんの報告から

 最初は『朝鮮画報』にも載ったぐらいに優遇されていた。しかし、一九七五年あたりから朝鮮総連幹部がいなくなりはじめた。七七年に、民族反逆者だと祖父が強制収容所に連れられていった。祖母は十年間収容所に入れられた。私は当時九歳だったが、収容所送りになった。そこには在日朝鮮人が三分の一収容されていた。帰国者の多くは北朝鮮に適応できなかった。政治的生命を失った者はケモノのような扱いを受けた。食べ物は家畜のえさのトウモロコシと塩しかもらえなかった。虫、ヘビ、カエル、ねずみなどなんでも捕って食べた。それができなければ死んでいった。一日十四時間の労働を強制された。私が見ただけでも、二百人が死んでいった。冬に死ぬと地面が凍っていて、墓を深く掘れないので、春になると腐濫した死体が出てきた。死体を見てもなにも感じなくなった。
 八七年に朝鮮総連内部に動揺があったことと、日朝国交正常化の話が持ち上がり、日本に親戚のある帰国者を収容所から出した。もし、私はこの時、釈放にならなければ死んでいただろう。北朝鮮の収容所問題を解決してほしい。(文責、編集部)

日本政府への要請文

集会宣言で、以下のような要請文を採択した。
 一、日本政府は北朝鮮政府に対し、帰国者、日本人配偶者のうち行方不明になっている者の安否調査を、人道上の緊急課題として要求し、報告を求めるよう要請する。
 二、 浩平さん・小池秀子さん一家、芝田孝三さん一家の安否については、北朝鮮政府からアムネスティ・インターナショナルに回答があったが、きわめて荒唐無稽な内容であるので、日本政府は北朝鮮政府に対して再調査を求めるよう要請する。
三、帰国者、日本人家族も多数収容されているといわれる強制収容所や、家族連座制などの制度は、国際人権規約に違反した極めて残酷かつ非人道的な制度であり、現代においては既に許されざるものであるので、日本政府は北朝鮮政府に対し、強制収容所を閉鎖し、「政治犯」を解放することを求めるよう要請する。


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