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韓国はいま、                    かけはし2002.2.25号より

ソウル地裁 「良心的兵役拒否者処罰は憲法違反の疑いあり」

憲法裁判所に初めて違憲法律審判を請求


監獄の扉は開かれるのだろうか

 良心を閉じ込めた監獄の扉は開かれるのだろうか。一月二十九日夕刻七時。ソウル永登浦拘置所の門が開かれ良心的兵役拒否者イ・ギョンス氏が歩いて出てきた。兵役拒否の嫌疑で拘束されてから、ちょうど四十日ぶりのことだ。同日午後二時、ソウル地裁南部支部の刑事単独一部パク・シファン判事が、イ氏の弁護人が提出した違憲法律審判請求の申請を受けいれた結果だ。イ氏の釈放は六十三年間、一万余人の良心的兵役拒否者たちが投獄されて以来、初の「事件」だ。イ氏を迎える家族たちやエホバの証人たちの赤くはらした目には涙がにじんでいた。
 違憲法律審判請求というのは、法律自体が違憲であるかどうかが裁判の前提となる場合、裁判所の職権または当事者の申請によって憲法裁判所(憲裁)に違憲審判を請求し、憲裁が違憲かどうかを審査し判断する制度だ。裁判所が違憲の審判を提出すれば憲裁の決定が出てくるまで当該事件の裁判は中止される。これによりイ氏は判事の職権による保釈の決定によって解き放たれた。

代替服務制導入の必要性を示唆

 パク判事は決定文の中で「良心的、宗教的兵役拒否者たちの場合、兵役の義務と思想・良心の自由および信教の自由との間に衝突が生じるところとなり、両者を適切に調和・併存させる必要がある」と前提した後、「現行の兵役法は入営拒否に対して処罰規定を定めながらも、いかなる例外的措置をも定めておらず、良心の自由を著しく侵害することになる可能性が大きい」と違憲性が疑われる理由を明らかにした。兵役の義務を損なうことなく、かつ良心の自由をも侵害しない例外的措置としての「代替服務制」の導入が必要だ、ということなのだ。
 違憲法律審判請求を受け入れた決定は、突出「事故」ではない。今回の決定は裁判所が兵役拒否者たちに一年六カ月の刑を宣告してきたことから、ある程度、予告されていた。二〇〇二年二月四日まで、裁判を受けた二百五十四人の兵役拒否者のうち二百十一人(八三・一%)が一年六カ月の刑を宣告された。一年六カ月の刑は再徴集を避けることのできる「最少刑量」。現行法上、一年六カ月以上の刑を受けると徴集が免除されるが、それ以下の刑を受ければ徴集令状を再び受けることになる。
 一年六カ月の刑は軍事裁判での画一的な三年の刑の宣告とも対比できる判決だ。エホバの証人たちは良心的兵役拒否が公論化された昨年下半期から入隊後、軍刑法上の抗命罪で処罰されてきていた慣例を破り、入隊自体を拒否して兵役拒否罪で、軍事法廷ではなく、普通の裁判を受けてきた。
 有罪の宣告以外に選択の余地のない法廷の現実は、喜劇的な風景を生み出した。二〇〇一年十月三十日、ソウル地裁の抗訴審の法廷で被告人キム・ジンソク氏が「刑量を重くしてくれ」と言って一年六カ月の刑を「自請」したのだ。キム氏は兵役忌避罪で一審で懲役八カ月、執行猶予二年を宣告されたからだった。
 キム氏の困難な家庭の事情を考慮して善意で下した刑量だったが、むしろもう一度の徴集や裁判ざたになるのは明らかだった。一審が終わった後、キム氏は検事に抗訴してくれるよう嘆願した。被告人が抗訴したのでは刑量を重くすることはできないからだった。結局、抗訴審で裁判所はキム氏の「訴え」を受け入れて一年六カ月の刑を宣告した。
 一審で二年刑以上も受けた人々も、抗訴審で大部分が一年六カ月の刑を受けている。二〇〇二年二月四日まで、高裁は二年刑以上を受けて控訴した十九人のうち十七人に一年六カ月の刑を宣告した。ソウル地裁の裁判部関係者は「一審で一年六カ月以上の刑が宣告された場合、兵役免除が可能な水準で刑量を調整しようというのがソウル地裁・刑事抗訴部の裁判長たちの間で相当な共通感覚になっている」と伝えた。
 軍事裁判では軍検事が判事に向かって被告人の善処を訴えることが展開された。二〇〇二年一月二十七日、陸軍五十師団の軍事法廷では抗命罪違反者イ・チヨプ氏に対する裁判が開かれた。大方が入隊拒否で普通の裁判を受けている状況にあって、入隊後の抗命罪で裁判を受けている最後のケースだった。この裁判で検事は「入営を拒否し兵役忌避によって裁判を受けている場合、その大部分が一年六カ月の刑を宣告される」「罪名は異なるものの良心に従った兵役拒否という側面から同一の人々に三年の刑を宣告するのはバランスを欠く」との論告を展開した。
 さらに検事は「代替服務制」のない現実についてのもどかしさを吐露し、被告人の両親が提出した嘆願書を、そのまま朗読した。あまつさえ弁護士も「検事さんがおっしゃったように……」と弁論を始めるほどだった。長い論告の末に検事は三年の刑の慣例を破り二年六カ月を求刑した。結局、検事の「良心」に従った論告は受け入れられず、三年の刑が宣告された。
 司法部の典型的な判決とは違って、行政部の態度は、むしろ後退している。二〇〇一年六月九日、昌原兵務事務所は各傘下機関に送った公文書で「招集忌避者に対する告発の際、軍入隊後の執銃拒否者には通常三年の刑を求刑するので、軍入隊者とのバランスある司法処理をすべきだとの点を明確に記載してくれ」と要請した。この結果、唯一、昌原地裁でのみ最長期刑の二年二カ月の刑が被告人七人全員に宣告された。
 実際に六月十五日、釜山では入営当日、兵務庁職員八人がエホバの証人の家を襲い、強制連行を試みた。出頭要求書も発布されていない状況で行われた「不法連行」の試みだった。国防部の「代替服務不可」の立場は、違憲法律請求申請が受け入れられた後も変わりはない。国防部は「政府レベルで良心的兵役拒否者に対する対策を論議する計画はない」と切って捨てる。このような立場は憲法裁判所の判決に影響を及ぼすものと見られる。憲裁が審理の過程で関係機関の立場を聞くからだ。

ボールは憲法裁判所に渡った

 いまやボールは憲裁に渡った。憲裁の判決を予測するのは難しいが、昨年、民主党チョン・チョンベ議員が送った質疑書に対する憲裁の答弁は予測の糸口となる。チョン議員は「良心的兵役拒否者を処罰することは良心の自由を侵害するのではないか」と質問した。憲裁は「わが憲法裁判所の場合、ドイツ憲法のようなやり方で良心の自由に従った執銃拒否権を明文化してはおらず、論議は起き得る」「ドイツ基本法第十二条についての判例や学説を通じて憲法的解決の輪郭をつかむことができる」と答弁した。
 ドイツ基本法第十二条は良心的兵役拒否者に対する代替服務を明示している。違憲法律審判請求の申請を出したオ・ジョンクォン弁護士は「法の論理によってつきつめれば間違いなく違憲であることに自信を持っている」「憲裁が『特殊な分断状況』という政治の論理の壁を越えられるかがカギ」だと見通した。
 兵役法八十八条について合憲の決定が下されれば、釈放されたイ・ギョンス氏は再び監獄に閉じ込められたまま裁判を受けることになる。反面、憲法に合致しないとの決定が下されれば該当する条項の効力が停止され、「代替服務制」を受容した新たな立法案を作らなければならない。
 現在、収監中の兵役拒否者千六百余人の運命は憲裁の手にかかっいる。憲裁の決定は毎年六百人ぐらいずつ量産されている未来の監獄行きも阻むことができる。監獄の扉のカギを憲裁が握っているというわけだ。平和人権連帯チェ・ジョンミン活動家は「良心を閉じ込めた歳月は六十三年なら、もう充分だ」と訴えている。(「ハンギョレ21」第396号、02年2月21日付、シン・ユンドンウク記者)


良心的兵役拒否への無関心と沈黙の時代は終わった

 二〇〇二年二月四日午前十一時。「良心に従った兵役拒否権の実現と代替服務制度の改善のための連帯会議」(準)の発足記者会見が開かれている「参与連帯」の前ではシュプレヒコールがはじけていた。民主参与連帯ネッティズン連帯と活貧党(義賊の群れの意)の会員二十余人が記者会見に合わせて糾弾集会を開いたのだ。連帯会議側は、むしろ糾弾集会をうれしがっている雰囲気だ。連帯会議の関係者は「これまで良心的兵役拒否運動の最大の障害物は無関心と沈黙とだった」「反対の声が高まっているという事実は、それだけ公論化が進んだという証拠」だと分析する。
 違憲法律審判請求の申請が受け入れられた後、賛否両論の激突が高まっている。時あたかも良心的兵役拒否「運動」も「連帯会議」の発足によって本格的な軌道に乗った。「連帯会議」には軍疑問死真相究明と軍暴力根絶のための家族協議会など軍暴力の被害者団体、キリスト社会市民連帯など宗教団体、環境運動連合、参与連帯、民主社会のための弁護士の会(民弁)など多様な領域の二十九の社会団体が参加している。平和人権連帯、人権運動サランバンなど六、七の団体を中心に進められてきた良心的兵役拒否の集まりが大きく広がったのだ。
 連帯会議は発足とともに「良心に従った兵役拒否権支持一千人宣言」を発表した。一千人宣言には民主労働党クォン・ヨンギル代表、聖公会大シン・ヨンボク教授、映画人ミョン・ゲナム氏ら各界の人士千五百五十二人が参与した。連帯会議側は「今後も街頭署名活動などを通じて支持宣言者たちを増やしていく」と語った。
 連帯会議は街頭署名のほかにも国際シンポジウム、収監された拒否者たちの人権侵害監視活動などを展開する計画だ。当面、今年四月にスイス・ジュネーブで開かれる第五十八回国連人権委員会に代表団を派遣し、韓国の状況を知らせる。良心的兵役拒否の問題は今度の国連人権委員会の会議の主要議題のうちの一つだ。すでに連帯会議は民弁の名義で韓国の状況についての書面陳述書をジュネーブの事務局に提出している状態だ。
 連帯会議側は「千六百余人が収監された現実が伝われば国連人権委員会が韓国に特別報告官を派遣する可能性が大きい」と見通している。特別報告官が派遣され韓国の状況についての報告書が作成されれば韓国政府に相当の圧力となる。連帯会議はオ・テヤン氏ら逃亡のおそれのない兵役拒否者たちの不拘束捜査も火急の課題にあげている。オ氏は来る二月七日に警察の調査を受けるために東部警察署に出頭する予定だ。
 この日の会議では「ユ・スンジュン(注、韓国の人気歌手、米国市民権を取得することによって徴兵を回避した。本紙前号参照)とオ・テヤンの違いは何なのか」という質問も当然あった。連帯会議共同執行委員長イ・ソクテ弁護士は両者の違いを、こう指摘した。「オ・テヤン氏の場合は良心に従った選択であるのに反して、ユ・スンジュン氏の場合は現実的必要にそった忌避と見られる。そしてユ氏は兵役の免除をねらっているが、良心的兵役拒否者たちは、より困難な義務であろうとも軍事訓練でないのなら喜んで受け入れていくという人々です」。国の内外で、否定するにせよ、肯定するにせよ、良心的兵役拒否問題は熱いイシューとして浮かび上がっている。(「ハンギョレ21」第396号、02年2月21日付)


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