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寄稿 政府の恣意的な運用を許さない難民認定制度が必要だ
                          
かけはし2002.2.18号より

「難民鎖国」を打ち破ろう

神田 春樹


 昨年十月三日の東京入国管理局によるアフガン人難民申請者の大量拘束・収容で明るみにでた、日本政府による在日アフガン難民の迫害の問題は、年を越しても続いており、現在も三十人前後のアフガン難民申請者が収容された状態が続いている。
 本年一月十二日、日本政府のアフガン難民申請者への処遇を明らかにするために社民党の北川れん子衆議院議員が提出した質問趣意書への回答を政府が公表した。回答は、日本の「難民鎖国」政策によるアフガニスタン難民への迫害の状況を改めて浮き彫りにするものとなっている。

難民申請者77人中認定者は1人だけ


 まず難民申請の状況についてみてみよう。
 二〇〇一年一月一日から十一月三十日までの十一カ月間に、日本では七十七人のアフガン人が難民申請を行った。その背景には、ターリバーン政権がハザラ人の多く住むアフガニスタン中央山岳地帯を制圧、大規模な虐殺を起こし、多くのハザラ人が難民化したという事実がある。
 ところが、彼らに対する日本政府の扱いは過酷だった。七十七人のうち四十七人が未決のまま放置されており、判断が行われた二十七人については、認定されたのが一人、不認定が二十六人というありさまである。
 この数字は、国際的な比較から見ても極端なものである。カナダでは、一九九九年一年間で四百四十八件のアフガン人の難民申請ケースが処理されたが、認定されたのは四百十四件(九二%)、不認定となったのはわずかに九件(二%)であった。これは、内戦中であったコンゴ民主共和国(六二%)やソマリア(七六%)と比較しても著しく高い数字である。こうした数字に照らせば、日本が「難民鎖国」を前提に、難民条約を恣意的に解釈し、運用していることは明らかである。
 一方、この答弁書から、強制収容の実態も明らかになった。昨年十一月三十日現在で、牛久収容所(東日本入国管理センター)に十五人、茨木収容所(西日本入国管理センター)に四人、東京入国管理局収容場(東京都北区)に四人のアフガン難民申請者が収容されている。牛久に送られていた人の多くは、成田空港で難民であることを主張したが無視され、上陸防止施設から牛久収容所に移送されたアフガン人たちであり、すでに収容が二百日を越えている人もいる。
 これに現在の実態を加味してみよう。当時、東京地方裁判所民事第三部の命令により五人のアフガン人が解放されていたが、彼らは昨年末に収容され、強制退去命令を受けて牛久に移送された。また、大阪でも新たに収容された人などがおり、現在のところ、総勢三十人前後が強制収容されているものと考えられるのである。

難民条約を踏みにじる認定制度

 北川衆院議員の質問主意書に対する政府側の答弁書は、日本政府がアフガン難民申請者に対して劣悪な処遇を行っていること、難民条約の締結国としての責務をはたしてこなかったことを明らかにするものとなっている。
 日本は、一九八一年に難民条約に加入し、当時までの「出入国管理法」を「出入国管理および難民認定法」に改めたが、法律につけ加えられた難民認定に関する条項はまさに最低限以下の、政府による恣意的な運用を可能にするものであった。さらに日本政府は、八〇年代のインドシナ難民の受け入れが終了した後、そもそも行政への委任事項の多い難民認定法を極めて消極的な形で運用し、事実上「難民鎖国」を可能とする行政実務を確立してしまったのである。
 その実例が悪名高い「六十日ルール」である。外国から逃亡してきた難民は、難民認定制度自体を知らないことも多く、また国家権力一般に対して染み着いた恐怖感などから、難民認定を申請することにためらいを感じ、すぐには難民申請ができないことが多い。ところが、日本政府はこうした葛藤の末に難民申請した外国人に対して「入国後六十日を超えているから」という理由だけで難民不認定とする処分を行ってきたのである。
 そもそも難民条約には「六十日ルール」などというルールはなく、このような処分を認めてしまうと、本来条約難民に該当する人が、難民条約にない国内規定によって不認定とされ、必要な庇護が与えられないということが起きてしまう。しかし、政府は「難民鎖国」を貫くために、「国内法を条約に優先させる」という、本来あってはならない実務を既成事実化してしまったのである。
 日本の難民制度の問題はこれだけではない。欧米諸国の多くには、行政当局が難民不認定処分を行い、申請者がそれを不当とする場合、異議申し立てを専門に受け付け、高度な訓練を受けた難民認定専門の裁判官が行政から独立して審判を行う「難民控訴局」といった機関がある。ところが日本の場合、難民不認定処分に対する異議申出は、実際に不認定を行った法務大臣に再度願い出るという奇妙な仕組みになっている。その結果、日本が難民条約に加入した一九八一年からの二十年で、異議申出が認められ認定されたケースはわずか五件を数えるのみとなっているのである。

難民認定制度の抜本的改革が急務だ

 難民条約の精神に沿った難民認定を実現させるためには、裁判によって現在の難民実務が難民条約に違反していることを司法判断によってはっきりさせるとともに、難民認定法自体を、より難民条約に即した、民主的で市民がコントロールすることが可能なものとして改正し、日本の難民制度を再生させていくことが急務である。
 法務省は、外国人犯罪や外国人による「偽装結婚」の存在を社会にキャンペーンし、昨年改悪した入管法をさらに改悪することを狙っている。改悪案に反対することはもちろんだが、それ以上に、私たちの側から、より適切な難民認定制度のあり方を社会に提起し、立法の場を舞台によりよい制度の確立を目指して行動していくことが必要なのではないだろうか。


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