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投稿                        かけはし2002.2.18号より

二つの同級会から--差別選別
教育がもたらした階級社会の現実

K.A


 昨秋と今年の正月に同級会があった。秋は高校のクラス会で十年ぶり、正月は中学校の同学年五クラス一緒で五年ぶりだった。四十代も最後の集まり、中高年といわれる世代になっただけに、どちらにも現在の社会・経済情勢が影を落としていた。
 高校の同級会は、思い出話に花が咲くというよりは、自分の現状、とくに仕事が話の中心だった。卒業して三十年、ほぼ全員が大学に進学し二十数年の職業生活を送り、「結果」が出ていて悲しいかなそれぞれの階級・階層と心情がよく見える場となっていた。
 大雑把に言えば、安定クループと不安定グループに二分。前者は、@資本家・経営者A大企業や公務員の管理職にある者たち。後者は、B首切りや配転にさらされる労働者や小規模の自営業者である。階級的に言えば、AとBは一緒のはずだが、現実の収入や心理面からすると、@とAの違いよりは@AとBの間の違いの方がはるかに大きい。
 @は、地元の代々の老舗を継いだ者と新たに会社を興した者(一人。ビジネス・医療専門学校経営)。後述するが一番威勢が良かったのはこの部分だ。Aは、受験戦争に勝ち抜き有名大学から大企業・県庁のコースを歩んだ者と才能に恵まれるか学問の道をスマートに選択して大学教員となった者たちで品の良い立ち回りをしていた。
 Bは、職を幾度か変えざるを得なかったり同じ仕事に就いてはいても会社名が変わった者、失業や生活ダウンの危機を恐れざるを得ない者たちだ。(労働者ばかりではない。銀行を辞め田舎に帰り精肉店を継いだ彼はBSE(狂牛病)に加え郊外型大型店舗の出現で廃業の危機が迫っていると悲しげだった)。その中の一人は失業も経験し厳しい流通業で自分は懸命に働いている、しかるに「グローバリゼーション、構造改革が云々」などと相も(三十年も!)変らぬ言辞を繰り返していると私を強く非難した。
 @の支配階級部分は自らの利害を隠さなかった。大学開設も近いという専門学校理事長は、労働運動に生きている私を前にしてその低迷状況を嘲り、書記長銃撃事件のあった私立高校の校長に請われて就任した恩師に「組合は絶対作らせるなよと助言された」「共済組合で十分と言ってる」と自慢げに話した。
 代を継いだ電工会社社長は、関係者とのゴルフ以外はやる仕事がないと言った後に「俺の収入は課長のたった一・五倍。土地も建物も道具もみんな俺の所有。会社はそれで成り立っているのに……」と不満を語った。麺類製造販売社長に新卸売市場の利用料金の問題をたずねたところ、「利用料金や卸値が高かろうが低かろうが安定していればいい。もうけ分を上乗せし、調整して共通の売値に合わせればいいから。」と調整=搾取の容易さを語るに躊躇なかった。富のある正直者に幸福の女神は(依然として)微笑んでいた。とはいえ、現状への分化が、少数の@はともかく、AとBは進学大学とそれに規定された就職先によるものであることははっきりとみてとれた。
 一方、正月の中学校の同級会は開催に漕ぎつけるまでが大変だった。「いま、失業中で出て行く顔がない」「仕事が少なくて飲んで遊んでいる状況にない」と言う声が幾つも返ってきた。中学時代は高度成長と米増産の最後期で農村の生活水準も高まっていたが、四割以上が中卒で就職、多くが東京方面に行った。そして五十路にさしかかった所で、合理化の犠牲者にさせられていた。
 年末にリストラされて帰郷したI君は三次会までに五十曲以上のカラオケを歌い、翌朝喉の異常を訴えたが、それは久しぶりに少し幸福な時間を得た代償だった。比較的に耕作面積の多い農家の長男や長女は農業高校を卒業して地元に残ったが三十数年を経て最大の危機に直面していた。米の減反を補う野菜生産・販売は輸入中国野菜の登場によって完全に採算割れだし、働き口もあまりない。
 何年も働いた誘致工場で首切りに遭った人も多い。大工などの職人から社長になっていたものも数人いたが、普通高校や大学を出て公務員になった人がいま一番だ、と言っていた。もちろん同級会は暗い話に終始していたわけはなく大いに盛り上がりエネルギーが発散される場であった。
 二つの同級会は階級社会の現実と、学歴によって生活階層がほぼ決められてきたことを改めて認識させるものであった。中教審での教育基本法「改正」論議がスタートし、教科の内容が三割削減される新学習指導要領が四月から実施される。戦後憲法体制―平和と民主主義の危機、教育の機会均等の崩壊、階層間格差の拡大―新たな階級社会の到来を懸念し指摘する声も各方面から上がっている。私はこの問題にこれまで続いてきた差別選別教育の現実ともたらしたもの、階級社会の現実をきちんと見ることから分析し取り組んでいきたいと思う。

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