| アジア民衆フォーラムに参加して かけはし2002.1.21号より |
新自由主義と資本のグローバリゼーションに反対する闘いは、アジアでも確実に形成され始めており、相互に結合した共同の行動へと前進し始めている。今号から、昨年十月二十九日から三十一日、香港で開かれた「世界経済フォーラム・アジア大平洋サミット」に対決して開催された「アジア民衆フォーラム」に参加して、各国の運動と交流してきた仲間からの報告を連載する。
世界経済フォーラムに対抗
政治家や多国籍企業の経営者など、グローバル化を推進する政治家や経済人などが一堂に会する国際会議の一つである世界経済フォーラム・アジア太平洋サミットが昨年十月二十九日〜三十一日の日程で香港で開催された。メインテーマは「安定と成長」。日本からは十一万人首切りを推進するNTTの経営者が参加したことからも分かるように、それは労働者民衆の安定と成長ではなく、まさにグローバル化推進勢力のための安定と成長である。
このような「やつらの会議」に対抗して十九の香港の社会運動やNGOから結成されたソリダリティー・アンド・レジスタンス・アゲインスト・グローバリゼーション(SRG)が、「アジア民衆フォーラム」を開催した(十月二十七日〜二十九日の日程)。九九年に創刊された『グローバリゼーションモニター』という隔月刊の雑誌に結集するメンバーがその中心的役割を占めていた。先駆社の友人たちもこの雑誌に協力している。香港をはじめ、日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、ニュージーランド、バングラデシュ、カナダ、インドなど、アジアを中心にグローバリゼーションに異議申立てをする人々が集まった。日本からはアジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会やATTAC―ジャパン準備会、ピープルズプラン研究所などから参加があった。
台湾の参加者が強制送還に
久し振りの香港は、経済危機とその後の景気後退にもかかわらず、ネオンや人通りは途切れることがないかのような勢いを見せていた。とりあえずホテルにチェックインして、近くのレストランで食事をとる。ショーウィンドウには「店じまいセール」「大特価」などの文字が踊る。ネオンの華やかさの裏に厳しい民衆の事情をうかがうことができる。
ホテルの部屋に帰ると電話が鳴る。「無事に到着した?」。香港の友人からだ。様子がおかしい。「どうかしたの?」と聞くと、台湾からの参加者三人が空港の入境管理局に拘束されているとのこと。「すでに他の二人が帰国させられた。この三人もどうなるか分からない」という状況だ。「てっきり君も入国できなかったのではないかと心配したよ」と、とりあえずひと安心のようだ。なぜ入国できないのかなど全く不明なため、少々不安ではあったが、最悪の場合でも強制送還ですむとのことなので、その夜は眠りについた。
香港と資本のグローバル化
翌日、一足先に会場に到着。会場はホテルから歩いて五分ほどのところにある香港理工大学。百人ほどを収容できる講義室がメイン会場。すでに数人のスタッフが忙しそうに準備をしていた。先駆社のSさんも携帯で話をしている。台湾の友人たちの状況を把握しているようだ。間もなくして、参加者が集まり始めた。拘束を免れた台湾の参加者二人も会場に到着した。
九時からフォーラムがはじまった。冒頭、主催者から台湾の参加者が現在も空港で足止めされており、今日のフォーラムが終わった後に何らかの抗議行動を予定している旨が伝えられる。
その後、主催者からのあいさつがあった。グローバル化の影響はすべての地域に浸透しており、香港では早くから生産拠点が大陸に移転し、多くの労働者が職を失った。香港の経済は発展したが、その恩恵を受けられなかった人々がたくさんいる。九七年返還直後の経済危機は、財政政策の急激な転換を引き起こし、多くの公的部門が民営化・民間委託の危機にさらされており、失業も増大し、福祉関連の財政支出も削減されていることが紹介された。グローバリゼーションと香港民衆の苦境が一体のものであることを広く宣伝することが、このフォーラムの一つの目的であることが述べられた。
香港政府の福祉支出削減策
次に演壇に立ったのは香港介護労働者・ホームヘルパー組合の鄭清発委員長。
「現在すべての行政サービスに民営化・民間委託化の攻撃がかけられており、人員の削減が進んでいる。社会的弱者に対する行政サービスの商品化にわれわれは反対している。組合の調査では介護労働者・ホームヘルパーの賃金が低下しており、サービスの内容も低下している。この調査結果を政府も否定できず、この間は削減攻撃はとりあえずはとまっている。香港がイギリスから中国に返還された際に、中国政府が制定した香港基本法では、政府に対する香港市民の監督権が明言されていない。グローバル化による行政サービスの低下は、香港政府が果たすべき責任を放棄しているということだ」。
会議の後に香港の友人に聞いたところ、公有部門への攻撃は、福祉関連部門から始まっており、今年からすべての社会福祉関連労働者に対して一年の雇用契約が導入されたそうだ。
NZ、タイ、フィリピンの報告
次に発言したのは、GATTウォッチドッグのアジズ・チャウドリーさん(ニュージーランド)。グローバル化による貧富の格差の拡大、九七―九八年の経済危機の影響、NAFTAなどの影響を解説。労働者民衆の生活条件が悪化しているが、メディアはまったくそれらを取り上げない。このような不平等な社会を押し付ける勢力に抵抗するのはわれわれの義務であることを提起。
次にフォーカス・オン・ザ・グローバルサウスのウォルデン・ベローさん。アメリカのアフガン爆撃についてCNNなどが正確に取り上げずに、アメリカの有利な情報しか流さないことを批判。「われわれの声を上げるべきである!」と提起する。
「二日後に開かれる世界経済フォーラムは、多国籍企業の暴利をむさぼる営業活動に合法性を与えようとするもの。九五年のWTO成立で、多国籍企業の投資が促進。しかし拡大したのは生産性のある投資ではなく、投機的投資。バブルがバブルを呼び、ついに破裂してアジア通貨危機が起こった。バブルが弾け、投資が逃げ去った地域にはIMFが参入して経済の『建て直し』を行うが、民衆の生活はさらに厳しくなった。世銀では一日一ドルの生活費を貧困ラインとしているが、これは極めて低く見積もった貧困ラインである。この基準を引き上げなければならないが、そうすると多くの人々がこのライン以下の生活を送っていることがわかる。テロによる反グローバル化勢力へのネガティブキャンペーンが始まっている。これからが反グローバル派の正念場である。抵抗こそが民衆の手段だ」。
続いてフィリピンKMPのラファエル・マリアノさんからの報告。
「グローバル化を推進する国際機関や条約がこの間の貧富の格差を拡大している。G8や多国籍企業はIMF/WB/WTOなどを通じてグローバル化を各国に強制。農業はWTOでもっとも影響を受ける分野だ。すでに途上国の農産物市場は多国籍企業に支配されている。自国の農業を守る手段として関税障壁があるが、途上国はそのような方法も使えない。フィリピン政府の発表では千五百万人のフィリピン民衆が貧困層であるとしている。グローバル化はこの貧困をさらに拡大する。反撃する行動が必要だ。第三世界の運動体の団結が必要だ。大規模な行動と強力な組織が必要だ」。
次に発言に立ったのはタイのレックさん(タイ・レイバーキャンペイン)。九八年に結成されたタイ貧民連合を紹介した。貧民連合は多国籍資本と一体となった政府の農民追い出しに抗議する運動からスタートし、多くの運動体から構成されている。
「政府はインフラなどを外資に開放し、森林、居住地、農地なども売却してしまい、そこに住んでいる農民は『不法占拠』になる。水源も売却されてしまい、水を使うのにカネを払わないといけない。九七年の通貨危機以降のIMFやアジア開発銀行の融資条件が市場の開放。また農業への補助金の削減も融資条件の一つであり、それによってコストが三〜四割も増加。われわれはまだ小さな力であるが、闘うことを避けようとは考えない」。
「ウソをつくなよCNN」
四人の提起のあとの質疑応答が終わり、昼食の休憩に入る直前に、参加者からアメリカの戦争に肩入れするCNNの報道姿勢に抗議するアクションが提起された。アジア民衆フォーラムの前日に会議を開いていたアリーナ(香港に拠点を置く進歩的行動派インテリゲンチャのリージョナルグループ)で決まった緊急行動で、会場からも多くの仲間が参加した。
バスで香港島に渡り最寄駅で下車し、歩くこと五分。閑静なオフィスビルの一角から「ウソをつくなよCNN!」などと書かれた小さな横断幕をそれぞれが掲げ、シュプレヒルコールを繰り返しながらCNNの入っているビルまで行進。すでにマスコミが待ち構えており、ビルの前で抗議のコール。CNNの社員だろうか、ビデオでわれわれを撮影していた。こちら側は抗議文を読み上げて、マスコミのインタビューに答えて行動は終了した。「はやくはやく!フォーラムが始まっちゃうよ!」と同行したフォーラムスタッフ。それぞれがタクシーに分譲してCNNを後にした。少し離れた歩道には十人ほどの制服警官がタクシーが去るのを確認していた。(つづく)
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