一月二十一日に召集される次期通常国会では、本格的な有事=戦争法制や憲法改悪のための法的基盤を整備する「憲法改正国民投票法案」の上程がもくろまれている。
一月一日の「読売新聞」は、1面トップ記事で小泉政権が「安全保障基本法」を制定する方針を決めたと報道した。「安全保障基本法」とは、「日本に対する直接の武力攻撃や大規模テロ、災害など」に対処するため、首相権限の強化や非常事態における私権制限の
原則をうたったものであり、「緊急事態の規定がない憲法を補完し、自衛隊活用を柱とした迅速で効果的な対応を取れるようにする」ことが狙いとされている。ここでは「非常事態」について首相がそれを認定し、宣言するものとされている。
従来、防衛庁は有事法制の整備について、自衛隊法などの防衛庁所管法令(第1分類)、道交法、河川法などの他省庁所管法令(第2分類)、そして「捕虜」の取り扱いなど所管省庁が不明な法令(第3分類)に分けて、それを漸次整備していく方針を考えていた。
しかしいまや小泉政権は、この超憲法的な「安全保障基本法」(緊急事態基本法)の制定を基礎にして、それを憲法を「補完」する根拠法令にした「有事」対処法の整備を急いでいるのだ。
小泉首相は、一月四日の年頭記者会見でこの方針を確認した。すなわち狭義の意味での「日本有事」、つまり「日本に対する直接の武力攻撃」に限定することなく、「テロ」をふくめた「平時の脅威」に包括的に対応することもふくめて「有事法制」の整備に本格的に取り組むという方針である。それは、現行憲法が「緊急事態」を想定していないという口実で、憲法の規定を超える事態への対処には首相に権限を集中して、基本的人権などの「私権」を一時的に制限することを当然とする、文字通り反民主主義的な「戦時」立法の構想である。
昨年秋の臨時国会で成立した「テロ対策特別措置法」=自衛隊参戦法の憲法破壊の論理が「有事」での「憲法停止」へと広範かつ全面的に拡大したものこそ、この「安全保障基本法」という「戦時基本法」なのであり、それは必然的に憲法そのものの改悪へと直結している。
そして「テロ対策特措法」が、アメリカの「対テロ戦争」を自衛隊が支援するためであったと同様に、この包括的な戦時法体系の制定もまた東アジアを中心としたアメリカ帝国主義の戦争に日本が全面的に参加するためのものであることは言うまでもない。「日本有事」とは、決してどこかの国が日本に直接侵略を行うことを想定したものではない。アメリカ帝国主義が主導する東アジア・太平洋地域の「ボーダーレス」な戦争にあたって、日本が国内戦時体制をしいて民主主義的諸権利を制限しつつ、その「ボーダーレス」な戦争の一翼を担うことが目指されているのだ。二〇〇〇年十月のアーミテージ(現米国務副長官)報告は、この「安全保障基本法」による憲法停止と憲法改悪のコースが、徹底的にアメリカ帝国主義の戦略に従属的に適合しようとするものであることを示している。
この「安全保障基本法」構想とセットで、防衛庁は二〇〇五年度をめどにした新しい「防衛計画の大綱」の策定を開始しようとしている。この新「防衛計画の大綱」で追求されるべきものとしては@大規模テロ、ゲリラ、サイバーテロなど「平時の脅威」への対処A情報収集、分析力の強化B「平和維持のための国際協調」C軍事技術革命(RMA)への対応D陸海空自衛隊の統合運用F日米同盟のいっそうの強化、などである。ここではPKF(国連平和維持部隊)本体業務への参加凍結を解除したPKO(国連平和維持活動)法
改悪を受けて、自衛隊のPKO参加ほ本格化し、海外派兵体制を常態化するためにPKOを自衛隊の「本務」へと格上げすることが構想されている。
昨年秋の臨時国会で成立した「テロ対策特措法」と自衛隊のインド洋派遣、十二月に起きた「不審船」への公海上(中国の「排他的経済水域」)での戦争行動と撃沈事件をテコに、「特措法」の「二年間の時限立法」という名目的な制限を超えた恒常的な「グローバ
ル戦争」対処体制が目指されていることが、ここでもあからさまになっている。
かりに種々の政治判断によって「安全保障基本法」=戦時基本法そのものが今回の通常国会で上程されなかったとしても、その一部を実態として構成する自衛隊法の再改悪などが上程されることは確実である。
報道によれば、自衛隊法に海上警備行動の「準備行動」にあたる待機命令を新設することが検討されている。今回のの「不審船」事件を名目に打ち出された「待機命令」新設とは、海上保安庁の要請を待たずに海上自衛隊が独自の判断で現場に護衛艦を派遣し、、必要な場合にただちに海上警備行動に移行して海保とともに武力行使を行うというものである。これはいつでも自衛隊が戦争行動に入ることを法的に可能とするものであり、すでにに有事法制そのものであるといって過言ではない。
自民党は〇二年度活動方針で「有事法制」の制定をはっきり打ち出した。野党第一党の民主党も、一月六日のNHKTVの番組で鳩山由紀夫代表が「緊急事態における法整備がなされていないのは国会議員の怠慢だ。平時に緊急事態法制の基本的な姿を作り上げて
いくのは当然で、議論に参加すべきだと思っている」と、体系的な「安全保障基本法」の必要性を強調している。
アメリカ帝国主義はアフガニスタンへの徹底的な空爆を続行して多くの人びとを虐殺しつつ(すでに空爆によるアフガニスタンでの民間人の死者は九・一一テロの死者の数を超えている)、戦争をイラク、ソマリア、フィリピン、インドネシアなど「国際テロ活動」の根拠地と見なした諸国にさらに拡大する動きを見せている。すでに自衛隊の海外での参戦が現実となっている中で、一月二十一日から始まる通常国会は「参戦国家」体制と憲法改悪を阻止する闘いにとっての正念場となるだろう。国際主義的な反戦運動で二月十七日の戦争屋・ブッシュ米大統領の来日に抗議するとともに、有事=戦時法制を阻止し、「憲法改正国民投票法案」の上程を許さない広範な共同行動に全力を上げよう! (純) |