| 新自由主義的グローバリゼーションに対決する日韓労働者の国際連帯を |
十二月二十二日、日韓投資協定の基本合意に反対する緊急行動が行われた。呼びかけは日韓投資協定NO!緊急キャンペーン。東京霞ヶ関の外務省で日韓投資協定の第九回交渉が行われ、韓国政府と基本合意が強行されようとするなか、緊急の呼びかけにもかかわらず十数名の仲間が寒風の中、外務省前に集まり抗議行動を展開した。
はじめに日韓民衆の生活・労働に大きな影響を及ぼす投資協定に関する協議を密室で進め、基本合意を強行しようとする日本政府の姿勢を厳しく糾弾する抗議文が読み上げられた。その後日韓ネット、韓国労働者支援連絡会議、アジア共同行動日本連絡会などから抗議のアピールが行われ、「日韓投資協定反対!」「基本合意をやめろ!」「外務省は労働者・民衆の声を聴け!」などとシュプレヒルコールを上げた。
同キャンペーンは、二十五日に抗議声明を発表し、基本合意の問題点を「それは、『資本の無限競争』というグローバリズムが支配する中で、富める者はますます富み貧しい者はますます貧しくなる、二十一世紀の日韓間の政府・財界と労働者・民衆との二極間関係をいみじくも暗示するもの」と指摘している。
日韓投資協定の全貌はいまだ闇の中である。同キャンペーンによる外務省との交渉やマスコミからの情報によると、合意内容には、@進出企業を投資受け入れ国の企業よりも優遇する「内国民待遇」と「最恵国待遇」の保証A進出企業への「現地調達の義務付け禁止」や「輸出要求の禁止」B短期投機資金の流出入を可能にする「送金の自由」C住民の居住権をないがしろにし、進出企業による土地買収に便宜を図る「土地収用の際の補償措置」D世界銀行などが深く関与する投資紛争解決国際センター(ICSID)や国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)に対して進出企業が投資受け入れ国を訴えることができる「紛争解決メカニズムの設置」E内国民待遇の例外項目に対する「スタンド・スティル原則」(投資協定の締結後、経済状況の変化によって国家的保護が必要な分野が生じても、勝手に例外項目に追加できなくする原則)F「ロール・バック原則」(逆に、締結時に設定した例外項目は、締結後の協議によって自由に削除できる原則)が盛り込まれていることが明らかになっている。
また最も懸念されてきた労働運動を監視・弾圧するための「労働条項」は、条項としては盛りこまず、前文に精神規定として盛り込むことで決着した。この間、同キャンペーンと韓国側の運動団体の連合体である「投資協定、WTO反対・国民行動」(略称:KOPA)との精力的な交流と世論喚起による闘いの成果である。しかし予断は許さない。フィリピントヨタ労組の闘いの経過でも明らかにされているように、日本の進出企業はその経済的影響力で進出先政府に圧力をかけることは周知に事実である。今後、同キャンペーンは国会批准反対の世論喚起を進めて行く。
これまで日本政府はWTOを中心とする多国間貿易主義を掲げ、「地域経済化する」として二国間自由貿易協定の推進を控えてきた。しかし九〇年代から、世界各地では二国間あるいは地域間の自由貿易協定が急増する。現在ではその数が二百にも達している。多国間投資協定(MAI)やWTOの多角的貿易交渉が民衆運動の抵抗などで暗礁に乗り上げると、この地域間自由投資協定が、それに先行する形で、新自由主義的グローバリゼーションの地ならしを進めて行った。東南アジア諸国連合自由貿易地域(AFTA、九二年)、欧州連合(EU、九三年)、北米自由貿易協定(NAFTA、九四年)、南米南部共同市場(メルコスル、九五年)などがその代表的なものである。
シアトルWTO閣僚会合の頓挫は、日本の支配階級に二国間自由貿易協定への道を踏み出させた。昨年交渉が終了し、今年にもその発効が行われるシンガポールとの自由貿易協定、今回の日韓投資協定をはじめ、メキシコ、チリ、オーストラリアなどとの二国間交渉を狙っている。中国のWTO加盟という自由主義的グローバリゼーションの巨大なブラックホールが開いたこともあり、今後の日韓資本の多くは中国へ向かう。そうであるがゆえに日韓両政府は、すでに進出している企業を含め、この投資協定の実行を面子にかけて推し進めようとするだろう。
「自由貿易」とは多国籍企業の自由を指すのであり、それは国内産業を保護してきた様々な規制を撤廃することを意味する。またそれは世界の労働者が闘いとってきたさまざまな社会的諸権利の撤廃をも意味する。資本の利益と労働者民衆の利益は両立しないという見事な実例である。国境を越えて活動する多国籍資本が、国境によって分断されている労働者民衆を底辺に向けて競争させる。その競争は、低賃金を競い合ったり、条件の劣悪さを競い合ったり、教育や福祉の後退を競い合ったり、環境破壊を競い合ったりする。
競争に耐えきれなくなったアルゼンチンでは民衆生活の崩壊状況のなかで政権が崩壊した。競争を拒否する地域には、容赦なく軍事的競争が強制される。イラク然り、北朝鮮然り、アフガン然りである。これこそが資本主義的グローバリゼーションの本質である。まるで時代の歯車がギシギシと音をたてて逆行しているかのようである。
しかし希望はある。シアトルからジェノバまで、このような底辺への競争を拒否し、民衆のオルタナティブを掲げ、草の根からナショナルセンターまでのさまざまなレベルで反グローバリゼーションの国際的ネットワークが実現してきた。それは個別の、あるいは地域的な課題に地道に取り組みながら拡大してきた。同じように日本でもさまざまな抵抗運動が、このようなネットワークへの合流を模索し始めている。希望はここにある。日韓投資協定NO!新自由主義的グローバリゼーションNO!
(02年1月6日 早野 一) |