かけはし重要記事

frame01b.html

もどる

「女性国際戦犯法廷」ハーグ最終判決         かけはし2002.1.1号より

「戦争と女性への暴力」日本ネットワークが記者会見

天皇裕仁ら10人に有罪

 十二月十日、参議院議員会館でこの十二月三日から四日にオランダのハーグで開かれた「女性国際戦犯法廷」最終判決法廷についての記者会見が行なわれた。
 二〇〇〇年十二月八日から十二日、東京で開かれた日本軍性奴隷制を裁く「女性国際戦犯法廷」は、カーク・マクドナルド首席検事(米国、旧ユーゴ国際戦犯法廷前所長)が起訴した昭和天皇を含む十人の被告のうち、昭和天皇についてのみ刑事責任有罪の判決を下すとともに国家責任について予備的判決を下した。
 それからほぼ一年を経て、ハーグで再び法廷が開廷され、軍部・政府指導者九人も合わせ十人全員の有罪と国家責任について最終判決が下され、「女性国際戦犯法廷」は正式に閉廷した。ハーグの法廷に出席した「戦争と女性への暴力」日本ネットワークの松井やよりさんらが、参議院議員会館で記者会見を行なった。
 法廷には、首席検事のカーク・マクドナルドさんと三人の判事、カルメン・マリア・アルヒバイさん(アルゼンチン、旧ユーゴ国際戦犯法廷判事)、クリスチン・チンキンさん(イギリス、ロンドン大学教授)、ウィリー・ムトゥンガさん(ケニア、人権委員会委員長)、四人の法律顧問、主催十カ国(韓国、北朝鮮、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東チモール、オランダ、日本)から十一人の被害女性など八十人が参加した。
 判決は全文二百四十五ページ、千六十六パラグラフに及ぶ。個人の刑事責任については、被告人昭和天皇裕仁、安藤利吉、畑俊六、板垣征四郎、小林躋三、松井石根、寺内寿一、東条英機、梅津美治郎の各人を、強かんと性奴隷制を奨励し関与し続けたとして、個人及び上官としての責任で有罪とし、山下奉文をフィリピン・マパケニ村の集団強かんでの個人責任で有罪とした。
 国家責任については、日本国家が日本軍の行なった強かんや性奴隷制などの国際法違反に責任があり、その後の情報隠匿や完全で真摯な謝罪の不履行、刑事責任を負う者の不起訴と不処罰、被害者の賠償請求に対する拒絶などの継続的な違法行為を認定した。
 そのうえで法廷は、日本政府に対して十二項目、元連合国に対して三項目、国連及び国連加盟国に対して二項目の勧告を行なった。
 日本政府への勧告は以下の通り。1、「慰安所」の設置に責任あることを認め、この制度が国際法に違反するものであることを認めること。2、完全で誠実な謝罪を行ない、法的責任を認め、二度と繰り返さない保証をすること。3、政府としての責任により、暴力行為を受けた被害者の原状回復を損害に見合う賠償によって保証し、将来の再発を防止すること。4、軍性奴隷制について十分な調査を実施するための機構を設立し、資料を永久に保存して一般に開示すること。5、被害者たちと相談のうえ、「真実と調停のための委員会」を設立し、戦争中及び占領時代に犯されたジェンダーに関する罪を歴史的に記録すること。6、略 7、公式、非公式の教育制度を確立し、あらゆるレベルでの教科書に十分な意味付けを記録し、研究者及び執筆者を奨学金や奨励金を含めて援助し、不法行為の実態や被害状況について、とくに若い世代に伝えること。8、軍奴隷制とジェンダー偏向との関係について教育し、性の平等とあらゆる地域におけるあらゆる人々の平等性を尊重することが絶対不可欠であると教育するよう奨励すること。9、略 10、略 11、「慰安所」の設置と実施に関する主たる責任者をつきとめ、罰すること。12、すでに亡くなった被害者に関して、その家族もしくは近親者から要望があった場合は、遺骨を探し返送すること。
 元連合国に関する勧告は以下の通り。1、「慰安」制度の設立と実施に関するあらゆる軍と政府の記録を迅速に公開し、極東裁判で当制度が起訴されなかった理由を開示すること。2、極東軍事裁判で天皇裕仁が起訴されなかったことに関するあらゆる軍及び政府の記録を迅速に公開すること。3、戦後の種々の裁判とそれ以降の五十五年間に、元「慰安婦」たちに対して犯された罪を調査し訴追することを怠った事実を認めること。
 国連及び加盟国に対する勧告は以下の通り。1、日本政府が被害者に損害賠償として完全な補償を行なうよう、あらゆる必要な方策を講じて保証すること。2、「慰安所」に関する日本政府の不法行為及び終決していない責任について国際裁判所の助言を求めること。

 松井さんは今回の「最終判決」が、国際司法裁判所(ICJ)や旧ユーゴ国際戦犯法廷(ICTY)が設置され国際刑事裁判所(ICC)も設置される予定のハーグで、これらの国際法廷で実際に活動する法律家や著名な法学者によって、権威ある判決として出されたことは、今後の戦争と女性への暴力に関する国際刑事司法に大きな影響を与えるだろうと強調した。
 判決を出した裁判官たちは現地での記者会見で、次のように語った。「国家が犯罪を裁く義務を怠った場合には民衆が裁くというこの民衆法廷は、『法は市民社会に属する』という考え方を実行に移したということで歴史的に大きな意味がある」「それを女性たちが国際的な協力で成し遂げたことは、戦時性暴力の不処罰をなくそうという世界の女性運動の大きな前進である」「日本政府がこの判決を真摯に受けとめ、一日も早く被害女性たちに正義を回復するよう期待する」。
 しかし判決が出された十二月四日午後、ハーグの日本大使館を訪れて判決要旨を手渡そうとした日本・中国・ドイツ・米国の代表団に対して、大使館側は建物に入ることも許さず、説明も拒否して、名前も名乗らない大使館員が文書を受け取っただけだった。重大な戦争犯罪である戦時性暴力の責任をいまもなお回避し続けようとする小泉政権は、国際法を踏みにじるアメリカの報復戦争に参戦し、新たな戦争犯罪を犯そうとしているのだ。
 「戦争と女性への暴力」日本ネットワークは、ハーグ判決の意義を広める報告集会を各地で開くよう呼びかけている。戦争犯罪に開き直り新たな戦争に突き進む小泉政権を追いつめる国際的包囲の闘いを、被害女性たちと連帯して展開しよう。       (I)
★「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク 〒135―8585 東京都江東区潮見2―10―10  電話&FAX03―5337―4088


もどる

Back