米国
幅広い政治論争の幕が開いた
環境の危機克服する移行論争で
公正さ保証めぐる論点を前面に
ダイアン・フリーリー
|
世界中で、気候変動に対する真剣な行動を政治に求める若者たちの決起が広がっている。以下に紹介する論考は、それは米国でも例外ではなく、来年の大統領選挙などをみすえ、気候と環境をめぐる問題が政治の重要テーマとして浮上していることを指摘し、そこで求められる論点に考察を加えている。(「かけはし」編集部)
めざましい変化が確実に起きた
下院議員、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス、および上院議員、エド・マーキーが議会に提案した「グリーン・ニューディール(GND)」決議案は、この国の未来に関する論争の表現を変えることになった一つの宣言書だ。それは、われわれがすでに向き合っている極端な気候に責任があるものは誰か、についてのトランプ政権の否認を突き通して、気候変動の諸課題を、腐食しつつある労働者の諸権利、レイシズム、高まる一方の不平等といった諸問題と結びつけている(上院は三月末、GNDを否決、その決議案は儀式張った人気取りだとされた)。
この決議案は、気候変動は人間に原因がある、との圧倒的な科学的総意を確認している。さらにそれは、米国が温室効果ガス排出の比例を逸した量に責任がある以上、この社会は「経済的転換を通した排出削減」で先頭に立たなければならない、と要求している。
この決議案は、気候の危機はわれわれが前にしている数多くの危機のたった一つにすぎないということに留意しつつ、下落を続ける生活水準、賃金停滞、大きな人種的分断、そしてジェンダーギャップを指摘している。それは、われわれは今、一世紀昔以後では最大の所得の不平等を抱えている、と言明する。次いでそれは、これらの諸課題に包括的に取り組むための一〇年におよぶ国民的動員を提案する。しかしそうであっても、前進への道を提供する点で細部は曖昧だ。
民主党中道派から共和党エスタブリッシュメントに広がる企業利益擁護の政治家たちは、この提案は幅が広すぎる、費用がかかりすぎる、あまりに理想主義的、と評した。トランプはそれに、社会主義、したがって「非米的」、とのレッテルを貼った。
民衆のGNDキャンペーン
GND決議案通過を後押しするグループ「サンライズ」が投稿した一本のビデオは、上院議員のダイアン・フェインステインと一四歳から一七歳のグループが行った意見交換を映している。そこでこの上院議員は、科学者たちはわれわれに抜本的な炭素排出に一〇年の猶予しか与えていない、と告げられた時、「なるほど、それでもそれを一〇年でひっくり返すことは、ありそうにはない」と応じたのだ。
フェインステインは次いで彼らに、可能性の芸術について講義を行った。彼らはそれに応じ、彼らは荒れ果てた地球の結末と共に生活していることになるだろう、と指摘した。彼らの出会いを映したこのビデオは、オンラインでその最初の二、三時間以内に一四〇万回視聴された。ほとんどの視聴者は、大胆な計画だけに惨害を防ぐチャンスがあると分かっている若者たちによって、練達の政治家が挑戦を受けた、と理解した。
幅広い政治的論争の幕が開いたことははっきりしている。事実としてはっきりしていることは、二〇一九年と二〇二〇年に公職に立候補する政治家は、化石燃料を抜本的に削減し同時に不平等を引き下げるために何を行わなければならないか、それを議論するよう迫られるだろうということだ。
これは、バーニー・サンダースがこの国が直面している最も重大な課題として気候変動を掲げた、そして彼がそうした唯一の「主要政党」の候補者だった、その二〇一六年の選挙からは、めざましい変化だ。
GND決議案の提案以後、諸々の他の宣言書や言明が現れてきた。近頃復活した科学者活動家のネットワークである「民衆の科学」は、「民衆のグリーン・ニューディール」キャンペーンを求めて声を上げ、決議案支持の短い声明を出し、しかし同時に、決議案の核心部分を薄めようとする圧力が現れるだろう、と警告している。それは、そうした決起を維持し強化する目的で以下のように五点を提起している。
?「われわれは、労働者階級の民衆、先住民衆、歴史的に抑圧されたコミュニティ、そして気候の惨害によって追い立てられた移民を日々の生活の中で教育し、組織化し、動員し、直接に力を高める、そうした闘争と諸々の解決に力を貸す」。
?「われわれの目的は、何年も何十年もGNDの中核的な考え方を発展させてきた人々すべてと協力することだ。そして特にその目的は、われわれが確実に気候変動における軍国主義の役割を理解できるようにし、世界的な公正な解決のために闘うことだ」。
?「われわれは、われわれの社会の成員は誰であれ、忘れられないようにし、また気候変動のコストを不公正に背負わされないようにするために、気候の危機に対する公正な解決策を求めている前線にあるコミュニティと共に立ち上がる」。
?「われわれは、尊厳の下に彼らの家族を支えることができる可能性をすべての人々が得るように、公正な移行と何百万ものグリーンジョブ創出を求めている労働組合と共に立ち上がる」。?「われわれはまず何よりも、この危機にわれわれを導いている者たちから財を再配分する経済変革を求めて声を上げる」。
「可能性の芸術」超える論争へ
この声明は、討論にいくつかの重要な課題を引き入れている。第一にそれは、変革は上からというよりもむしろ、勤労民衆と彼らのコミュニティーを通じて現れるだろう、と力説している。実際、この危機を引き起こしてきた者は、企業のエリートと議会にいる彼らの仲間なのだ。決議案の言葉にあるような、ビジネスが「GND動員に取り組み」続けるだろう、というようなことは高度にありそうにない。
第二に、中核的な考えの出所については避けがたい謙遜がある。つまりそれらは、政治家によって創出されたのではなく、環境的な公正を求める運動から現れている。そしてその運動が、環境的な悪化、彼らの安全性を欠いた仕事の結果として厳しい健康条件にさらされている労働者、そしてそれらの鉱山、工場、農業企業が存在しているコミュニティ、というこれらの内部にある結びつきを引きだしたのだ。
第三にこの声明は、軍事の役割についての真剣な討論を求めることによって、前線的コミュニティと労働者に対するGND決議の約束の深化を求めている。それは、労働者とコミュニティにとっての「公正な移行」が不可欠であるという考えを決議案が取り入れていること、を強調している。経済的移行が労働者やコミュニティからの犠牲を求めるようなことは、あってはならないことなのだ。
これらの原則の断言は、GND決議案を拡張し、政治的討論を深める必要を強調することで、前進への道を示している。それはわれわれを、「可能性の芸術」を超えて、連帯、平等、公正、そして民主主義の価値へと到達させる。「民衆のグリーン・ニューディール」は、移民をめぐる、あるいはグローバル・サウスに対する米国の責任をめぐる特定の要求を掲げてはいないとしても、それが提起している考え方はわれわれにそうするよう要求している。
同じくそれは、軍事予算や居住区や学校の軍事化の抜本的な引き下げあるいは廃止を特定して求めてはいず、討論を求めている。多くの米国人は軍は必要と信じている。とはいえ彼らは、連邦の自由裁量財源の一番大きな部分を軍が費消し、世界のあちこちで軍が権威主義支配を支えている、そして軍が社会的計画の可能性を妨げている、ということを知っているわけではない。
これはだらだらとした討論に余地を与えるものではない。核兵器と軍事的機械を捨て去ることと並んで、世界中にある七〇〇に上る米軍基地を解体することなしには、移行に向けた可能性はまったくないからだ。米国の軍需生産を廃止するだけで、CO2排出を年に七〇〇〇万―八〇〇〇万トン引き下げると思われる。
軍事予算はGNDキャンペーンに取りかかる能力を妨害するだけではなく、軍需生産もまた、われわれが炭素排出に強い打撃を与え始めることを可能にする場所なのだ。
民衆のGNDキャンペーンは、決議案の水割りの危険を特記している。この決議案は、「石炭を穴の中に、石油を土中に留める」ことを誓約するよりもむしろ、特定のエネルギー源を明確化できていない。それは単に、「クリーン、再生可能、そして排出ゼロ」のエネルギーに言及しているだけであり、見たところ、エネルギー自身による効率性がわれわれをわれわれの目標に近づける、と暗示している。その上に決議案は、四回にわたって「技術的に可能な限りの」と述べることにより、その目標を緩めている。
GNDの考えを具体化せよ
対照的に、最初にほぼ一〇年前に練り上げられた緑の党の計画は、天然ガス、バイオマス、あるいは原発ではなく、風力、ソーラー、潮力、また地熱として定義された再生可能性に基づく、二〇三〇年までの一〇〇%再生可能エネルギーを求めている。先導的な工業化社会としての米国の責任を前提にすれば、温室効果ガス排出の停止は真剣な優先性をもたなければならない。それは同時に、公共部門に優先性を与えることも意味している。
多くの都市と町は、それ自身の水道と照明システムを所有している。そしてこれらは、一〇〇%再生可能エネルギーへの移行にとっては基礎になる。この任務を仕上げる目的では、利潤を上げるための事業は早急に漸次廃止されなければならないことになるだろう。緑の党の計画に戻れば、そこには特定がある。つまり、「再生可能エネルギー執行局」はエネルギーを、購買される商品としてではなく公共財として扱うだろう、と。
GND議会決議案は法令案ではなく単なる声明である以上、水割りは、それが問題解決のための炭素価格を通してであれ、炭素捕獲技術の使用を通すものであれ、技術的方策の提案によっても起きる可能性がある。しかし、温室効果ガスやもっと幅広い汚染に対しては、即効的方策はまったくないのだ。
たとえば「クライメート・ジャスティス連合」は次のように指摘している。
つまり、「気候変動と産業汚染が引き起こしたコミュニティの荒廃と、弱まる一方の民主主義、高まる一方の富の不平等の内的に結合した危機に本当に取り組むためには、われわれはその根元で排出を削減しなければならない」「炭素排出相殺と技術的投資を根源における実体的削減と等値する、『ネット・ゼロ』のような新自由主義的諸契約を考慮に入れることは、前線にあるコミュニティに背負わされている現存の汚染を悪化させるに過ぎないと思われる」「炭素市場や証明のない技術的解決策に向けたそうした抜け穴は、われわれのコミュニティに対する害を高めつつ(引き下げるのではなく)、汚染企業の金庫を満たす役に立つにすぎない」と。
これは、新たな化石燃料システム――パイプライン、石炭積み出し港など――の建設に「ノー」と言うことを意味する。それは、公共大量交通の建設、またガソリン大量消費車の生産を終わりにすること、に早急に移行することを意味する。それは、われわれの製造能力の再設計と目的変更への、コミュニティと労働者の参加に優先性を与えることを意味する。
そうした経済の根底的な再組織化は、全力を挙げたキャンペーンを必要とする。それは、新たな仕事に向けた労働者の再訓練だけではなく、四〇時間労働での賃金における、週労働時間の三〇時間への引き下げをも意味する可能性がある。
カリフォルニア州のアラメダ、サンディエゴ、インペリアル郡のAFL―CIO労働者会議は、二、三の地方労組と共に、GND支持を呼びかけた。しかしながらほとんどの労組は、移行の中では、労働者とその家族がワリを食うことになるだろう、とのおびえを感じている。
それは、米国史におけるあらゆる他の再編がどのような形で起きたかを示すものだ。仕事の喪失に対する埋め合わせと広範な再訓練に対する約束がなければならない。「公正な移行」が一つの保証にならなければならないのだ。
米国から出ている諸言明ではほとんど討論されていないもう一つの課題は、われわれは「成長」の呪文を拒絶しなければならない、という現実だ。われわれは、毎年もっと多くのモノを必要とはしていないのだ!
うまくいけばわれわれのエネルギーに関するこの決起を通じて、われわれは、幸福がわれわれの暮らしを管理することにある、ということに気付く。これは、民主的計画化と追い出しに反対する保証だけではなく、全員が利用できる質の高い公共サービス――まずはじめとして、住宅、医療、交通、教育――を確保すること、をも意味している。
「米国民主的社会主義者(DSA)」エコ社会主義指導原則声明は、「未来は公共財であって私的な贅沢ではない」と述べている。
これらの言明と宣言書のいくつかは、経済の根底的な再配分の課題を提起している。しかしこれは確かに真実ではあるが、事実としてわれわれはさらに進まなければならない。資本主義は、利潤、搾取、成長のための成長に基づいて築かれている。この駆動力を変えるためには、新たな、原理的なエコ社会主義的諸原則を基礎に経済を発展させることが必要になるだろう。(この後には結語として、第四インターナショナル第一七回世界大会の決議「資本主義による環境破壊とエコ社会主義オルタナティブ」の結び部分が引用されているが、割愛する:訳者)(「アゲンスト・ザ・カレント」二〇一九年五・六月号)
▼筆者は、「自動車労働者キャラバン」と下部労働者会議で活動化している退職自動車労働者。「アゲンスト・ザ・カレント」の編集者でもある。(「インターナショナルビューポイント」二〇一九年五月号)
中国
労働運動活動家の劉少明、獄中4年目に
強権的な抑圧なお継続
政府は市民社会抑圧やめよ
四年前の二〇一五年五月二九日、長いキャリアを持つ労働運動活動家の劉少明は広州で逮捕され、「国家政権転覆扇動罪」の罪で懲役四年半の実刑判決を受けた。彼の逮捕は、このかんの労働運動活動家に対する一連の弾圧の最初のケースとなった。現在も約五〇人の労働運動活動家が様々な形式で拘束されている。
二〇一五年一二月三日、約三〇人の労働者と労働運動活動家が逮捕された。その多くが劉少明とおなじ広州やその周辺地区で労働者の争議支援を行っていた者たちだった。多くは数日後に釈放されたが、番禺打工族服務部の曽飛洋主任、スタッフの朱小梅と孟[日含]は、「公共秩序攪乱罪」で、一年半から三年の懲役刑の判決を受けた。三人はすでに刑期を終えて出獄しているが、その後は労働争議支援の活動を継続できなくなった。
番禺打工族服務部の事件では、孟[日含]が二〇一七年九月に満期で出獄したのが最後の一人だが、それから一年もたたない一八年七月には深?佳士科技有限公司の労働者が労組結成を求めて立ち上がったが、労働者と支援者約三〇人が逮捕された。つづく六カ月のあいだに、学生団体や市民組織、ひいては組合関係者など、多くの支援者への弾圧が行われた。
今年一月にはさらに張治儒、呉貴軍、簡輝、宋佳慧、何遠程の五人の労働運動活動家が逮捕され、いまだ深?で拘束されている。張治儒と呉貴軍は長年にわたり珠江デルタ地帯で労働者の組織化を支援し、団体交渉の発展に尽力してきた。
「新生代」の三人の市民記者も今年初めに逮捕された。彼らは塵肺補償のために闘っていた労働者らを積極的に支援していた。五月には北京、広州、深?の三つの地域の労働組織に捜査が入って、すくなくとも四人の社会活動家が逮捕された。
劉少明は一九五八年に江西省で生まれた。一九八九年には北京に赴き、天安門広場のデモ行進に参加。そしてその時に中国最初の独立労組「北京工人自治連合会」に参加した。六四事件後、彼は「反革命宣伝扇動罪」の罪で懲役一年の実刑を受けた。
一九九〇年代、劉少明は広東に移転し、様々な仕事に就くとともに、珠江デルタ地区における重要な労働運動活動家になり、東完市の祐元靴工場スト、広州学園都市清掃労働者スト、新生靴工場ストにおいて労働者の組織化を支援した。それらの争議では、数カ月の緊張した集団行動を通じて、最終的に多額の経済補償金をかちとった。
劉少明は今年一一月二九日に刑期を終える予定だ。彼の弁護士によると、彼は無罪の上訴をする意向を堅持しているという。しかし韶関監獄は弁護士の接見を妨害しているという。春節前に面会した家族によると、彼の健康と精神状態は良好だという。
中国労工通訊は、中国政府に対して、拘束している全ての労働運動活動家をすぐに釈放し、市民社会への破壊的かつ逆効果の弾圧行動を停止することを求める。
(「中国労工通訊」より)
|