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    かけはし2019年6月10日号

過酷な重労働で殺された


5.19

福島原発過労死裁判

この悲しみを繰り返すな

「追及する会」を結成



  【いわき】福島原発過労死事件の公判が五月一九日福島地方裁判所いわき支部で行われた。公判は福島第一原発で五年八カ月にわたり就労し二〇一七年一〇月に故人となった猪狩忠昭さんの遺族が直接の雇用者いわきオール、元請けの宇徳、そして東京電力相手に起こした訴訟である。
 訴えの趣旨は東京電力へは事故直後に事実経過、因果関係が明らかになる前に仕事が原因であることを否定する発言をした行為に対して謝罪と慰謝料を、東電・宇徳に対しては救急医療体制の不備を指摘し安全配慮義務違反により故人が適切な治療を受けられなかった責任を問うている。
 故人が福島第一原発で働き始めたのは事故発生の翌年であった。職業は車両の整備士で福島第一原発敷地内で特殊車両の整備を行っていた。この車両の使用地は福島第一原発敷地内であり当然放射能汚染は高度であった。
 そのため故人の作業姿は全面マスク着用等放射能防護フル装備であった。故人にこの過酷な業務を強いたのは福島第一原発事故であり、津波対策を怠り過酷事故を発生させた東京電力は二重三重に福島第一原発事故収束作業員の命と生活に責任を負っている。それにもかかわらず被告の東京電力・宇徳はずさんな現場管理を行い「いわきオール」は労働者に過酷な過重労働を強い暴利を貪っていたのである。

この苦しみは
絶対に消えぬ
公判では遺族二人の陳述が行われた。故人の息子さんは福島原発事故発生時の状況を「父は車の配送中のため連絡が取れず、ようやく翌朝連絡が取れ、帰宅し安心した。自分は家族を乗せて会津に避難したが父は、『仕事がある』と避難しなかった。原発の爆発のしらせに心配し避難を訴えたが来たのは約一週間後。『稼げるかっこいい男を目指してガンバレ!!』とのメッセージの一八時間後父は他界した」。「父の訃報を受け取った後どうやって仕事が出来たのか今でも思い出せない」、「父のお通夜には会場から溢れる程多くの友人、以前の職場の仲間が駆けつけた、訃報に駆けつけた父の学生時代の友人たちは告別式までの四日間毎日自宅に来て亡骸に付き添ってくれた、もっと話したかった、もっと酒を酌み交わしたかった、もっと親孝行をしたかった」と心情を語り、「父が亡くなってからの酷い対応を許せない、父の代わりは誰もいない、子や孫に語り次ぐために真実を知る権利がある。原発収束作業に携わる作業員の命を守れる裁判にして下さい」とした。
また、娘さんは「父は口下手で褒めない人だったが父のことが大好きだった」「母は原発事故後仕事の関係でアパートの一人暮らし、私は父と二人暮らしだった」「二〇一四年頃から父は朝三時一五分に起き四時に仕事に通うようになり自分が起床する頃には父がいない状況が続いた」「家族は仲が良かったので父が連休の時や、兄の連休が重なった時は、皆で集まり食事、お出かけ等を行い家族の時間を大事にしていた」「授業中父の心肺停止のラインが入った時、頭が真っ白になり、急に動悸が始まりパニック状態に陥った、亡くなったという事実に崩れ落ちた」「今でもあの時の状況を思い出すと涙が止まらない。苦しみは一生消えない」「子供の頃からの夢、看護師になった。応援してくれていたのに直接報告出来なかった。成人した姿を見せたかった。結婚式に出席して欲しかった。孫を抱いて欲しかった」「蘇生も十分に行って貰えず、過労で亡くなった父の死を無駄にしたくない。こんなに悲しい思いをする家族が出てほしくない」等と発言し公判の傍聴席からはすすり泣きの声が聞こえた。

心のこもった
多くの激励も
公判後に開催された集会には遺族に対して双葉郡、福島の、そして東京電力と闘う女たちからの連帯のメッセージが多数寄せられた。メッセージに共通して込められていた思いは、「原発サイトの危険から住民の安全をかろうじて守って来たのは強度の被曝をはじめとする過酷な環境の中で必死の収束作業をして来た作業員。国と東京電力には彼らの健康と安全に責任がある。裁判により責任の所在の糾明を願い、再び労働事故、過労死を発生させてはならない」であった。そして立ち上がった家族への心からの応援と感動、心からの哀悼と冥福の思いがあふれていた。
集会はいわき市労働福祉会館で開催された。司会を全国一般福島連帯労組が行い、開会あいさつ、労働災害申請経過報告、裁判経過報告、特別報告、家族の訴え、を受けた後「追及する会」の結成を承認し、追及する会への賛同・次回裁判傍聴のお願いのアピールがなされ閉会となった。(浜中)

5.27

学習会:外国人労働者と被ばく労働

健康と生命を守り抜く

国・企業の無責任許すな

 五月二七日、東京・御茶ノ水の連合会館で「学習会・外国人労働者と被ばく労働」が開催された。原子力資料情報室と被ばく労働を考えるネットワークが共催した。この学習会には約五〇人が参加した。
 四月一八日の朝日新聞で、「原発に特定技能外国人 東電 福島廃炉に受け入れ」という見出しの記事が掲載された。同記事は「東電などによると、ゼネコンなど協力会社数十社を対象とした会議で、特定技能の労働者の原発への受け入れについて説明。『建設』『産業機械製造業』『電気・電子情報関連産業』『自動車整備』『ビルクリーニング』『外食業』が該当するとした。廃炉作業にあたる『建設』が主になるとしている。東電は、再稼働をめざす柏崎刈羽原発(新潟県)でも受け入れる方針」としている。
 この日の学習会では、まず原子力資料情報室共同代表の伴秀幸さんが主催者あいさつ。
 原子力資料情報室は、四月二六日の声明で、@「多重下請構造の労働現場では、線量の高いエリアでの作業に回される可能性が高い。にもかかわらず、放射線防護に関する十分な教育と訓練が受けられないことが想定される」、A「廃炉作業現場では、労働基準関係法令に違反する事例が際立っている。厚生労働省の統計によれば、二〇一六年から二〇一八年の三年間だけを見ても、違反率は46%、38・4%、53・1%と高い。こうした法令違反の現状では、特定技能外国人労働者の労働条件がいっそう悪化するおそれがある」などと批判し、「国籍を問わず、働く人たちの生命と健康が完全に保証されるべき」と主張している。
 伴さんは、こうした立場から「働く人たちの生命と健康が完全に保証されるべき」と訴えた。

 

「廃炉作業」と
外国人労働者
報告の最初は朝日新聞記者の青木美希さん。青木さんは「廃炉作業と外国人労働者」と題して報告。
青木さんは、多重下請労働の下で、違法派遣、労災隠し、被ばくによるガンの発生が相次ぎ福島第1原発でもすでに六人の労災が認定されている、と紹介。原発作業を三カ月続けると後に白血病が発生するという例を出して、「廃炉作業」という閉鎖空間の問題点を鋭く指摘。線量計に鉛板を張って「被ばく隠し」を行っている事例を示した。
菅官房長官は、外国人による廃炉作業については東電を通じて監督する方針、と述べている。しかし現実には、除染作業とは知らされずに連れてこられたベトナム人労働者のケースが明らかになっており、それは放射線汚染地域で働くことを禁じる、ベトナムの海外派遣法に反している。
原発での作業における外国人労働者はベトナム、中国、フィリピンの順に多い。いま東電は当面「受け入れ見直し」を打ち出している。それは厚労省が「当面の間、特定技能就労見送り」を打ち出した通達の一日後だった。ただしそれは「改善」の上で、就労を認めることを前提にしたものだ。そして問題は外国人労働者の場合、本人が被害についてなかなか分からないことだ、と青木さんは語った。被ばく労働問題と外国人労働者の支援を結合することが重要、と青木さんは語った。

中間搾取と人
権侵害が横行
次に「外国人労働者問題の現状」というテーマで、指宿昭一弁護士(外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表)が報告した。
二〇一八年末で在留外国人数は二七三万一〇九三人。雇用されている外国人労働者は一四六万人を超えている。国別にみると中国、ベトナム、フィリピンの順だが、増加率が高い上位三カ国はベトナム、インドネシア、ネパールとなる。
技能実習制度について「技術移転を通じた国際貢献」などと厚労省は主張しているが、それは全くのウソで「安価な労働者の確保」が目的であることは言うまでもない。そこには移動の自由がない、中間搾取と人権侵害の横行などが容易に見てとれる。
指宿さんは「保証金の徴収・違約金契約の禁止」、「技能実習制度の廃止」を強調するとともに、労働組合の取り組み強化、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づく取り組み、などの重要性を指摘した。

被ばく前歴ゼロ
というカラクリ
「被ばく労働を考えるネットワーク」のなすびさんは「外国人・移住労働者と被ばく労働問題」と題して報告。なすびさんは3K・低賃金労働を外国人、移住労働者で補完している問題と、被ばくを前提とした理不尽きわまる使い捨て労働のあり方の中で、その矛盾が社会的弱者に押しつけられている現状の中から、これまで、今、そしてこれからの視点に立ち必要点を強調した。
@国内における被ばく線量の一元管理
A各国での被ばく記録情報の一元管理、もしくは交換方法の確立
B各国との法規制のすり合わせ・統一
C被ばく前歴を考慮した労働条件のすり合わせ・統一
D健康影響に対する保障のすり合わせ・分担、
という課題をなすびさんは提起した。
「これまでも外国人労働者が日本の原発で働いていたことは、樋口健二さんや木幡ますみさんの文章、証言で明らかにされているが、外国人労働者の被ばく前歴については本人の申告によるしかなかった。国境を越えて原発で労働すると、国境を越えるごとに被ばく前歴はゼロになった。ドイツなどで、一番汚染されているところに回されるのは海外からの労働者だというのは、前歴ゼロの仕組みのせいだ。実際に健康に影響が出た場合、自分のところでの放射線量しか関係ないという態度ではダメだ」。
「これからの廃炉事業を考える場合、電力事業にお任せというのは限界がある。廃炉事業を国が全く考えていないということであってはならない」となすびさんは訴えた。  (K)

5.30

「森友」国有地売却裁判

問題の核心に迫らず

政権忖度の判決だ


 【大阪】「森友学園」への国有地売却に関する売買契約書の開示をめぐって、豊中市議の木村真さんが起こした訴訟(行政文書不開示処分の取り消し請求)の一審判決が五月三〇日、大阪地裁であった。
 この事件は、原告が二〇一六年九月近畿財務局長に対し売買契約書の開示請求をしたところ、不開示情報に該当することを理由に、売買代金額及び値引きの根拠となる部分を黒塗りにして開示した。そこで原告は一七年二月、その不開示は違法だとし開示を求めて提訴した。
 裁判が始まったが、一七年の八月、突然国は開示をし、この訴訟を取り下げるよう要求した。原告木村さんは、精神的苦痛を受けたとして、訴えを変更し一一万円の損害賠償を求めた。
 判決は、@国は原告に三万三〇〇〇円を支払え。A原告のその他の請求は棄却。B訴訟費用は原告七割、被告三割負担。要点を補足する。
 売買代金額の不開示について。
 売買代金額が公表されることを前提に取引関係に入るのだから、金額が公表されることで森友学園の事業運営上の利益が害される恐れについて、法的保護に値する蓋然性は認められない。したがって近畿財務局長による不開示は違法である。

司法にも伝染
隠ぺいの体質
土地の土壌汚染や地下埋設物が代金の減額要因として考慮される。したがってその要因を含む売買代金額の算定根拠についても、これを公表すべき要請は高いというべきで、不開示部分が不開示情報に該当しないという見解もあり得る。
一方、子どもを通わせる小学校を選択する保護者に対し、過去に土壌汚染等があった土地に設立される小学校であるとの印象を与え、森友学園の小学校運営の利益を害する恐れがあることは否定しがたい。したがって、この部分は不開示情報に該当するという見解も十分にありうるところであって、不開示は違法とは言えない。
証拠によれば、本件処分当時、本件土地に土壌汚染及びその正確な分量はわからないものの相当量の地下埋設物やゴミが存在したこと自体は認められるのであるから、近畿財務局長が漫然と不開示にしたと評価することはできない。従って、原告の主張は採用できない。
政権に忖度、恥ずかしい!
被告には賠償それ自体は大きな問題ではなく、国有財産がタダ同然で、安倍首相が後押ししていた教育勅語礼賛の思想を有する学校に売却された、その代金額減額の根拠の解明こそが問題であった。それは一人原告だけでなく、すべての市民全体の関心事であった。判決はこの核心に全く触れなかった。都合の悪い真実を隠す政権、官僚機構がその政権を忖度する症状が司法にまで伝染するとなると、日本社会は重症である。人々が知恵を出して何とかしなくてはならない。        (T・T)



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