維新圧勝に終わった大阪選挙結果から何を学ぶか
(上)
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大阪ダブル選挙
労働運動・住民運動の再構築を
大森 敏三
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はじめに
四月七日に投開票が行われた統一地方選前半において、維新が仕掛けた大阪ダブル選挙(知事選・大阪市長選)は維新の圧勝という結果で終わった。加えて、府議選で維新は再び過半数を超え、大阪市議選でも過半数に迫る勢いを見せるなど、前回(二〇一五年四月)を大きく上回る議席数を確保した。同時に行われた堺市議選でも、議席を増やした。その意味では、松井知事と吉村市長が任期前に辞職して、ダブル選挙を前倒しするとともに、知事と市長が入れ替わって立候補するという維新の「奇策」は、思惑通りの結果を収めたと言わざるをえないだろう。
この結果を受けて、われわれが考えなければならない問題は、あれこれと戦術的な「敗因」を探るのではなく、もちろん「維新のデマに踊らされた愚かな有権者」に責任を転嫁することでもなく、この結果を生み出した政治・経済・社会的状況を、グローバルな視点とローカルな分析を通じて明らかにし、その中で労働者・住民の運動の可能性を見つけ出すことにある。
このことは、われわれも含めて、四年前の住民投票の闘い、そしてそれ以降の都構想反対・カジノ反対をはじめとした維新政治との闘いをともに担ってきた人々との共同の討論の中で明らかにしていくべき課題である。この小論は、そうした討論に向けた問題提起として書かれている。
大阪におけるダブル選挙の結果
まず、今回の選挙の結果を振り返ってみよう。都構想の住民投票との関係で、もっとも注目された大阪市長選では、投票率は五二・七〇%と前回よりも二・一九%高かった。開票結果は、
松井一郎(維新) 六六〇、八一九
柳本顕(無所属) 四七六、三五一
無効(白票含む) 一六、九八二
と、維新の松井候補(前府知事)が自民・公明・連合の推薦を受けた柳本候補に一八万五千票近い差をつけた。前回(二〇一五年一一月)の大阪市長選挙では、投票率五〇・五一%で、得票数は以下の通りだった。
吉村洋文(維新) 五九六、〇四五
柳本顕(無所属) 四〇六、五九五(自民推薦)
その他の候補計 五三、八二六
無効(白票含む) 一八、二六七
つまり、開票結果を比べると、維新・反維新ともに約七万票ずつ上乗せした形で、得票数の差は前回とほとんど変わっていないことがわかる。
一方、大阪府知事選は、投票率四九・四九%で、前回よりも四・〇二%高かったものの、それでも五割を切っていた。開票結果は、
吉村洋文(維新)
二、二六六、一〇三
小西禎一(無所属)
一、二五四、二〇〇
無効(白票含む) 四九、六〇四
と、一〇〇万票以上の差をつけての維新の圧勝だった。
前回の知事選では、投票率四五・四七%で、得票数は以下の通りだった。
松井一郎(維新)
二、〇二五、八八七
栗原貴子(無所属)
一、〇五一、一七四(自民推薦)
美馬幸則(無所属) 八四、七六二
無効(白票含む) 四四、〇六三
維新は約二四万票、反維新は約二〇万票増やしているが、その差は広がったのである。
今回の大阪ダブル選挙は、維新が前代未聞の「入れ替え選挙」という強行突破策を取ったことで、大きな注目を集めているように思われていたが、投票率は前回をわずかに上回ったものの、前々回(二〇一一年)の府知事選五二・八八%、大阪市長選六〇・九二%を下回った。とりわけ、都構想の実現=大阪市の解体となるため、本来ならばもっと投票率が上がってもいいはずの大阪市長選の投票率の低さは際立つものだった。これは、ダブル選挙にあたってのJRCL関西地方委員会声明が指摘したように、維新が「トップダウンによる住民無視の政策決定手法によって民主主義と住民自治を破壊」し続けてきた結果でもある。
維新圧勝の構造
それでは、こうした維新圧勝となった投票行動の構造とはどのようなものだったのだろうか。ここでは、大阪市長選について考えてみたい。
これまでの国政選挙(衆議院選挙)において、維新が大阪市内で獲得した比例得票数の推移は以下の通りである。
二〇一二年衆議院選挙 四二三、二二六
二〇一四年衆議院選挙 三三一、三四三
二〇一七年衆議院選挙 二八四、六七二
つまり、この数字からは、国政レベルでの維新支持者が減少傾向にある、あるいはコアな支持者以外の周辺的支持者が国政選挙では維新に投票しなくなったことが読み取れる。しかしながら、今回のダブル選挙において、マスコミ各社の出口調査によれば、投票所に足を運んだ有権者のうち四割が維新支持と答えたという。前回のダブル選挙の出口調査においても、ほぼ同じ割合で維新支持者がいたと報じられていた。期日前投票でも同じ傾向があると仮定して、単純に計算すると四六万の維新支持層があったことになる。この国政レベルでの維新支持と大阪レベルでの維新支持との差をどのように考えるのか、は一つの課題と言える。
マスコミ六社(毎日・産経・共同など)の出口調査では、維新の松井候補が大阪維新の会支持層の九八・二%を固めた上、反維新を掲げる自民支持層の五〇%、立憲民主支持層の三二・二%、共産支持層の二七・八%、「支持する政党はない」(全体の二割弱)と答えた層の五六・五%が支持したとされている。今回、柳本候補の推薦に回った公明支持層でも、一七%が松井に投票したのである。
また、維新政治について、NHKの出口調査では、大阪維新の会によるこれまでの行政運営を評価する人が六八%にのぼった。都構想への評価についても、朝日新聞の出口調査では、都構想賛成が五九%を占め、その内訳としては維新支持層では九三%、自民支持層でも三七%、無党派層の四四%が賛成したとの結果が出ている。この数字は、前回の市長選とほぼ同じ傾向を示すものだった。
一方、前回の自民単独推薦から、今回は自民に加えて公明や連合の推薦も得た柳本候補への投票行動を見てみると、上記の六社の出口調査によれば、公明支持層の八三%、自主支援した共産支持層の七二・二%が投票したものの、自民支持層は五〇%しか固め切れなかった。さらに、「支持する政党はない」と答えた層でも四三・五%の支持と、松井候補に差をつけられたのである。
今回の投票結果と前回の投票行動とを比較すると、前回以上に反維新ブロックの各党支持層から、維新の松井候補に票が投じられていることがわかる。前回の大阪市長選では、各党支持者のうち、自民三〇%、民主二五%、公明二〇%、共産一五%が吉村候補に投票していた。推薦を決めた公明だけが、維新候補への投票を減らしているが、それも誤差の範囲とも言える程度である。それ以外の政党支持層は、前回以上に維新に切り崩された結果に終わった。維新支持層が、何があっても維新候補に投票するという忠誠心を発揮したのとは大きく異なっていた。
結論的に言ってしまえば、投票率・得票数など前回のダブル選挙とほぼ同じ選挙結果となったということである。われわれ自身の深刻な自己反省も含めて言わなければならないと思うが、残念ながらこの四年間で、維新の政治支配に対して、有権者レベルではほとんど打撃を与えることができなかったことを認めざるをえないのである。
府議選・大阪市議選の結果が意味するもの
同時におこなわれた大阪府議選・大阪市議選では、維新が四年前から大きく議席を伸ばした。府議選(定数八八)では、前回失った過半数を回復(前回の四〇議席から五一議席へ)した。府議選では、各行政区単位で選挙区が設定されているため、「一人区」が三一あったが、そのうち無投票だった二つを除いて、維新は二六議席を獲得した(前回は一九議席)。特に、大阪市内で一五あった「一人区」では一三勝二敗と圧倒的強さを見せた。自民党は二四議席から九議席を減らし、府議団幹事長が落選するなど、公明党と同じ一五議席しか確保できなかった。共産党は選挙前と同じ二議席だったが、前回は三議席だったので、実質的には議席を減らした。そのほか、立憲民主が一議席、国民民主系の無所属が一議席という結果で、いわゆる立憲野党としてはわずか四議席にとどまった。
大阪市議選(定数八三)でも、維新が過半数に迫る議席を獲得し(選挙前の三五議席から四〇議席へ)、ここでも自民党は二議席減らし一七議席に後退し、公明党もわずか四票差だったが一議席を落とした(一八議席)。もっとも議席を減らしたのは共産党で、半分以下の四議席となった(前回は九議席)。九人が立候補した立憲民主は当選者を出せなかった。市議会でのいわゆる立憲野党系の議席は、旧民進党系の無所属を入れても五議席だけとなった。
政令指定都市である堺市議選(定数四八)でも、維新が五議席増やして一八議席とした。
各選挙区での得票数を見ていくと、維新公認候補の圧倒的な得票数が印象的である。その一方で、共産の得票減が目立ち、公明もほぼ横ばいが多い。たとえば、定数四の高槻市・三島郡(島本町)では、上位当選した二人の維新候補の得票数は合わせて八万二千票弱で、他の四人の候補(当選した立憲民主・公明、落選した自民・共産)合計の得票数の八万四千五百票とほぼ同じである。現職で落選した共産候補は六千票近く票を落としている。
こうした開票結果と並んで、今回の府議選・大阪市議選で特徴的だったのは、前回はゼロだった無投票の選挙区が府議選で八区、大阪市議選でも一区あったことだ。全国的にも無投票で当選者が決まるケースが増えていることが伝えられている。民主主義の空洞化、地方自治の形骸化が深刻なレベルに達している。
この点では、府議選で、われわれとともに安倍政権や維新政治と真っ向から闘ってきた候補者が当選したことや府議選・市議選で立憲民主や無所属から立候補した女性候補者が、当選には届かなかったものの、ボランティアに支えられた意気盛んな選挙戦を闘ったことなど、一筋の明かりともいうべき積極的な面が現れたことにも注目しなければならない。
大阪府議選と大阪市議選の結果によって、都構想の案について話し合う法定協議会において、維新単独で過半数を占めることとなり、法定教の議論が再開されることは確実となった。松井市長は、大阪都構想実現に向け、「住民投票実施を了承する議員を二人増やしたい。二人増えれば(市議会過半数となり)公明党に遠慮することはない」と述べ、「自民党や無所属議員を念頭に多数派工作に取り組む考え」だと報道されている。
また、公明党に対しても、「民意は都構想制度案をまとめることだ。最後は住民が決定する。公明党ははっきりと任期内の住民投票に賛成すると言ってもらいたい」と協力を迫っている。また、橋下前維新代表も、関西で公明現職のいる六つの衆院小選挙区について、「(維新公認候補を)全部立てていく。エース級のメンバーがもう準備できている。戦闘態勢に入っている」として、「知事選に当選したばかりの前大阪市長の吉村洋文氏が次期衆院選でくら替えする可能性にも言及」したと言われ、公明に揺さぶりをかけている。自民党や公明党の市議団は、都構想反対を明確にしているが、両党の党本部はむしろ維新との協力関係を重視しているため、住民投票が再度実施される可能性は極めて高くなったと言わざるをえない。
ダブル選挙の結果をいかに考えるのか(その1)
住民投票における闘いや、その後四年間の反維新・反都構想・反カジノなどの闘いをともに担ってきた活動家の中では、この結果を受けて、選挙の「敗因」や今後の運動のすすめ方についてさまざまな議論が出されている。しかし、ここでまず重要なことは、最初にも述べたように、この結果を生み出した政治・経済・社会的状況を、グローバルな視点とローカルな分析を通じて明らかにし、その中で労働者・住民の運動の可能性を見つけ出すための共同の討論である。
ダブル選挙が終わった時点から、維新政治について発信してきた、あるいは報道してきた方々から、さまざまな分析が出されている。それぞれ貴重な意見であり、討論する上で参考にしていくべきだと考える。ここでは、読者の皆さんの参考に、いくつかの意見を紹介したい。
まず、これまでも反維新の立場から住民投票や諸選挙の結果を分析し、さまざまな集会などで発信してきた富田宏治さん(関西学院大学)の意見を紹介する(以下の引用では、数字は漢数字に変えている)。
「維新の大量得票は、自民支持層の約五割、公明支持層の約二割が維新に流れたことで大体説明がつきます。前回参院選での維新の得票が一四〇万、自民の得票が七五万、公明の得票が六八万ですから、自民支持層の半分の四〇万弱と公明の二割の一五万弱が流れれば、二〇〇万近くになります。残りは、いわゆる無党派層ですね。だから実はそれほど驚くような数字ではなく、大阪の分断の現実を明確に示した数字なのだと思います。
維新は万全の組織戦を戦い、その集票組織の強固さを改めて示した訳ですが、一方、大阪の自公、特に自民は組織的にボロボロ、スカスカになっていて、国政選挙では辛うじて固められる支持層も地方での維新との一騎討ちではほとんど崩壊状態になったということでしょう。
自民・公明の支持層で維新に流れたのは、維新が意識的に流した自共野合批判、つまり抜きがたい反共意識による分断戦術が一定の効果を挙げたこともあるでしょう。自民支持層、公明支持層には、反維新の大義よりも反共意識の方が勝るという傾向が、残念ながら大いにあり得るからです。
ただそれ以上に、もともと国政では安倍政権を支持している自民・公明支持層は、新自由主義的な経済保守であったり、安倍改憲支持の政治保守であったりするわけで、柳本さん、浅野さん、中野さん、藤井さん、平松さんのような社会保守とは必ずしも相容れない訳です。自公の安倍政権支持層は、むしろ大阪自民の社会保守よりも、維新の経済保守、政治保守に親近感を持っているのです。
都心の高層マンションや衛星都市の戸建てに住む中堅サラリーマン層や自営上層を中心とする経済保守が維新、自民を越えて維新支持で固まれば、二〇〇万という数字も不思議でも何でもないと思います。大阪は痩せても枯れても日本第二の経済都市なのですから。
投票率が五〇%前後ということは、約三割の無関心層も、約二割の大量棄権層も動かなかったということです。大阪のアホな有権者が、維新なら良い、若けりゃ良いなんてことで維新に入れたなんてことでは決してないのです。上から目線で有権者をディスるような発言は控えるべきでしょう。」(富田さんのフェイスブックから引用)
この富田さんの分析に、私は基本的に同意する。しかし、ここでは触れられていない問題がある。つまり共産党支持者のうち、大阪市長選では二八%、府知事選では三〇%が維新に投票したという出口調査の結果についてどう考えるのか、についてである。私は、地域で共産党支持者とさまざまな活動を共にする機会があるが、その中で「共産党は負けるにしても独自候補を立てるべきだ」「なぜ自民党の候補者に投票しなければならないのか」という疑問をもつ支持者が相当数いることを知った。これは、かつての独自候補擁立路線から保守までスタンスを広げた共闘路線への転換が浸透しきっていないことの表現だろうと思う。
しかし、ここからは自民党推薦候補に投票しないという選択肢は生まれ得るが、維新候補に投票するという行動は説明できない。おそらく維新が大阪における「オール与党」体制を壊したことへの肯定的評価が共産党支持者の一部にあるのかもしれない。
もう一つの要因として、大阪の共産党がとってきた「解同」攻撃路線の影響も考えられる。そのことを証明するかもしれないエピソードを紹介しよう。橋下が大阪市長に当選した二〇一一年四月の市長選のあと、何人かの共産党員(と思われる人)から「解同(部落解放同盟)と結託した平松市政が倒れたことは評価できる」という声を聞いた。
つまり、大阪の共産党は、一九七〇年代以降、選挙のたびに「解同」批判を繰り広げ、そのことが党是のようになり、「解同」との関係で敵味方を峻別する傾向を強めてきた。その延長線上に、維新が人権・同和行政を後退させたり、大阪人権博物館(リバティおおさか)や部落解放・人権研究所への補助金を打ち切るなどの部落解放同盟と距離を置いた政策をとったことを共産党支持者の一部が評価している可能性がある。
(つづく)
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