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    かけはし2019年4月8日号

国は謝罪と補償を行え


旧優生保護法による強制不妊手術

女性に障がい者排除の役割を強制

被害者への支援活動を

国としての
謝罪が必要

 与党と超党派の両議員連盟は三月一四日、旧優生保護法(一九四八〜九六)に基づき繰り返された強制不妊手術の被害者への救済法案をまとめ、現在開催中の通常国会で採決、四月中の施行を目指すことを決めた。
 両議連は昨年一〇月末、法案の骨子をまとめている。骨子に対して、弁護団や優生手術に対する謝罪を求める会をはじめ、DPI(障害者インターナショナル)日本会議など障害者団体が具体的な対案を提示している。末尾にDPIの「要望書」を掲載した。

旧優生保護法
をめぐって


 優生保護法案は現憲法下の一九四七年の第一回国会で日本社会党の福田昌子、加藤シヅエ、太田典礼によって提案された。法案は議題に付されたが質疑なく次回に延長となる。
 一九四八年の第二回国会での主導権は当時の民主党参議院議員の谷口弥三郎がにぎり、医師八人を含む超党派の一〇人で再提案され、共産党を含め全会一致で可決された。福田は衆議院厚生委員会で「母性の健康までも度外(視)して出生増加に専念しておりました態度を改め、母性保護の立場からもある程度の人工妊娠中絶を認め、もって人口の自然増加を抑制する必要がある」と提案理由を説明した。「堕胎罪を逃れよう、危険な『ヤミ中絶』を選び、命を落とす女性が少なくなかった――中略――産婦人科医をしていた福田が、『中絶合法化』による母体保護を訴えるのは自然の流れだった」(二〇一八年九月二八日西日本新聞)。
 いっぽう、谷口は参議院厚生委員会で提案理由を「先天性の遺伝病者の出生を抑制することが、国民の急速なる増加を防ぐ上からも、また民族の逆淘汰を防止する点からいつても、極めて必要である」とのべた。さらに谷口は第三回国会で「我が国の人口の状況は飽和状態。人口抑制策が必要。第二回国会優生保護法が成立したが、うまくいっても一年に五万人程度の出産抑制のみ。助産婦の指導等を通じて、今後さらなる不良な分子の受胎調整政策が必要」と発言している。
 このように「女性の生殖をとおして人口の質を向上させる――女性に障害者排除の役割を担わせるのが、優生保護法の究極の目的だった」「優生保護法の成立は中絶の本当の合法化ではなく、女性の権利の確立でもなく、女性を人口政策・優生政策の道具にし続ける政策だった」と、「SOSHIREN女(わたし)のからだから」は訴え続けてきた。
 四九年改定で中絶に「経済的要件」が加わった。
 七二年、改悪がもくろまれた。改悪案の内容は、@人工妊娠中絶の要件から「経済的理由」を削除する――中絶の件数を減らす、A障害をもつ胎児を排除する「胎児条項」を導入する――優生学的目的をさらに強化、B優生保護相談所が初回分娩の時期を指導――問題が多いとされる高年齢初産を避ける。障害者団体は主にAを、女性たちは主に@とBに反対した。七四年、衆議院の社会労働委員会で改悪案の審議に入り「胎児条項」を削除、衆議院で採択されたが、その後参議院では審議未了のまま廃案となった。
 九四年カイロ国際人口会議のNGOフォーラムでの日本の女性たちの報告、九五年第四回世界女性会議(北京)に参加した「DPI女性障害者ネットワーク」、「82優生保護法改悪阻止連絡会」などが分科会「優生保護法ってなに?」を開催し、海外から日本政府が続ける強制不妊政策に批判が集まった。
 九六年、「優生保護法」は国主導で「母体保護法」に変更、第一条(この法律の目的)から「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」は削除された。

飯塚さんの
闘いと支援


 昨年一月三〇日、仙台地裁で国家賠償請求訴訟が提訴された。原告は六〇代女性で、義妹の佐藤路子さん(仮名)が飯塚淳子さん(仮名)のたたかいを知って提訴にふみ切った。
 飯塚さんは「二〇年以上にわたり、支援者からの支援を受けつつ一人で被害を訴え続け、可能な限りマスコミの取材にも応じてきた。宮城県に優生手術の記録の開示を求め続けてきたが、原告の優生手術に関する重要な証拠は廃棄されていた。厚労省に対しても謝罪と補償を求め続けてきたが、黙殺され続けてきた」(弁護団メモから)。提訴により過去の黙殺が明らかになると、宮城県は「公式な資料がなくても、いくつかの論拠によって(手術を)受けたことはお認めいたします」(村井知事)と飯塚さんが提訴した場合、不妊手術を強制したことを認める姿勢に一転した。飯塚さんは五月に提訴、佐藤さんの訴訟に合流し、今年五月の判決が予想されている。憲法一三条により保障されているリプロダクティブ・ライツを侵害され、子どもを産む機会を奪われるなど著しい苦痛を被ったとして、佐藤さんは一〇〇〇万円、飯塚さんは三五〇〇万円の損害賠償を求めている。
 訴訟はこれまで、札幌・仙台・東京・静岡・大阪・神戸・熊本の計七地裁で二〇人が提訴している。

歴史と課題
知るために


 飯塚さんの二〇年を知るには『増補新装版・優生保護法が犯した罪―子どもをもつことを奪われた人々の証言』(優生手術に対する謝罪を求める会編/二〇一八年現代書館刊)が詳しい。他に参考文献として、講談社現代新書の『優生学と人間社会――生命科学の世紀はどこへ向かうのか』(二〇一五年刊)をあげる。著者四人のうち、米本昌平は元原子力情報室理事、他の松原洋子、島次郎、市野川容孝は「謝罪を求める会」の設立メンバーでもある。
 二〇一六年七月二六日、「障害があって家族や周囲も不幸だと思った。事件を起こしたのは不幸を減らすため」と、神奈川県立の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で、元施設職員が入所者一九人を刺殺し、入所者・職員計二六人に重軽傷を負わせた。昨年七月、杉田水脈(みお)衆議院議員は同性カップルを念頭に「『生産性』がない。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか」と『新潮45』に投稿した。社会学者′テ市憲寿は『文学界』の落合陽一との対談で、「財務省のお友だちと検討した結果としてお金がかかっているのは終末期医療、特に最後の一ケ月。―中略―『最後の一ケ月の延命治療をやめませんか?』と提案すればいい」とのべ、炎上した。古市は芥川賞候補となった『平成くん、さようなら』で安楽死を肯定している。日本で安楽死≠根付かせたのは太田典礼。安楽死≠ヘ尊厳死≠ニ呼び方を変え、与野党の議員が加わる議連が法案の提出の機会をうかがっている。
 両議連の救済法案は底≠フ浅いものかもしれない。法案が可決されたとしても被害者らの裁判は続いていく。私たちも自身の底≠見つめ直しながら、被害者への支援を続けなければならない。
(三月一八日 斉藤浩二)

資料

旧優生保護法に関する骨子案概要(一〇月三一日報道)
に関する要望書

                二〇一八年一一月五日
  特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)
   日本会議議長 平野みどり

 今年一月に宮城県の知的障害女性が提訴したことを受け、自民・公明両党でワーキングチームを立ち上げ、被害者への謝罪と補償について早急に検討していただいたこと、敬意を表します。この間、法案策定の行方を大変関心を持って注視して参りました。
 DPI日本会議は、障害の有無に関わりなく、誰もが分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するための取り組みを進めている全国九六の加盟団体からなる障害当事者団体です。私たちは障害当事者として、この問題は、障害者の存在を認めない優生思想に基づく犯罪行為であり、すべての障害者の存在、人権及び尊厳を否定することであり、国は被害者への謝罪と賠償等を早急に実施すべきと訴えてきました。
 以上を踏まえ、一〇月三一日に報道された骨子案概要に対し、意見を下記の通り述べさせていただきますが、骨子案が公表されていないため、メディア報道による概要への意見となります。速やかに公表されることを求めます。

一.法律名称について
 「救済法」ではなく、「人権回復法」とすることを求めます。
【理由】優生保護法は障害のある人や遺伝性の疾患のある人を、「不良」と定義づけ半世紀近く存在しました。一九九六年に優生条項を削除し、母体保護法に変わってからも被害の声が挙がっていることからも明らかなように、未だ優生思想として社会に根付いています。優生手術被害者だけでなく、全ての障害者への偏見・差別として今も生きています。二〇一六年に起こった津久井・やまゆり園障害者殺傷事件や二〇一七年寝屋川精神障害者監禁致死事件、本年二月に発覚した兵庫県三田市障害者監禁事件からも、優生思想が根底にあることは明らかです。よって「人権回復法」とすることで、単に被害者への補償のみで終わることなく、真に障害者の人権を回復し、再発防止策を明記することを求めます。
二.「おわび」の明記について
@「おわび」の文章を入れることを検討されていることを評価します。ただし、「おわび」ではなく、「謝罪」とすることを求めます。
A違憲性に言及し、何に対しての謝罪なのかを明記してください。
【理由】優生保護法は、障害者や遺伝性の疾病のある人々の子どもを持つ・持たないという極めて個人的な自己決定権を奪い、人としての尊厳を傷つけました。このことが日本国憲法に違反することは明らかです。憲法違反であったことに対して明記した上で謝罪してください。
三.対象者について
 強制不妊手術のみでなく、同意に基づく手術、書類の有る・無しや術式に関わらず、広く対象としたことを評価します。しかし、法を逸脱した子宮・睾丸摘出、放射線照射などは、一九九六年以降の手術についても対象とすることを求めます。
【理由】法律改正後も、障害女性の月経介助軽減のため等の理由で子宮摘出等の手術が行われています。
法を逸脱した手術は、法律の規定によらないため、法律が改正された一九九六年時点に限定せず対象とされるべきと考えます。
四.通知について
@行政が把握できている被害者に対して、被害者の人権に充分配慮した上で原則通知することを求めます。
A申し出期間は五年とのことですが、限定しないことを求めます。
【理由】むやみに通知することは、家族に知られたくないという人や、嫌なことを思い出させて再び被害者を傷つけることとなってしまうことは、想像できます。
 しかし、本人が申請できない理由には様々なケースが考えられます。障害特性により自ら申し出られない、被害者であると認識していない等です。まずは「あなたの人権を傷つけたので、謝罪して尊厳を回復したい」と述べ、障害者への偏見・差別をなくす取り組みを行うと同時に、後述の認定審査会で慎重に議論し、通知すべきと考えます。
 それでも通知が難しい場合、本人が自分から申請できるよう、人権回復の法律ができたことと申請の方法を、広く広報していただくことを求めます。行政が把握できていない多くの被害者にとっても、これは必要不可欠です。
 なお、広報媒体や方法については、新聞での一面広告やウェブ、例えばろう者や知的障害者にもわかりやすい言葉やイラストを使ったパンフレット、手話・字幕付き動画、録音テープなど多様な媒体を使って広く当事者や家族に伝えることを求めます。このような丁寧な審議、及び徹底通知を行うために、五年という期限は短すぎます。
五.支援内容について
 対象者に対して、海外の事例を参照して一律の一時金を支給するとのことですが、社会保障体制などが違うため、現在の日本の社会状況に見合う金額とすることを求めます。
【理由】その他の社会保障制度が整っている国と日本では、補償金額の重さが違います。
六.認定審査会(仮称)について
@厚生労働大臣所管の第三者審査会を設置するとのことですが、被害者・障害当事者、支援者、医療・福祉関係者を構成メンバーとする独立した機関とすることを求めます。
【理由】これまで優生保護法について「当時は適法であり問題はない」との対応を続けてきた厚生労働省内では、公平な認定が行われるかどうか担保できません。
A書類の無い被害者の認定に際し、手術痕の確認を前提としないこと。
【理由】被害者本人にとって傷を見せるという精神的苦痛や、その他の疾病等があったり古い手術痕の確認が困難な場合もあります。
7.検証委員会(仮称)の新設について
再発防止と人権回復への取り組みとして、被害者・障害当事者・支援者・研究者を構成メンバーとする第三者機関としての検証委員会の設置を求めます。
【理由】高齢となる被害者への謝罪や補償を急ぐことは必要ですが、それとは別に「なぜ日本国憲法下で、このような人権侵害が行われたのか?」を調査・検証し、二度とこのようなことが起きないようにすることが重要です。

〈一九年一月一六日追加要望〉
旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する立法措置について(一八年一二月一〇日基本方針案)に関する要望書調査・研究について
再発防止と人権回復への取り組みとして、被害者・障害当事者・支援者・研究者を構成メンバーとする第三者機関としての検証委員会の設置を求めます。
【理由】高齢となる被害者への謝罪や補償を急ぐことは必要ですが、それとは別に「なぜ日本国憲法下で、このような人権侵害が行われたのか?」を調査・研究して報告書にまとめる起草委員会としての機能を持つことを求めます。決して加害者を見つけ出して処罰するといった個人を責めるための検証ではなく、再発防止のためのものであり、この法律下で何が起きたのかを明らかにするためのものです。
@構成メンバーとして、これまで優生思想について研究してきた専門家、現在も優生思想により心身を傷付けられることのある障害当事者(特に月経介助軽減等の理由により被害に遭いやすい障害女性)等を含めた第三者委員会とする。
A優生保護法被害者からヒアリングを行い、その声を反映したものとすること。


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