ポルトガル
セトゥーバル港で港湾労働者決起
ラクエル・バレラ
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以下は、昨年八月からポルトガルで展開された港湾の臨時雇用労働者による闘争をめぐる論考。この闘争では、当該港での荷役が事実上止まり、この港を輸出積み出し港としていたVWに大きな打撃を与えた。その点で筆者は、臨時労働者でも重要な闘争が可能であることに注目している。なおこの港湾封鎖は、以下で言及されているSEALと荷役会社との交渉妥結により、昨年一二月一五日終結に向かった。(「かけはし」編集部)
劣悪な条件下の
港湾臨時労働者
セトゥーバル港(リスボン都市圏最南端、ポルトガル四位の港:訳者)の臨時労働者は何年もの間「定期的な」職を得てきた。それは、必要とされた時に彼らに代わって契約に署名する、企業の管理職に委任権を渡すよう強要されるような「定期性」だ。
彼らが病気にかかる場合、医療的支援を受けることも、NHS(国民医療サービス)が賃金補償する病休を取ることもできない(彼らが公式には企業から雇用されているわけではないことを理由に)。それゆえ彼らは企業に、彼らが働き続けているとして契約に署名することを、医療支援を受ける可能性を開くよう……求めている。
カーラ・リベイロはセトゥーバル港のひとりの港湾労働者だ。「私は港湾労働者で、五歳の娘がいる。日々契約で九年間働き続けてきた。妊娠中も八カ月半まで働いた。午前八時から午後五時まで働いた後で、時々、午前一時までとどまらなければならないと告げるために、夫に電話しなければならなかった。そしてその後また、午前七時までの夜勤シフトで働くことになっていると言うために、彼に電話するはめになることもあった。もうたくさんだ! われわれはこの戦争に取り組んでいる。後退するつもりはない」と彼女は語っている。
カーラはセトゥーバルの三〇九人からなる臨時労働者のプールの一部だ。その内一四六人は、荷役会社のオペレスティバとセトゥルセトのために、約二〇年間定期的な形態で働き続けていた。そして残りは下請け企業で働いている。
労使協調拒否
で報復と反撃
闘いは八月に始まった。それは、マデイラとレイクソエス(注一)の港湾労働者が、古い労使協調労組および会社との癒着から離れることを決定し、SEAL――その戦闘性で知られた元のリスボン港湾労働者組合、今は全国規模の労組になっている――に加わり始め、報復として彼らに職が与えられず、何人かが床掃除に回された時だった。
そして彼らは、賃金の引き下げを経験した。それへの返答として八月一三日から、この国の正規と臨時の全港湾労働者が超過労働を拒否し、荷役に重大な遅れを引き起こしつつ、ある種のストライキに入った。
セトゥーバルの経営者たちは、この連帯ストライキの真価を認識できず、彼らのほんの小さな部分にだけ契約を差し出す(二〇年後の今になって!)ことでストライキを破壊する、と決めた。それは彼らを「解雇」しようと試みた僅か二、三日後だ。
二人を除く全員がこの契約への署名を拒否し、「全員署名か誰も署名しないかだ」をモットーに、一一月五日に全面的な労働停止に入った。何人かのVW/オートヨーロッパ(ポルトガルで操業するVWが一〇〇%株主の自動車組み立て工場:訳者)(この闘争では最大の影響を受けている)の労働者も公然と彼らを支持した。同様に、コールセンター労働者、リスボン地下鉄、緊急対応地上部隊、またCGTP(ポルトガル労働総同盟)労組連合傘下の労組いくつかも支持を明らかにした。
政府の姿勢変化
陰にVWの要請
ポルトガルの労使関係が抱える「無法地帯」を特徴とするあれやこれやの部分はこれまで、「海事/ACT」(注二)相に繰り返し通報されてきた。しかしそれらへの回答はまったくなかった。BEとPCP(注三)がこれらの問題を提起しつつも、「労働と社会保障、および海事・農業議会委員会」では、これらの問題がだらだらと長引いてきた。しかし先の二政党が「ゲリンゴンカ」の一部として活動しているのか、それとも野党として行動しているのかは、誰も分からない。 これにまったく効果はなく――港湾に関する法が変えられ、港湾労働者に対する労働協約が交渉されないならば――、紛争は続くだろう。そこには、利益が港湾の一握りの特別認可所有者に流れている中で、港湾労働者だけではなくこの国の何千という企業にも深刻な影響が付随し、彼らは何百万ユーロも失っている。
国はついにこの問題に関心をもつようになったと見える。カーラや彼女の家族、あるいは日々契約に頼る暮らしを抱えた人々に対してではなく、輸出を待って積み上がっているVW/オートヨーロッパの自動車に対してだ。海事相の心配は、これらの港湾労働者の破壊された生活が原因ではなく、オートヨーロッパ株主の要請が理由なのだ。
世界的生産態勢
最弱環は労働者
私はこの港湾停止(事実としてこれは正式のストライキではない。臨時港湾労働者は一日を単位に募集され、保護を受けた労働への権利をもっていないからだ。しかし彼らには働く義務もない)に特別の学問的関心がある。私は多くの著作で、労働者が自らを組織することが今や三〇年前よりも容易になっている、ということを主張してきたからだ。こうした言明は、いつもある人々には驚きとなっている。伝統的諸労組が、彼らが闘わないのは組織された労働者が少数かつ脆弱になっているから、と力説しているからだ。
セトゥーバル港の麻痺は私の結論を確証している。ジャストインタイム・モデルは諸企業に在庫を減らすよう迫る。企業の再立地は永続的な脅威だが、しかし同時に今日、小部門でも生産チェーン全体を止めることができるのだ。グローバリゼーションはソーシャルダンピングを意味するがまた相互依存をも意味している。セトゥーバル港湾労働者による港湾封鎖はポルトガル最大の工場を止めることができている。そしてスウェーデンあるいはブラジルのサントスの港湾労働者も止めることが可能であり、これはすぐさま、リスボンやバルセロナに効果を及ぼすだろう。
グローバリゼーションの最弱の環は労働者であるかもしれない。そして彼らはこれまでもそうだった。しかしそれは諸企業でもあり得る。それらの利益は、仕事を失う怖れにより保証された低賃金が基礎になっているのだ。
この分野では、ストライキが社会に対する説明責任を求める綱引きである、ということを思い起こすことも重要だ。こうして、労働組合運動は、事実として民主的であり、あらゆる政府から独立し、国際主義でなければならない。そうでなければそれは、常にそれ自身の諸限界に突き当たり、住民の多数部分の利益を代表することができないだろう。
ピラミッド化
に重大な問題
一九八〇年代以後のポルトガルがもっている「競争力の強み」は、労働密度強化と低賃金に依拠してきた。研究者のエウゲニオ・ロサによれば、労働時間あたりコストは二〇一七年第1四半期との比較で、二〇一八年第1四半期に低下し(一・五%)、ポルトガル人の平均所得は二〇〇八年時点よりも低いままだ。投資も落ちている。生産性は、益々少なくなっているものに対して一層多くをやるよう求められている労働者、手工業者、知識人、の肩にかかっている。医師、教員、看護師、港湾労働者、コールセンター・オペレーター、空港労働者、地下鉄労働者、公務員、彼らが最も多く語っていることは「疲れた」「恐ろしい」だ。
諸企業は最低賃金やそれをほんの少し多いものを払っている。しかし資格のある部門に対する諸税が、貧しい人々が働いている時でも頼ることを強いられている社会的支援、社会的失業補助金、電力料金減額……、の費用を負担している。貧しい人々は毎日、彼らの貧しさを明らかにし、その状態に達していることを認めなければならない。
こうしてわれわれは、貧しい人々のうち社会的支援を受けていない者四七%、それを受けている者一八%という数字をもつことになるだろう。福祉国家が普遍的である中で、諸々の移転は絞られている。それらは、短期的には貧困を軽減しているとはいえ、貧困の永続化を助けているのだ。
ポルトガルの、および世界の他の問題は、利益をまったく上げていない子会社に労働者を集中しつつ、僅かの労働者しか抱えていない親会社に利益を集中する企業のピラミッド化されたモデルだ。このモデルはこれまで、利潤の浮かれ騒ぎと不平等をつくり出し、下請け製造事業者を窒息させ、労働者を疲れ果てるまま取り残した。港湾の場合われわれは、ずっと前に自らに問うべきだった。それらはなぜ戦略として公的ではないのか、そしてわれわれはなぜ、僅かの仲介者の利益のために残忍な労働というこの苦難を終わりにしないのか、と。
闘争が高めた
労働者の意識
一一月一七日、SEALはセトゥーバル港の紛争に対応するために全国総会を開いた。そして彼らの生存の尊厳に力を貸す目的で、この港の臨時労働者が加入することを可能にすることに対しては満場一致の投票があった。連帯は風が送る手紙ではなく実体的な行動だ。
社会は十分に生産しなければならない。よく働くことは重要だ。しかし人は、どのように、誰が誰のためにと、また生産されるものを、自らに問わなければならない。アゾレス諸島出身の正規契約の港湾労働者、デュラルテ・ビトリロは、カーラと連帯している。彼は八五〇ユーロを稼ぎ、そのうち四%を組合に渡している。超過労働をすると彼の賃金は月に一二〇〇ユーロないしは一三〇〇ユーロに達する。
彼は一つのインタビューで「私は超過労働のストライキに入ってから五〇〇ユーロ以下で暮らし、私は努力し、妻は心配しているが、私は気にならない。ストライキは全員の利益のためなのだ……。私は一年間でも超過労働なしで暮らすことができる!」と私に語った。この闘争の中で彼は、また彼独自で、協力、公正、さらに勇気の感覚を深めた。それは、VWの自動車が労働者よりも大事に見える、非人間化された労働が彼に与えることのできない感情だ。
▼筆者は、歴史家であり、研究者であり、大学教授。彼女の主な関心分野は、世界的な労働史、労使関係史、そして現代ポルトガル史。(注一)ポルトガル北部の重要港。
(注二)英国のHSE(健康・安全執行局)に対応するポルトガルの機関。
(注三)BEは左翼ブロック、PCPはポルトガル共産党。
(注四)直訳すれば「奇妙な仕掛け」、議会で社会党少数政府を支えている連合のあだ名。(「インターナショナルビューポイント」二〇一八年一二月号)
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