公共サービスを市民・社会の手に!
―宮城県の例から考える
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民営化法案強行
可決の背景は?
水道「民営化」法(改正水道法案)が一二月五日参議院で強行可決され、成立した。政府は、人口減少に伴う水使用の減少・節水型社会への対応(収入減)、管路の老朽化と整備に伴う経費増、頻発する自然災害での被害の多発による経費拡大、高齢化による職員減少と技術継承への対応として「民間資金とノウハウを活用し基盤整備を図る」として官民連携で解決していくとしている。
二〇一三年四月、麻生副総理が米国の戦略国際問題研究会の講演で「日本の水道はすべて国営もしくは市営、町営でできていて、こういったものはすべて民営化します」という発言を契機に、水道民営化の論議が急浮上した。その年の五月、竹中平蔵は経済財政諮問会議・産業競争力会議で「コンセッション制度の利活用を通して成長戦略の加速」を提唱し、水道事業の民営化の旗振り役をしている。
二〇一六年一一月、厚生労働省の専門委員会で「コンセッション方式導入を検討している自治体があり、法整備を行うべきだ」とする報告書をまとめたことで、二〇一七年三月に水道法改正案が国会に提出され衆議院解散のため廃案となったが、今年三月再び国会に提出、七月五日衆議院を通過したものの通常国会が閉幕したので継続審議となり、一一月臨時国会でまともな審議もしないなかで一二月六日に成立した。
浜松市が実施した下水道事業のコンセッション方式では、フランスの多国籍水道サービス企業「ヴェオリア社」の日本法人「ヴェオリア・ジャパン社」や竹中が外部取締役をしているオリックスらが企業グループを組んで二五億円で運営権を手にしている。安倍の取り巻きが「有識者」として政府組織に潜り込み規制緩和の政策を提案し、それを政府が丸のみで法制化(改正)し、「有識者」の企業を潤おわせるという「加計問題」と同じ構造である。また、公共部門で民営化を推進している「内閣府民間資金等活用事業推進室」に、ヴェオリア社からの出向職員が水道民営化のための審議期間中、勤務していたことが明らかにされている。
チェック機関
が動くのか?
「コンセッション方式導入を検討している自治体」の一つの宮城県の村井知事は、一一月二九日参議院厚生労働委員会での参考人質疑で「法を改正すれば、行政が最後まで責任を持てる」と法改正の意義を強調した。宮城県は、水道用水供給事業、工業用水事業、流域下水道事業の三事業の運営権を「みやぎ型運営管理方式」と称して民間に売却することを検討している。
参考人質疑のなかで「民間に利益を生み出す工夫をしてもらう」として二〇年間の契約で三三六億から五四六億円のコスト削減を示したそうだ。東日本大震災後、宮城県の漁業者や漁協の反対を押し切って、水産復興特区を利用し漁業権を開放した水産会社の社長に「しっかり儲けてくださいよ」と話しかけたことを思い出す。
宮城県は、現在の水道事業を民間事業者に「委託」しているが、その実態は短期間(最大五年契約)で投資や人材育成が困難であること、委託が小規模なためスケールメリットの実現効果がないこと、限定的な業務で自由度がなく民間のノウハウを活用できないとしている。
「みやぎ型管理運営方式」にすれば、短期契約を二〇年間の長期契約にすることで人材育成や技術の継承・革新ができること、「上工下」の三事業包括化で「スケールメリットの発現」が期待でき、人材の一括活用、経費の軽減、技術統合で効率化が図れること、そして経営と運営を協働で行う官民連携の運営方式で民間活力を最大限活用でき、コスト削減が図られ、料金上昇の抑制、経営の安定化につながると、民間への売却の優位性を強調している。
民間に二〇年間任せることについて、資産は県が持ち、水道管の管理や更新、建物の改築も県が実施するもので「完全民営化ではない」と強調し、料金の改定については、県、民間事業者、市町村で協議して改訂案を決め、県議会で条例改正を行う。水の安全、安心については、民間事業者のセルフチェック、県のチェックに加え第三者機関(専門家)によるチェックを行う。災害時の対応については、これまで通り県が責任をもって実施する。民間事業者の倒産、撤退については、第三者機関での事業計画と経営状況をチェックして倒産しないように努めるとしている。
運営権を売却後、県によるモニタリングや第三機関によるチェック機能が本当に働くのか! とてもこれまでの民営化を見る限り信じがたい。前のめりの村井知事に対して、自治体や県議会、労働組合から危惧や懸念など県民への説明を求める声が相次いでいる。
仕組まれている
料金大幅値上げ
「将来、水道料金値上げを抑えるために必要だ」とコンセッション方式導入を目指す村井知事は、法改正の必要性を説くが、『政府の未来投資会議「第四次産業革命」会合(竹中平蔵会長)が、上下水道のコンセッションで、物価変動リスクをすべて企業に転嫁するのは「非現実的」とし、「一定の定義された範囲を超える物価変動が生じた場合、料金に転嫁できる仕組みが必要」と求めている』(朝日新聞一二月四日)ということを踏まえれば、儲けを度外視した民営化などあり得ず、料金の値上げは最初から仕組まれているのである。
水道料金は、電力料金と同じように「総括原価」制度を取っている。総括原価は、営業費用(人件費、薬品費、減価償却費、資産減耗費、その他営業費用)と 資本費用(支払利息、資産維持費)から 控除額(給水収益以外のその他の収益)を差し引き確定する。コンセッション方式で運営権を得た民間企業は、コストについては料金に上乗せすることになるのは明らかである。「株式配当」「役員報酬」も上乗せされ、コストカットのために労働者の削減と非正規化も進むことになるだろう。
水道事業は社会
的共通資本だ
民営化した世界各国では、水質の悪化や料金の高騰などの失敗で再公営化の動きが続出している。
新潟県議会は、「水道民営化を推し進める水道法改正案に反対する意見書」を採択したが、そのなかで、災害時の応急体制や他の自治体への応援体制などが民間事業者で出来るのか、老朽した水道施設の更新や耐震化が本当に進められるのかと民営化への疑念を指摘し「水道法の目的である公共の福祉を脅かす事態となりかねない」と警鐘を鳴らしている。そして民営化した海外の失敗事例として「フィリピン・マニラ市での料金高騰やボリビア・コチャバンバ市での暴動の発生、フランス・パリ市では料金高騰に不透明な経営状態」などを上げ、世界の多くの自治体で再公営化されていることを示し法案に反対を表明している。新潟県の姿勢が、地方自治体の「住民の福祉の増進はかる」本来の立場であろう。その真逆を行くのが宮城県の村井知事で、「海外のような失敗は起こりえない。日本のモデルを作っていく」と述べている。
運営権を得た民間事業者は、短期的な利益を求めるのが一般的で、収益に直結しない設備投資は積極的ではない。民営化を進める首長は「一度民間に任せてだめなら戻せばよい」という姿勢だが、契約途中で行えば膨大な違約金が発生する。ベルリン市では、企業から運営権を買い戻すために一三億ユーロのコストがかかっている。運営権を得た民間企業が倒産・撤退、水メジャーによる買収、合併で安全な水の確保ができるのか、水道民営化法の国会審議ではこのような問題が置き去りのままだ。
水は暮らしや産業の基盤であり、安心、安定、安全が維持される水道事業でなければならない。再公営化されたパリでは、議員、環境NPO、消費者、水道労働者、水道事業者が参加する事業運営の仕組みができている。民営化ではなく、社会的共通資本としての「公営」も含めた市民化、社会化した水道事業の在り方を求めていこう。(m)
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