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    かけはし2021年1月18日号

「自己保身」と政権延命の術策


菅政権が東京・首都圏に「緊急事態宣言」

「強権統治」反対!行動する民主主義を


「コロナ危機」
深刻化の責任


 昨年9月、安倍首相の退陣にあたって圧倒的多数で自民党新総裁・内閣総理大臣に選出された菅義偉新政権は早くも難関に直面し、政権の基盤が大きく揺らぐ事態に直面している。安倍前首相の政権投げ出しの契機となったコロナ危機への無策・無対応が、菅新政権を直撃している。政府・与党の危機が確実に進行する状況が深まっている。労働者・市民は、行政や大企業経営者の責任転嫁に不信をつのらせているが、その怒りをぶつける手段を持ち合わせていない。
 米大統領選挙でのトランプの敗北は、コロナ禍が引き出したアメリカの社会的矛盾の噴出にその根拠があった。コロナ危機は日本においても安倍長期政権の下で蓄積された危機と矛盾を、明るみに出しつつある。それはまず何よりも、安倍から菅に引き継がれた自公政権が、この危機に対処する意思も能力も欠いていることを多くの人々が日々実感せざるを得ないことに表わされている。
 2021年になって感染者は日増しに増加している。1月7日の新たな感染者数は全国で7571人(東京では2447人)となり1日あたりの人数を連続で更新した。重症者・死者も急速に増加している。状況は「ステージ3(感染急増)からステージ4(感染爆発)」という危機的段階に入る間際になりつつある。
 1月10日には、新たな感染者が6100人に達したと報じられている。昨年春のクルーズ船と併せて、累計の患者は28万9581人、死者は4080人、重症者は10日午前の段階で852人に達している。
 「週刊東洋経済」2021年新春合併特集号(12月末発行)は「新型コロナウィルスの『第3波』によって『Go To』キャンペーン事業への批判が拡大したのに対し、菅首相が同事業の一時停止の判断を遅らせたため、火に油を注いだ」と批判する野村明弘(「東洋経済」解説部コラムニスト、同誌編集局解説部長)の文章を掲載した。
 野村は「NTTドコモの料金大幅引き下げ決定などの携帯電話値下げ策が進展し、首相肝煎りのミクロ経済政策は国民の支持を得ていたが、それが帳消しにされつつある状況だ」と述べている(「短命を恐れ、小粒政策連発 世界の激変から置き去りに」)。事態はもっと悪化している。感染拡大は菅政権の責任といって過言ではない。だが菅政権と与党議員は、コロナ禍の急速な拡大の中で、労働者・市民の苦境を見殺しにしているのだ。

「行動原理」は
自己保身のみ


そうした局面で、1月7日に菅首相は、ついにこれまでの「根拠のない強がり」の態度を部分的に変更し「新型ウイルス特措法」に基づいて東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏4都県に1カ月の期限で「緊急事態」を宣言した。
同宣言は「飲食店の営業時間を午後8時までとし、午後8時までの時短営業、酒類の提供は午後7時まで。午後8時以後の外出自粛。テレワークを推奨し出勤者の7割を削減、イベントについては『自粛』は求めないが入場者の上限は5000人」としている。
この「宣言」は「Go To Travel」や「Go To Eat」のキャッチフレーズによるキャンペーンが、労働者・市民一人ひとりの健康と生命を企業利益のために確実に危険にさらすものであることを示している。
それはまた危機と緊張した過密労働の中で、自らの身を危険にさらしながら献身的な努力を続けている医療労働者・介護労働者の健康と生命を害し、いっそうの負担を強制するものである。何よりも、安倍から菅に引き継がれた自公政権が、この危機に対処する意思も能力も欠いていることを、多くの人々が日々実感せざるを得ない状況をつくり出している。
菅首相本人を含む内閣閣僚、自民党各派閥の有力者を含む酒宴の情報は、けっして個人の問題に帰せられることではない。またいまだかつて経験したことのない世界的なパンデミックへの「無知」の産物というわけでもない。菅本人をふくめて、「コロナ危機」への政権の対応は「自己保身」以外のなにものでもなかったのである。

ポスト安倍の
政治理念とは


先に引用した、『東洋経済』誌掲載文(野村明弘「短命を恐れ、小粒政策連発 世界の激変から置き去りに」)の中では、安倍後の新政権に求められる政治課題の性格について3点を提示している。「『@アベノミクスの総括』――?低成長、人口減への対応、?金融・財政政策への依存度、『財政健全化』の道筋 Aエネルギー政策――?原子力政策の再定義?カーボン・プライシングの導入(2酸化炭素に価格をつけ、排出量に応じて家庭、企業に負担を求めること)?脱炭素化を国際競争力の強化とどう結びつけるか、B米中2強時代の安保・経済――?『自由で開かれたインド太平洋』構想の深化」である。
全体として「米中の覇権主義から日本の『国益』を守る手立て」として、安倍に代わる新政権に求められる課題の性格がここで提起されている。
筆者の野村は菅首相が昨年9月の所信表明演説で打ち出した2050年までの「カーボンニュートラル(温暖化ガスの実質ゼロ化)」に期待を抱いているようだが、そもそも菅が「脱原発」にも「脱CO2」にも関心を持っていないことは明らかだ。(「カーボンニュートラル」のでたらめについては本紙昨年11月16日号1面掲載の斎藤浩二「菅政権の“カーボンニュートラル宣言”のまやかし」を参照)。

新しい強権
統治モデル


菅政権の性格について、「文藝春秋」2月号に掲載された片山杜秀(政治学者・慶応大教授)の「菅『敗戦処理内閣』の自爆」は「新自由主義に基づく“行政の徹底したスリム化”」と規定している。菅にとっては徹底した資本の論理に基づき、「国民国家」自体が邪魔になるような「スリム化」こそ、理想なのだ、と片山は言う。
「要するに、新自由主義的な“資本の論理”からすれば、『国民国家』自体が邪魔でしかないのです。教育や福祉で『国民の面倒を見る』こと自体がコストに合わない。AIやロボットも駆使して『いかに人件費を削るか』が、新自由主義の成長モデルだからです。こういう資本の論理に従えば『人権』など簡単に吹き飛んでしまう」。
改めて、日々止まることのないコロナ被害の責任を明確にしていく闘いが必要である。それは言うまでもなく地球環境を破壊し、差別と貧困、疾病を拡大する今日の新自由主義的グローバル資本主義と対決する労働者・農漁民・市民の闘いを通じて、エコロジカルな「新しい社会主義」に挑戦することを明確にすることである。
コロナ危機、健康破壊、自然破壊、軍拡・改憲に抗して労働者・農民・市民の生命と生活・権利を守る闘いは、菅政権を打倒する労働者・市民の新しい民衆的共同戦線の形成につながっている。
菅政権に「コロナ危機対策」を求めることはできない。菅の「コロナ対策」のスタンスは、新自由主義的資本主義の「操縦者」、そして安倍長期政権の後に続く資本主義の危機の時代における新しい強権的統治のモデルをつくり出すこととつながっている。今こそ全国で、労働者市民の生活と権利を守り、菅政権打倒へ向かう共同の行動を作りだそう。       (純)

12.29〜1.4

山谷越年越冬闘争

コロナ禍で生きぬくために

新しいやり方にチャレンジ


感染防止に
万全期して


 12月29日から1月4日の朝まで城北労働・福祉センター前の路上を拠点に今年も山谷越年越冬闘争が行われた。 
今年はコロナ禍のなかで感染対策に重点を置きながらの越年となった。そのため毎年大晦日に上演してくれる「さすらい姉妹」のお芝居もお断りし、餅つきなどのイベントはすべて中止し、朝晩の炊き出しを中心に1週間の越年をやり抜いた。 
 炊き出しも今までは共同炊事方式で、参加した人みんなで共同で肉や野菜を切り、センター前に設置したカマドの大鍋で煮て、やはりカマドで炊いたご飯にぶっかけて食べるというものだったが、今年は三里塚などから頂いた野菜で漬物やキムチを作り、大量に買ってきたレトルトのカレーや、中華丼をそれぞれかけて食べてもらうというもの、朝食は汁物を作りご飯にかけて提供した。それぞれビニール手袋やアルコールなどで感染対策をした人のみが作業する。食べに来た人にはマスクを配る。取りに来るときにはマスクを必ずつけてもらう、ということを徹底した。 

例年とは違う
状況のなかで


新型コロナウイルスの感染が拡大して以降毎週日曜日の共同炊事も対応を迫られ、中止も検討されたが、場所をそれまでの上野公園と隅田川からセンター前に固定し、感染対策を徹底し、共同炊事方式を一時中止してお弁当を作って配る、というやり方に変えた。また、月末には生活保護受給者も多く食べに来るが、たくさんの人が集まると感染の危険が増えることからコロナが収まるまでは保護費でやりくりしてくれ、とアナウンスしている。 
さらに山谷周辺の教会などの炊き出しが中止に追い込まれる中で朝食の炊き出しも開始した。緊急事態宣言が出された4月から6月の時期には玉姫職安の輪番の仕事(東京都が出す公園や、道路清掃の仕事で野宿の仲間が多く行っている)がバスでの移動が密になるということで止まり、アルミ缶の金額も大幅に下がり、(キロ100円前後だったものが60円ほどに)野宿の仲間の暮らしが大変になったことから朝食の炊き出しを月曜から金曜まで行った。 
その後輪番の仕事が復活し(しかしバスに乗る人は今までの半分)朝食は週2回に、秋にはバスを2台に増やし通常の人数が仕事に行けるようになってからは朝食は水曜日のみになった。越年期もこの1年間やってきたことの延長で感染対策は徹底し、参加者の規模は最小限で行った。

野宿する仲間
を排除するな


4日の朝は仕事始めに出勤してくるセンター職員の前で朝食の提供を行い、その後センターとの交渉を行った。今回また新たに緊急事態宣言が出されそうだということで(その後緊急事態宣言は発出された)前回はセンター地下の娯楽室(多くの仲間が雨風をしのぎ、お湯が出ることからカップラーメンを作る)が突然なんの対策もなく閉鎖され、行き場を失った仲間もいたことから、年末年始の宿泊のような対策が必要ではないか?
センターは周辺で野宿をする仲間を排除するな! 利用者カードの発行を求める労働者の闘いで誰もが作れる「仕事カード」なるものをセンターは新たに設定したが、2カ月で26日仕事に行かなければ本来の利用者カードにならない。仕事カードでは利用者カードで受けられる医療、宿泊、給食などが受けられない。仕事に行けていない労働者にこそ、このような施策は必要なのだ。 約1時間ほどの交渉の後、センター前を撤収し、台東区役所への生活保護の申請行動を行って越年を終えた。  (板)

 

1.4

辺野古基地埋め立てやめろ

新年の防衛省申し入れ行動

激戦地の土砂使用に抗議

 1月4日午後6時半から、辺野古への基地建設を許さない実行委員会が防衛省に対して、「辺野古基地埋め立てを中止しろ」と申し入れ行動を行った。
 日音協の音頭で沖縄の闘う歌を全員で合唱後、集会が開始された。辺野古実が次のように発言した。
 「土砂運搬船の座礁事故が2回起きている。浅瀬を壊す環境破壊が起きている。とりわけ昨年11月以降土砂投入のピッチがあがった。冬場は海が荒れ、投入が止まることがしばしばある。1万3千トンもある台船8隻を護岸に止めて使っている。護岸を土砂埋め立てに使わないことになっているにもかかわらずである。県はやめるように指示しているが無視している」。
 「埋立設計変更で、名護市に意見を求めている。市長は埋め立てに何も触れずに結果として、埋め立てを容認する意見を表明した。それに対して市議会は市長意見を否決する大きな勝利を勝ちとった。玉城知事は設計変更に否認する決定をするだろう。今年こそ埋め立て工事を断念するまで奮闘しよう」。
 山城博治さん(沖縄平和センター議長)が電話でアピールした。
 「今日から、辺野古ゲート前で座り込みを行った。勝利を勝ちとる踊り、三線でにぎやかであった。しかし、事態は楽観できないがしなやかにしたたかに闘う」と述べた後、通信状況が悪く一部の話が切れてしまった。山城さんは「サンゴ移植問題、大浦湾への何万もの杭の打ち込み、土砂の投入と環境を壊すものだ、裁判になるだろうが裁判でクリアできない。権力の行使を許さない、最大限の元気をもって阻止しよう」と訴えた。
 「平和をつくり出す宗教者ネット」の武田さんが「戦没者の遺骨が含まれている土砂を辺野古新基地建設に使わせてはなりません」という宗教者共同声明を12月10日に発表したことを明らかにし、「沖縄戦激戦地の土砂使用計画をただちに撤回し、沖縄戦犠牲者の遺族の方々に謝罪することを菅首相に強く求める」と述べた。
 Stop!辺野古埋め立てキャンペーンが「沖縄県の設計変更承認審査の結果を待たずに沖縄防衛局は、大浦湾埋め立て土木工事の設計を発注し、日本工営・日本港湾コンサルタント・中央開発等から共同事業体(JV)が受注することが明らかになった。防衛省と共に埋め立て企業にも抗議を。1月26日午後5時半から、日本工営ビル前」と呼びかけた。
 沖縄意見広告運動、高江住民訴訟の会のアピールが続いた。名護ヘリポート基地に反対する会と「平和をつくり出す宗教者ネット」が防衛省への申し入れを行った。      (M)

 




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