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    かけはし2021年1月1日号

「敵基地攻撃論」を批判する


12.14

杉原浩司さん(武器取引反対ネットワーク〔NAJAT〕共同代表)名古屋講演会

 【愛知】12月14日午後、名古屋市の女性会館で「『敵基地攻撃論を批判する』杉原浩司さん講演会」が不戦へのネットワークの主催で行われ22人が参加した。杉原さんは「武器取引反対ネットワーク(NAJAT)の代表で、日本企業の武器の売買や軍需産業、日本国内で行われた武器見本市に反対する活動を展開している。
 定刻、司会者のあいさつで集会が始まり、杉原さんが1時間半ほどの講演を行った。杉原さんはまず「戦争は言葉のすり替えから始まる」と指摘し、「攻撃を阻止する能力」「打撃力」という言葉は「他国での殺傷能力」という意味であり、2019年に千葉県の幕張で行われた武器見本市でアメリカ製ミサイルの展示解説に「殺傷能力が向上しました」と記されていることを紹介した。そして「敵基地攻撃論」推進派のシンポジウムで「全員が鉄砲をもっているのに日本だけが防弾チョッキを着ている状況」「国家の品格という点から見てもアメリカに守ってもらうだけでいいのか」「(敵基地攻撃)の打撃力は盾に分類していい……」など本質を隠そうとしながら推進をせまる軍産複合体の擁護者を批判した。さらに推進派論客は東南アジアから南西諸島、九州に至るラインに対艦攻撃用トマホークを配備すると主張していると述べ、アメリカ軍は海兵隊を小規模部隊にして南西諸島や南シナ海に分散配備する新戦略について明らかにした。

問われる論点

 問われる論点については「敵基地攻撃論」は自衛隊の事実上の米軍の1部化であると述べ、また「軍事費に莫大な経費がかかるから反対」という批判は有効ではないと注意を促し、反対する8つの理由として(1)「憲法9条に違反し専守防衛を逸脱しており、明文改憲に等しい」(2)「国際法違反となる恐れが高い」(3)「『安全保障』のジレンマを拡大し軍拡競争を激化させる」(4)「意思への不安定な依存が戦争を引き寄せる」(5)「戦力(実力)を統制するという戦後の在り方の終焉」(6)「安保法制と連動で「他国を攻めるための日米一体化」に道を開く(7)「アメリカ軍の違法なグローバル先制攻撃の敷居を低くする」(8)「北東アジアにおいてなぜ中国や北朝鮮が核・ミサイル軍拡を進めるのか考え、軍縮協議をする」について詳しく説明した。

市民のつながりを

 次に「市民に問われること」として、2021年度概算要求に盛り込まれた「敵基地攻撃兵器」予算の総額5挑3898億円の撤回を求める声を上げること、ミサイルの輸入代理店(伊藤忠アビエーション)や開発企業(三菱重工等)、研究開発を行う大学などに中止するよう働きかけることが必要だと述べ、アメリカなどの軍産複合体に対峙し、日本に軍産複合体を作らせないことを共通課題にして「武器見本市」への反対運動を交差点に、気候変動や災害、貧困、コロナ対策の要求に取り組む人々との連携、つながりを模索しながら運動をつくっていこうと提起した。
そして最初の「敵基地攻撃ミサイル」となる長距離巡航ミサイルの納期は2022年3月なかばで今、声を上げればまだ間に合う。武器導入や開発の白紙撤回、日米の「敵基地攻撃能力」を封じ込めるまで進めていこうと述べた。最後に「敵基地攻撃能力」の保有や武器取引を止めるため、市民一人一人が企業や大学、研究機関、議員などへ、これらのことをやめるよう電話、FAX、メールなどで呼びかけようと述べて講演を終了した。

愛知からC2軍用輸送機輸出反対

 後半の質疑応答が終わり、司会の方から愛知における川崎重工名古屋支店で開発されたC2軍用輸送機のアラブ首長国連邦への輸出に反対する取り組みが報告された。
C2軍用輸送機はC1軍用輸送機の後継機として鳥取県の三保基地にも配備される。「武器輸出3原則」が撤廃され「防衛装備移転3原則」に改悪された中でこの輸出が行われようとしていた。愛知県は全国でも特に軍需産業が多く集中する県である。
杉原さんとNAJATのよびかけに応え、愛知と東海の地から軍需産業と武器輸出、取引きを阻止し、「敵基地攻撃能力」を封じ込める闘いをつくりあげていくことを参加者全員で確認し、集会を終えた。(越中)



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