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    かけはし2020年4月13日号

命と雇用と暮らし守る責任果たせ


4.3 20けんり春闘中央総行動

日本経団連の社会的責任を追及

コロナウィルス感染下の課題

 四月三日午後三時から、20けんり春闘中央総行動として日本経団連会館前で経団連追及行動が行われた。「八時間働けば生活できる賃金を」「八時間働けば暮らせる社会を」を総スローガンとして、全国一律一五〇〇円最低賃金を含む大幅賃上げ、非正規労働者や移住労働者の差別的処遇取り止めとその処遇の抜本的改善、などを、日本の労働政策を事実上指揮している日本経団連に厳しく求める行動として設定されていた行動だ。
 ところが今年は、新型コロナウィルス感染が日一日と進む中で新しい意味が加わることになった。文字通り労働者民衆の命を守ること、そして急速に不安が浮上しつつある雇用と暮らしに対しその保障を求める必要だ。
 特に雇用と暮らしの不安は日々高まっている。新型コロナウィルス感染防護を理由とした休業・操業停止だけではなく、その世界的な蔓延が極度に金融化し搾取を深めたグローバル資本主義の蓄積された矛盾を直撃する形で、リーマンショックを超える恐慌がかなりの確度で予想されているからだ。
 早くも、非正規労働者の雇い止めや新規採用者の内定取り消しなどが報じられている。各労働団体や労働弁護団の労働相談窓口にも生活破綻を危惧する多くの相談が寄せられている。しかし安倍政権や経団連傘下の大企業経営は、この雇用と暮らしの不安に真剣に応えてはいない。
 実効ある感染防護のためには何よりもまず、民衆の生活保障に全力を挙げることの明確化、そしてそれを基軸にした民衆の主体的参加が必要だが、安倍政権も経営者団体もそのような姿勢を全く示さない。むしろ感染の広がりは人々の責任に押しつけられ、人々は自己責任での個々的対処に放置されている。
 四月三日の行動は、まさにこの状況への民衆側からの対抗として急遽設定され、命と雇用と暮らしを守る責任は何よりもまず政権と経営者にあることをはっきり声に上げ、その責任の全うを強く求めることが中心的な訴えとなった。感染防護の観点から動員の規模は絞られ、当初予定されていたその後の諸行動は中止されたが、それでも多くの労働者が駆け付け、一定の距離を取るなどの配慮を行いながら、経団連に対する断固とした責任追及を行った。

差別・偏見を許さない

 集会は、20けんり春闘全国実行委員会共同代表の平賀雄次郎さん(民間中小労組懇談会)の主催者あいさつから始まった。そして平賀さんは、新型コロナウィルス感染を理由として春闘自体にも行動自粛圧力がかかり、特に大企業での低額妥結が切実になっている生活保障を危うくしていることを指摘、今こそ底辺から声を上げ闘いを通じて命と雇用と暮らしを守る必要がある、現在人々が直面している危機は個人責任の問題ではない、コロナ解雇を許さず、命を守る社会的保護の確立を徹底的に要求しよう、と力強く呼びかけた。
次いで渡邉洋全労協議長が発言、生きる権利の要求は自粛できない、困難な条件はあるが知恵を絞り闘いを絶やさないようにしようと呼びかけた。そして完全な休業補償、特に非正規労働者や移住労働者の雇用保障を声を大に要求すること、また今回明らかになった医療の脆弱さが、公共サービスを後退させ自己責任に任せる社会のあり方の見直しの必要性を提起していること、を強調した上で、外国人攻撃や医療者差別として現れている差別と偏見の拡大にも注意を喚起し、労働組合にかかる任務はかつて以上、しなやかな闘いを作り上げようと力を込めた。

引き下がることはできぬ


参加団体からは、郵政産業労働者ユニオン(郵政ユニオン)、東京労組、東水労、神奈川シティユニオン、全造船関東地協、宮城合同労組、JAL争議団の各代表が発言に立ち、各自の闘いに引き寄せつつ、命と人権を守る闘いを引き下がることなく追求する決意を述べた。
二つだけ紹介するとまず郵政ユニオンの日巻直映委員長が、まず労働契約法20条裁判を通じて非正規差別を撃ち返す糸口にしたいとした上で、ウィルスによる休校に伴い休業を迫られた労働者に対し年休使用を会社が強要したことを糾弾、強い抗議で撤回させ特別休暇の延長での対処を認めさせたものの、発症した場合の病休に関しては非正規の場合無給になることも変えたい、と今後の課題を明らかにした。
宮城合同労組の星野憲一郎委員長は、福島第一原発の事故処理・廃炉作業に携わり過労死した猪狩忠昭さんの賃金未払い裁判で、賃金支払いを命じる勝利判決(福島地裁いわき支部)を勝ち取ったことを報告し、全国からの支援に感謝を述べた。そして、猪狩さんの過労死では東電が遺族に対し、猪狩さんが死亡したその日に「過労死ではない」と言い放ち問題隠蔽を図ったことを暴露しつつ、雇用主である下請け企業が通勤時間として無給とした時間を司法に労働時間と認めさせたことを成果として評価し、その点では同僚が勇気をふるって裁判で証言に立ったことの重要性も強調した。さらに、この日午前に東電、元請けに対する申し入れ行動を行ったことを明らかにした上で、労基署による過労死認定をも足場に、並行して進んでいる損害賠償裁判を含めて、東電、元請け含めた責任の明確化と謝罪をさらに求めてゆくと決意を語った。
星野さんに続いて猪狩さんの遺族も発言。当然払われるべき未払い賃金がここまでしないと認められない、こんな社会でいいのか、と率直に怒りを表明、謝罪もしない会社は絶対容認できなかったと和解を拒否し判決に持ち込み勝利したことを明らかにしつつ、六〇〇〇人にもなる被ばく労働者には防護服もないと指摘し、これからの闘いを命と人権を守る裁判につなぎたい、と決意表明した。

5点の要求を採択


集会はこれらの発言を集約するものとして最後に、以下に示す五要求を結論とする「4・3 20けんり春闘総行動 アピール」を読み上げ満場の拍手で採択、全体の団結ガンバロウ三唱で最後まで闘うことを確認し行動を終えた。
採択された要求は以下の五点。
第一に 中小零細企業労働者、非正規労働者に生活できる大幅賃金引き上げを!第二に 休職・自宅待機等の労働者、フリーランスに賃金保障を一〇〇%実施すること。
第三に 経団連は新型コロナ問題に便乗した解雇、雇い止め、内定取り消しを行わないこと。技能実習生・移住労働者の雇用と生活を保障すること。
第四に 政府は医療関係の統廃合など合理化を中止し、早急にコロナウィルス罹患者のために、十分な医療体制を再構築すること。
第五に イベントや営業自粛に伴う損失補償を直ちに行うこと。

新しいネットワークを


新型コロナウィルス感染が日を追って拡大する中、安倍政権の「対策」の不十分さとちぐはぐさ、が浮き彫りになっている。また意図的なPCR検査抑制など感染実態把握にも重大な疑念があり、それには「緊密な同盟国」である米国からさえ公然と不信が突きつけられている。
民衆の命と雇用と暮らしを守るためにはまさに権力に依存せず、情報の完全公開を含めて草の根からの攻勢的な要求が今こそ必要になっている。感染防護の観点から民衆のネットワークを広く作る上ではさまざまな工夫が必要になっているが、世界各国では米国における山猫ストの広がり(本紙六面参照)などさまざまな自律的行動が模索されていることも参照しつつ、民衆の声と闘いを絶やさず、新しい闘いのネットワークを創出することに挑むことが求められている。各労組が引き受けている労働相談を含め、労働運動が率先してその挑戦を引き受けるべき位置にいることを確認しよう。今回の20けんり春闘総行動をその出発点にしよう。おそらくそこには、労働者運動の再構築に道を開く糸口が潜んでいる。          (神谷)    

4.1

都教委包囲首都圏ネット緊急行動

「自粛」と給付はセットだ

権利制限は許さないぞ

 四月一日、都教委包囲・首都圏ネツトは、都庁第一庁舎前で「緊急事態宣言反対! ♯自粛と給付はセットだろ!」緊急行動が取り組まれた。
 安倍政権は、新型インフルエンザ等対策特別措置法にもとづいて「新型コロナウィルス感染症対策本部」を開催し(3・26)、「緊急事態宣言」の発動の準備を整えようとしている。宣言を発動すれば、私権の制限(集会・デモ等の政治活動の禁止など)を強化していくのは必至だ。事実、都内公共施設の使用制限が加速度的に増えており、その先も「自粛」による使用制限を行っている。
 ネットは、コロナウィルス感染拡大にともなう諸事態に対して、「緊急事態宣言反対! ♯自粛と給付はセットだろ!」を柱にして?感染より先に餓死する ?失業生活保障をしろ! ?感染阻止なら検査しろ! ?安倍、小池のコロナ感染無策糾弾! ?早急に医療態勢を整えろ! ?仕事と生活を危機に陥れる緊急事態宣言反対! ?都教委の「君が代」不当処分糾弾! ?都教委は勝訴した根津さんを上告するな! ?コロナ感染防止より「君が代」斉唱第一の都教委糾弾! ?さらなる負担をしいる東京五輪は中止せよ! ?コロナの政治利用はやめろ! ?緊急事態宣言は改憲への地ならし 緊急事態条項新設反対! 改憲反対!―のスローガンを掲げて、小池都知事への「抗議・要請文」(別掲)を提出した。
 行動の前段集会では、仲間たちから@一方的な学校休校などの措置により教員と生徒たちは混乱状況にある。非正規教員・職員に対する雇い止めの危険性A休校によって学童保育がパンク状態、給食が食べられず栄養欠乏などが心配されるB医療労働者は過酷な労働状況に追い込まれており、コロナウィルス感染リスクが高まっている。この状態を安倍や小池は、応援態勢を準備せず実質的に放置状態にある――ことなどの発言が続いた。
 さらに、「三月二五日、東京高裁で、根津・河原井さんの『君が代』不起立処分取り消し訴訟の判決があった。根津公子さんの六か月停職処分(二〇〇九年三月)が取り消された(小川秀樹裁判長)。逆転勝訴だ。都は上告するな」と報告した。
 前段集会終了後、「抗議・要請文」を提出した。
 なおネットは、集会等の開催にあたってコロナウィルス感染対策として@自分と仲間を守るためにも、発熱や体調不良の方は、参加を見合わせていただく。A集団感染のリスクが高い、以下の三つの条件が同時に重なることを回避する[〈1〉換気の悪い密閉空間→屋外での開催や屋内なら定期的に換気する。〈2〉多くの人が密集→参加人数を一定程度制限する。〈3〉近距離での会話や発声→一定の間隔をあけたり、発言者のみが参加者の方を向く教室形式の集会) 〈4〉マイクや手指の消毒を行う、発言者はマスクを着用する]を確認している。 (Y)

コロナ感染対策対応についての抗議・要請文

東京都知事 小池百合子 様
東京都教育委員会教育長 藤田裕司 様

 安倍首相は二月二七日、「ここ一〜二週間が極めて重要な時期であります」として、突然三月二日から春休みまでの「全国一斉休校」を要請した。これにより、日本の学校と社会は大きな混乱に陥った。しかし、それから一カ月たっても、コロナ感染は続いている。この間、安倍政権がやった主なことは、緊急対策をほとんど後回しにしての国民・都民への「自粛」の要請と「新型インフル特措法」の改正だった(三月一三日可決)。その間自民党内では、コロナを利用し「緊急事態宣言」を出し、改憲につなげよう、などの論議がなされていた。また、あくまでも「東京五輪」を開催するための準備だった。そのため三月二四日の延期が決まるまでは、感染者数を低くしていたのではないかとも言われている。
こうして、「自粛」期間に多くの人々の仕事と生活が危機的状況に陥ったが、補償は無策のままに推移した。
一方、コロナ感染は五輪延期後急速に増加し、三月二六日、安倍政権は「対策本部」を設置、いつでも「緊急事態宣言」が出せるようにした。また同日小池都知事は首都圏一円の「移動自粛」を要請した。これにより、人々の生活と仕事はさらに危機的状況にさらされつつある。
ところで、この三月の卒業式に、都教委は式の「時間短縮」や「規模縮小」を各学校に通知した。しかし驚いたことに、飛沫感染の恐れがあることを知りながら、校歌や式歌は歌わなくてもいいが、「君が代」は学習指導要領にあるから歌えという「事務連絡」を出した(二月二八日)。そもそも「一斉休校」自体が学習指導要領を逸脱しているのにである。これでは、生徒たちの健康や命よりも「君が代斉唱」の方が大事だと言っているのに等しい。全く許されないことである。
他方、都教委はこの間、東京高裁で根津公子さんの「君が代」裁判で敗訴した。
三月三〇日夜、小池都知事は「緊急記者会見」を開き、「感染爆発・重大局面だ。感染拡大を押さえられるかどうか重大局面だ」と強調、「四月一二日までの間、『三つの密』を避けることをお願いするとともに、夜間の外出、週末の不要不急の外出を控えてほしい」と呼びかけた。ベッド数を増やすなどのことは述べたが、補償については「出す方向」としか述べなかった。
以上から私たちは以下のことを強く要請する。
@コロナ感染対策のために医療制度を早急に整えること
A「自粛」による仕事と生活の損害に対し補償をすること
B仕事と生活をさらに破壊する「緊急事態宣言」を出さないよう政府に働きかけること
C「ロックダウン(都市封鎖)」などの措置を執らないこと
D「君が代」裁判で都教委は上告しないこと
E延期しても莫大な経費が掛かり、中止になるかもしれない東京五輪は即刻中止すること
F五輪よりも都民の命が大事であるからこそその金を今一番緊急なコロナ対策に回すこと

 都教委包囲・首都圏ネットワーク

 



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