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    かけはし2018年12月10日号

土地強制収用測量に抗議の行動


10.30〜11.2

沼津駅付近鉄道高架事業―反対運動の今

桜井建男さん(空港はいらない静岡県民の会事務局長)に聞く

 一〇月三〇日から一一月二日、沼津市のJR沼津駅付近鉄道高架事業をめぐり、静岡県と沼津市は高架化の前提となる貨物ターミナル移転用地の取得に向けた土地収用法に基づく立ち入り調査を行った。地権者や支援一〇〇人は強制収用につながる調査に反対し、抗議行動を行った。沼津駅高架問題は静岡空港建設、浜岡原発、リニア建設と静岡県におけるムダな「公共事業」をやめろと何十年にもわたって反対運動が行われてきた。土地の強制収用という強権的な手口がまたもや使われようとしている。反対運動を支援している桜井建男さん(空港はいらない静岡県民の会事務局長)に話を聞いた。(編集部)

三〇年前の
バブル的計画
――一〇月三〇日〜一一月二日、沼津駅高架橋建設ならびに貨物駅拡張のため、地権者の土地への強制収用に向けた測量が行われ、地権者や支援による反対行動が取り組まれました。経緯を説明して下さい。

 沼津駅の交通渋滞の解消と駅の再開発が第一の目的。二つ目が駅の東側に貨物基地・ヤードがあり、それを三〇年前の右肩上がりの経済の時、鉄道輸送は需要が見込めるということで、四キロ先の原町まで拡張する計画案が出された。

――御殿場線の延長ということもあるのですか。

 それもあって、駅をずーんと上げてしまう。そのために規模が大きくなっている。用地の買収は沼津市が行う。工事費は静岡県と沼津市が分け合う。全体の工事費は二〇〇〇億円ぐらい。事業認定がおりたのが五年ぐらい前。用地買収がどんどん始まった。用地買収に応じない貨物基地予定地の原地区の地権者が当初七八人くらいいた。しかし、いろいろな事情があり切り崩されて現在は二七軒。

公的利益の存在
それ自体が問題
――地権者の土地は東海道本線沿いに「反対の看板」が立ててあり目立ちます。自主耕作地なんかもあるのですか。

 あれは地主が立てたんです。そこはかつて沼地だった。開拓したりして、農地に転換していった。現に耕作している。明治二〇何年かに、今の御殿場線が東海道線だった。それを沼津から真っすぐに東海道線を作った。原の地主たちは国家的事業だからといって、無償で自分たちの土地を鉄道用地として旧鉄道省に提供した。
だから、思いは深いわけだ。作道(畑に通う細い道)を通り耕作地に行くのに線路を自由に行き来できる。JRになってもそれは確保するという約束をしていた。しかし、この間は柵を作って入られないようにした。
工事差し止め請求を静岡地裁に起こしている。弁護士は海渡祐一さんがやってくれている。JRという一私企業の土地収用に何で公共自治体である県や市が手を貸すのか、税金を投入するのか、合理的理由はあるのか、という根本的問題がある。
鉄道高架をめぐって、前の大沼市長が四月に急逝した。六月に市長選があって、反対派も候補を立てたが予想に反して負けた。新市長が建設推進で強行的に出ている。
県知事は前回の知事選で当選した時、任期中には強制収用はしないと公約した。それが今年になって、沼津市に全面的に協力すると態度を変えた。土地収用法に基づく予算の計上から、市が進めた。土地収用法の三五条の土地収用者の許可がなくても公共の益に処する目的で調査強行に踏み切った。土地所有者の許可がなくても立ち入って調査する権限があると書かれてはいる。しかし、何をやってもいいわけではない。工事差し止めの係争中なわけで。公共事業として公的な利益があるかどうか争っているのだから。
現場で「お前たちは三五条で行政的権限を手にしているだけだ。だけどこれが公共事業として不適切と司法が判断した時、お前たちどうなの。威力を持って土地所有者を妨害するのは威力業務妨害ではないか。刑法と行政法のどっちが上位か分かるか」と迫るとぐうの音も出ない。
その最前線に私たちが立ち四日間闘った。

闘う手段は
まだ色々と
――今回は測量をやったの?

 測量だけなの、三五条権限と言うのは。手荒なことをしていいとか、ということはない。Kさんの土地をこちらが内側から囲んで、外側から市側が囲みやりあった。一一月二日、手出しできなくて、そこの樹木・立木を外観測量に切り替えて引き揚げた。外観測量で測量ミスが起きたら、大変なことになる。静岡空港の時、立木四〇本と土地が残り、責任者が辞任した。今回も測量ミスがあれば県知事と市長の首が飛ぶぞと詰め寄った。
一〇月三〇日から四日間。土地収用法にはただし書きがあって原則は日の出から日没までだが、特別の場合はその限りではない。静岡空港の時は日が落ちてもやった。

――今後はどうなっていくのですか。

 事業者の市と県が三五条調査の調書を作る。それを土地収用委員会にかける。そこで土地と物件の取得のための価値評価を行う。調書が誤りはないかなどを審査する。静岡空港の時は一四回ぐらいやった。三カ月ぐらいかかった。そういうことから考えると来年の春頃に収用委員会の結論が出る。地裁の工事差し止め判決は四月か五月頃に判決が出そうな情勢だ。それと合わせて、収用委員会採決に対して、立木トラストをやっている。空港の時は七〇〇〇人いた。それ程の規模はないが三〇〇人ちょっとはいる。

地権者の意志
にぶれはない
――二〇〇〇億円も税金を投入して作る必要があるか。世論はどうですか。

 反対派はどういう立場を出しているか。橋上駅案を出している。高架というのは新幹線の駅がほとんどそうだ。在来線の一般的な駅舎は、線路はそのままで、駅舎だけ上に上げる。交通渋滞が起きている三つ目ガードがある。それを取るというのが鉄道高架のねらいだ。橋上駅といっしょに通路を作ればよい。往来も交通状態も解消できる。今は昔のような交通渋滞も起きていない。朝晩の時だけ、少し混んでいるだけだ。
これから一〇年やそこらはかかるよ。すごい話なんだよ。この先、人口減少、経済の縮小が起きる。そんことやっている場合か。一時はかなり浸透していたが今は関心が薄れている。私は二回の市議選と一回の県議選の応援に入っていた。
地権者は今後もけっしてあきらめない、闘い抜く姿勢だ。

11.5

除染物焼却労働者が労働審判申し立て

安全対策不十分なまま作業強要

会社、灰の漏えい認める


 【福島】飯舘村蕨平の放射能汚染廃棄物焼却施設で灰の清掃作業などをしていた労働者が、安全対策が十分に取られなかったなどとして施設の運営会社日揮に三八〇万円余りの損害賠償などを求めた労働審判が一一月五日、福島地方裁判所で始まった。
 申し立てしたAさんは同焼却施設で二〇一六年八月から一年四カ月間働き、全面マスクや防護服などの装着なしでの作業を強いられていた。これらは電離放射線障害防止規則やダイオキシン類ばく露防止対策要綱に基づく放射線管理課対応義務に違反するものだが、日揮は無視して「バレないようにやれ」と指示していた。
 二〇一七年五月には、集塵機のバグフィルターろ布が破損したが修理せず、タイベックススーツの切れ端をフィルタ―の代用とした。Aさんら労働者は二カ月にわたり、一日二回半面マスクでこれらの交換をさせられ、そのたびに灰まみれになったという。環境省によると灰の最高濃度は一六万ベクレル/sあった。
 労働審判後のAさんと弁護士の記者会見によると、審判で日揮側は半年に一回、大気中のダイオキシンなどの濃度を測定していて、その数値は法的に問題がない値だったと主張、原告側から灰が床にたまって足跡がついている写真を提示されたのに対しては、灰の漏えいがあったことを認めた。

支援集会では
連帯の声次々
午後からの報告・支援集会では、代理人の小野寺弁護士と申立人Aさんの報告と支援要請を受け、放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会、WAWAWAの会、労働情報事務局長、宮城合同労組、福島連帯ユニオン、福島原発告訴団・刑事訴訟支援団、モニタリングポスト継続設置を求める市民の会、飯館村の佐藤・渡辺村議、蛇石郡山市議、ひだん連、宮城全労協など参加した人々が共に闘っていくと発言、会場カンパも三万円以上が寄せられた。
第二回審判は一一月二〇日に行われる。原発事故がもたらした二次三次汚染・被害との闘う労働者への支援を広げよう。  (世田)

コラム

テラエナジー

 先日小さな記事が目にとまった。なかなか興味深いもので、京都の寺のお坊さんが電力の小売に乗り出すそうだ。
 浄土真宗本願寺派の僧侶らが立ち上げた「TERAenergy(テラエナジー)」という会社が二〇一九年春から電力小売事業に参入すると発表した。寺や檀家などへの電力の販売を通じて再生可能エネルギーの普及を促すという。
 当初は主に中国、四国地方の寺や檀家向けに販売。初年度は二五〇の寺とその檀家など五〇〇〇件をめざす。本願寺派の寺は中国地方五県には三千以上の寺があると言われている。太陽光などによる地域の発電事業者から電力を調達し、人件費や広告費を抑え、中国電力より数パーセント料金を抑えるとしている。
 寺や檀家が支払った電気料金の一部を寺側に還元し、建物の維持、改修に役立ててもらい、地域の活性化につなげたいそうだ。二〇二〇年以降全国展開を計画しているという。
 これに関して西本願寺は「有志の僧侶たちの事業であり本願寺派(西本願寺)としては一切関与していない」ことを明らかにしている。
 私は本願寺派の檀家ではないし縁もゆかりもないが、この試みを応援したい気持ちになる。
 私はといえば、関西電力との契約を破棄し、コープこうべが運営を開始したコープでんきと契約して一年以上が経過した。もちろん関西電力が推進する原子力発電の政策に反対し再生可能エネルギーを普及、拡大させたいからだ。電気料金も幾分かは安くなった。
 コープでんきは二〇一七年四月からコープこうべの組合員のみを対象に家庭向けの電力の小売事業を開始。三割が再生可能エネルギー、七割がCO2の排出量の少ない天然ガスという電源構成で出発した。二〇一八年四月から新たに兵庫県内の六つの発電所から再生可能エネルギーを調達することになった。「電気の地産地消」を進めたいとしている。
 これまではコープこうべの一七カ所のグループ施設に設置した太陽光発電と広島県の製材大手のバイオマス発電から調達していた。
 現在の契約数は二万八千世帯以上になったと公表されている。
 コープでんきと契約さえすれば関西電力からの切り替えの手続きなどは私たちは何もしなくてもよい。手数料、工事費用、スマートメーター本体の費用等もゼロだ。この切り替え工事はすべて関西電力が行うのである。立ち合いの必要もない。実に楽しい話ではないか。伝え聞くところによれば、関西電力の契約件数は大阪ガスとの競合もあり、かなり落ち込んでいるという。
 一言つけ加えれば、私の住んでいるマンションの管理会社は関西電力の子会社である。上から目線が強く、あらゆる事に関して管理してやっているという意識がありありだ。当然住民のウケは良くない。この親会社にしてこの子会社ありである。(灘)




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