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    かけはし2018年12月10日号

終わりにしよう天皇制


11.25

あらゆる場から「異議あり!」の声を

「自由と平和・平等・民主主義」目指し

「おわてんねっと」の出発集会

 こんな制度は
もういらない
 一一月二五日、「終わりにしよう天皇制 11・25大集会&デモ」が千駄ヶ谷区民会館で行われ、一七〇人が参加した。主催は、終わりにしよう天皇制!「代替わり」反対ネットワーク(おわてんねっと)/呼びかけ:靖国・天皇制問題情報センター、反天皇制運動連絡会、「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会、天皇制いらないデモ実行委員。
 「おわてんねっと」は、二〇一九年を通した「代替わり」キャンペーン、天皇賛美行事である二・一一「紀元節」、四月三〇日の明仁退位、五月一日の「新天皇即位」、八月一五日「靖国」、一一月の「大嘗祭」などに対して抗議・反対行動を行う。すでに前段の闘いを開始しているが、この日の集会は「おわてんねっと」の立ち上げだ。全国の反天皇制運動を取り組む仲間たち、連帯する仲間たちに向けて「『おわりにしよう天皇制』は、自由と平和、平等と民主主義を求める私たちの合言葉です。天皇制の名のもとに殺され、屈辱を強いられた無数の人々、天皇制テロルに倒れた人々と共にある言葉です。無理に無理を課さなければ存続しえない彼らは決して盤石ではありません。『代替わり』という天皇制最大の動揺期に、ともに声を上げる同志を募ります」と呼びかけている。
 ぜひ「おわてんねっと」の呼びかけに賛同し、共に闘っていこう。(E-mail owaten@han.ten-no.net Web:http://han.ten-no.net/)

「主人と奴隷」の
関係をこわせ!
集会は、コント『忘れられないあの娘』から始まった。秋篠宮家長女の眞子(そっくりの女性)と友人の携帯の会話を通して恋愛問題、皇室の葛藤、綱引きなどをユーモアたっぷりに演じながら天皇制の歪んだ現実を解剖しきった。ラストシーンは「眞子ちゃんいいかげんにしなよ」と叱りつけるところからだ。会場の溢れんばかりの大笑いは「代替わり」攻撃に抗していくための「号砲」だ。
栗原康さん(アナキズム研究)は、「みんな天皇制がキライ」をテーマに講演。
冒頭、三月沖縄旅行時、天皇訪沖を「祝 歓迎」する集会と遭遇し、「日の丸」旗を掲げ「天皇陛下万歳」を繰り返す親天皇派勢力一五〇〇人を直視したことを通して、天皇制権力を実感したことを紹介。
とりわけ「明仁、美智子
の『平和イメージ』によって、戦争責任が問われず、来てくれてありがとうとなってしまう怖さを感じた。天皇は私たちのことはわかってくれる、というところにからめとられてしまうのではないか。ところがタクシーに乗車したら、運転手は『あいつらのせいで交通規制となり仕事にならない。商売あがったりだ。ちくしょー天皇カネ返せ』と言い出した。ここに一つの可能性があるなと感じた。こういう身近な感覚から天皇制はキライだということは大事だ」と述べた。
栗原さんは、@「大正時代」の天皇制批判として金子文子、大杉栄(奴隷根性論)のイデオロギーを集約的に整理A「大正時代」の天皇制批判として金子文子、朴烈の裁判闘争の意見陳述などを紹介しながら「爆弾の想像力」「みずから『不逞』にひらきなおる(働かずにどんどん食い倒す論)」の主張を解き明した。
これらの主張は、現在でも繋がるところがあり、「憲法の第一条は天皇条項だ。天皇制は権力のひずみが生じるたびにおもてに現れる。天皇制はいまよりもよい『統治』があると思わせる危険性がある。だから知識人の一部は、天皇制に引きつけられる。天皇制民主主義と称してからめとられている。主人と奴隷の敷居そのものをふっとばす『爆弾の想像力』を持つことは、今でも通じる。沖縄のタクシーの運転手の『ちくしょー天皇カネ返せ』がそのことを示しているだろう」と述べ、今後の方向性を提起した。

3分で反対!
元号もやめよう
野戦之月有志の芝居が行われた。芝居は、腐り切った社会を告発し、自力・自立しながら圧政と闘いスクラムを打ち固めながら人間的豊かさを明らかにしていった。
「3分で反対!天皇制」では、島袋陽子さん(東京琉球館)、いちむらみさこさん(反五輪の会)、池田弓子さん(女たちの戦争と平和資料館)、島田雅美さん(天皇問題を考える市民ネットワーク)、桜井大子さん(即位・大嘗祭違憲訴訟の会)が天皇制と安倍政権批判などをアピール。
元号いらない署名運動の報告と提出行動の呼びかけ(一二月五日〈水〉一三時、衆議院第一議員会館前〜内閣府に署名提出)、「おわてんねっと」への賛同呼びかけが行われた。
最後におっちゃんズによる「天皇制はいらないよ」「元号やめよう」が歌われ、参加者全体で合唱し、デモに向けた意志一致を行った。
デモに移り、渋谷一帯にわたって「天皇制はいらない!『代替わり』で祝わないぞ!税金の無駄遣いをするな!皇居を解放だ!皇室は解散せよ!」などのシュプレヒコールを響かせた。(Y)

日本共産党と天皇制

迎合を深めて「落とし穴」

「在位60年」当時とどう違う


すさまじい弾圧の記憶

日本共産党は、一九八九年の昭和天皇の死に伴う「代替わり」にあたって、党自身が天皇制日本帝国主義の下で非合法とされ、徹底的に弾圧されてきた歴史も含めて、侵略戦争の最高責任者であった天皇裕仁をするどく追及してきた。裕仁天皇の死に伴う「自粛」「追悼」などの強制に対しても厳しく批判する闘いを展開してきた。それは「昭和Xデー」にさかのぼる一九八六年の昭和天皇「在位六〇年」に当たっての批判キャンペーンの継続でもあった。
一九八六年当時、日本共産党は直系の出版社である新日本出版から、月刊『文化評論』誌の「保存版」として『天皇制を問う』と題した書籍を刊行している。一九八八年〜八九年の「Xデー」プロセスに先立って、日本共産党は党とその影響下にある学者、作家などを総動員する形で一九八六年の「在位六〇年奉祝」反対運動を展開した。それは何よりも「獄中一二年」の宮本顕治議長をふくめて天皇制国家による弾圧を自ら経験した古参党員たちがまだ健在であったことの表れでもあった。

「退位特例法」に賛成

今回の「生前代替わり」についてはどうか。日本共産党は、今年三月二二日に党中央委員会の名で「天皇の『代替わり』にともなう儀式に関する申し入れ」と題する文書を発表している。
この文書は冒頭で、「昨年、天皇退位特例法の制定を前に、衆参両院議長は、国会を構成する全ての政党会派の意見を聴取し、立法府としての対応を議論する機会をつくりました。これは、天皇退位の問題を党派的な争いにせず、できるかぎり各党の合意を得て対応を取りまとめようとする積極的な取り組みでした」と述べ、「退位特例法」制定にあたっての手続きを高く評価している。
この最初の姿勢からして、昭和天皇「Xデー」にあたっての当時の共産党の厳しい態度とは大きな違いだ。
同「申し入れ」は続いて「『代替わり』にともなう儀式についても、政府が閣議決定等で一方的に決定するのではなく、国会や各党の主張・見解にも耳を傾けて、できる限り各党間の合意を得るとともに、国民が合意できる内容にする努力がはかられるべき」と求める。さらに「日本国憲法の全条項をまもる立場から、天皇の『代替わり』にともなう一連の儀式にあたっても、日本国憲法の原則――とくに国民主権と政教分離の原則を厳格にまもることが大切である」と述べる。
もっとも現在の共産党は「わが党の提案は、天皇制反対の立場ではなく、憲法の原則にふさわしい行事にすべきという立場からのものです」という言い訳がましい弁明を付けたうえで、この申し入れを行っているのだが。

現行憲法に則した儀式?


それでは共産党の「申し入れ」の内容はどのようなものか。
第一は、「昭和の代替わり」が、旧皇室典範と登極令を踏襲した「天皇神格化」と国家神道の教義に基づいた儀式だった、ということだ。共産党の「申し入れ」の内容は、こうした天皇神格化と国家神道の儀式を繰り返すな、というものである。
第二は「三種の神器」(剣、勾玉、「国璽」・「御璽」)の承継を「国事行為」とするのではなく、あくまでも「天皇家の私的行為」として行え、ということだ。共産党は述べる。「『三種の神器』を天皇家が家宝として大切に扱い、代々受け継いでいくことを否定するものではありませんが、それは天皇家の私的行為として行うべきであり、国事行為とすべきではありません」。この点は、前回「国事行為」として行われた「即位後朝見の儀」、「即位礼正殿の儀」などの天皇への「臣下」の服属儀礼を再び、「国事行為」とすることへの批判としても貫かれている。
そして「大嘗祭」については、それが前回においても一九八九年一二月の「閣議口頭了解」で「国事行為として行うことは困難」とされながらも、事実上の国家行事として多額の公費がつぎこまれた、と批判し、「こうしたあり方は、国民主権の原則にも、政教分離の原則にも明らかに反しています」としている。
これらの点で、共産党の立場は、現憲法の「国政に関する権能を有しない」(憲法四条)「象徴天皇」としてのあり方をぎりぎりのところで維持しようというものだ。共産党は、そうした立場から「申し入れ文書」を次のように締めくくっている。
「今回は前回とは事情が異なり、昨年成立した天皇退位特例法の施行としておこなわれるものであり、退位、即位までには一年以上の十分な時間があり、その間、現行憲法にふさわしい天皇即位のあり方を国民的に議論できる条件があります」「憲法にのっとった儀式はどうあるべきなのかについて、国会の全ての政党会派の意見を反映し、国民的な議論により合意を形成する努力を行うことを強く求めます」。
しかし、議会内の全政党は、こうした「現行憲法に則ったあるべき皇位継承論議」に手をつけようとはしておらず、メディアの論調も「天皇陛下、皇后陛下ご苦労様」の「挙国一致」モードを煽りたてている。

天皇制廃止のために


こうした中で共産党もまた、「天皇代替わり」キャンペーンに敢えて挑戦するだけの態勢をとりえていない。それは「象徴天皇制」をバックボーンにした憲法に手をつけてはならない、という強迫観念から発したものである。すでに共産党は、通常国会開会日での天皇の「お言葉」の際の退席方針をとりやめ、「しんぶん赤旗」日付の「元号」併記に踏み切った。
一〇月一七日付の「赤旗」は、「天皇の代替わり儀式 戦前の『登極令』そのまま 二重の憲法違反は明白 共同通信インタビュー 不破社研所長語る」という見出しの記事を掲載した。
「共同通信が日本共産党の不破哲三前議長(現社会科学研究所所長)に対する元号と天皇代替わり儀式の問題についてのインタビュー記事を一三日に配信し、秋田魁(さきがけ)新報や宮崎日日新聞などの各紙が相次いで掲載しています。このうち、天皇代替わり儀式の部分を紹介します」との書き出しで、不破の発言を紹介している。不破はこの共同通信配信記事の中で「天皇家が私的行事として行う儀式は天皇家の権限に属する問題だが、国の行事としての即位の儀式は、国民主権と政教分離の原則をきちんと守った形式で行うべきだ。まだ時間的な余裕はある。政府でも国会でも本格的な議論をすべきだ」と主張している。問題はなぜ「元議長」発言を「共同通信」配信記事という形で掲載するのか、ということだ。ここには保守系支持者への微妙な「配慮」が感じられる。
「戦犯天皇」への怒りと抗議が渦巻いた一九八八〜八九年の「昭和天皇・裕仁の死」の際とは状況の大きな違いがある。「戦後の象徴」であり続けた「明仁・美智子」天皇制の時代、天皇制をめぐる人びとの感覚、見方も大きく変化した。
しかしそうであればこそ、天皇制に対する様々なレベルの疑問と批判や反発を掘り起こし、共有するための努力は、いっそう重要になっているというべきだろう。
安倍が進める憲法改悪を阻止する広範な共同闘争の構築と、「天皇代替わり」キャンペーン反対の闘いを同時に担うことの中から、天皇制の廃止、民主主義と人権と平等と平和、そして新しい反資本主義的オルタナティブへの道を切り拓こう。     

 【追記】大嘗祭に多額の公的予算を支出することを批判する秋篠宮の発言(この見解については、すでに八月二五日の毎日新聞で明らかになっており、それは本紙11月19日号の天野恵一さんの発言でも紹介されている)が波紋をよんでいる。
この問題については追って分析していく予定。なお共産党は、一一月三〇日の国会で二〇一九年五月一日の「新天皇即位の日」と一〇月二二日の「即位礼正殿の儀」について、それぞれ休日とする法案について唯一反対票を投じた。それは新天皇即位の日を「休日」にすることには賛成だが、天皇主権・国家神道の儀式である「即位礼正殿の儀」が行われる日を「休日」とすることは違憲だ、という理由による。この立場への批判についても、追って掲載することにしたい。
(平井純一)



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